- 会社から辞めてほしいと言われたのに、退職届を出すように言われた
- 会社都合でも、退職届は出さないといけないの?
- 会社の用紙に「一身上の都合により」と最初から印字されている
- 「一身上の都合」と書いたら、失業保険は自己都合になってしまう?
- 理由欄には、何と書けば不利にならない?
- 書かないと言ったら、立場が悪くなりそうで怖い
- もう「一身上の都合」で出してしまった。手遅れ?
- 自己都合にされたら、給付日数はどれだけ違う?
上記のような悩みに答えます。
退職勧奨や解雇のように会社の側から辞める話が出た場合でも、手続きの途中で「退職届を書いてください」と用紙を渡されることがあります。検索すると「会社都合なら退職届は要らない」「書くなら会社の指示どおりに」という短い答えか、例文の一覧が並びますが、求められてしまったあとの一歩や、印字済みの用紙をどう直すか、すでに出したあとに何ができるかまでは書かれていないことが多いです。そこで、退職届が要るかどうか・理由欄の考え方・「一身上の都合」の意味という基本を押さえたうえで、出す前に確かめる4点と、出したあとでも残っている道、自己都合にされた場合の日数の差まで、厚生労働省とハローワークの資料で確かめながら整理しました。
会社から勧められて辞めるなら、退職届は出さなくても退職できます。書面を求められたら、理由は「一身上の都合」ではなく「貴社からの退職勧奨に応じ」のように事実どおりに書き、写しを残してください。すでに一身上の都合で出していても、離職票で異議を出せます。
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自己都合と会社都合で、自分の日額と給付日数がどれだけ変わるかは、失業保険の計算ツール で離職理由を切り替えて見比べられます。
会社都合なら退職届は出さなくても辞められる

会社から辞めるよう勧められ、それに応じて辞める場合、退職届は退職の条件ではありません。会社と本人が「この日で辞める」と合意すれば、労働契約は終わります。解雇であれば、会社の側が契約を終わらせる行為なので、本人が退職届を出す場面そのものがありません。
厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、退職の形を2つに分けて説明しています。1つは、本人が退職を申し込み、会社が承諾して成立する合意退職で、その申込みは「退職願」の形で出されることが多いとしています。もう1つは、本人が一方的に辞める意思を伝える任意退職で、その意思を明確に書いたものを「退職届」としています。
出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」退職、解雇、雇止めなど
この2つを並べると、退職勧奨の場面で退職届を出すことの意味が見えてきます。退職届は、本来「自分から辞める」と伝える書面です。会社の勧めに応じて辞めるのに、自分から辞める書面だけが残ると、あとで離職の経緯を説明するときに、書面と実際の流れが食い違って見えます。編集部の読み方では、退職届を求められて困るのは、この食い違いが起きるからです。
| 辞め方 | 退職届は要るか | 書面を求められたときの考え方 |
|---|---|---|
| 退職勧奨に応じる | 要らない(合意で辞める) | 出すなら勧奨に応じたことを書く |
| 解雇される | 本人が出す場面ではない | 出すと自分から辞めたように見えうる |
| 希望退職の募集に応じる | 会社の手続きによる | 募集に応じたことが分かる書き方にする |
| 自分の都合で辞める | 出すのが無難 | 通常の書き方でよい |
たとえば、上司から面談で「来月末で辞めてもらえないか」と言われ、応じると答えた人がいるとします。この人が退職日まで何も書面を出さなくても、合意で辞めることはできます。一方、同じ面談で「手続き上、退職届を出して」と用紙を渡され、理由欄に何も考えず「一身上の都合」と書くと、書面の上では自分から申し出た形だけが残ります。
だから、書面を出すかどうかより先に、自分の辞め方が上の表のどれに当たるかを決めておくことが出発点です。退職勧奨そのものに応じるかどうかで迷っている段階なら、退職勧奨に応じたら会社都合になるか で、応じる前に決めることを順に整理しています。
理由欄に書くのは「勧奨に応じた」事実
書面を出すと決めたら、理由欄には「会社から勧められて、それに応じた」という事実を書きます。「一身上の都合」「自己都合により」という語は使いません。
この書き方を勧めるのは、離職理由の判定のしくみと関係しています。厚生労働省のパンフレット「離職されたみなさまへ」は、離職理由の判定について、会社が主張する理由と本人が主張する理由をそれぞれ把握し、主張を確かめられる資料で事実を確認したうえで、最終的にハローワークが行うとしています。編集部の読みでは、書面に書く理由が、あとで自分が主張する理由と同じ内容であるほうが、説明が一本で通ります。
