- 急に「明日から来なくていい」と言われた。これって不当解雇なの?
- どこに相談すればいいのか、そもそも分からない
- 労基署に行けば、会社に何か言ってくれる?
- 労働局のあっせんって、行く意味があるの?
- 弁護士に頼むお金がない。無料で相談できるところは?
- 裁判になったら、何年もかかるのでは?
- 争っているあいだの生活費と失業保険が心配
- もう会社の人とは顔を合わせたくない
上記のような悩みに答えます。
不当解雇の相談先は、都道府県労働局と労働基準監督署という役所の窓口、裁判所の労働審判、法テラスと弁護士、と性格の違うものがいくつも並んでいて、どこに行けば何をしてもらえるのかが外からは見えにくくなっています。検索の上位は法律事務所のページが占めていて、それぞれ自分の事務所の費用と解決の流れで話が終わり、労基署や労働局が何をする窓口で、何は別の窓口に持ち込む話なのかを正面から書いたページは、編集部が見たかぎり見当たりませんでした。そこで、解雇が無効になる法律の物差し・窓口ごとにできること・費用と期間を押さえたうえで、争っているあいだの生活と相談前の準備まで、労働契約法・労働審判法などの条文と、厚生労働省・裁判所・法テラスの公式資料で確かめながら整理しました。この記事に広告や申込みの案内は置いていません。
不当解雇かもしれないと思ったら、無料で相談できるのは都道府県労働局の総合労働相談コーナーで、相手と話し合う場として無料のあっせんも使えます。お金で決着をつけるか争うなら裁判所の労働審判があり、2026年10月時点の裁判所の公表では平均審理期間は82.6日(平成18年から令和6年までに終了した事件)、申立手数料は請求額100万円までなら5,000円です。
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争っているあいだの生活の見通しとして、失業保険がいくらになるかは 失業保険の計算ツール で自分の数字を入れて出せます。
不当解雇かどうかを決める法律の物差し
解雇が無効になるかどうかの物差しは、労働契約法16条の1文です。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利を濫用したものとして無効になります。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
この条文は、どんな理由なら解雇してよいかを一覧にしていません。「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」という2つの言葉で線を引いているだけです。そのため、ある解雇がこの線のどちら側にあるかは条文を読むだけでは決まらず、争うなら労働局の助言・指導やあっせんで話し合うか、裁判所の労働審判や訴訟で判断を求めることになります。
期間を決めて働いている人には、もう1本の条文があります。労働契約法17条1項は、契約期間の途中の解雇について、使用者の側に次の縛りをかけています。
使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
| 働き方 | 見る条文 | 条文の言葉 |
|---|---|---|
| 解雇全般(雇用形態で区切っていない) | 労働契約法16条 | 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効 |
| 期間を決めた契約の、期間の途中での解雇 | 労働契約法17条1項 | やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間に解雇できない |
たとえば、正社員が「成績が悪いから」と言われた場合、16条の言葉に当てはめると、会社が挙げた理由が客観的に合理的といえるか、その理由で解雇することが社会通念上相当といえるかが問われます。同じ「成績」を理由にした解雇でも、会社が何を根拠に挙げ、それまでにどんなやりとりがあったかで、話は変わってきます。期間を決めた契約で働く人が契約の途中で解雇を言われた場合は、16条に加えて、17条1項の「やむを得ない事由」があるかも問われます。試用期間中の解雇は別の論点があるので、試用期間中の解雇 で扱っています。
自分の解雇が不当かどうかを、相談の前に自分で決めておく必要はありません。個別の解雇が線のどちら側にあるかは、編集部も判断しません。まず手元に残しておきたいのは、会社が挙げた理由と、そこに至るまでの経緯です。会社から理由を聞いていないなら、まずそれを文字で確かめるところから始めます。言い渡された直後に受け取っておく書類と期限は 解雇を言い渡されたら にまとめています。
相談先は3系統、できることが違う
不当解雇の相談先は、役所(都道府県労働局・労働基準監督署)、裁判所(労働審判)、法テラスと弁護士の3系統に分かれます。根拠になる法律が違うので、できることも違います。
