会社が倒産しそうなら先に辞める?倒産を待つ場合との給付日数と未払い賃金の差

誰もいない事務所
  • 会社が危ない気がする。先に辞めるべき?それとも倒産まで待つべき?
  • 自分から辞めたら、自己都合の扱いで失業保険が損になる?
  • 給料が遅れている。これだけで会社都合になる?
  • 給料を一方的に下げられた。これは会社都合の理由になる?
  • 倒産を待てば会社都合になって、給付日数が増えるの?
  • 辞めたあとに会社が倒産したら、未払いの給料はもう取れない?
  • 有給は使い切ってから辞めたほうがいい?
  • いつまでに、何を残しておけばいい?

上記のような悩みに答えます。

会社が倒産しそうなときの退職は、「いつ辞めるか」で失業保険の扱いと未払いの給料の受け取り方が変わる場面です。よく聞くのは「倒産してから辞めれば会社都合で有利」という話ですが、倒産より前に自分から辞めた人でも、辞める理由が給料の不払いや大きな減額なら、条文の基準で特定受給資格者の範囲に入りうることは、あまり書かれていません。倒産の前兆を数え上げる解説や、転職サービスを勧める記事は見つかっても、倒産の範囲が「申立て」の段階から始まることや、国の未払賃金の立替払が倒産前に辞めた人も対象にしていることを、条文と公的機関の案内で確かめて並べたものは、編集部が探した範囲では見当たりませんでした。そこで、今辞める・倒産を待つ・解雇されるの3つで何が変わるかを押さえたうえで、自分の退職日が立替払の対象期間に入るかを数える手順と、辞める前に残しておく記録まで、雇用保険法施行規則と賃金の支払の確保等に関する法律の条文、ハローワークと独立行政法人労働者健康安全機構の資料で確かめながら整理しました。

先に答え

会社が倒産しそうでも、自分から辞めれば原則は自己都合の扱いです。ただし辞める理由が賃金の3分の1を上回る額の不払いなどに当たれば、自分から辞めても特定受給資格者の範囲に入りえます(判定はハローワーク)。未払いの給料は、破産などの申立日の6か月前の日から2年の間に辞めていれば、倒産前に辞めていても国の立替払の対象です(2026年10月時点)。

自分の年齢と勤続年数で、自己都合と会社都合の給付日数がどれだけ違うかは、失業保険の計算ツールで出せます。

2026年10月時点の制度で確かめています

目次

辞める時期で変わる3つのこと

誰もいない事務所

辞める時期で変わるのは、離職理由の区分、失業保険の給付日数と給付制限、未払いの給料の受け取り方の3つです。今自分から辞めると原則は自己都合、倒産や事業所の廃止で離職すれば特定受給資格者の範囲、解雇されれば解雇として扱われます。

離職理由は、辞めた日の名目ではなく、何が起きて離職したかという事実で区分されます。厚生労働省のパンフレットでは、離職理由は事業主の主張と離職者の主張をそれぞれ確認できる資料で事実確認したうえで、最終的にハローワークが判定するとしています。同じ「倒産しそう」という状況でも、給料がきちんと払われているうちに辞めるのか、不払いが起きてから辞めるのか、申立てのあとに離職するのかで、当てはまる区分が変わります。

辞める時期 離職理由の区分(原則) 給付制限 未払いの給料
今、自分から辞める 自己都合。ただし賃金不払・賃金低下の基準に当たる事実があれば特定受給資格者の範囲に入りうる 正当な理由がない自己都合なら、待期7日のあと原則1か月 申立日等の6か月前の日から2年の間の退職なら立替払の対象
倒産・事業所の廃止まで待って離職 特定受給資格者(倒産等) なし(待期7日のみ) 同じ期間に入っていれば対象
倒産を前に解雇される 解雇(重責解雇を除けば特定受給資格者) なし(待期7日のみ) 同じ期間に入っていれば対象。解雇予告手当は立替払の対象外

出典:厚生労働省パンフレット『離職されたみなさまへ』/ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」/独立行政法人労働者健康安全機構「未払賃金立替払に関するQ&A」

