- 退職合意書を渡された。会社都合と書いてもらうことはできる?
- 退職理由の欄が「一身上の都合」になっている。このままサインしていい?
- 合意退職って、会社都合なの?自己都合なの?
- 今日中にサインしてほしいと言われた。持ち帰ってはいけない?
- 退職日は会社の言う日で決まり?自分の都合で動かせる?
- 解決金や有給の扱いは、合意書に書いてもらうべき?
- 「これ以上何も請求しない」という条項にサインして、後悔しないか不安
- サインしたあとで離職票を見たら、自己都合になっていた
上記のような悩みに答えます。
退職合意書は、会社と働く人が「この日に、この条件で雇用を終える」と確かめ合う書面で、退職理由・退職日・お金の条件が1枚に載ります。ところが、検索で上位に出るのは会社側向けの雛形や人事担当者向けの解説が中心で、サインする側が「どの欄を、どの順で確かめればいいか」「合意書の書き方と離職票の離職理由はどう関係するのか」は手薄です。そこで、勧奨で辞める場合の位置づけと判定の仕組みを押さえたうえで、サイン前の確認項目、退職日の動かし方、持ち帰り方、サイン後に離職票が違っていたときの次の一手まで、厚生労働省とハローワークの資料、雇用保険法の条文で確かめながら整理しました。
会社から勧められて辞めるなら、合意書の退職理由は「会社からの退職勧奨に応じて」のように事実どおりに書いてもらい、「一身上の都合」のままサインしないでください。離職理由は最終的にハローワークが判定しますが、サインする前の1枚が、あとで窓口で経緯を説明する材料になりえます。その場で決めず、持ち帰って確かめてかまいません。
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自分の年齢と勤続年数で、会社都合と自己都合の給付日数・金額がどれだけ違うかを先に見ておきたい人は、失業保険の計算ツール で離職理由を切り替えて見比べてください。
合意書に会社都合と書いてもらえる場面

会社から「辞めてもらえないか」と持ちかけられ、それに応じて辞める場面なら、合意書に事実どおり「退職勧奨に応じて」と書いてもらうよう求めるのは筋の通った頼みです。失業保険の基準で、会社から勧められて辞めた人は、会社都合の側(特定受給資格者)に当たる辞め方として挙げられているからです。
根拠は雇用保険法23条2項です。特定受給資格者を「解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く。)その他の厚生労働省令で定める理由により離職した者」と定め、その省令である雇用保険法施行規則36条9号に「事業主から退職するよう勧奨を受けたこと」が入っています。ハローワークの「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」は、同じ基準を「事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者」と書き、従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度などに応募して辞めた場合は当たらない、と注記しています。
出典:雇用保険法23条(e-Gov法令検索)/雇用保険法施行規則36条(e-Gov法令検索)/ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
混同しやすいのが「合意退職」と「会社都合」です。合意退職は辞め方の形の話で、会社都合かどうかは辞めるきっかけで見られます。合意書の形で辞めても、きっかけが会社からの勧奨なら会社都合の側の基準に当たりえますし、自分から言い出した退職を合意書で確かめただけなら、そうはなりません。
| 辞めるきっかけ | 失業保険での位置づけ | 合意書の退職理由として事実どおりなのは |
|---|---|---|
| 会社から個別に退職を勧められて応じた | 特定受給資格者(会社都合)に当たりうる辞め方 | 会社からの退職勧奨に応じて |
| 企業整備による人員整理等での希望退職の募集に応じた | 特定理由離職者の範囲の(6)に当たりうる | 希望退職の募集に応じて |
| 恒常的な早期退職優遇制度などに自分で応募した | 退職勧奨には当たらない | 制度への応募による |
| 自分から辞めたいと申し出た | 一般の離職者(自己都合) | 本人の申し出による |
たとえば、面談で「部署がなくなるので退職を考えてほしい」と言われて応じた人は表の1行目、何年も前からある早期退職の上乗せ制度に自分で手を挙げた人は、合意書の形でも3行目です。