労働局の相談・助言指導・あっせんは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づく制度です。労基署への申告は、労働基準法104条に基づく制度です。労働審判は、労働審判法に基づく裁判所の手続きです。法テラスは、収入などの基準を満たす人に無料の法律相談と弁護士費用の立替えをする機関です。それぞれの入口に立つと、次のことをしてもらえます。
| 窓口 | 何をしてくれるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内など) | 解雇・雇止めなどあらゆる分野の労働問題の相談と情報提供。面談か電話。無料・予約不要 | 厚労省「総合労働相談コーナーのご案内」 |
| 都道府県労働局長の助言・指導 | 当事者の双方か一方から援助を求められたとき、必要な助言又は指導をすることができる。無料 | 個別労働関係紛争解決促進法4条 |
| 紛争調整委員会のあっせん | 委員が間に入って話合いを進める。無料・非公開。あっせん案の受諾は強制ではない | 同法5条 |
| 労働基準監督署への申告 | 労基法などに違反する事実を申告し、是正のための監督指導を求める | 労働基準法104条 |
| 労働審判(地方裁判所) | 裁判官1名と労働審判員2名の委員会が、原則3回以内の期日で審理する | 労働審判法15条2項・裁判所の案内 |
| 法テラス | 収入・資産などの基準を満たす人に無料法律相談(同一問題3回まで)。弁護士費用の立替えは、勝訴の見込みがないとはいえないことなどの条件も必要 | 法テラスの案内 |
- 無料
- あっせん案の受諾は強制ではない
- 相手が参加しなければ打切り
- 申立手数料と郵便料がかかる
- 話合いがまとまらなければ労働審判が出る
- 異議が無ければ裁判上の和解と同一の効力
違いがはっきり出るのは、相手が応じなかったときです。労働局のあっせんは話合いを進める場で、相手の会社が参加しなければ打切りになります。労働審判は裁判所の手続きで、話合いがまとまらなければ労働審判委員会が労働審判を出し、2週間以内に異議が出なければ確定します。
たとえば、職場に戻るつもりはなく、話合いで区切りをつけたい人と、会社が最初から話合いに応じそうにない人とでは、向いている入口が違います。前者は労働局のあっせんから始める選択肢があり、後者は最初から労働審判を視野に入れることになります。
迷ったら、入口は総合労働相談コーナーです。無料・予約不要で、助言・指導やあっせんの申込み先もここです。そこで話を整理してから、裁判所や法テラスに進むかを決められます。
労基署にできること、持ち込み先が別のこと
労働基準監督署は、会社に労働基準法などに違反する事実があるときに、労働者がその事実を申告できる窓口です。解雇が無効かどうかは労働契約法16条の問題で、争うなら労働局の助言・指導やあっせん、裁判所の労働審判や訴訟が持ち込み先になります。
労働基準法104条は、申告の対象を「この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実」と書いています。
第1項 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。 第2項 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
申告を受けたあとの流れは、厚生労働省のリーフレットに書かれています。労働基準監督官が事業場に臨検したり、事業主などに来署を求めて直接事情を聴いたりして事実関係を確かめ、法違反が認められた場合には、是正を図るよう監督指導を行います。是正勧告を受けても是正しない重大・悪質な事案は、司法警察官として捜査し検察庁に送検する、とも書かれています。申告受理件数は平成30年で約2万5千件で、内訳は賃金不払に関するものが最も多く、次が解雇に関するものです。
| 相談したい中身 | 持ち込み先 |
|---|---|
| 賃金の不払いなど、労働基準法などに違反する事実がある | 労働基準監督署への申告(104条) |
| 解雇そのものが無効かどうか、職場に戻るか、話合いで区切りをつけるか | 労働局の助言・指導・あっせん、労働審判、訴訟 |
| 解雇の予告や予告手当など、労働基準法の解雇の決まりが守られていない | 労働基準監督署への申告(104条) |
| どちらに当たるか自分では分からない | 総合労働相談コーナー(労働基準監督署内などにある) |
たとえば、解雇を言い渡されたうえに、最後の月の給料も払われていない人がいたとします。給料の不払いは、労働基準法などの違反の事実として申告の対象になり得る話で、リーフレットでも申告で最も多いのが賃金不払です。一方で「解雇そのものを撤回させたい」「解雇は納得できないので話合いで決着をつけたい」という部分は、労働契約法16条の問題として、労働局のあっせんや労働審判に持ち込む話になります。1つの出来事に、持ち込み先の違う話が2つ混ざっています。