今辞めるか、倒産を待つかで分かれるところ
今、自分から辞める

  • 原則は自己都合。賃金の3分の1を上回る額の不払いなどがあれば特定受給資格者の範囲に入りうる
  • 正当な理由がない自己都合なら、待期7日のあと給付制限が原則1か月
倒産・事業所の廃止で離職

  • 特定受給資格者の範囲(倒産等)
  • 給付制限なし。待期7日のみ

表の右端の列は、どの行でも条件が同じです。立替払は自己都合か解雇かを問わず、退職した時期で対象かが決まるので、差が出るのは離職理由の区分と給付制限のほうです。

たとえば、給料が期日どおり払われていて、取引先が減った・社長の様子がおかしいといった気配だけで辞める人は、1行目の原則どおり自己都合の扱いになる位置にいます。一方で、すでに給料の一部が支払期日を過ぎても払われていない人は、同じ1行目でも、次の項の基準に当たるかどうかで扱いが変わりえます。

迷ったときは、「いま辞めたら、離職理由の基準に当たる事実があるか」「辞めた日が立替払の期間に入りそうか」の2つを分けて考えると、待つか辞めるかの判断材料がそろいます。

自分から辞めても特定受給資格者に入りうる場合

自分から辞めても、賃金の3分の1を上回る額が支払期日までに支払われなかったことや、賃金が85%を下回る低下があったことが理由なら、特定受給資格者の範囲に入りえます。雇用保険法施行規則36条3号・4号が、その基準を定めています。

特定受給資格者は、雇用保険法23条2項が「解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く。)その他の厚生労働省令で定める理由により離職した者」などと定め、中身を省令に任せています。その省令の36条には、解雇のほかの離職の理由が並んでいて、賃金の不払いと低下はそこに入っています。形のうえで退職届を出していても、理由がこの基準に当たる事実なら、区分の判断はその事実のほうで行われます。

条文の言葉は次のとおりです。

  • 3号:賃金(退職手当を除く。)の額を三で除して得た額を上回る額が支払期日までに支払われなかつたこと
  • 4号イ:離職の日の属する月以後六月のうちいずれかの月に支払われる賃金の額が当該月の前六月のうちいずれかの月の賃金の額に百分の八十五を乗じて得た額を下回ると見込まれることとなつたこと(括弧書きは略)
  • 4号ロ:離職の日の属する月の六月前から離職した日の属する月までのいずれかの月の賃金の額が当該月の前六月のうちいずれかの月の賃金の額に百分の八十五を乗じて得た額を下回つたこと
  • 4号の柱書:イ・ロのいずれかに「予期し得ず該当することとなつたこと」

出典:雇用保険法施行規則36条/雇用保険法23条

3号は「何か月続いたら」という書き方をしていません。現行の条文にあるのは、賃金の3分の1を上回る額が、支払期日までに支払われなかったという事実です。不払いが続いた月数を条件にした説明を見かけても、それは条文の文言ではないので、自分の状況を当てはめるときは、条文の言葉どおり「どの月の、いくらが、支払期日までに払われなかったか」で確かめます。4号は、最低賃金法の賃金の定義に沿い、一部の賃金と歩合給を除いて比べるとしているので、手取りの増減だけでは判断できません。

たとえば、支払期日に約束の給料の半分しか振り込まれなかった月があり、その後に辞めた人は、3号の書き方に沿って事実を説明できる位置にいます。反対に、支払期日に全額が入っていた人や、期日までに払われなかった額が賃金の3分の1以下だった人は、3号の書き方には当たりません。期日を過ぎてから入った場合は、期日の時点でいくら払われていなかったかを記録で示します(判定はハローワーク)。会社から「来月から給料を下げる」と言われて辞める人は、4号イの「見込まれることとなつた」に当たるかどうかが論点になり、下がる幅と比べる月の賃金が分かる書面が要ります。