理由欄に入れる要素は、次のとおりです。文例を丸ごと写すより、自分の事実に合わせてこの要素を入れるほうが、あとで聞かれたときに答えやすくなります。
- 会社から退職を勧められたこと(「貴社からの退職勧奨に応じ」など)
- 勧奨を受けた日、または面談の日
- 合意した退職日
- 会社の都合による人員整理や事業の縮小が理由なら、その旨
- 「一身上の都合」「自己都合」の語は入れない
たとえば、面談で勧奨を受け、翌月末で辞めることに合意した人なら、「貴社からの退職勧奨に応じ、◯年◯月◯日をもって退職いたします」といった形になります。部署の閉鎖を理由に勧められたなら、「部署閉鎖に伴う貴社からの退職勧奨に応じ」と、会社の事情を一言足せます。逆に、会社に言われるまま「退職いたします」とだけ書くと、誰が言い出したのかが書面から読めません。
日付の決め方や宛名、用紙の折り方といった基本の書き方は、退職届の書き方 で別にまとめています。ここで押さえたいのは理由欄の一点だけで、ほかの部分は通常の退職届と変わりません。編集部の整理としては、理由欄を書く前に「この書面を、あとでハローワークの窓口で見せることになっても困らないか」を一度考えると、書く言葉が自然に決まってきます。
「一身上の都合」と書くと自己都合の資料になりうる
「一身上の都合」と書いた退職届を出しても、それだけで離職理由が決まるわけではありません。ただし、編集部の読みでは、「一身上の都合」と書いた退職届は、自己都合を示す資料として見られうる点は知っておく必要があります。
厚生労働省の「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」は、離職理由を確認できる資料の例を、離職理由ごとに挙げています。解雇なら解雇予告通知書や退職証明書、退職勧奨や希望退職なら希望退職募集要綱や応募の事実が分かる資料、そして本人の個人的な事情による離職なら「退職願(写)等」です。このうち「退職願(写)等」が、本人が出す書面にあたります。
出典:厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」
一方で、同じ資料は、離職証明書の離職理由欄(⑦欄)の区分は、会社の主張する理由を把握するために便宜上分けたもので、特定受給資格者や特定理由離職者の判断基準とは違い、最終的な判定はハローワークが行うとも書いています。厚生労働省の冊子(第5章)も、退職勧奨に応じて退職した場合は自己都合による退職とはならない、と記しています。ここから言えるのは、書面の文言は判断材料の1つであって、それだけで結論が決まる仕組みではない、ということです。
出典:厚生労働省の冊子 第5章「仕事を辞めるとき、辞めさせられるとき」
| 書面の理由欄 | 起きうること | 残る道 |
|---|---|---|
| 勧奨に応じた事実を書いた | 書面と本人の主張がそろう | 勧奨の記録とあわせて説明しやすい |
| 「一身上の都合」と書いた | 自己都合を示す資料として見られうる | 勧奨の記録で事実を示し、異議を出す |
| 何も出していない | 書面の食い違いは起きない | 勧奨の記録で事実を示す |
たとえば、会社の用紙に印字された「一身上の都合により」のまま署名した人と、勧奨の面談の日付と内容をメモや社内のメールで残していた人がいるとします。書面だけを見れば自己都合に見えますが、勧奨があったことを別の資料で示せれば、ハローワークが事実を確かめる材料はそろっています。反対に、書面が「一身上の都合」で、勧奨があったことを示す物が何も無いと、本人の説明を裏づける物がありません。
編集部の整理では、「一身上の都合と書いたら終わり」でも「何を書いても関係ない」でもありません。書いた文言は不利な資料になりうるので、書く前なら直す、書いた後なら勧奨の事実を示す物を手元に集める、という順で考えます。
会社の用紙に印字されているときの直し方
会社の用紙に「一身上の都合により」と最初から印字されているときは、その文言をそのまま使わずに済む方法が3つあります。どれを選んでも、出す前に写しを手元に残すことは共通です。
会社の用紙に最初から文言が印字されていても、その場で署名する必要はありません。厚生労働省の冊子(第5章)は、退職勧奨に応じるかどうかは労働者の自由で、その場ですぐ答える必要もない、としています。書面への署名も、編集部の読みでは同じ考え方で、持ち帰って考えたいと伝えてかまいません。
| 直し方 | やり方 | 手元に残すもの |
|---|---|---|
| 理由欄を書き換える | 印字部分を二重線で消し、横に勧奨に応じたことを書き足す | 書き換えた面の写し・写真 |
