- 退職届と退職願、結局どっちを出せばいいの?
- 退職願を出さずに、いきなり退職届を出したら失礼?
- 辞表って、普通の会社員も出すもの?
- 出したあとで気が変わったら、取り消せる?
- 退職願なら、あとで撤回できるって本当?
- 上司が退職届を受け取ってくれない。「預かっておく」と言われた
- 就業規則に「退職願を提出すること」と書いてある
- 引き止められていて、書面を出すタイミングが分からない
上記のような悩みに答えます。
退職届・退職願・辞表は、どれも「辞めます」と伝える紙に見えますが、会社に向けた意味が違います。検索で上位に出る記事の多くは、三つの言葉の意味を並べたあと書き方や封筒の話に進むか、受け取る会社の側から書かれていて、「自分の状況ならどれを出すか」「出したあと撤回できるのはどこまでか」「受け取ってもらえないときどう残すか」は一言で終わりがちです。そこで、三つの書類の違い・撤回の可否・出す順番という基本を押さえたうえで、状況別にどれを出すかの判断、受け取ってもらえないときの記録の残し方、就業規則に「退職願」とあるときの考え方まで、厚生労働省の「確かめよう労働条件」と民法の条文で確かめながら整理しました。
退職願は「辞めたい」と会社にお願いする書面で、会社が承諾するまでは撤回できる余地があります。退職届は「辞めます」と一方的に伝える書面で、出したあとの撤回には会社の同意が要ります。期間の定めのない雇用なら、退職届は会社の承諾が無くても申し入れから2週間で雇用が終わります。退職願は会社が承諾するまで効果が出ない、と厚生労働省は説明しています。
2026年10月時点の制度で確かめています
退職届と退職願、出すのはどっち?

迷ったときの順番は、先に口頭で退職日を伝えて話し合う、会社に決まった書式や名前の指定があればそれに従う、指定が無ければ退職届を出す、です。退職の意思がもう固まっているなら、退職願を挟まずに退職届を出すことを禁じる定めは、この記事で確かめた条文や行政の説明には見当たりません。
退職届をすすめる理由は、厚生労働省の「確かめよう労働条件」の説明にあります。そこでは、退職願の提出は「合意退職の申し込み」として行われることが多く、合意退職は会社の承諾が無ければ雇用を終わらせられないので、会社が退職を承認しない間は効果が出ない、と書かれています。そのうえで、確実に決まった日に辞めたいなら、合意退職の申し込みと受け取られない表現で、退職の意思をはっきり書いた「退職届」を出して任意退職の申し入れをするのが無難、と説明しています。
出典:確かめよう労働条件「退職、解雇、雇止めなど」(厚生労働省)
| いまの状況 | 出すもの | 考え方 |
|---|---|---|
| 上司と話して退職日に合意できた | 会社の指定の書式。指定が無ければ退職届 | 合意した退職日をそのまま書いて残す |
| まだ迷っていて、話し合いしだいで考え直すかもしれない | 書面はまだ出さない。出すなら退職願 | 退職願は会社の承諾までは撤回の余地がある |
| 引き止めが強く、退職日を確実に決めたい | 退職届 | 会社の承諾が無くても、辞める意思を一方的に伝える書面 |
| 会社に「退職願」の書式が決まっている | 指定の書式で、退職の意思と退職日をはっきり書く | 表題より書いた中身で判断されることがある |
| 受け取ってもらえない・預かると言われた | 日付の残る方法で同じ内容を送る | 下の「受け取ってもらえないとき」の項 |
| 役員・公務員 | 辞表または所属先の手続き | 雇用の退職とは別の手続き。所属先で確かめる |
表の分け方の軸は、「会社と話し合う余地を残したいか、退職日を確実に決めたいか」です。退職願は話し合いの入口になる書面で、退職届は話し合いの結果にかかわらず退職日を決める書面だと考えると、どちらを出すかが決めやすくなります。