ただし、これは「入りうる」という話で、決めるのはハローワークです。離職票の離職理由が事業主の主張どおり「自己都合」になっていても、ハローワークは双方の主張を資料で確かめて判定します。編集部の整理では、この項の基準に当たるかもしれない人ほど、辞める前に下の「残しておくもの」をそろえておくことが、後の判定の材料を手元に持つことになります。会社都合を主張する手順は失業保険を会社都合にする方法に、会社都合になる条件の全体は会社都合退職になる条件にまとめています。

倒産や事業所の廃止で離れたときの扱い

倒産に伴って離職した人は、雇用保険法施行規則35条1号により特定受給資格者の範囲に入ります。条文が言う倒産は、破産手続開始などの「申立て」と、手形取引の停止を指していて、裁判所の開始決定を待つ書き方ではありません。

35条は、倒産等による離職として4つを挙げています。1号の倒産は「破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始若しくは特別清算開始の申立て又は前条の事実」をいい、前条の34条は、手形交換所で、金融機関が金融取引を停止する原因となる事実の公表がされることを指します。2号は大量の雇用変動の届出がされたため、または被保険者の3分の1を超える人が離職したための離職、3号は事業所の廃止(事業活動が停止し、再開する見込みがない場合を含む)に伴う離職、4号は事業所の移転で通勤が困難になったための離職です。

規則35条 当てはまる場面 確かめること
1号 倒産 破産・再生・更生・特別清算の申立て、手形取引の停止のあとに離職 申立ての有無と時期。離職証明書の注意書きでは、裁判所が申立てを受理したことを証明する書類などを持参資料に挙げている
2号 大量の雇用変動 大量の雇用変動の届出、または被保険者の3分の1を超える離職 ハローワークの案内では、届出は1か月に30人以上の離職を予定する場合
3号 事業所の廃止 法的な手続がなくても、事業活動が停止し再開の見込みがない 離職証明書の注意書きでは、解散の議決があれば議事録の写しなど

出典:雇用保険法施行規則35条/同34条/厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」

離職証明書の注意書きは、事業所の倒産等による離職について、破産などの申立てや手形取引の停止等で倒産状態にあるという勤務先の事情を考えて離職した場合がこれに当たると書いたうえで、倒産等により解雇された場合は「解雇」に当たるとしています。つまり、倒産のあとで会社から解雇を言い渡された人と、倒産状態を受けて自分で離職した人では、離職票に書かれる区分が違いえます。どちらも、ハローワークの範囲の概要では特定受給資格者の範囲に入る形です。

たとえば、会社が破産の申立てをしたと社内で知らされ、その翌週に退職届を出した人は、1号の「申立てに伴い離職した者」に当たるかが論点になります。会社が何の手続もせずに営業をやめ、社長と連絡がつかなくなった場合は、1号ではなく3号の事業所の廃止の線で見ます。

33条が給付制限をかけるのは正当な理由がない自己都合退職などで、倒産等で特定受給資格者と判定されれば、待期7日のあとに支給が始まります。倒産したあとの手続、離職票が出ないときの動き方は会社が倒産したら失業保険はいつからで扱っています。編集部の整理では、待つ側を選ぶ人は「申立てや廃止の事実を、あとで書類で示せるか」を先に考えておくと、離職のあとで慌てずに済みます。

給付日数と給付制限はどれだけ違うか

硬貨と紙幣

所定給付日数は、一般の離職者(自己都合など)なら被保険者期間に応じて90日・120日・150日で年齢は問いません。特定受給資格者は、年齢と被保険者期間の組み合わせで決まり、同じ勤続年数でも一般の離職者より長くなる区分があります。

日数の差は、条文の作りの違いから出てきます。一般の離職者の日数は被保険者期間だけで決まり、特定受給資格者の日数は23条1項で基準日の年齢(30歳・35歳・45歳・60歳が境目)と被保険者期間の両方で決まります。給付制限は、33条が「正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合」などに「一箇月以上三箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間」を定めていて、厚生労働省の運用では、2025年4月1日以降の退職は原則1か月、退職日からさかのぼって5年のうちに正当な理由のない自己都合退職で受給資格の決定を2回以上受けている人は3か月です。