申告したことを理由にした解雇その他の不利益な取扱いは、104条2項で禁止されています。なお、総合労働相談コーナーは全国の労働基準監督署内などにも置かれているので、「労基署に相談に行く」と、このコーナーにつながる場合もあります。窓口で「解雇されたが納得できない。未払いの給料もある」と、話を2つに分けて伝えると、どの手続きの話かを整理しやすくなります。
労働局の助言・指導とあっせん
都道府県労働局には、総合労働相談コーナーでの相談のほかに、労働局長による助言・指導と、紛争調整委員会によるあっせんの2つの制度があります。どれも無料で、解雇・雇止めをめぐる紛争も対象です。
助言・指導は、個別労働関係紛争解決促進法4条1項に基づき、紛争の当事者の双方か一方から解決の援助を求められたときに、都道府県労働局長が「必要な助言又は指導をすることができる」という制度です。あっせんは同法5条1項に基づき、当事者の双方か一方から申請があり、解決のために必要があると認めるとき、労働局長が紛争調整委員会にあっせんを行わせるものです。援助を求めたことやあっせんを申請したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは、同法4条3項(5条2項で準用)で禁止されています。
出典:個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律4条・5条(e-Gov法令API)
厚生労働省の案内によると、あっせんの進み方は次のとおりです。
- 担当するのは、弁護士・大学教授・社会保険労務士などの紛争調整委員
- 手続きは非公開。原則として同じ期日に双方が別室で待機し、あっせん委員が個別に調整する(双方が顔を合わせない)
- あっせんは話合いの促進で、あっせん案などの受諾を強制するものではない
- 相手が参加しない場合はあっせんを実施せず打切りになり、ほかの紛争解決機関の説明・紹介がある
- 申込みは総合労働相談コーナー(電子申請もできる)
出典:厚生労働省「個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)」
- 1総合労働相談コーナーで相談無料・予約不要
- 2助言・指導か、あっせんを申し込む申込みは同じコーナー
- 3あっせんの期日双方は別室で待機し、委員が個別に調整
- 4合意するか、打切りか相手が参加しなければ打切り
対象にならない紛争もあります。労働組合と事業主の間の紛争、労働者どうしの紛争、ほかの法律に紛争解決制度がある紛争、裁判で係争中か確定判決が出ている紛争などです。また、募集・採用に関する紛争は助言・指導の対象ですが、あっせんの対象ではありません。解雇をめぐる紛争はあっせんの対象です。
たとえば、会社の人と顔を合わせることがつらくて話合いに踏み出せない人にとって、別室で委員が個別に調整する形は、選ぶ理由になります。逆に、会社が「出ない」とはっきり言っている場合は、相手が参加しなければ打切りになるので、あっせんに時間をかけるより、次の労働審判を早めに考えたほうがよいこともあります。あっせんで合意が成立する割合やかかる日数の公表値は、編集部は確かめられていないので書きません。
もう1つ、あっせんには労働審判の前段としての意味もあります。裁判所は、労働審判の申立書には当事者間の交渉など申立てに至る経緯の概要も書く必要があるとして、申立て前に当事者間で交渉したり、行政機関などのあっせん手続を行ったりしておくことが求められる、と案内しています。あっせんが打切りになっても、そこまでのやりとりは、次の手続きで経緯を説明する材料になります。
労働審判は原則3回以内の期日

労働審判は、地方裁判所で、原則として3回以内の期日で審理を終える手続きです。裁判所の公表では、平成18年から令和6年までに終了した事件の平均審理期間は82.6日で、65.5%の事件が申立てから3か月以内に終わっています。
3回以内は、労働審判法15条2項に書かれた決まりです。
労働審判手続においては、特別の事情がある場合を除き、三回以内の期日において、審理を終結しなければならない。
手続きは、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名で組織する労働審判委員会が行います。労働審判官は、特別の事由がある場合を除き、申立てがされた日から40日以内の日に第1回の期日を指定します。話合いがまとまれば調停成立、まとまらなければ、権利関係と手続の経過を踏まえた労働審判が出ます。手続きは非公開で、申立先は原則として相手方の住所などの所在地を管轄する地方裁判所(本庁または一部の支部)です。
労働審判に不服があるときは、異議を申し立てられます。労働審判法21条は、審判書の送達か労働審判の告知を受けた日から2週間の不変期間内に、裁判所に異議の申立てができるとし、適法な異議があれば労働審判は効力を失い、異議が無ければ裁判上の和解と同一の効力を持つと定めています。異議があると、手続きは訴訟に移ります。