たとえば、上司との関係が悪くなく、引き継ぎの段取りも一緒に決めたい人なら、口頭で「この日に辞めたい」と伝えて話し合い、合意できた日付で退職届を出せば足ります。反対に、相談のたびに「もう少し考えて」と先送りされている人は、退職願を出しても承諾が出ないまま時間が過ぎるおそれがあります。この場合は、退職日を書いた退職届を出して、出した日を記録に残すほうが話が早く進みます。
どれを出すか迷う時間が長いほど、退職日も後ろにずれていきます。まず「話し合う余地を残したいか」を自分で決め、そのうえで表の行を一つ選んでください。
お願いか通知か、三つの書類の分かれ目
三つの書類の違いは、誰が出すか、会社に何を伝えるか、出したあと撤回できるか、の三点にまとまります。退職願は「お願い」、退職届は「通知」、辞表は役員や公務員が使う言葉、と覚えておくと取り違えません。
違いが生まれるのは、雇用の終わらせ方が二つあるからです。一つは、働く人と会社が「この日で終わりにしよう」と合意して終わらせる方法(合意退職)、もう一つは、働く人が一方的に「辞めます」と申し入れて終わらせる方法(任意退職)です。退職願は前者の申し込み、退職届は後者の申し入れとして使われることが多い書面です。
| 書類 | 主に出す人 | 会社に伝える意味 | 出したあとの撤回 |
|---|---|---|---|
| 退職願 | 会社員(正社員・契約社員・パートなど) | 辞めたいので承諾してほしい(合意退職の申し込み) | 会社が承諾するまでは撤回できる余地がある |
| 退職届 | 会社員 | 辞めます(任意退職の申し入れ) | 撤回には会社の同意が要る |
| 辞表 | 会社の役員・公務員 | 役職や職を離れる | 雇用の退職とは別の手続き。所属先で確かめる |
辞表の説明は、山形県の「WEB労働やまがた」にあります。そこでは、辞表は会社の役員や公務員が職を離れるときに使われる、と書かれています。同じページは、退職届は使用者の承諾が要らず、退職願は退職に使用者の承諾が必要と解釈される可能性があるので退職届が無難、とも説明しています。
出典:退職の定義、手続き、トラブル回避について(山形県 WEB労働やまがた)
- 辞めたいので承諾してほしい
- 会社が承諾して初めて雇用が終わる
- 承諾までは撤回できる余地がある
- 辞めますと一方的に伝える
- 期間の定めのない雇用なら、会社の承諾が無くても申し入れから2週間で終わる
- 撤回には会社の同意が要る
ただし、名前だけで扱いが決まるわけではありません。厚生労働省の同じページは、退職の時期が実際に争いになったときは、文書の表題だけでなく、書かれた内容や当事者の言動で判断されている、と説明しています。「退職願」と書いた紙でも、中身が「この日で退職します」とはっきりしていれば、ただのお願いとは読まれないことがあるということです。
たとえば、会社の書式が「退職願」しかなく、その紙に「一身上の都合により、〇月〇日をもって退職いたします」と書いて出した人と、「退職させていただきたく、お願い申し上げます」と書いて出した人では、同じ表題でも伝わる意味が違います。前者は退職の日と意思がはっきりしていて、後者は承諾を求める書き方です。
三つの言葉は、名前より「何を伝えたい書面か」で選ぶものです。自分が伝えたいのが「お願い」なのか「通知」なのかを決めてから、名前と文面をそれに合わせてください。
出したあと撤回できるのはいつまで

退職願は、会社が承諾するまでの間なら撤回できる余地があります。退職届を出したあと、または会社が退職願を承諾したあとに撤回したいときは、会社の同意が要ります。「いつでも撤回できる」とも「一度出したら絶対に撤回できない」とも言えないのが、この話の難しいところです。
厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、合意退職の申し込みは使用者が承諾するまでの間は撤回でき、退職願を出した場合は会社の承諾があるまでは撤回が可能と考える、と説明しています。一方で、任意退職の申し入れ(退職届)は、労働者の意思表示が会社に届き、会社が承諾すればその時点で、承諾しなければ2週間後に効力が出るとし、会社が承諾すれば労働者が一方的に撤回することはできなくなる、と書いています。そのうえで、退職の意思表示は容易には撤回が認められないので慎重に検討したうえで行うことが大切、と結んでいます。