被保険者期間 一般の離職者 特定受給資格者(35歳以上45歳未満) 特定受給資格者(45歳以上60歳未満)
1年以上5年未満 90日 150日 180日
5年以上10年未満 90日 180日 240日
10年以上20年未満 120日 240日 270日
20年以上 150日 270日 330日

出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」/雇用保険法23条/厚生労働省「自己都合離職者の給付制限について」

表は、年齢の区分を2つだけ載せた抜き出しです。30歳未満、30歳以上35歳未満、60歳以上65歳未満の区分は日数がそれぞれ違うので、自分の年齢の日数は失業保険の計算ツールか、上のハローワークの表で確かめてください。

受給資格の要件も区分で変わります。厚生労働省のパンフレットでは、特定受給資格者は離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば受給資格を満たします。被保険者期間は、離職日から1か月ごとに区切った期間に、賃金の支払の基礎になった日数が11日以上ある月を1か月と数えます。入社して日が浅い人は、区分によって受給資格そのものが分かれることがあるので、自分の被保険者期間を数えておきます。

たとえば、35歳以上45歳未満で被保険者期間が10年以上20年未満の人は、自己都合なら120日、特定受給資格者になれば240日です。45歳以上60歳未満で5年以上10年未満の人なら、90日と240日です。これに加えて、正当な理由がない自己都合なら待期7日のあとに原則1か月の給付制限があり、特定受給資格者には付きません。

差が大きいのは、勤続が長く、年齢が45歳以上60歳未満の区分にいる人です。編集部の整理では、自分の日数を計算ツールで2通り出してみて、差が大きい人ほど、辞める理由が前の項の基準に当たるかを先に確かめる価値があります。

先に辞めても立替払の対象になる時期

未払いの給料は、破産などの申立日(中小企業の事実上の倒産では、労働基準監督署長への認定申請の日)の6か月前の日から2年の間に退職していれば、倒産より前に辞めていても立替払の対象になります。自己都合か解雇かは問いません。

立替払は、賃金の支払の確保等に関する法律7条が、事業主が破産手続開始の決定を受けるなどした場合に、「政令で定める期間内に当該事業を退職したもの」の未払賃金を国が事業主に代わって弁済すると定めた制度です。その期間を同法施行令3条が、最初の破産手続開始等の申立てがあった日(事実上の倒産は最初の認定申請があった日)の「六月前の日から二年間」としています。基準の日が「退職の日」ではなく「申立ての日」に置かれているので、申立てより前に辞めた人も期間に入りえます。

申立日の6か月前の日から、2年の間に辞めていれば対象
申立日より前申立日の6か月前の日より前に辞めた人は対象外
対象になる退職の期間申立日の6か月前の日から2年間

自分の退職日が入るかは、次の順で数えます。

  1. 自分の退職日を確かめる(退職届の日付ではなく、雇用が終わる日)
  2. 会社について、破産・再生・更生・特別清算の申立てがあったか、あった日はいつかを確かめる
  3. 法的な手続がなく事業が止まった場合は、退職者による労働基準監督署長への認定申請があったか、最初の申請の日はいつかを確かめる
  4. その日の6か月前の日から2年の間(6か月前の日を含む)に辞めていれば、期間に入る
  5. まだ申立ても認定申請もないなら、辞めた日の6か月後の同じ日付の日までに申立てや認定申請があれば期間に入る、と考えて動く。月末の境目は労働基準監督署に確かめる

3つ目の「事実上の倒産」には、自分の側にも期限があります。賃金の支払の確保等に関する法律施行規則9条4項は、認定の申請書の提出は「退職の日の翌日から起算して六月以内」と定めています。機構の案内では、認定は事業の全体について行われ、退職者の1人が申請すれば足り、その効果は全退職者に及ぶ一方で、職権では行われません。会社が手続をしないまま止まりそうなら、退職者のだれかが期限内に申請しないと、事実上の倒産の立替払は始まりません。対象になる会社は、事業主が労災保険の適用事業として1年以上事業活動を行ってきたことが条件で、事実上の倒産の認定は中小企業事業主に限られます。