会社が会社都合と書くのを嫌がる理由は会社ごとにあり、編集部は一律に言い切れる根拠を持っていません。頼むときは「会社都合と書いてください」よりも、「勧奨を受けて応じたことが分かるように書いてください」と事実の側から頼むほうが、合意書の文面と実際の経緯がずれにくくなります(編集部の整理)。応じるかどうかの考え方は 退職勧奨に応じたら会社都合か に、ほかの類型は 会社都合退職になる条件 にまとめています。
サイン前に確かめる項目を1枚に
合意書を受け取ったら、署名欄より先に、下の表の順で中身を確かめます。厚生労働省は、退職の意思表示は容易には撤回が認められないとしています。直してほしい点は、サインの前に出しておくのが近道です。
厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、合意退職は会社の承諾を得てはじめて成立すると説明しています。合意書はその中身を紙に残すもので、口頭で「退職金は上乗せする」「離職票は会社都合で出す」と言われていても、合意書に無ければ、その約束は記録に残っていないのと同じだと考えてください。
出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」退職、解雇、雇止めなど
| 確かめる項目 | 見るところ | 直してほしいときの頼み方の例 |
|---|---|---|
| 退職理由 | 「一身上の都合」「自己都合」「双方の合意により」だけで終わっていないか | 「会社からの退職勧奨に応じて」と経緯が分かる書き方に |
| 退職日 | 何月何日か。それまで出社するのか、有給を消化するのか | 給付日数の区切りを確かめてから日付を決めたい |
| お金 | 解決金・退職金の額、支払日、支払方法が書かれているか | 口頭で聞いた額と支払日を書き入れてほしい |
| 有給休暇 | 残りの日数を消化するのか、扱いが書かれているか | 残日数の扱いを1行入れてほしい |
| 未払いの賃金 | 残業代など、まだ払われていないものの扱い | 未払い分を別にするか、合意書に含めるかを書き分けたい |
| 離職票 | 離職理由をどう書くか、いつ手続きするかの約束があるか | 離職証明書の離職理由も勧奨として書く、と1行入れてほしい |
| 口外しない・競業しない約束 | 何を・誰に・いつまで、の範囲 | 範囲が広すぎる部分を削るか、期間を区切ってほしい |
| 清算条項 | 「この合意書に書いたもの以外、互いに請求しない」趣旨の文 | 未払い賃金などを請求したいなら、その前に相談したい |
表の上から3つは、失業保険の扱いと生活費に直結します。下の2つ(口外しない・競業しない約束、清算条項)は、サインしたあとにできることを狭める方向に働く条項です(見方は下の「清算条項・口外禁止」の項)。
- 会社からの退職勧奨に応じて退職する
- 退職日・支払額・支払日が書いてある
- 請求しない範囲が具体的
- 一身上の都合により退職する
- 退職金は別途協議とだけある
- 一切の請求をしないとだけある
たとえば、退職理由が「双方の合意により」とだけ書かれた合意書は、勧奨があったことも、本人から言い出したことも読み取れません。この合意書だけでは、経緯の説明には足りないかもしれません。編集部は、「会社からの申し入れにより」「会社からの退職勧奨に応じて」の一言が入っていると、本人の主張を確かめる資料として窓口で見せやすくなると読んでいます。
編集部の整理では、全部を一度に頼むより、①退職理由 ②退職日 ③お金の3つを先に頼み、残りは「意味を確かめてから返事をしたい」と保留するほうが進みやすくなります。直してほしい点は、合意書のコピーに書き込んで、メールで会社に送っておくと、頼んだこと自体が記録になります。
合意書と離職票、判定に効くのは
離職理由を決めるのは、合意書でも離職票でもなく、ハローワークです。厚生労働省のパンフレット「離職されたみなさまへ」は、事業主が主張する離職理由と、離職者が主張する離職理由を把握し、それぞれの主張を確認できる資料で事実確認したうえで、最終的にハローワークが慎重に判定する、と説明しています。
合意書や退職届の記載が離職理由を決める、とも決めない、とも書いた公式の記載は見当たりません。編集部は、勧奨の経緯が書かれた合意書は、本人の主張を確かめる資料の一つとして窓口で見せられるものだと読んでいます。逆に「一身上の都合」と書かれた合意書は、会社の主張を支える資料として出てくる可能性があります。