出典:確かめよう労働条件「退職、解雇、雇止めなど」(厚生労働省)
- 退職願を出して、会社がまだ承諾していない:撤回できる余地がある。早く、日付の残る形で撤回を伝える
- 退職願を出して、会社が承諾した:一方的には撤回できない。撤回には会社の同意が要る
- 退職届を出した:撤回には会社の同意が要る
- 口頭で「辞めます」と言っただけ:何を言ったかで扱いが変わる。言った日と内容をすぐメモにする
難しいのは、「会社が承諾した」のがいつなのかです。上司が「分かった」と言った時点なのか、人事や社長が決裁した時点なのかは、会社の決裁の仕組みや、それまでのやりとりで変わります。ここは個別の事情で結論が動くので、断定はしません。そのかわり、確かめ方を書いておきます。
- 何で変わるか:誰に出したか、その人に退職を決める権限があるか、承諾を示す言葉や書面があったか
- 自分で確かめる方法:就業規則の退職の項目で「誰に出すか」「誰が承認するか」を読み、出した日・渡した相手・言われた言葉を時系列で書き出す
- 相談先と持っていくもの:労働局の総合労働相談コーナーや弁護士。出した書面の控え、就業規則の該当箇所、やりとりのメールやメモ
たとえば、金曜日に直属の上司へ退職願を渡し、週明けに「やはり続けたい」と思い直した人を考えます。上司から人事に回っただけで、まだ承諾の返事が無いなら、撤回の余地は残っています。この人がやることは、気づいた時点ですぐ、上司に口頭で撤回を伝え、同じ内容をメールでも送ることです。すでに「退職を承認します」という書面を受け取っていたら、一方的な撤回はできないので、上司と人事に事情を話して同意を求める段階になります。
撤回の余地を残したいなら、最初から退職願で出し、承諾の前に気持ちを決め直すことです。逆に、辞めると決めているなら退職届で出し、撤回を考えなくて済むところまで気持ちを固めてから出してください。
書面より先に、口頭で退職日を伝える
書面を出す前に、直属の上司へ口頭で退職日を伝えるのが、揉めにくい順番です。退職願をまず出してから退職届を出す、という二段構えは決まりではなく、会社の慣習や気づかいの話です。
順番に意味があるのは、書面の名前より「いつ辞めるか」の合意のほうが、あとの揉め事を減らすからです。口頭で退職日を話し合っておけば、そのあと出す書面には合意した日付を書くだけで済みます。いきなり退職届が机に置かれると、上司は「相談もなく決められた」と受け取りやすく、引き継ぎや有給の話し合いがこじれる原因になります。
- 1退職日を決める申し入れから2週間より後。就業規則の期限も見る
- 2上司に口頭で伝える相談ではなく、決めた退職日として
- 3同じ内容をメールで送る伝えた日が記録に残る
- 4退職届を出す控えを手元に残す
- 退職日を決める:申し入れから2週間より後の日。就業規則に申し出の期限があれば、それも見て決める
- 上司に口頭で伝える:「辞めようか迷っている」ではなく、「この日で退職したい」と決めたこととして伝える
- 同じ内容をメールで送る:口頭で伝えた日の記録になる
- 書面を出す:会社の指定の書式、指定が無ければ退職届。控え(写し)を手元に置く
退職願を出さずに退職届を出すのは失礼か、という悩みもよく聞かれます。退職願を先に出すよう求める定めは、この記事で確かめた条文や行政の説明には見当たりません。失礼かどうかを分けるのは書面の名前ではなく、口頭で先に伝えたかどうか、退職日を一方的に押し付けずに話し合ったかどうかです。口頭で伝えて合意したうえで退職届を出せば、書面の名前で揉めることは起きにくくなります。
たとえば、引き止められて退職届を出しにくい人は、口頭で伝えた日の夜に「本日お伝えしたとおり、〇月〇日付での退職を希望します」とメールしておけば、話し合いが長引いても伝えた日がはっきり残ります。日数の数え方や伝える相手の選び方は、退職は何日前に言う? で詳しく扱っています。
