- 体調不良で休みが続いている。このまま解雇されてしまう?
- うつで解雇されたら、失業保険はすぐにもらえる?会社都合になる?
- 休職期間が終わって退職になるのと、解雇されるのは何が違う?
- 傷病手当金と失業保険は、どっちを先にもらえばいい?
- 退職したあとも、傷病手当金は受け取れる?
- 解雇を告げられた。その場で何を確かめればいい?
- 仕事が原因で体調を崩したのに、解雇されてもいいの?
- 失業保険の手続きを急がないと、受け取れなくなるのでは
上記のような悩みに答えます。
体調不良やうつで欠勤や休職が続くと、会社から解雇を告げられたり、休職期間の満了で退職になると言われたり、退職を勧められたりすることがあります。検索の上位には、会社の人事や法務に向けて「私傷病の社員を解雇できるか」「休職満了の手順」を説く法律事務所の解説が並び、告げられた本人が、健康保険の傷病手当金と雇用保険の失業保険をどの順番で受ければ取りこぼさないかを、自分の側から確かめられる記事は見当たりません。そこで、解雇・休職満了の退職・退職勧奨という離れ方の違い、体調不良の欠勤で解雇できるかの線、告げられたら確かめる順番という基本を押さえたうえで、働けないうちは失業保険を受けられないことと受給期間の延長、退職後の傷病手当金の継続給付の条件、離職理由で変わる給付日数まで、労働基準法・労働契約法・雇用保険法・健康保険法の条文と厚生労働省・協会けんぽの資料で確かめながら整理しました。
うつや体調不良で働けないうちは失業保険は受けられないため、退職後も条件を満たせば傷病手当金を受け続け、働けない期間が30日以上続くなら失業保険の受給期間の延長を申し出ておき、働ける状態になってから失業保険を受ける順番になります(2026年10月時点)。解雇か休職満了の退職かで離職理由の扱いは変わり、判定はハローワークが行います。
回復して失業保険を受けるときの日額と総額は、失業保険の計算ツール に離職理由・年齢・加入期間を入れると、自分の数字で出せます。
2026年10月時点の制度で確かめています
病気やうつで会社を離れる3つの形

病気やうつで会社を離れる形は、会社の側から雇用を終わらせる解雇、就業規則の定めで休職期間が満了して退職になる形、会社から辞めるよう勧められて応じる退職勧奨の3つに分かれます。自分から辞める形もあります。失業保険ではこの形によって離職理由の扱いが変わりますが、最後に判定するのはハローワークです。
雇用保険の離職理由について、厚生労働省のパンフレット「離職されたみなさまへ」は、事業主が主張する離職理由と離職者が主張する離職理由を把握し、それぞれの主張を確認できる資料による事実確認を行った上で、最終的にハローワークで慎重に行う、としています。会社が書類に何と書いたか、本人がどう受け止めたかのどちらか一方では決まりません。そのうえで、形ごとに見られる区分の目安は次のとおりです。
| 離れる形 | 何で決まるか | 失業保険で見られる区分の目安 |
|---|---|---|
| 解雇 | 会社が雇用を終わらせる。労働契約法16条の歯止めがある | 解雇(重責解雇を除く)なら特定受給資格者(雇用保険法施行規則36条1号) |
| 休職期間満了の退職 | 就業規則の休職の条項 | 就業規則の呼び名では決まらず、事情と資料で判定 |
| 退職勧奨に応じた退職 | 会社から辞めるよう勧められて離職する | 勧奨を受けて離職した人は特定受給資格者の範囲に入る(従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度などに応募した場合は除く) |
| 自分から辞める | 本人の申し出 | 疾病などによる離職は特定理由離職者の類型に当たりうる |
出典:厚生労働省「離職されたみなさまへ」・雇用保険法施行規則36条・ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
表の右の列は、あくまで目安です。退職勧奨も、勧められたというだけで当たると決まるわけではなく、ハローワークが事実を確かめて判断します。休職期間満了の退職は、下の「休職満了」の項でくわしく見ます。
たとえば、同じようにうつで休職していた2人のうち、1人は休職中に会社から「解雇する」と告げられ、もう1人は休職期間が満了して就業規則の条項で退職になったとします。前者は解雇としての扱いが、後者は就業規則の退職の定めと離職の事情が、それぞれ判定の材料になります。どちらも、離職票の上で離職理由がどう書かれるかを本人が確かめることが出発点です。