対象になる賃金にも時期の線があります。機構の案内では、対象は退職日の6か月前の日から請求の日の前日までに支払期日が来た定期賃金と退職手当で、未払いのものです。賞与や解雇予告手当は対象外で、未払賃金総額が2万円未満なら対象になりません。編集部の整理では、ここは辞める時期を考えるうえで見落としやすい点で、給料の遅れが長く続いたあとに辞めると、退職日の6か月前の日より前に支払期日が来ていた分は、この範囲から外れます。

たとえば、ここ数か月、給料の一部が払われていない人が今辞めて、その後に会社が破産の申立てをした場合、申立てが辞めた日の6か月後の同じ日付の日までなら退職は期間に入り、退職日の6か月前の日以後に支払期日が来ていた未払い分も対象の範囲に入ります。逆に、編集部の整理では、遅配が始まってからも長く在籍し続けた人は、古い月の分が範囲の外に出ていないかを数えておく必要があります。立替払の額は未払賃金総額の8割で、退職したときの年齢で総額の上限が決まっています。上限額と請求の手順は会社が倒産したら失業保険はいつからで表にしています。

辞める前に手元に残しておくもの

辞める前に残しておくのは、給料の約束と実際の支払いの差を示せるものです。編集部の整理では、労働条件通知書や雇用契約書、就業規則・賃金規程、給与明細、給料の振込記録、会社からの通知の5つがそろうと、離職理由の判定と立替払のどちらにも使えます。

離職理由は、ハローワークが事業主と離職者の主張をそれぞれ確認できる資料で事実確認して判定します。立替払も、法律上の倒産なら破産管財人などが未払賃金総額を証明し、事実上の倒産なら労働基準監督署長が確認します。どちらも、自分の手元に「いくら払われるはずで、いくら払われたか」の記録があるかどうかで、説明の通りやすさが変わります。労働基準法24条は、賃金を「毎月一回以上、一定の期日を定めて」、原則として全額を支払うよう定めているので、支払期日を決めている書面と、その日に入った額の記録が対になります。

残すもの 何を示すか 残し方
労働条件通知書・雇用契約書 約束の賃金の額 紙ならコピー、データなら自分の端末に保存
就業規則・賃金規程 支払期日・締め日・手当の決まり 該当のページを写真に撮る
給与明細 各月の支給額と内訳 遅配・減額の前の月から全部
振込の記録 実際に入った日と額 通帳のコピーやネット銀行の明細を保存
会社からの通知 遅配・減額・休業・申立ての連絡 メール・社内掲示・文書をそのまま保存

減額を言われた人は、4号の比べ方に沿って、下がる前と後の月の明細が両方要ります。申立てを知らされた人は、その知らせの文書やメールが時期を示す材料になります。社内のシステムや会社のメールにしかない資料は、辞めたあとに見られなくなる場合があるので、会社の規則で持ち出しが禁じられていない範囲で、自分の控えにしておきます。

たとえば、賃金規程に毎月の支払日が決まっていて、ある月はその日に半額、翌月になって残りが入った人は、規程のページとその月の振込記録の2つで、支払期日までに払われなかった額を示せます。口頭で「来月まとめて払う」と言われただけの人は、日付と相手と内容をその日のうちにメモに残しておきます。

記録がそろったら、離職理由の扱いは管轄のハローワーク、未払いの給料は会社の所在地を管轄する労働基準監督署で、それぞれ「この記録でどの区分・どの制度に当たりうるか」を聞けます。

倒産を待つあいだに起きること

在籍して待つあいだも、給料の支払義務と労働基準法のルールはそのまま続きます。待つ人が知っておくのは、解雇されたときの解雇予告手当、有給休暇の残り、離職票が出ないときの3つです。

会社が倒産を前に人員を減らすときは、解雇という形になることがあります。労働基準法20条は、解雇するなら少なくとも30日前に予告し、予告しないなら30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を払うよう定めています(天災事変などで労働基準監督署長の認定を受けた場合などの例外があります)。ただし、解雇予告手当は機構の案内で立替払の対象外とされているので、会社に払う力がないまま倒産すると、立替払では埋まらない部分として残ります。手当の計算と払われないときの相談先は即日解雇の解雇予告手当にまとめています。