離職票のもとになる離職証明書には、会社が離職理由を○で示す欄(⑦欄)があります。区分は次の6つです。
- 1 事業所の倒産等によるもの
- 2 定年によるもの
- 3 労働契約期間満了等によるもの
- 4 事業主からの働きかけによるもの(解雇・重責解雇・希望退職の募集又は退職勧奨)
- 5 労働者の判断によるもの(職場における事情・労働者の個人的な事情)
- 6 その他
厚生労働省の「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」は、この区分は事業主が主張する離職理由を把握するために便宜上分類したもので、特定受給資格者などの判断基準とは異なり、最終的な判定はハローワークが行う(⑦欄の○と異なる場合がある)と書いています。勧奨で辞めたという本人の主張に沿うのは、4の中の「希望退職の募集又は退職勧奨」です。同じ資料は、退職勧奨・希望退職のときに離職理由を確かめる資料の例として、希望退職募集要綱や応募の事実が分かる資料を、本人の個人的な事情のときの例として退職願(写)を挙げています。
出典:厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」
たとえば、合意書には「会社からの退職勧奨に応じて」と書いてあるのに、離職証明書の⑦欄では5の側に○が付いていた、というずれが起きたとします。このとき本人の手元には、会社自身が勧奨を認めた書面があることになります。反対に、合意書が「一身上の都合」で、離職証明書も5の側だった場合、勧奨があったことは面談のメモやメールなど別の記録で説明するしかありません。
だからこそ、合意書の段階で「離職証明書の離職理由はどの区分にしますか」と会社に聞いておく価値があります。答えが「退職勧奨」なら、その答えをメールで残し、合意書にも同じ趣旨の1行を入れてもらいます。会社都合にするための証拠の集め方や、離職票への異議の出し方全体は 失業保険を会社都合にする方法 にまとめています。
退職日を動かすなら区切りを先に
合意書の退職日は、会社と本人が合意して決める日です。会社が示した日付は提案であって、確定ではありません。動かしたいなら、サインの前に「この日付で何が変わるか」を自分で確かめてから頼みます。
期間の定めのない雇用なら、退職の申し入れから2週間で雇用契約が終わる(民法627条1項)という説明が厚生労働省や県の資料にありますが、これは本人が一方的に辞める申し入れの話です。合意退職は会社の承諾で成立するので、編集部は、合意書の退職日はこの2週間とは別に、話し合いで決められると読んでいます。
出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」退職、解雇、雇止めなど/山形県「WEB労働やまがた」退職の定義、手続き、トラブル回避について
退職日で変わりうるのは、失業保険の給付日数です。特定受給資格者の給付日数は、年齢の区分と、雇用保険の被保険者であった期間の区分の組み合わせで決まります。区切りをまたぐと、日数が一段変わります。
| 年齢 | 被保険者であった期間 | 特定受給資格者の給付日数 | 一般の離職者(自己都合)の給付日数 |
|---|---|---|---|
| 35歳以上45歳未満 | 5年以上10年未満 | 180日 | 90日 |
| 35歳以上45歳未満 | 10年以上20年未満 | 240日 | 120日 |
| 45歳以上60歳未満 | 10年以上20年未満 | 270日 | 120日 |
たとえば、35歳以上45歳未満で、被保険者であった期間が10年以上20年未満の区分にわずかに届かない人は、表の1行目(180日)と2行目(240日)の境目にいます。退職日を少し後ろにずらしてその区分に届くなら、会社都合と判定された場合の給付日数は一段上がります。年齢の区切り(45歳)の近くにいる人も、2行目と3行目のどちらになるかが変わることがあります。自分の区分はハローワークで確かめてください。反対に、区切りから遠い人は、退職日を数日動かしても日数は変わりません。なお、厚生労働省のパンフレットは給付制限が付くのを自己都合・懲戒解雇で離職した場合としていて、自己都合で、正当な理由が無いとハローワークが判断した場合の給付制限は、退職日が2025年4月1日以降なら1か月(それより前は2か月)です(厚生労働省「自己都合離職者の給付制限について」)。
入社して間もない人は、別の区切りも見ます。特定受給資格者と特定理由離職者は、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば受給資格が付きます。この6か月に届くかどうかが退職日で変わる人は、日数より先にここを確かめてください。