迷ったときに最初にするのは、自分がどの形で離れることになるのかを書面で確かめることです。解雇なら解雇の通知、休職満了なら休職を命じた書面と就業規則の休職の条項、勧奨ならいつ誰に何と言われたかのメモがその材料になります。
体調不良の欠勤で解雇できるか
体調不良の欠勤を理由にした解雇にも、労働契約法16条の歯止めがかかります。そのうえで、仕事が原因の病気やけが(業務上の負傷・疾病)で療養のために休業している期間とその後30日間は、労働基準法19条で原則として解雇が禁じられています(打切補償を支払う場合と、天災事変などで事業の継続が不可能となり行政官庁の認定を受けた場合を除く)。業務外の病気(私傷病)での休業は、19条の条文には入っていません。
労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。厚生労働省のモデル就業規則は、解雇の事由の例として「精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき」を挙げていますが、これは会社が就業規則に置く例で、当たれば解雇が有効になるという意味ではありません。モデル就業規則の解説も、就業規則に定める解雇の事由とは別に、16条で権利の濫用にあたる解雇は無効とされることを書いています。
19条1項は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間とその後30日間(産前産後の休業も同じ)は解雇してはならない、と定め、ただし書きを2つ置いています。
- 19条で解雇が禁じられる期間:業務上の負傷・疾病で療養のために休業する期間と、その後30日間
- 対象外:業務外の病気やけがでの休業(条文は「業務上」と書いている)
- ただし書き①:81条の打切補償を支払う場合(業務上の傷病の療養補償を受ける人が、療養開始後3年を経過しても治らないとき、平均賃金の1200日分)
- ただし書き②:天災事変などで事業の継続が不可能となった場合(行政官庁の認定が必要)
ここで分かれ目になるのが、病気が業務上かどうかです。うつや適応障害が仕事のせいだと本人が感じていても、それだけで業務上と決まるわけではありません。業務上かどうかの判断の基準はここでは扱いません。いつから体調が崩れたか、その前後に職場で何があったかを時系列で書き出し、そのメモと診断書、勤務時間の記録を持って、弁護士や労働の相談窓口に相談します。相談先の選び方は 不当解雇の相談先 にまとめています。
たとえば、私傷病のうつで欠勤が続き、休職の手続きを経ないまま解雇を告げられた人は、19条ではなく16条の線で解雇の当否が見られる場面です。反対に、長時間の勤務が続いたあとに体調を崩して休業している人は、その病気が業務上と認められれば、療養のために休業する間とその後30日間は、ただし書きの場合を除き19条で解雇が禁じられます。
解雇を告げられた人が自分の側でできるのは、解雇が有効かどうかを自分で決めることではなく、16条と19条のどちらの場面かを見分ける材料をそろえることです。業務上かもしれないと思うなら、その記録を退職の手続きより先に残しておきます。
休職満了の退職は就業規則で決まる
休職期間が満了して退職になる形は、法律ではなく就業規則の定めによるものです。厚生労働省のモデル就業規則の解説も、休職の定義、休職期間の制限、復職等については労働基準法に定めはない、と書いています。
モデル就業規則の9条1項1号は、業務外の傷病による欠勤が一定の月数を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないときは所定の期間休職とする、という形で書かれていて、欠勤の月数と休職期間は空欄になっています。会社ごとに決める数字だからです。9条3項は、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする、と定めています。退職の事由をまとめた52条1項3号にも「第9条に定める休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないとき」が並び、解雇の事由は別の53条に置かれています。
- 会社の側から雇用を終わらせる
- 30日前の予告か予告手当(労働基準法20条)
- 特定受給資格者の「解雇」に当たりうる
- 就業規則の定めで退職になる
- 休職の条項と満了日を就業規則で確かめる
- 離職理由はハローワークが判定