出典:労働審判法21条(e-Gov法令API)・裁判所「労働審判手続」
平均82.6日は、平成18年から令和6年までに終了した事件を通した値で、直近1年の値ではありません。「だいたい3か月弱」が目安で、どの事件もその日数で終わるという意味ではありません。裁判所も、複雑な事案は限られた期日で審理を終えることが難しく、労働審判になじまない場合があると案内しています。訴訟に移った場合の期間は、編集部は公的な数字を確かめられていないので書きません。
たとえば、会社と一度も話合いをしないまま申立てを考えている人は、申立書に経緯の概要を書く必要がある点を先に押さえておきます。会社に解雇の撤回や話合いを求めたメール、あっせんでのやりとりがあれば、それが経緯になります。反対に、労働局のあっせんが打切りになった人は、そこまでの記録をそのまま次の材料にできます。裁判所の案内は、必要に応じて、法律の専門家である弁護士に依頼することが望ましいとしています。自分で申し立てるか、弁護士に頼むかは、次の費用の項とあわせて考えます。
費用は無料の窓口から段差がある

不当解雇の相談にかかる費用は、無料の窓口から始まり、労働審判の申立手数料、弁護士に依頼する費用へと段差があります。労働局の窓口は無料、法テラスは基準を満たせば無料相談、労働審判は請求額100万円までなら申立手数料5,000円と郵便料です。
| 段 | 窓口・手続き | 費用 | 条件・注意 |
|---|---|---|---|
| 1 | 総合労働相談コーナー | 無料・予約不要 | 面談か電話 |
| 2 | 助言・指導、あっせん | 無料 | 相手が参加しなければあっせんは打切り |
| 3 | 法テラスの無料法律相談 | 無料(同一問題3回まで・1回30分程度が目安) | 収入・資産の基準以下の人 |
| 4 | 労働審判の申立て | 申立手数料(下の表)+郵便料 | 郵便料は裁判所ごとに異なる |
| 5 | 弁護士への依頼 | 事務所ごとに決まる | 法テラスの立替えは無利息・分割返済 |
労働審判の申立手数料は、民事訴訟費用等に関する法律で算定方法が決められていて、裁判所が手数料額早見表を出しています。請求する金額(訴額)ごとの額は次のとおりです。
| 請求額(訴額) | 申立手数料 |
|---|---|
| 100万円まで | 5,000円 |
| 300万円まで | 10,000円 |
| 500万円まで | 15,000円 |
| 1,000万円まで | 25,000円 |
出典:裁判所「手数料額早見表」
手数料のほかに郵便料がかかり、額は裁判所ごとに異なります。また、令和8年5月21日以後に申し立てた労働審判事件が異議の申立てなどで訴訟に移ったときは、訴え提起の手数料額から、労働審判で納めた額を引いた額を追加で納めます。解雇の無効を求める場合に請求額をどう数えるかは事案ごとなので、申し立てる前に裁判所か相談先で確かめてください。
法テラスの無料法律相談には、2026年3月現在の法テラスの基準で、収入と資産の条件があります。単身者なら、手取り月収(賞与を含む手取り年収の1/12)が182,000円以下(東京都特別区・大阪市など生活保護一級地は200,200円以下)、資産が180万円以下です。家族がいる場合は基準額が上がり、配偶者の収入も合わせて数えます(配偶者が相手方の場合は申込者だけ)。無料法律相談は同一問題につき3回までで、1回の相談時間は30分程度が目安です。
出典:法テラス「弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ」
弁護士費用の立替えを使うには、収入などの基準に加えて、勝訴の見込みがないとはいえないこと(和解・調停・示談などで解決の見込みがあるものを含む)と、民事法律扶助の趣旨に適することの3つがすべて必要です。立替えた費用は、援助開始の決定のあと、5,000円から10,000円程度の分割で毎月返し、利息はつきません(返済額は個別に決まります)。
弁護士に依頼する費用の相場は、編集部は公的な資料を確かめられていないので書きません。事務所に相談するときは、依頼するときに払う額、結果に応じて払う額、実費を分けて、見積を書面でもらうと比べやすくなります。たとえば、単身で手取り月収が基準以下の人は、法テラスの無料相談から入り、依頼するなら立替えの条件に当たるかを聞く順番になります。基準を超える人は、まず労働局の無料の窓口で手続きの見通しを立て、そのうえで事務所ごとの見積を取ると、払う額と得たい結果を並べて考えられます。
争っているあいだの生活と失業保険
解雇された人の失業保険は、自己都合で辞めた人とは扱いが違います。解雇(自分の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)は特定受給資格者の範囲に入り、厚生労働省のパンフレットでは、解雇で離職した人は待期7日のあとに支給され、給付制限は付きません。
