会社が倒産したら失業保険はいつから?離職票が出ない時の手続きと未払い賃金の立替

誰もいない事務所
  • 会社が倒産した。失業保険はすぐにもらえるの?何日分?
  • 破産じゃなくて民事再生だと、扱いが変わるの?
  • 離職票が来ない。会社に電話しても誰も出ない
  • 社長と連絡が取れない。会社が無くなったら離職票は誰が出すの?
  • 最後の月の給料と退職金が払われていない。戻ってくる?いくら?
  • 倒産の少し前に自分から辞めた。損をする側になっていない?
  • 予告もなくその日で終わりと言われた。解雇予告手当はもらえる?
  • 管財人とか労基署とか、何をどこに出せばいいのか分からない

上記のような悩みに答えます。

勤め先の倒産は、仕事と、払われるはずだったお金が同時に止まる出来事です。「倒産なら会社都合」とひとことで済ませる説明は多いものの、雇用保険がどの段階を「倒産等」と呼ぶのか、会社が離職票を出さないとき本人から何ができるのか、未払の給料と退職金の立替払がどの額で頭打ちになり、いつまでに何を出すのかは、まとまった形ではなかなか見つかりません。そこで、失業保険の扱い、離職票が出ないときの動き方、未払賃金の立替払の3つを、雇用保険法と同法施行規則、賃金の支払の確保等に関する法律(賃確法)の条文、ハローワークと労働者健康安全機構の案内で確かめながら整理しました。

先に答え

会社の破産・再生などの申立てや事業所の廃止で離職した人は、特定受給資格者(倒産等)に当たりうるため、自己都合退職のような給付制限はなく、待期7日の後から基本手当の対象になります(判定はハローワーク・2026年10月時点)。離職票が出ないときは住居地のハローワークに問い合わせ、払われていない給料と退職金は、要件を満たせば未払総額(年齢別の限度額まで)の80%が立替払いされます。

2026年10月時点の制度で確かめています

会社都合(特定受給資格者)としての所定給付日数と1日あたりの額は、失業保険の計算ツール で出せます。

目次

倒産で特定受給資格者になる4つの場合

誰もいない事務所

会社の倒産で離職した人は、雇用保険の言葉でいう「特定受給資格者」に当たりえます。雇用保険法23条2項1号は、特定受給資格者の1つ目を、事業主の事業について発生した「倒産」や、適用事業の「縮小若しくは廃止」に伴う離職として厚生労働省令で定めるもの、としています(雇用保険法23条)。その中身を決めているのが、雇用保険法施行規則35条です。

場合 規則35条の内容 読むときの注意
1 倒産 破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始若しくは特別清算開始の申立て、又は手形取引の停止に伴い離職した者 条文の言葉は「申立て」。手形取引の停止は規則34条(手形交換所で、金融機関が金融取引を停止する原因となる事実の公表)
2 大量の雇用変動 大量の雇用変動の届出がされたため、または被保険者の3分の1を超える人が離職したため離職した者 ハローワークの案内では、届出は1か月に30人以上の離職を予定する場合
3 事業所の廃止 事業所の廃止(事業活動が停止し、再開する見込みがない場合を含む)に伴い離職した者 事業の期間が予定されていて、その期間が終わったことによるものは除く
4 事業所の移転 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者 事業所の移転で通勤が困難になった場合

出典:雇用保険法施行規則35条/同34条/ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」

1つ目で目を留めたいのは、条文が「開始の決定」ではなく「開始の申立て」と書いている点です。申立ての段階で離職した人もこの線に入りうる書き方で、破産だけでなく民事再生・会社更生・特別清算の申立ても同じ号に並んでいます。

3つ目の「事業所の廃止」は、裁判所の手続が無くても当てはまりうる線です。厚生労働省の離職証明書の注意書きは、裁判上の倒産手続が執られていなくても、事業活動が事実上停止し再開の見込みがない場合や、株主総会などで解散の議決がされた場合を、事業所が廃止状態にあることによる離職として挙げています(厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」)。

同じ注意書きには、倒産等により解雇された場合は解雇の欄(3の(1))に当たる、ともあります。どちらの欄でも、特定受給資格者に当たるかどうかを最後に決めるのはハローワークで、事業主の主張と本人の主張を、それぞれの資料で事実確認したうえで判定します(厚生労働省「離職されたみなさまへ」)。