書面は、話し合いの最後に「決まったことを残す」ためのものです。順番を守るほど、どの書面を出すかで悩む場面そのものが減ります。
辞められる最短の日は、何を出すかで少し違う
期間の定めのない雇用(正社員の多く、期間を決めていないパート・アルバイトも含む)なら、退職届や口頭での申し入れは、会社の承諾が無くても申し入れから2週間で雇用が終わります。退職願は合意退職の申し込みの形で出されることが多く、合意退職は会社が承諾するまで効果が出ないと厚生労働省は説明しています。書面の名前で変わるのは、会社の承諾を待つかどうかと、撤回の扱いです。
民法627条1項は、雇用の期間を定めなかったときは各当事者はいつでも解約の申し入れができ、申し入れの日から2週間で雇用が終わる、と定めています。条文は書面の名前を条件にしていません。厚生労働省の「確かめよう労働条件」も、無期労働契約なら、使用者が退職を認めないと言っても、退職届を出すなど退職の申し入れをすれば、原則としてその後2週間で雇用は終わる、と説明しています。
| 出し方 | 辞められる最短の日(期間の定めのない雇用) | 違い |
|---|---|---|
| 退職届 | 会社に届いてから2週間 | 会社の承諾は要らない |
| 退職願 | 会社が承諾した日(合意した退職日) | 承諾が無いと、お願いのまま止まることがある |
| 口頭のみ | 申し入れから2週間 | 言った・言わないになりやすいので記録が要る |
退職願だけが少し違うのは、会社が承諾しないとお願いのまま止まってしまう可能性があるからです。厚生労働省も、合意退職は会社が承認しない間は効果が出ないと書いています。退職願を出したのに返事が無いまま時間が過ぎているなら、退職日を書いた退職届を改めて出すと、そこから2週間の数え方がはっきりします。
月給制の人や、就業規則に「1か月前」と書いてある人の日数の考え方は、退職は何日前に言う? にまとめています。期間を決めて雇われている契約社員などは別の条文になり、試用期間中の人の扱いは 試用期間の退職は何日前? で扱っています。
たとえば、退職日を決めたあとに気になるのが、辞めたあとのお金です。退職日を何日にするかで、失業保険をいつから・いくら受け取れるかの見通しも変わります。自分の条件で先に出しておきたい人は、失業保険の計算ツール を使ってください。有給休暇を残さず消化して辞めたい人は、有給を消化して辞める退職日の決め方 で、最終出社日と退職日の分け方を確かめられます。
退職届や口頭で申し入れるなら、辞められる日を左右するのは「いつ申し入れたか」です。そこを記録に残すことに力を使ってください。
受け取ってもらえないとき・預かると言われたとき
上司が退職届を受け取らない、「預かっておく」と言われたまま返事が無いときは、同じ内容を日付の残る方法で会社に届け、その記録を手元に残します。受け取りを断られても、会社に届ける手段はほかにあります。
民法97条は、意思表示はその通知が相手方に到達した時から効力を生じる、と定めています。さらに2項で、相手方が正当な理由なく通知の到達を妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす、と書いています。辞める申し入れは会社の承諾ではなく「会社に届くこと」が起点なので、届いたことを示せる形で出すことが大切になります。
鹿児島労働局の「よくあるご質問」も、退職願を出したが上司が受け取ってくれないという相談に対して、民法では期間の定めのない雇用は解約の申し入れ後2週間で終わり、会社の同意がなければ退職できないというものではない、と答えています。
- 上司が受け取らない:その上の上司か人事に、同じ書面を渡す。渡した日と相手をメモに残す
- 「預かっておく」と言われた:預かったこと自体を、その日のうちにメールで確かめる(「本日、退職届をお預けしました」)