モデル就業規則のうえでは、休職満了は「退職」の条に書かれていますが、自分の会社の就業規則が同じ書き方とは限りません。また、離職票の離職理由がどちらになるかは、就業規則の呼び名ではなく、ハローワークが事業主と本人の主張と資料で判定します。病気で働けずに離職したことは、ハローワークの範囲の概要にある特定理由離職者の類型「体力の不足、心身の障害、疾病、負傷…等により離職した者」に当たりうるものの、当てはまれば必ず該当するとは言えません。手続きのときは、医師の証明など病気で働けなかったことを示す書類を持って、ハローワークで相談します。
たとえば、うつで休職している人が、満了日が近づいて人事から連絡を受けたとします。まず確かめるのは、休職を命じた書面と、就業規則の休職の条項に書かれた期間と満了日、そして復職するときの手続きです。モデル就業規則の9条2項は、休職期間中に休職事由が消滅したときは原則として元の職務に復帰させる、と書いていて、会社の就業規則に復職の定めがあれば、それに沿って復職を申し出る道もあります。満了日の時点で働けない状態が続いているなら、退職後の傷病手当金の条件と、受給期間の延長の準備に進みます。休職から退職するときの有給や退職日の並べ方は 休職から退職する順番 にまとめています。
休職中の人がいま手元にそろえたいのは、就業規則の休職の条項の写し、休職を命じた書面、満了日の通知の3つです。この3つがあれば、満了で退職になる日と、その日に傷病手当金の条件を満たしているかを、自分で突き合わせられます。
解雇を告げられたら確かめる順番

解雇を告げられたら、解雇か退職勧奨か → 解雇理由証明書 → 予告か予告手当 → 離職票の離職理由、の順に確かめます。体調が悪いときほど、その場で何かに署名する前に、この順番で書面をそろえておくと、あとで説明に困りません。
- 1解雇か勧奨かを確かめる辞めるよう勧められただけか、会社が終わらせるのか
- 2解雇理由証明書を請求する理由と就業規則の条項を書面に
- 3予告か予告手当を確かめる30日前の予告か30日分以上の手当か
- 4離職票の理由を見る解雇・勧奨・自己都合のどれになっているか
1つ目は、言われたことが解雇なのか、退職の勧奨なのかです。「辞めてもらうしかない」「退職願を出してほしい」はどちらとも取れる言い方で、書類の上で自分から辞めた形になると、勧奨があったことを窓口で説明する材料が要ります。勧奨に応じるときの考え方は 退職勧奨に応じたら会社都合か にまとめています。
2つ目の解雇理由証明書は、労働基準法22条2項で、解雇の予告がされた日から退職の日までの間に請求すれば、会社は遅滞なく交付しなければなりません。厚労省のQ&Aによれば、解雇の理由は具体的に書く必要があり、就業規則の条項に当たることを理由とする解雇なら、その条項の内容と、当たるに至った事実関係まで書くものとされています。請求しても交付されないときは、労働基準監督署に相談します。退職したあとは、22条1項の退職時の証明として、解雇の理由を含めて請求できます。
出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A(解雇理由の証明書)
3つ目は、いわゆる30日ルールです。労働基準法20条1項は、少なくとも30日前に予告し、予告しないなら30日分以上の平均賃金を払うと定めていて、2項で、予告の日数は平均賃金を払った日数だけ短くできます。労働者の責に帰すべき事由に基づく解雇などは例外ですが、例外に当たるかは所轄の労働基準監督署長の認定が必要で、厚労省のQ&Aは、例示に拘泥せず総合的かつ実質的に判断するとしています。会社が懲戒解雇だと言えば予告手当が要らなくなる、というものではありません。試用期間中の人は、14日を超えて引き続き使用されていれば予告が必要です(21条)。
出典:労働基準法20条・労働基準法21条・厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A(解雇予告が不要な場合)
4つ目の離職票は、離職理由が解雇・勧奨・自己都合のどれになっているかを見ます。会社の書いた理由に納得できないときは、ハローワークに相談すれば、事実関係を調べて判定するとハローワークの手続きの案内に書かれています。異議の出し方は 失業保険を会社都合にする方法 にまとめています。
たとえば、欠勤中に上司から電話で「もう来なくていい」と言われた人は、それが解雇なのかを聞き返し、解雇なら解雇理由証明書を請求します。電話のあとにメールで「解雇ということでしょうか。理由を書面でいただけますか」と送っておけば、言われた日と内容が残ります。予告手当の計算は 即日解雇と解雇予告手当 に、言われた直後の動き方全体は 会社をクビになったら最初にやること にあります。