| 理由を空けて相談する | 理由欄を空けたまま、文言を変えたいと伝える | 伝えた日と相手のメモ・メール |
| 自分の書式で出す | 会社の用紙を使わず、勧奨に応じた旨の書面を作る | 出した書面の写し・渡した日 |
たとえば、人事から「様式なので印字は変えられない」と言われた場合は、用紙は使ったうえで、別紙に「貴社からの退職勧奨に応じたものです」と一文を添え、その写しを残す方法もあります。会社がそれも受け取らないときは、受け取りを断られた日と相手、やりとりの内容をメールで送って記録に残します。どの方法でも、会社と言い争う必要はありません。自分の事実を、自分の書面に残すことが目的です。
二重線で消す・別紙を付けるといった直し方に、決まった公式の作法があるわけではありません。編集部の整理としては、どの方法でも「何を、いつ、誰に渡したか」があとで分かるように、出す前に写真を1枚撮っておくことが、手間の少ない備えになります。
出す前に確かめる4つのこと
退職届や会社の書面を出す前に、次の4つを確かめておくと、あとで食い違いが起きにくくなります。
- 1自分の辞め方を決める勧奨か解雇か、希望退職の募集か
- 2書面の種類を見る退職届か、退職合意書か
- 3離職理由欄の予定を聞く会社が何と書くつもりか
- 4写しを残す署名前と署名後の両方
1つ目は、自分の辞め方です。会社から辞めるよう勧められたのか、解雇と言われたのか、希望退職の募集に応じるのかで、出す書面の意味が変わります。省令(雇用保険法施行規則36条9号)は、特定受給資格者になる理由の1つとして、事業主から退職するよう勧奨を受けたことを挙げています。ハローワークの「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」は、これを直接または間接に退職を勧奨されて離職した場合とし、従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は当たらない、と注記しています。
出典:ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
2つ目は、渡された書面が退職届なのか、退職合意書なのかです。合意書は会社と本人の双方が署名する書面で、退職の理由のほかに、解決金や秘密を守る約束などの条項が並ぶことがあります。合意書を渡されたときに確かめる条項は、退職合意書に会社都合と書いてもらうとき で扱っています。
3つ目は、会社が離職証明書の離職理由欄に何と書くつもりかです。厚生労働省の資料は、会社は離職する日までに、会社の記載した離職理由を本人に確認させることになっているとしています。退職日の前に「離職証明書の理由は何で出しますか」と聞いておけば、自己都合で出されそうなことに先に気づけます。
4つ目は、写しです。署名する前の用紙と、署名して渡す直前の書面の両方を写真に撮っておきます。勧奨の面談のメモや、面談を設定したメール、人員整理を知らせる社内の通知も、同じ場所に保存しておきます。
この4つのうち、3つ目は会社への確認が要る分、日数がかかることがあります。退職日が迫っていても、署名の前に一晩置いて4つを確かめたいと伝えることはできます。
もう「一身上の都合」で出した後にできること

すでに「一身上の都合」で退職届を出してしまっていても、離職証明書と離職票で異議を示し、ハローワークに事実を確かめてもらう道が残っています。出した事実は消えませんが、それで手続きが閉じるわけではありません。
異議を示せる場面は、辞める前と辞めた後の2回あります。辞める前は、会社が作る離職証明書の⑯欄「離職者本人の判断」で、会社が書いた離職理由に異議が有るか無いかに○を付けます。辞めた後は、届いた離職票-2の離職理由欄(⑦欄)で、本人が主張する離職理由を示します。ハローワークの「雇用保険の具体的な手続き」は、実際は退職勧奨なのに自己都合とされている場合などは、ハローワークに相談すれば、事実関係を調べたうえで離職理由を判定する、と案内しています。
- 離職証明書の⑯欄で、異議「有り」に○を付ける
- 離職票-2が届いたら、⑦欄で自分の主張する理由を示す
- 勧奨のメモ・メール・社内の通知を持って、求職の申込みに行く
- 窓口で、退職届は会社の用紙で出したことと、実際の経緯を説明する
たとえば、印字済みの用紙に署名して出し、離職票-2の離職理由が「労働者の個人的な事情による離職」になっていた人なら、⑦欄で退職勧奨を受けたことを示し、面談の日付が分かるメールを持って窓口へ行きます。退職届の写しも隠さず持っていき、「会社の用紙に印字されていた」と経緯を話すほうが、話の筋が通ります。