- 誰も受け取らない・返事が無い:退職届をメールで送る。それも無視されるなら内容証明郵便で送る
- 手元に残すもの:退職届の控え、送ったメール、言われた言葉と日付のメモ
内容証明郵便は、日本郵便によると、いつ、どんな内容の文書を、誰から誰あてに出したかを、差出人が作った謄本で証明する制度です。証明するのは文書が存在することで、書いた内容が本当かどうかを証明するものではない、とも書かれています。出すときは、相手に送る内容文書と、その謄本2通(差出人と郵便局が1通ずつ保存)を用意します。郵便局にも同じ謄本が残るので、手元の控えをなくしても、あとから送った内容を確かめる手がかりになります。
出典:内容証明(日本郵便)/内容証明の差出方法等を教えてください。(日本郵便)
内容証明は、「この日にこの内容の文書を差し出した」と残すための手段です。証明されるのは差し出した文書の存在で、会社に届いた日までは含まれていません。ただし、内容証明を出せば必ず辞められると保証するものではなく、法的にどこまで効くかを評価できるものでもありません。郵便の扱いは差出郵便局によっても違うので、出す前に郵便局で手順を確かめてください。
たとえば、上司に退職届を差し出したら「受け取れない、もう少し考えて」と机に戻された人は、その日の夜に「本日、〇月〇日付で退職する旨の退職届をお渡ししようとしましたが、お受け取りいただけませんでした。改めてメールにてお送りします」と書いて、退職届を添付して送ります。それにも返事が無く、会社とのやりとりが止まっているなら、内容証明で同じ内容を送る段階です。
受け取ってもらえないときに一番やってはいけないのは、何も残さずに諦めることと、記録の無いまま出社をやめることです。届けた記録を一つずつ積み上げていけば、あとで「聞いていない」と言われても日付で答えられます。
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
上司と普通に話せて、退職届を手渡しかメールで出せるなら、退職代行は要りません。退職届を受け取ってもらえない、「預かる」と言われたまま話が進まない、そもそも自分から言い出せないという場合は、退職代行に退職の意思を伝えてもらう方法もあります。退職日や有給の扱いを会社と交渉してほしいなら、労働組合か弁護士が運営しているところを選んでください。弁護士でない者が報酬を得て交渉などの法律事務を扱うことは、法律で制限されています。
就業規則に「退職願」とあるとき
就業規則に「退職するときは退職願を提出すること」と書いてあるなら、まずはその書式と手続きに従って出すのが揉めない道です。そのうえで、文面には退職の意思と退職日をはっきり書き、出した日と控えを残しておきます。
労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使う使用者に、退職に関する事項を含む就業規則を作って届け出ることを求めています。「退職願を誰に、いつまでに出すか」は、その会社の決まった手順として就業規則に書かれていることがあります。
難しいのは、就業規則の決まりと民法の2週間がずれているときです。ここは、官公庁の説明が割れています。
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」:無期労働契約なら、退職の申し入れから原則2週間で終わる。就業規則で期間を大幅に延ばす規定や、会社の許可を条件とする規定は無効とされる、と説明
- 山形県「WEB労働やまがた」:就業規則に1か月前の申し出が必要とあっても、民法の規定が優先される、と説明
- 鹿児島労働局「よくあるご質問」:就業規則に退職の規定があれば原則としてその規定が適用されるので確認を、ただし極端に長い申し入れ期間は公序良俗の見地から無効とされる場合もある、と説明
労働契約法13条は、就業規則が法令に反する場合、その反する部分は一定の規定の適用を受けない、と定めていますが、退職の申し出の期限についてどちらが優先かを、この条文だけで一言で決めることはできません。どちらに合わせるかで迷うときは、何で変わるか(就業規則の期限の長さ・許可の要否・引き継ぎの状況)を整理し、就業規則の該当箇所を写して、労働局の総合労働相談コーナーに相談してください。