自己都合や懲戒解雇で離職した人は、待期7日に加えて1〜3か月の給付制限が経過したあとの支給です。支給が始まる時期が違うので、争っているあいだの生活の見通しを立てるときは、この差を先に押さえておきます。
出典:厚生労働省パンフレット「離職されたみなさまへ」・雇用保険法施行規則36条(e-Gov法令API)
| 離職のしかた | 支給が始まるまで |
|---|---|
| 解雇(重責解雇を除く)・定年・契約期間満了 | 待期7日のあと |
| 自己都合・懲戒解雇 | 待期7日+1〜3か月の給付制限のあと |
ここで混ぜないでおきたいのは、2つの話の違いです。1つは「解雇が無効かどうか」で、これは労働契約法16条の問題として労働局や裁判所の手続きで争います。もう1つは「離職票の離職理由がハローワークでどう判定されるか」で、これは雇用保険の手続きの中で決まります。片方の結論が、もう片方を自動的に決めるわけではありません。
たとえば、会社から解雇と言われたのに、届いた離職票の離職理由が自己都合になっていた人は、失業保険の手続きでその食い違いを扱うことになります。会社都合の扱いと手続きは 解雇と失業保険の会社都合 と 会社都合の失業保険、会社都合にしてもらうための話は 会社都合にしてもらうには にまとめています。解雇を争っている最中に失業保険の手続きを進めるときの扱いは、ハローワークの窓口で「解雇の有効性を争っている」と伝えたうえで確かめてください。
生活の見通しは相談の前に数字で持っておくと、どの手続きをどこまで続けるかを考えやすくなります。失業保険の額は冒頭の計算ツールで出せます。
相談の前にそろえる物

相談の前にそろえるのは、契約の中身が分かる書類、解雇を言われたときの記録、会社が挙げた理由、それまでの経緯の4種類です。どの窓口でも、最初に聞かれるのは「何が起きたか」と「会社はなぜと言ったか」です。
労働審判の申立書には申立てに至る経緯の概要を書く必要がある、と裁判所が案内しているように、手続きが進むほど、いつ・誰が・何を言ったかの記録が効いてきます。相談の段階でそろえておけば、どの手続きが使えるかを具体的に聞けます。
- 雇用契約書・労働条件通知書(期間の定めがあるかどうかも見る)
- 就業規則のうち、解雇・懲戒の項
- 解雇を伝えられた書面・メール・チャット。口頭なら日時・場所・言った人・言われた言葉のメモ
- 会社が挙げた解雇の理由(書面があればその写し)
- 給与明細と、未払いの給料があればその月
- それまでの注意・面談・配置転換などの時系列メモ
たとえば、口頭で「明日から来なくていい」と言われただけの人は、その日のうちに日時・場所・言った人・言葉をメモに残し、会社に「解雇という理解でよいか、理由は何か」をメールで確かめておくと、言われた中身が文字で残ります。送ったメールは控えを残し、返信があればそれも保存します。期間を決めた契約の人は、契約書の契約期間の欄も見ておきます。
窓口では、最初に「何をしてほしいか」を言うと伝わりやすくなります。「解雇に納得できない。職場に戻りたい(または話合いで区切りをつけたい)。使える手続きと、自分の場合いつまでに何をする必要があるかを知りたい」と伝えれば十分です。期限の数え方は手続きごとに違い、編集部は時効の年数などを確かめた資料を持っていないので、相談の場で確かめてください。事務所を選ぶときは、費用の内訳を書面で出してくれるか、労働審判と訴訟のどちらを想定しているかを説明してくれるかを、見比べる軸にします。
使わなくていい場合
不当解雇かもしれないと思っても、最初から弁護士に依頼しなくてよい場面はあります。何が起きているかを整理し、使える手続きを知るだけなら、労働局の総合労働相談コーナーで無料・予約不要で足ります。
労働局の窓口はどれも無料で、弁護士に頼むかどうかを、相手の会社の出方を見てから考えるという順番も取れます。ただし手続きごとの期限は、最初の相談で確かめておきます。
- 何が起きているかを整理し、使える手続きを知りたい:総合労働相談コーナー
- 会社と話合いで区切りをつけたく、会社も話合いに応じそう:労働局長の助言・指導、紛争調整委員会のあっせん
- 争点が給料の不払いなど、労働基準法などの違反の事実:労働基準監督署への申告
- 弁護士の意見は聞きたいが費用が心配で、収入・資産が基準以下:法テラスの無料法律相談
反対に、会社があっせんに参加しないとき、労働審判の申立書を自分で書くのが難しいとき、労働審判に異議が出て訴訟に移ったときは、裁判所の手続きを進めることになります。裁判所も、必要に応じて弁護士に依頼することが望ましいと案内しているので、ここが弁護士への相談を考える場面です。
また、解雇は会社の側から労働契約を終わらせる話なので、自分から辞めるための退職代行は、解雇を争う場面では使い道がありません。弁護士の名前がつく退職代行は辞める側のサービスで、解雇を争う相談とは別物です(弁護士の退職代行)。辞めたいのに辞めさせてもらえないという逆向きの相談についても、茨城労働局のQ&Aは照会・相談先として総合労働相談コーナーを挙げています。
よくある質問
不当解雇になる条件は?