4つのうち、体調が悪くてもできるのは、聞き返すことと書面を求めることの2つです。そろった書面は、予告手当の話にも離職票の確認にも使えます。
働けないうちは失業保険を受けられない
失業保険(基本手当)は、すぐに職業に就くことができる状態の人が受けるもので、病気やうつで働けないうちは受けられません。受給期間は原則として離職の日の翌日から1年で、働けない状態が30日以上続くなら、その日数を受給期間に加える延長を申し出ておきます。
厚労省のQ&Aは、すぐに職業に就くことができない方は基本手当を受けられない、と書いています。雇用保険法20条1項は、厚生労働省令で定める理由などで引き続き30日以上職業に就くことができない者が申し出たときに、その日数を受給期間に加算すると定め、省令の理由には「疾病又は負傷」が入っています(施行規則30条。雇用保険の傷病手当を受ける場合の病気やけがは除く)。20条1項は、この期間内の失業している日について支給すると書いています。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 対象 | 離職日の翌日から1年以内に、病気やけがなどで30日以上継続して職業に就けない人 |
| 延ばせる長さ | 働けない日数を加える。加えられるのは最大3年、加算後は4年が上限 |
| 申し出る時期 | 30日以上継続して働けなくなった日の翌日以降、早期に(離職前から続いていた場合は、離職日の翌日から30日経過した日の翌日以降)。延長後の受給期間の最後の日までなら申請はできる |
| 添えるもの | 医師の証明書など理由を証明できる書類と、離職票など |
| 出す先 | 管轄のハローワーク |
出典:厚生労働省 Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~・雇用保険法20条・雇用保険法施行規則30条・雇用保険法施行規則31条
延長は、受け取れる日数を増やすのではなく、受け取れる期間の枠を後ろに延ばす仕組みです。編集部の読み方では、延長しないまま療養が長引くと、働けるようになったときには1年の枠の残りが短くなっていて、所定給付日数の分を受け切れないことがあります。
たとえば、うつで休職したまま休職期間の満了で退職になり、退職日の時点で通院と療養を続けている人を考えます。この人は離職前から働けない状態が続いているので、離職日の翌日から30日経過した日の翌日以降に、医師の証明書と離職票を添えて延長を申し出ます。反対に、退職後に体調がある程度戻り、すぐ求職できる状態の人は、延長ではなく、離職票が届いたら求職の申込みに進みます。
延長の申出は「働けるようになったら失業保険を受ける権利を残しておくための手続き」と覚えておくと迷いません。療養中に窓口へ行くのが難しいときは、申請の方法を先に住所地のハローワークへ電話で確かめておきます。
退職後も傷病手当金を受け続ける条件
退職したあとも、健康保険の傷病手当金は、資格喪失の日の前日(退職日)まで引き続き1年以上被保険者であったこと、資格喪失の際に傷病手当金の支給を受けていることの2つを満たせば、残りの期間を受け続けられます(健康保険法104条・継続給付)。協会けんぽは、退職日に出勤したときは継続給付の条件を満たさない、と書いています。
傷病手当金そのものは、健康保険法99条で、療養のため労務に服することができないときに、労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から支給されます(協会けんぽは、業務外の病気やケガで療養中であることを条件に挙げています)。労務不能かどうかについて、協会けんぽは、医師の意見及び被保険者の業務内容やその他の諸条件を考慮して判断する、と書いています。支給期間は、同じ病気やけがについて支給を始めた日から通算して1年6か月です。額は、支給を始める日の属する月以前の直近12か月の標準報酬月額の平均の30分の1の、3分の2です。
| 継続給付の条件 | 中身 |
|---|---|
| 加入期間 | 退職日まで引き続き1年以上被保険者(任意継続被保険者・共済組合の組合員である期間などは除く) |
| 退職日の状態 | 資格喪失の際に支給を受けている(協会けんぽは、受けているか受ける条件を満たしていること、と書く) |
| 退職日に出勤しない | 出勤したときは条件を満たさない(協会けんぽ) |
出典:健康保険法99条・健康保険法104条・協会けんぽ よくあるご質問(傷病手当金)