たとえば、就業規則に「退職願を所属長に提出し、会社の承認を得ること」と書かれている人なら、指定どおり所属長に出したうえで、文面は「〇月〇日をもって退職いたします」と日付と意思をはっきりさせます。承認の返事が来ないまま時間が過ぎるなら、「受け取ってもらえないとき」の項と同じように、メールで同じ内容を送って日付を残します。郵送で出してよいかが気になる人は、就業規則に提出方法の定めがあるかをまず読み、定めが無ければ、手渡しが難しい事情を添えて郵送やメールで出し、控えを残します。
就業規則の手続きに従うことと、自分の退職日を守ることは、両立できます。手続きは会社の書式に合わせ、日付は自分で決めて書く。この分け方を覚えておくと、規則の文言に押し戻されにくくなります。
辞表を出すのは誰か

会社に雇われている会社員は、辞表を出す必要はありません。辞表は、山形県の説明では会社の役員や公務員が職を離れるときに使われる言葉で、雇用されている人が出すのは退職届か退職願です。
この記事で扱うのは会社に雇われている人の退職で、役員の辞任や公務員の辞職は別の手続きになります。詳しい手順は、所属先の規程や担当部署で確かめてください。
- 正社員・契約社員・パート・アルバイト:退職届か退職願。辞表は使わない
- 会社の役員(取締役など):雇用の退職とは別の手続き。会社の担当部署で確かめる
- 公務員:所属先の人事担当で辞職の手続きを確かめる
ドラマや小説で「辞表を叩きつける」場面を見て、会社員も辞表を出すものだと思っている人は少なくありません。雇用されている人が出す書面の表題は、「退職届」か「退職願」にしておくのが無難です。
たとえば、部長職に就いている会社員で、役員ではない人は、肩書きが重くても雇用されている社員なので、退職届か退職願で足ります。取締役に選ばれている人は、自分の立場でどの手続きになるかを、会社の担当部署で確かめるところから始めてください。
肩書きが重くても、会社に雇われている社員であれば、ほかの社員と同じ流れで考えて大丈夫です。迷ったら、雇用契約書(労働条件通知書)が手元にあるかを見てください。
使わなくていい場合
退職代行を使わずに、自分で退職届を出して足りるのは次の人です。辞める申し入れは本人ができる手続きで、代行を使っても辞められる日の数え方は変わりません。
- 上司や人事と、普通に連絡が取れる
- 引き止めを受けても、退職日をはっきり伝え直せる
- 退職届を手渡しかメールで出せる、受け取ってもらえなくても日付の残る形で送れる
退職代行が役に立つのは、このどれかが崩れているときです。言い出すことそのものができない、受け取りを拒まれ続けて会社とのやりとりが止まっている、出社すると体調が崩れる、といった場合です。代行を使うときも、代行に頼めることは運営する団体の種類で違います。民間の業者に頼めるのは退職の意思を伝えることが中心で、労働組合が運営するところは有給や退職日について団体交渉ができ、弁護士は交渉に加えて、未払い残業代の請求や訴訟の代理もできます(請求できるかどうかは事案しだいです)。弁護士でない者が報酬を得て交渉などの法律事務を扱うことは法律で制限されているので、会社とのやりとりまで頼みたいなら、運営元を先に確かめます。
たとえば、上司と話すのが気まずいだけで、連絡は取れ、退職届もメールで出せる人なら、口頭で伝えてメールで日付を残し、退職届を出すという順番で足ります。反対に、退職届を差し出すたびに戻され、人事にも取り次いでもらえず、内容証明を出す気力も残っていない人は、自分だけで抱え込まずに代行を含めた方法を選んでください。
自分で出すか、人に任せるかの分かれ目は、書面の名前ではなく「会社に届けられるかどうか」です。届けられるなら、ここまでの手順で辞められます。
よくある質問
退職届と退職願、どちらを出すのがいいですか?