被保険者であった期間の数え方は、ハローワークで加入記録を確かめるのが確実です。編集部の整理では、①雇用保険の加入記録をハローワークで確かめる ②区切りまであと何日かを数える ③届くなら、その日付で合意書を書いてもらえないか会社に頼む、の順で動くと、根拠を持って交渉できます。日数の表の全体と総額は 会社都合の失業保険 にまとめています。
その場でサインを迫られたら

面談の席で合意書を出され、「今日中にサインを」と言われても、その場で署名する必要はありません。持ち帰って読み、確かめてから返事をしてかまいません。
厚生労働省の冊子(第5章)は、退職勧奨に応じるかどうかは労働者の自由で、その場ですぐ答える必要もないと説明しています。編集部は、合意書へのサインも勧奨への返事にあたるので、持ち帰って確かめてよいと読んでいます。
出典:厚生労働省の冊子(第5章)/厚生労働省「確かめよう労働条件」退職、解雇、雇止めなど
- 1その場で言う「持ち帰って確かめます。いつまでに返事が要りますか」
- 2控えをもらう合意書の写しか、写真を撮らせてもらう
- 3確かめる確認表の順に読み、直してほしい点を書き出す
- 4メールで返す直してほしい点と、離職理由の書き方を文面で頼む
その場で言う言葉は短くてかまいません。返事の期限を聞くだけなら、断ったことにも応じたことにもなりません。写しをもらえないなら、退職理由・退職日・金額の欄だけでも書き写させてもらいます。
たとえば、2回目の面談で合意書を初めて見せられた人なら、その場では「持ち帰ります」とだけ伝え、確認表で読み、翌日に「退職理由を『会社からの退職勧奨に応じて』に、退職日を◯月◯日にしてもらえないか」とメールで頼みます。返事もメールで来れば、合意までの経過が残ります。
迫られ方が強いときは、冊子が案内しているとおり、労働組合や全国の総合労働相談コーナーに相談できます。面談の日時・同席者・言われた言葉は、その日のうちに書き残しておきます。
サインした後に離職票が違っていたら
サインしたあとでも、離職理由について自分の主張を伝える道は残っています。合意書と離職票の記載が違っていたら、窓口で事情を説明します。
まず、離職証明書の段階です。会社は離職する日までに、会社が記載した離職理由を本人に確認させることになっていて、離職証明書には本人が異議の有無を○で示す欄(⑯欄)があります。勧奨で辞めたのに5の側に○が付いていたら、⑯欄で「異議有り」を選びます。離職票-2が届いたら、離職理由の欄(⑦欄)をもう一度見直します。ハローワークの「雇用保険の具体的な手続き」は、離職理由に異議がある場合はハローワークに相談すれば、ハローワークが事実関係を調査のうえ離職理由を判定する、と案内しています。
出典:厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」/ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」
ハローワークの判定にも納得できないときは、審査請求という手続きがあります。厚生労働省のQ&Aは、処分を行ったハローワークを管轄する都道府県労働局の雇用保険審査官に対し、3か月以内に審査請求ができると説明しています。起算の日は処分によって違い、所定給付日数の決定(特定受給資格者に当たるか)は「基本手当が支給終了となった認定日」の翌日から、給付制限に当たるかどうかは処分があったことを知った日の翌日からとされています。文書でも口頭でもでき、ハローワークを経由して出すこともできます。
出典:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
合意そのものをやめたい場合は、話が別になります。厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、会社が退職を承諾すれば、労働者が一方的に撤回することはできなくなり、撤回したい場合は会社の同意を得ることが必要だと説明しています。双方が署名した合意書は、この承諾が済んだ状態に当たると編集部は読んでいます。サインの経緯に問題があったと考える場合は、合意書の写しと面談の記録を持って弁護士に相談してください。
たとえば、合意書は「会社からの退職勧奨に応じて」なのに離職票-2では5の側に○が付いていた人は、合意書の写しを持って求職の申込みをし、事実と違うと伝えます。合意書が「一身上の都合」だった人も、面談のメモやメールで同じように説明できます。離職票そのものが届かないときは 離職票が届かないとき の順番で、異議の出し方全体は 失業保険を会社都合にする方法 で確かめてください。