退職日の出勤の扱いは協会けんぽの記載で、健康保険組合の人は自分の組合に確かめます。任意継続被保険者は99条の括弧書きで対象外ですが、在職中からの継続給付の条件を満たしていれば、任意継続に入るかどうかとは関係なく受けられる、と協会けんぽは説明しています。在職中は、健康保険法108条により、報酬を受けられる期間は傷病手当金が出ず、報酬が傷病手当金の額より少なければ差額が出ます。協会けんぽは、出勤していない日に払われた有給休暇の賃金もこの報酬に含めています。
たとえば、入社して1年に届かないうちにうつで休み始めた人は、引き続き1年以上という条件を満たせず、継続給付を受けられないことがあるので、健康保険の窓口で確かめます。加入が長く在職中から傷病手当金を受けている人が、退職日に挨拶や荷物の引き取りで会社に行く予定を立てているなら、その日が出勤の扱いにならないかを、会社と健康保険の窓口に先に確かめておきます。額や申請の流れは 傷病手当金はいくら・いつまで にまとめています。
退職日を決める前に、この3つの条件を健康保険証の保険者の窓口で確かめるのが先です。条件を満たしていれば、退職後の収入の柱は失業保険ではなく傷病手当金になります。
傷病手当金から失業保険へ受け取る順番

退職の時点で働けない人は、傷病手当金の継続給付を受けながら失業保険の受給期間の延長を申し出ておき、働ける状態になってから求職の申込みをして基本手当を受ける、という順番になります。健康保険の傷病手当金と雇用保険の基本手当を、同じ日について同時に受ける形にはなりません。
傷病手当金は療養のために労務に服することができない日が対象(健康保険法99条)で、基本手当は、厚労省のQ&Aが「すぐに職業に就くことができない方」は受けられないとしているように、すぐに職業に就ける状態の人が対象です。編集部の読み方では、この2つの条件が重ならないので、この順番になります。枠の数え方も、傷病手当金は支給を始めた日から通算1年6か月、基本手当の受給期間は延長して加算後4年が上限と別々です。
これとは別に、名前の似た雇用保険の「傷病手当」があります。厚労省のQ&Aは、基本手当の受給手続後に病気やけがのため15日以上職業に就くことができない状態になった方は、基本手当を受けられない代わりに、基本手当と同額の傷病手当を受けられる、と説明しています。ただし、健康保険の傷病手当金や労災保険の休業補償給付などが受けられる日(雇用保険法37条8項)と、給付制限期間中の日(同条5項)は出ず、厚労省のQ&Aは待期期間中の日も受けられないとしています。30日以上になると思われる場合は、受給期間の延長を申請することもできます。
出典:厚生労働省 Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~・雇用保険法37条
たとえば、退職時にうつで療養中だった人は、継続給付を受けて延長を申し出、体調が戻ってから求職の申込みをします。これに対して、退職後すぐに基本手当を受け始めた人が途中で体調を崩したときは、雇用保険の傷病手当か受給期間の延長を、ハローワークで相談する場面です。
編集部の整理では、迷ったら「いま働ける状態か」と「求職の申込みをしたか」の2つを確かめると、どの制度の場面かが決まります。働けないうちは健康保険、働けるようになったらハローワーク、と窓口を分けて考えると混ざりません。
離職理由で変わる日数と始まり
回復して基本手当を受けるときの日数と受給資格の月数は、離職理由で変わります。重責解雇に当たらない解雇や退職勧奨で離職した特定受給資格者は、年齢と加入期間(算定基礎期間)で分かれる特定受給資格者の表で日数が決まり、病気など正当な理由のある自己都合で辞めた特定理由離職者は、特定受給資格者以外の表で決まります。
受給資格は、原則として離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上で(雇用保険法13条1項)、特定受給資格者と特定理由離職者は、厚労省のパンフレットで離職の日以前1年間に通算6か月以上で足りるとされています。給付制限は、雇用保険法33条で、自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合と、正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合に、1か月以上3か月以内の間で公共職業安定所長の定める期間とされています。重責解雇に当たらない解雇は、この対象に入っていません。病気で自分から辞めた人も、ハローワークが正当な理由と判断した場合は、条文の「正当な理由がなく」には当たりません。