退職の意思が固まっていて、退職日を確実に決めたいなら退職届です。厚生労働省も、確実に決まった日に辞めたいなら退職の意思をはっきり書いた退職届が無難と説明しています。話し合いしだいで考え直す余地を残したいなら、退職願にする選択もあります。
退職願を出さずに、いきなり退職届を出しても大丈夫ですか?
退職願を先に出すよう求める定めは、この記事で確かめた条文や行政の説明には見当たりません。角が立つかどうかは書面の名前より、口頭で先に退職日を伝えて話し合ったかどうかで決まります。会社に書式の指定が無ければ、口頭で伝えてから退職届を出す形で進められます。
退職届だけで退職できますか?
期間の定めのない雇用なら、退職届を出して会社に届いた日から2週間で雇用は終わります(民法627条1項)。会社の承諾は条件になっていません。就業規則に申し出の期限があるときの考え方は、上の「就業規則に『退職願』とあるとき」の項を見てください。
退職届を出してから何日で辞められますか?
期間の定めのない雇用なら、申し入れから2週間が最短です。会社と合意できれば、その合意した日で辞めることもできます。契約期間が決まっている人は別の条文になるので、雇用契約書の「契約期間」の欄をまず確かめてください。
一度出した退職届を撤回できますか?
退職届を出したあとの撤回には、会社の同意が要ります。退職願なら、会社が承諾するまでは撤回できる余地があります。撤回したいと思ったら、すぐに口頭とメールで伝え、相手の返事を記録に残してください。
退職届は郵送やメールで出してもいいですか?
就業規則に提出方法の決まりがあれば、まずそれを確かめます。手渡しが難しい事情があるなら、郵送やメールで出し、送った記録を残してください。受け取りを拒まれているときは、内容証明郵便で送る方法もあります。
数字だけ、もう一度
- どっちを出すか:先に口頭で退職日を伝える → 会社の指定の書式 → 指定が無ければ退職届
- 三つの違い:退職願=承諾を求めるお願い、退職届=一方的な通知、辞表=役員や公務員が使う言葉
- 撤回:退職願は会社の承諾までは撤回の余地がある。退職届や承諾後の撤回は会社の同意が要る
- 出す順番:退職日を決める → 口頭で伝える → メールで残す → 退職届と控え
- 辞められる日:期間の定めのない雇用なら、退職届・口頭は申し入れから2週間(民法627条1項)。退職願は会社の承諾しだい
- 受け取ってもらえない:意思表示は相手に届いた時から効く(民法97条)。メール、それでもだめなら内容証明で残す
- 就業規則に「退職願」:書式は会社に合わせ、日付と意思ははっきり書く。民法との優劣は官公庁の説明が割れている
- 辞表:会社員は出さない。役員・公務員は所属先の手続きで
三つの書類のどれを出すかで変わるのは、会社の承諾を待つかどうかと、あとで引き返せるかどうかです。期間の定めのない雇用なら、退職届は申し入れから2週間で終わり、退職願は承諾しだいです。引き返す余地を残したいなら退職願、決めた日に確実に辞めたいなら退職届。どちらを選ぶにしても、書面の前に口頭で退職日を伝え、渡した日と相手を記録に残しておけば、受け取ってもらえない場面になっても慌てずに次の手が打てます。