ハローワークの判定に納得できないときは、雇用保険審査官に審査請求ができます。厚生労働省のQ&Aでは、期間は3か月以内とされ、起算日は請求の対象で分かれます。所定給付日数の決定(特定受給資格者に当たるかどうか)は「基本手当が支給終了となった認定日」の翌日から、給付制限に当たるかどうかは「基本手当を支給しない」旨の処分があったことを知った日の翌日からです。異議の出し方から審査請求までの順番は、失業保険を会社都合にする方法 で時系列に沿って説明しています。離職票そのものが届かないときは、離職票が届かないとき を先に見てください。
出典:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
編集部の整理では、出した後にできることの中心は、退職届の文言を取り消すことではなく、勧奨があった事実を示す物を集めることです。届を撤回する方向に力を使うより、手元の記録を1か所にまとめるほうが、窓口での説明に直接つながります。
自己都合にされたときの給付日数と給付制限の差
自己都合と会社都合で変わるのは、主に給付制限の有無と、受け取れる日数の上限です。勤続や年齢によっては、日数の差が大きく開きます。
雇用保険法23条2項は、特定受給資格者を、倒産や事業の縮小・廃止に伴う離職と、解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)その他の厚生労働省令で定める理由による離職、と定めています。退職勧奨による離職は、その省令(施行規則36条9号)に挙げられています。特定受給資格者と判定されると、一般の離職者とは別の日数の表が使われます。
出典:雇用保険法23条(e-Gov法令検索)/ハローワーク「基本手当の所定給付日数」
| 被保険者期間 | 一般の離職者(自己都合) | 会社都合(35歳以上45歳未満) | 会社都合(45歳以上60歳未満) |
|---|---|---|---|
| 1年以上5年未満 | 90日 | 150日 | 180日 |
| 5年以上10年未満 | 90日 | 180日 | 240日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 | 240日 | 270日 |
| 20年以上 | 150日 | 270日 | 330日 |
30歳未満・30歳以上35歳未満・60歳以上65歳未満は、会社都合の日数が別になります。ハローワークの表か計算ツールで確かめてください。
たとえば、45歳以上60歳未満で被保険者期間が5年以上10年未満の人なら、会社都合の240日と一般の90日で、240 − 90 = 150日の差になります。
- 待期7日のあと、給付制限が原則1か月
- 一般の離職者の日数(90日〜150日)
- 待期7日のあと、給付制限は付かない(重責解雇は除く)
- 年齢と被保険者期間で決まる別の表
給付制限は、厚生労働省の資料で、2025年4月1日以降に正当な理由のない自己都合で退職した人は原則1か月、2025年3月31日以前の退職は2か月とされています。厚生労働省のパンフレットは、解雇・定年・契約期間満了で離職した人は待期7日の経過後に支給、自己都合・懲戒解雇の人は待期7日に加えて給付制限の経過後に支給、と分けて書いています。給付制限の数え方は 給付制限1か月はいつから で日付の例とともに説明しています。
受給資格の面でも差があります。特定受給資格者と特定理由離職者は、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば受給資格を得られます。勤め始めて間もない時期に勧奨を受けた人は、この差が受け取れるかどうかそのものを分けることがあります。
日数の表は、年齢の区切りが違うと読み違えやすい表です。自分の年齢と被保険者期間を入れると、会社都合と自己都合のそれぞれで日額と日数が出るので、表を指でたどるより 失業保険の計算ツール で切り替えて見るほうが確実です。会社都合で受け取る場合の時期と総額の目安は、会社都合の失業保険 でまとめています。
解雇や希望退職で退職届を求められたら
解雇と言われた場合と、希望退職の募集に応じる場合は、退職勧奨とは書面の意味が少し変わります。どちらも、出す前に「自分はどの辞め方なのか」を書面にどう残すかを考えます。
解雇は、会社の側から労働契約を終わらせることです。労働契約法16条は、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする、と定めています。ただ、この条文は解雇が有効か無効かの話で、失業保険で離職理由がどう判定されるかとは別の物差しです。失業保険の上では、解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)は、特定受給資格者の範囲に挙げられています(施行規則36条1号)。