出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」解雇手続について/労働基準法39条

たとえば、30日以上前に解雇を予告された人は、予告手当ではなく、その間の給料が払われるかが論点です。翌日から来なくていいと言われた人は、予告手当が立替払で埋まらないことも頭に置いて、労働基準監督署に相談します。

有給休暇を使い切ってから辞めるかは、給料が払われる見込みと合わせて考えます。編集部の整理では、有給を使って在籍を延ばすほど退職日が後ろにずれるので、前の項の「6か月前の日」の線と、払われていない月が範囲から外れないかを一緒に数えておくのが安全です。

潰れる前兆と転職理由の書き方

前兆については、会社の外から倒産を言い当てる決まった一覧はありません。働く人が確かめられて、しかも制度の扱いに関わるのは、給料が支払期日までに払われたか、賃金が下げられたか、申立てや事業の停止の知らせがあったか、という事実のほうです。

取引先の離反や社内の空気は、会社の将来を推し量る材料にはなっても、離職理由の基準や立替払の要件には直接つながりません。条文が見ているのは、賃金の不払いの額、賃金の低下の幅、倒産の申立てや事業所の廃止といった事実です。

転職先に伝える退職理由は、事実をそのまま短く言うのが基本になります。「勤務先の経営が悪化し、給料の支払いが遅れるようになったため」「勤務先が破産の申立てをしたため」のように、何が起きたかを1文で言い、次の仕事で何をしたいかにつなげます。会社の悪口や推測は付け足さず、聞かれたら起きた事実と時期を答えます。

たとえば、まだ申立てがない段階で辞めた人は、「先行きに不安を感じた」だけでなく、そう感じた具体的な事実(取引の大幅な減少を社内で知らされた、など)を添えると状況が伝わります。

前兆を数えるより、自分の給与明細と振込記録を毎月確かめるほうが、離職理由と立替払の両方に効く備えになります。

急いで辞めなくていい場合

次に当てはまる人は、倒産しそうだという気配だけを理由に、急いで自分から辞めなくても、制度のうえで不利になる事情は見当たりません。辞めるかどうかは、次の仕事の見通しと生活の事情で決めて構いません。

  • 給料が毎月の支払期日どおりに全額払われていて、3号・4号の基準に当たる事実がまだ無い人:今辞めても離職理由の基準に当たる事実が無く、原則どおり自己都合の扱いになる見込みです
  • 未払いがあっても、自分の退職日が立替払の期間に入るかは申立ての時期で決まる人:辞めた日の6か月後の同じ日付の日までに申立てや認定申請があれば期間に入ります。申立ての時期は外から分からないので、在籍を延ばすかどうかは、この線と生活の事情を合わせて決めます
  • 次の勤め先が決まっていて、失業保険を受ける予定がない人:給付日数や給付制限の差は、受けない人には関係しません
  • 有給休暇が残っていて、給料も払われている人:在籍のまま有給を使い、その間に記録をそろえて次を探す選択肢があります

反対に、編集部の整理では、給料の遅れが長く続いている人は、退職日の6か月前の日より前に支払期日が来た分が、立替払の対象外になりえます。古い月の未払いが範囲から外れていかないか、事業が止まったのに会社が手続をしない場合は、退職の日の翌日から6か月以内という認定申請の期限に間に合うかを、早めに確かめておきます。

たとえば、給料は期日どおりで、取引先が減ったという噂だけがある人は、給与明細と賃金規程をそろえ、次の仕事を探しながら在籍を続ける選び方ができます。給料の一部がすでに払われていない人は、記録をそろえて、ハローワークと労働基準監督署に辞める前に聞いておけます。

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会社都合退職になる条件は?自己都合との給付日数・給付制限の差を表で

会社をクビになったら最初にやること|いつまでに何を受け取るかと手当の額

よくある質問

倒産しそうな会社を自分から辞めたら、自己都合になりますか?