清算条項・口外禁止を読むときの見方

清算条項・口外禁止・競業避止は、サインしたあとの行動を縛る方向に働く条項です。効力は書き方と事情で変わるので、ここでは何を確かめれば直してほしいと言えるかを整理します。
清算条項は、合意書に書いたもの以外に、互いに請求するものがないことを確かめる趣旨で置かれる条項です。働く人の側から見ると、まだ払われていない残業代や、立て替えた経費など、合意書に書いていないお金を、あとから求めにくくなる方向に働きうる文です。未払いのものに心当たりがある人は、サインの前に、その分を合意書に書き入れるか、清算の範囲から外してもらえないか頼みます。
口外禁止は合意の内容や経緯を第三者に話さない約束、競業避止は辞めたあと同業で働かない・同じ仕事を始めない約束です。どちらも、何を・誰に・どこで・いつまで、という範囲が書かれているかを見ます。範囲が書かれていない、または広すぎると感じたら、削ってもらうか、期間や対象を区切ってもらえないか頼むことができます。
- 清算条項:未払いの賃金・経費など、合意書に書いていないお金に心当たりがないか
- 口外禁止:家族・弁護士・ハローワークへの説明まで禁じる書き方になっていないか
- 競業避止:期間・地域・職種の範囲が書かれているか
- いずれも:意味が分からない文は、分からないままサインしない
たとえば、転職先が同業になりそうな人が「退職後、同業他社に就職しない」とだけ書かれた条項を見つけたら、「転職に関わるので、期間と範囲を確かめたい」と伝えて持ち帰り、会社の説明はメールで確認しておきます。
編集部の整理では、3つの条項は失業保険ではなく「辞めたあとの自分の動き」に効くもので、意味を確かめる時間をもらってよい項目です。効力に不安があるときは、合意書の写しを持って弁護士に見てもらってください。
退職届を求められたら
合意書とは別に「退職届も出してほしい」と言われることがあります。退職届は本人が出す書面で、会社と取り交わす合意書とは性質が違います。
山形県の説明は、退職届は使用者の承諾が不要で、退職願は承諾が必要と解釈される可能性がある、と書いています。勧奨で辞める場面で、合意書とは別に本人名義の書面を出すと、その文面が「本人から申し出た」と読まれる材料になりえます。離職証明書の注意が、本人の個人的な事情で辞めたときの確認資料の例に退職願(写)を挙げていることも、編集部が本人名義の書面に気をつけたい理由です。
たとえば、合意書には勧奨と書いてもらえたのに「一身上の都合により」の退職届も求められた人は、2つの書面の言い分が食い違います。退職届も合意書と一緒に持ち帰って確かめてください。退職届の文言の考え方は 会社都合なのに退職届を求められたら にまとめています。
弁護士に頼まなくていい場合
退職すること自体には納得していて、合意書の中身を確かめて直してほしい点を伝えれば足りる人は、弁護士や退職代行に頼まなくてかまいません。離職理由を判定するのはハローワークで、離職証明書の⑯欄で異議を示すことも、窓口で事情を説明することも本人ができます。
- 応じることは決めていて、退職理由を事実どおりに書いてもらえれば十分
- 退職日・お金・有給の扱いに大きな不満がない
- 清算条項や口外禁止の範囲が具体的に書かれていて、意味が分かる
- 勧奨があったことを示すメモやメールが手元にある
反対に、解決金や未払い賃金の額で会社と争いがある、清算条項で請求を手放すことになるのか分からない、サインを強く迫られ続けている、といった場面では外に相談します。法律の判断が要るものは弁護士に、勧奨が執拗に続くことの相談は労働組合や全国の総合労働相談コーナーに持っていきます。相談には、合意書の写し・面談のメモ・会社とのメール・雇用契約書と就業規則の写しを持っていきます。
勧奨ではなく、いきなり解雇を告げられたのに合意書へのサインを求められた、という場合は、解雇が有効かどうか(労働契約法16条)と、失業保険の離職理由の判定は別の話になります。解雇そのものを争いたい人は 不当解雇の相談先 を見てください。
会社をクビになったら最初にやること|いつまでに何を受け取るかと手当の額
不当解雇の相談先はどこ?労基署・労働局・法テラスと労働審判の費用・期間
再就職手当をもらえる条件は?失業保険の残り日数と就職の決め方で分かれる可否
よくある質問
退職合意書に「会社都合」と書けば、会社都合になりますか?