解雇と言われたのに退職届を求められたときは、そこで書面を出すと、自分から辞めた、あるいは合意で辞めたように見えうる点に注意が要ります。編集部の読み方では、解雇なのか勧奨なのかを会社に確かめ、「解雇なら退職届は出さない」「勧奨なら勧奨に応じた旨を書く」と分けて考えるのが筋です。どちらなのかを会社がはっきりさせないときは、そのやりとりをメールで残しておきます。
希望退職の募集に応じる場合は、もう1段の分かれ目があります。ハローワークの範囲の概要は、退職勧奨による離職から、従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度等への応募を除いています。そして、退職勧奨に当たらない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した人を、特定理由離職者の範囲(2の(6))に挙げています。
| 場面 | 失業保険の上での扱い(目安) | 書面に残すこと |
|---|---|---|
| 解雇された | 特定受給資格者の範囲(36条1号) | 解雇と言われた日と内容 |
| 退職勧奨に応じた | 特定受給資格者の範囲(36条9号) | 勧奨に応じたこと |
| 人員整理の希望退職に応じた(退職勧奨に当たらない場合) | 特定理由離職者の範囲(2の(6)) | 募集の通知と応募の事実 |
| 従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度に応じた | 退職勧奨の範囲((11))には当たらないと注記されている | 制度の内容と応募の事実 |
特定理由離職者は、給付制限の「正当な理由」と同じ基準で判断されます。雇用保険法33条1項が給付制限の対象にしているのは「正当な理由がなく自己の都合によって」退職した場合なので、ハローワークが正当な理由と判断すれば給付制限はかかりません。ただし日数は、契約期間が満了して更新されなかった場合(離職の日が2027年3月31日までのとき)を除き、一般の離職者の表になります。どの範囲に当たるかは最終的にハローワークが事実で判定するので、表は入口の目安として使ってください。
弁護士に頼まなくていい場合

退職届の理由欄を直す、離職証明書で異議を示す、離職票を持ってハローワークで説明する、という範囲なら、弁護士に頼まなくても自分で進められます。ここまでの手続きは、本人がハローワークに出向いて進められるものです。退職代行のような有料のサービスが要るかどうかは、会社との交渉が要るかどうかで分かれます。
その理由は、離職理由の判定が、会社と本人の言い分の勝ち負けではなく、ハローワークが資料で事実を確かめる手続きだからです。本人に求められるのは、自分の主張と、それを示す物をそろえることで、法的な交渉ではありません。退職勧奨そのものも、応じるかどうかは労働者の自由とされています。
- 勧奨の面談のメモ・メール・社内の通知が手元にある
- 会社が理由欄の書き換えや別紙を受け取った、または受け取りを断った記録がある
- 退職日と退職の条件について、会社と言い分が割れていない
- 求めているのが、離職理由を事実どおりにしてもらうことだけである
一方で、自分だけで抱えないほうがよい場面もあります。厚生労働省の冊子(第5章)は、執拗に退職を勧められたときは、労働組合や全国の総合労働相談コーナーに相談するよう案内しています。離職理由の判定に納得できないときは、ハローワークを経由して雇用保険審査官に審査請求ができます。解雇そのものの有効性を争いたい、解決金や未払いの賃金を請求したいといった場合は、会社との交渉や法的な判断が絡むので、弁護士に相談する場面です。
| 困っていること | 行き先 | 持っていくもの |
|---|---|---|
| 離職理由が事実と違う | ハローワーク | 離職票-2・勧奨の記録・退職届の写し |
| 判定に納得できない | 雇用保険審査官(ハローワーク経由も可) | 判定の通知・上と同じ資料 |
| 執拗に辞めるよう言われる | 総合労働相談コーナー・労働組合 | 面談の日付と内容のメモ |
| 解雇の有効性・お金を争いたい | 弁護士 | 解雇の通知・労働契約書・給与明細 |
編集部の整理では、まず自分で打てる手(写しを残す・理由欄を直す・異議を示す)を打ち、それでも会社とのやりとりが進まないときに外の窓口へ出る、という順番が無理がありません。弁護士事務所の相談を先に入れる必要があるのは、お金や解雇の有効性を争うと決めたときです。
退職届の書き方|退職日は何日と書けば損しない?有給・月末で決める日付
退職の挨拶メールはいつ送る?有給消化に入る前の最終出社日に送る例文と宛先
離職票が来ないときの催促は?会社の期限10日とハローワークに相談する順番
よくある質問
会社都合の退職でも、退職届は必要ですか?