原則は自己都合の扱いです。ただし、辞める理由が賃金の3分の1を上回る額の不払いや、賃金が85%を下回る低下に当たる事実なら、雇用保険法施行規則36条の基準で特定受給資格者の範囲に入りえます。判定はハローワークが、事業主と本人の主張を資料で確かめて行います。

給料が遅れているだけで会社都合になりますか?

条文の基準は、賃金の3分の1を上回る額が支払期日までに支払われなかったことです。支払期日に全額が入っていた、または期日までに払われなかった額が3分の1以下だった場合は、この書き方には当たりません。期日を過ぎてから全額が入った場合に当たるかどうかは、事実を見てハローワークが判断するため、どの月の、いくらが、期日までに払われなかったかを記録で示せるようにしておきます。

辞めたあとで会社が倒産したら、未払いの給料は取れませんか?

破産などの申立日の6か月前の日から2年の間に退職していれば、倒産前に辞めていても立替払の対象です。自己都合か解雇かは問いません。立替払の額は未払賃金総額の8割で、年齢による上限があります。

倒産まで待てば、必ず会社都合になりますか?

倒産の申立てなどに伴って離職すれば、規則35条で特定受給資格者の範囲に入ります。ただし、最終的に判定するのはハローワークで、申立ての時期や離職との関係を書類で確かめます。申立てを受理したことを証明する書類などを持っていくよう、離職証明書の注意書きは案内しています。

会社が手続をせずに事業をやめた場合も、立替払は受けられますか?

中小企業事業主の会社なら、事業活動が停止し、再開する見込みがなく、賃金を支払う能力がない状態について、労働基準監督署長の認定を受ければ対象になりえます。認定の申請は退職の日の翌日から起算して6か月以内で、職権では行われないので、退職者のだれかが申請する必要があります。

倒産しそうな会社を辞めたら、転職で不利になりますか?

不利になるかどうかを示す公的な資料は、編集部の手元にはありません。転職先に伝えるときは、経営悪化による給料の遅れや破産の申立てなど、起きた事実を短く言い、次の仕事でやりたいことにつなげます。

数字だけ、もう一度

  1. 辞める時期で変わるもの:離職理由の区分・給付日数と給付制限・未払いの給料の受け取り方。立替払は自己都合か解雇かを問わない
  2. 自分から辞めても入りうる基準:賃金の3分の1を上回る額が支払期日までに不払い(規則36条3号)、賃金が予期し得ず100分の85を下回る低下(同4号)
  3. 倒産の範囲:破産・再生・更生・特別清算の申立て、手形取引の停止(規則35条1号・34条)。大量の雇用変動の届出は1か月に30人以上の離職予定
  4. 給付日数:一般の離職者は90日・120日・150日。特定受給資格者は年齢と被保険者期間で決まり、45歳以上60歳未満・20年以上なら330日
  5. 給付制限:正当な理由がない自己都合は待期7日のあと原則1か月(5年で2回以上なら3か月)。倒産・解雇(重責解雇を除く)は待期7日のみ
  6. 立替払の対象になる退職:申立日(事実上の倒産は認定申請日)の6か月前の日から2年間。事実上の倒産の認定申請は退職の日の翌日から6か月以内。額は未払賃金総額の8割(年齢別の上限あり)で、2万円未満は対象外
  7. 解雇予告手当:予告がない解雇なら原則30日分以上の平均賃金。立替払の対象外

会社が倒産しそうなときに大事なのは、「先に辞めるか待つか」を気配で決めないことです。いま辞めたら、離職理由の基準に当たる事実があるか。辞めた日が、これから来るかもしれない申立ての日から見て、立替払の期間に入りそうか。この2つは、給与明細と振込記録、賃金規程があれば自分で確かめ始められます。記録をそろえ、自分の給付日数を2通り出し、迷う点はハローワークと労働基準監督署で先に聞く。そこまで済ませてから辞める日を決めれば、時期の選び方で取りこぼすものは小さくできます。

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この記事を書いた人

やめ活編集部です。退職の伝え方・失業保険・退職代行について、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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