合意書の文言だけで離職理由が決まるわけではありません。判定はハローワークが、会社と本人の双方の主張を資料で確かめて行います。勧奨で辞めたなら、その経緯が分かる書き方にしてもらうと、窓口で説明する材料になります。
合意退職は、会社都合ですか、自己都合ですか?
合意退職は辞め方の形で、会社都合か自己都合かは、辞めるきっかけで見られます。会社から勧められて応じたなら、特定受給資格者に当たる辞め方として基準に書かれています。本人から申し出た退職を合意書で確かめただけなら、そうはなりません。
合意書にサインしないと、どうなりますか?
勧奨に応じるかどうかは働く人の自由です。内容に納得できないうちは、サインしなくてかまいません。勧奨が執拗に続くなら、労働組合や総合労働相談コーナーに相談できます。
サインしてしまいました。もう何もできませんか?
離職理由については、離職証明書の⑯欄で異議を示したり、ハローワークで事情を説明したりできます。厚生労働省は、会社が退職を承諾したあとの撤回には会社の同意が要るとしています。双方が署名した合意書がこれに当たるかは、編集部の読みです。サインの経緯に問題があったと考えるなら、合意書の写しと記録を持って弁護士に相談してください。
ハローワークは合意書をどう見ますか?
合意書をどう扱うかを直接書いた公式の記載は見当たりません。判定は双方の主張を資料で事実確認して行われます。編集部は、勧奨の経緯が書かれた合意書は、本人の主張を確かめる資料の一つとして持っていけると読んでいます。
退職日はいつにすると得ですか?
給付日数の区切り(年齢と被保険者であった期間)の近くにいる人は、退職日で日数が変わることがあります。区切りから遠い人は変わりません。ハローワークで加入期間を確かめ、区切りに届くならその日付で書いてもらえないか頼んでみてください。
数字だけ、もう一度
- 会社から勧められて辞めたら:特定受給資格者に当たる辞め方(雇用保険法23条2項・施行規則36条9号)。判定はハローワーク
- 合意書と離職理由:合意書の文言で決まるとも決まらないとも、公式には書かれていない。双方の主張と資料で判定
- 離職証明書:会社の区分は⑦欄の1〜6(勧奨は4の中)。本人の異議は⑯欄
- 給付日数の区切り:35歳以上45歳未満で被保険者であった期間が5年以上10年未満なら180日、10年以上20年未満なら240日(特定受給資格者)。自己都合は90日・120日
- 受給資格:特定受給資格者は離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上
- 不服:審査請求は3か月以内(起算は処分の種類で違い、給付日数の決定は基本手当が支給終了となった認定日の翌日から、給付制限は処分を知った日の翌日から)
合意書の前で迷ったら、サインより先に、退職理由の1行と退職日を自分の目で確かめてください。その2つが事実どおりで、直してほしい点をメールで頼んだ記録があれば、離職票が違っていても窓口で経緯を説明できます。条項の効力のように自分で判断しきれない部分は、分からないまま署名せず、写しを持って相談する。合意書は会社が用意する書面ですが、何を書き入れてほしいかを頼むことは、サインする側にもできます。