労働契約法16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇を、権利の濫用として無効としています。どの解雇がこれに当たるかを条文は列挙していないので、個別の解雇が無効かどうかは、労働局のあっせんでの話合いや、労働審判・訴訟の場で扱われます。
いきなりクビと言われたのは違法ですか?
16条が決めているのは解雇が無効になるかどうかで、違法かどうかとは別の物差しです。急に言われた場合は、解雇の予告や予告手当についての労働基準法の決まりも関係するので、解雇を言い渡されたら を先に見てください。会社が挙げた理由は文字で確かめ、言われた日時と言葉をメモに残してください。
労基署や労働局に相談したことが会社に知られたら、不利になりませんか?
労基署への申告を理由とする解雇その他の不利益な取扱いは労働基準法104条2項で、労働局に援助を求めたことやあっせんを申請したことを理由とする不利益な取扱いは個別労働関係紛争解決促進法4条3項(5条2項で準用)で禁止されています。申告や、援助を求めたりあっせんを申請したりせずに相談しただけの場合が禁止の対象に入るかは、編集部はここでは確かめていません。
アルバイトや契約社員でも争えますか?
16条は解雇全般についての条文で、働き方で区切っていません。期間を決めた契約の場合は、さらに労働契約法17条1項で、やむを得ない事由がある場合でなければ契約期間の途中で解雇できないとされています。
弁護士費用はいくらかかりますか?
弁護士費用の相場は公的な資料を確かめられていないので、編集部は額を書きません。事務所ごとに見積を書面でもらってください。収入・資産が法テラスの基準以下なら無料法律相談(同一問題3回まで)があり、立替えは勝訴の見込みなどの条件もすべて満たせば、無利息・分割返済で使えます。
あっせんに会社が来なかったら、どうなりますか?
相手が参加しない場合、あっせんは実施されずに打切りになり、ほかの紛争解決機関の説明・紹介があります。その場合は労働審判などに進むかを考えます。
労働審判の結果に会社が納得しなかったら?
審判書の送達か告知を受けた日から2週間以内に異議が出ると、労働審判は効力を失い、訴訟に移ります。異議が無ければ、労働審判は裁判上の和解と同一の効力を持ちます。
数字だけ、もう一度
- 解雇の物差し:労働契約法16条。期間を決めた契約の途中の解雇は17条1項の「やむを得ない事由」も
- 無料の窓口:総合労働相談コーナー(無料・予約不要)、労働局長の助言・指導、紛争調整委員会のあっせん(無料・非公開・相手が参加しなければ打切り)
- 労基署:労働基準法104条の申告。申告受理件数は平成30年で約2万5千件、最も多いのは賃金不払で、次が解雇
- 労働審判:原則3回以内の期日(15条2項)。第1回は原則として申立てから40日以内。平均審理期間82.6日、65.5%が3か月以内(平成18年から令和6年までに終了した事件)
- 異議:送達か告知から2週間以内。異議があれば訴訟へ
- 申立手数料:請求額100万円まで5,000円、300万円まで10,000円、500万円まで15,000円、1,000万円まで25,000円。別に郵便料
- 法テラス(2026年3月現在):同一問題3回まで・1回30分程度。単身は手取り月収182,000円以下(一級地200,200円以下)・資産180万円以下
- 失業保険:解雇は待期7日のあと支給。自己都合・懲戒解雇は待期7日+1〜3か月の給付制限
不当解雇かもしれないと感じたときに避けたいのは、窓口の違いが分からないまま、どこにも行かずに時間だけが過ぎることです。最初の一歩は、無料で予約の要らない総合労働相談コーナーで足ります。そこで「何が起きたか」と「何をしてほしいか」を伝え、相手の出方に合わせて、あっせん、労働審判、弁護士へと段を上がっていけばよく、最初から全部を決めておく必要はありません。