特定受給資格者の所定給付日数は次の表のとおりです。
| 離職時の年齢 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
| 30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
特定受給資格者以外の表は、算定基礎期間が10年未満なら90日、10年以上20年未満なら120日、20年以上なら150日です。正当な理由のある自己都合で辞めた特定理由離職者はこちらの表で、病気で辞めたことで日数が増えるわけではありません。雇用保険法22条2項は、厚生労働省令で定める理由により就職が困難な受給資格者の日数を別に定めていて、算定基礎期間1年未満なら150日、1年以上なら45歳未満は300日、45歳以上65歳未満は360日です。この範囲は省令で決まっているので、障害がある人は自分が当たるかを窓口で確かめます。
出典:ハローワーク インターネットサービス「基本手当の所定給付日数」・雇用保険法13条・雇用保険法22条・雇用保険法33条・雇用保険法施行規則19条の2
所定給付日数を超えて支給される個別延長給付もあります。対象は、特定受給資格者と、雇止めで離職した特定理由離職者のうち(病気など正当な理由のある自己都合の特定理由離職者は対象外)、難治性疾患がある、発達障害者である、障害者である、のいずれかに当たり、公共職業安定所長が基準に照らして職業指導を行うことが適当と認めた人です(就職困難者は除く)。延長は原則60日が限度で、算定基礎期間が20年以上で、45歳以上60歳未満または35歳以上45歳未満の人は30日が限度です。
出典:雇用保険法24条の2
たとえば、35歳以上45歳未満で、加入期間が5年以上10年未満の人が、うつでの欠勤を理由に解雇されたとします。重責解雇に当たらない解雇として特定受給資格者と判定されれば180日、病気を理由に自分から辞めて特定理由離職者と判定されれば90日です。総額は結論のすぐ下の計算ツールで出せます。解雇の種類ごとの扱いは 解雇の種類と失業保険 にまとめています。
編集部の読み方では、日数の差が大きいからといって、解雇の形にこだわって体調を崩しながら会社とやりとりを続ける必要はありません。離職票の理由が実際の事情と違っていれば、資料をそろえてハローワークに申し出れば判定の材料になります。
失業保険の手続きを急がなくていい場合
退職の時点で働けない状態が続いているなら、失業保険の求職の申込みを急がなくていい場合があります。そのときに先にするのは、傷病手当金の継続給付の手続きと、受給期間の延長の申出です。
働けないうちに求職の申込みをしても、基本手当はそのままでは受けられません。その間の権利を残しておくのが受給期間の延長で、厚労省のQ&Aは、30日以上継続して働けなくなった日の翌日以降、早期に申請するよう案内しています。
- 退職の時点で療養中で、働ける時期の見通しが立っていない
- 傷病手当金の継続給付の条件(1年以上・資格喪失の際に支給を受けている。協会けんぽの案内では退職日に出勤しないことも)を満たしている
- 働けない状態が30日以上続く見込みで、受給期間の延長を申し出る準備ができている
- 離職理由が事実と違ったときに見せる書面(解雇の通知・休職の書面など)を残している
上のすべてに当たる人は、求職の申込みを急ぐより、療養を続けながら延長の申出を先に済ませておく選択肢があります。延長で受給期間の枠が延びるので(加算後4年が上限)、その枠のうちに働けるようになれば、所定給付日数の分を受けられる余地が残ります。
急がなくていいのは求職の申込みのほうで、延長の申出まで先延ばしにしていいわけではありません。また、継続給付の条件を満たさない人は、体調がある程度戻っているなら、早めにハローワークで求職の申込みをする選択もあります。
たとえば、休職満了で退職になり、退職日に傷病手当金を受けていて加入期間も1年以上ある人は、継続給付の申請を続けながら、離職日の翌日から30日経過した日の翌日以降に延長を申し出れば、当面の手続きとしては足ります。離職票の理由の欄だけは先に確かめておき、体調が戻ったら、その離職票を持って求職の申込みをします。
試用期間中の解雇はいつから予告が要る?入社何日目かで変わる手当と会社都合
会社都合退職になる条件は?自己都合との給付日数・給付制限の差を表で
会社をクビになったら最初にやること|いつまでに何を受け取るかと手当の額
よくある質問
欠勤が多いと解雇されますか?体調不良で休みすぎると解雇されますか?