退職勧奨に応じて辞める場合は、合意で辞めるので、退職届は退職の条件ではありません。解雇の場合は会社が契約を終わらせるので、本人が出す場面ではありません。会社が手続き上どうしても書面を求めるときは、勧奨に応じた事実を書いて写しを残します。
会社都合のときの退職届の例文はありますか?
厚生労働省の資料では、退職届の例文は確認できていません。入れる要素は、会社から勧奨を受けたこと、勧奨の日、合意した退職日です。「貴社からの退職勧奨に応じ、◯年◯月◯日をもって退職いたします」といった形で、自分の事実に合わせて書きます。
「一身上の都合」と書くと、必ず自己都合になりますか?
書面の文言だけで決まるわけではありません。離職理由は、会社と本人の双方の主張を資料で確かめて、最終的にハローワークが判定します。ただ、本人の出した退職の書面は自己都合を示す資料として見られうるので、勧奨の事実を示す物を手元にそろえておくことが大切です。
退職を会社都合にしてもらうには、どうすればいいですか?
会社の同意で決まるものではないので、会社に頼むより先に、勧奨や解雇の事実を示す資料をそろえます。離職証明書の⑯欄で異議を示し、離職票-2の⑦欄で自分の主張を書き、資料を持って求職の申込みに行きます。順番の詳細は 失業保険を会社都合にする方法 にあります。
書いて出した後に気づいた場合、退職届を撤回できますか?
厚生労働省の説明では、退職願のような合意退職の申込みは、会社が承諾するまでは撤回できるとされています。会社が承諾した後や、退職届で任意退職を申し入れた後に撤回するには、会社の同意が必要です。また、退職の時期が実際に争いになった場合は、文書の表題だけでなく、記載内容や当事者の言動なども見て退職時期が判断されている、と厚生労働省は説明しています。撤回が難しいときでも、離職票で異議を示す道は残っています。
会社から「自己都合にしてほしい」と頼まれたら?
応じるかどうかは本人が決めることです。自己都合として扱われると、給付制限が付き、日数も一般の離職者の表になりうるので、失業保険の計算ツール で差を確かめてから答えても遅くありません。その場で決めなくてもよいというのが編集部の読みです。
退職願と退職届のどちらを出せばいいですか?
違いは 退職願と退職届の違い で整理しています。勧奨の場面では、どちらの書面でも、勧奨に応じたことを理由欄に書くことのほうが大事です。
数字だけ、もう一度
- 離職理由の判定:会社と本人の双方の主張を資料で確かめ、最終的にハローワークが行う。書面の文言だけでは決まらない
- 異議の場面:辞める前の離職証明書の⑯欄(離職者本人の判断)と、辞めた後の離職票-2の⑦欄
- 退職勧奨:雇用保険法施行規則36条9号。恒常的な早期退職優遇制度等への応募は当たらない
- 給付制限:2025年4月1日以降の自己都合退職は原則1か月(2025年3月31日以前は2か月)。解雇などは待期7日のあと支給
- 給付日数:一般の離職者は90日〜150日。会社都合は年齢と被保険者期間で別の表(例:45歳以上60歳未満・20年以上で330日)
- 受給資格:特定受給資格者・特定理由離職者は、離職の日以前1年間に被保険者期間6か月以上
- 審査請求:3か月以内。起算日は、給付制限は処分を知った日の翌日、所定給付日数(特定受給資格者かどうか)は基本手当が支給終了となった認定日の翌日
会社都合なのに退職届を求められると、書くか書かないかの二択で考えがちですが、本当に大事なのは、自分の辞め方の事実が、あとで見せられる形で手元に残っているかどうかです。理由欄を事実どおりに書けるなら書き、書けないなら別紙かメールで残し、もう出してしまったなら勧奨の記録を集める。どの段階にいても、写しを1枚残すところから始めれば、離職票とハローワークの窓口で事実を示す道は閉じません。