欠勤が多いことを理由にした解雇にも、労働契約法16条の歯止めがかかります。業務上の病気で療養のため休業しているなら、その期間とその後30日間は労働基準法19条で原則として解雇が禁じられています(打切補償などのただし書きあり)。業務外の病気なら、就業規則の休職の条項を先に確かめます。
体調不良の欠勤は何日まで許されますか?
厚生労働省のモデル就業規則の解説は、休職については労働基準法に定めはないとしていて、モデルでも欠勤の月数と休職期間は空欄です。自分の会社の就業規則の休職の条項で、休職に入る条件と期間を確かめてください。
試用期間中にうつで休んだらクビになりますか?
解雇の予告については、試用期間中で14日を超えて引き続き使用されている人には、30日前の予告か30日分以上の平均賃金が必要です(労働基準法21条)。試用期間の解雇の扱いは 試用期間中の解雇 にまとめています。
障害がある人が解雇されたら、失業保険の日数は変わりますか?
雇用保険法22条2項は、省令で定める理由により就職が困難な受給資格者の日数を別に定めています(日数は上の「離職理由で変わる日数」の項)。範囲は省令で決まっているので、自分が当たるかは窓口で確かめます。就職困難者に当たらない特定受給資格者で、難治性疾患・発達障害・障害のいずれかに当たる人は、公共職業安定所長が認めれば個別延長給付の対象になることもあります。
退職勧奨に応じたら会社都合になりますか?
事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した人は、特定受給資格者の範囲に入っています(従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度などへの応募は除く)。勧奨があったかはハローワークが事実を確かめて判断するので、いつ誰に何と言われたかを記録に残しておきます。
失業保険を受けている途中で体調を崩したらどうなりますか?
受給手続後に病気やけがのため15日以上働けなくなった人は、基本手当と同額の雇用保険の傷病手当を受けられます(健康保険の傷病手当金とは別の制度)。30日以上になりそうなら受給期間の延長もできるので、ハローワークで相談してください。
数字だけ、もう一度
- 解雇制限:業務上の傷病で療養のため休業する期間とその後30日間は、原則として解雇できない(労働基準法19条)。例外は、打切補償(療養開始後3年を経過しても治らない場合に平均賃金の1200日分・81条)を支払う場合と、天災事変などで事業の継続が不可能となり認定を受けた場合。業務外の病気は条文の対象外
- 解雇予告:30日前の予告か、30日分以上の平均賃金(労働基準法20条)。試用期間中は14日を超えて使用されていれば必要(21条)
- 受給期間の延長:30日以上継続して働けないとき。加えられるのは最大3年、加算後は4年が上限(雇用保険法20条・厚労省Q&A)
- 傷病手当金:3日を経過した日から。通算1年6か月。額は直近12か月の標準報酬月額の平均の30分の1の3分の2(健康保険法99条)
- 継続給付:退職日まで引き続き1年以上の加入と、資格喪失の際に支給を受けていること(健康保険法104条)。退職日に出勤すると条件を満たさない(協会けんぽ)
- 雇用保険の傷病手当:受給手続後に15日以上働けないとき、基本手当と同額(厚労省Q&A)
- 受給資格:原則2年間に12か月以上。特定受給資格者・特定理由離職者は1年間に6か月以上
- 所定給付日数:特定受給資格者は90日〜330日、それ以外は90日・120日・150日、就職困難者は150日・300日・360日
体調を崩して会社を離れる場面では、解雇か休職満了か、会社都合か自己都合かという言葉に気持ちが引っぱられます。けれど、収入をつなぐ順番を先に決めるのは「いま働ける状態かどうか」です。働けないうちは傷病手当金と受給期間の延長、働けるようになってから基本手当。この順番を決めておけば、離職理由の判定は、そろえた書面を持ってハローワークで落ち着いて確かめれば足ります。退職日を決める前に、継続給付の条件と就業規則の休職の条項の2つだけは、先に見ておいてください。