たとえば、民事再生の申立て後の人員整理で離職した人と、申立てより前に自分から転職のために辞めた人とでは、離職が倒産に伴うものかどうかの見え方が違います。後者の判定は、離職の理由と時期の事情を見てハローワークが決めることです。迷う人は、辞めた時期と理由を示す資料をそろえて、判定のときに自分の主張を伝えます。

本人が確かめるのは、会社がいつ・何の申立てをしたか、事業所がいつから止まっているか、自分がいつ・どういう理由で離職したか、の3つです。倒産等以外の類型も含めた会社都合の条件は 会社都合になる条件 に、解雇の類型は 解雇の種類 にまとめています。

失業保険はいつから・何日もらえるか

特定受給資格者と判定された人には、自己都合退職のような給付制限がかかりません。求職の申込みをして離職票を出してから、失業している日が7日(待期)過ぎた後から、基本手当の支給の対象になります。

厚生労働省のパンフレットは、解雇・定年・契約期間満了で離職した人は待期7日が過ぎた後に支給、自己都合・懲戒解雇で離職した人は待期7日に加えて給付制限の期間が過ぎた後に支給、と分けて書いています(厚生労働省「離職されたみなさまへ」)。倒産に伴う離職は給付制限の側に入っていません。待期の7日は、辞めた理由に関係なく全員にかかります。

受給資格の面でも、特定受給資格者は条件が軽くなります。離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算6か月以上あれば受給資格があります(同パンフレット)。

受け取れる日数(所定給付日数)は、離職したときの年齢と、雇用保険に入っていた期間で決まります。特定受給資格者の場合、短い人で90日、長い人で330日です。

例 年齢 入っていた期間 所定給付日数
入社1年未満で倒産 年齢を問わず 1年未満 90日
若手 30歳未満 1年以上5年未満 90日
中堅 35歳以上45歳未満 10年以上20年未満 240日
長く勤めた人 45歳以上60歳未満 20年以上 330日

出典:ハローワーク「基本手当の所定給付日数」

全部の組み合わせの表と、自己都合との総額の差は 会社都合の失業保険はいつから・何日 に載せています。自分の年齢と賃金で日数と1日の額をまとめて出したいときは、失業保険の計算ツール に退職日・年齢・賃金を入れれば足ります。

手続きの起点は、住所を管轄するハローワークでの求職の申込みと、離職票(-1、-2)の提出です(ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」)。そこで受給資格と離職理由が判定され、受給説明会、第1回の失業認定日と進みます(日付は人ごとに指定)。

たとえば、同じ日に倒産で職を失った2人でも、待期は求職の申込みの日から数えるので、支給の対象になる日はハローワークへ行った日の差だけずれます。困るのは、この起点に使う離職票が出てこない場面です。

離職票が出ないときの動き方

会社から離職票が交付されない、事業主が行方不明といったときは、住居地を管轄するハローワークに問い合わせるよう、ハローワーク自身が案内しています(ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」)。

まず、会社の側の決まりを押さえておきます。事業主は、従業員が被保険者でなくなったことをハローワークに届け出なければなりません(雇用保険法7条)。届け出の期限は、被保険者でなくなった事実のあった日の翌日から起算して10日以内で、離職の場合は資格喪失届に離職証明書を添えます(雇用保険法施行規則7条1項)。届け出をしない場合などには、雇用保険法83条に事業主への罰則があります。ただ、倒産した会社では担当者がもういない、事務所が閉まっている、ということが起こります。そこで本人の側に用意されているのが、ハローワークへの相談と、法律上の「確認の請求」です。

  1. 会社に離職証明書の手続きを確かめる:会社が出さないときは、離職証明書の交付を請求したうえでハローワークに相談します(ハローワーク「よくあるご質問」Q7)
  2. 住居地のハローワークに問い合わせる:会社名・所在地・退職日、会社と最後に連絡が取れた日を伝えます
  3. 被保険者でなくなったことの確認を請求する:被保険者だった人は「いつでも」確認を請求でき(雇用保険法8条)、請求は文書または口頭で行います(雇用保険法施行規則8条1項)
  4. 離職票の交付を受ける:資格喪失届や確認の請求で被保険者でなくなったことが確認され、離職証明書を添えた請求などがあったとき、ハローワークが離職票を交付します(雇用保険法施行規則17条1項)
離職票が出ないときは、住居地のハローワークへ
  1. 1会社に確かめる離職証明書の手続きを聞き、出なければ請求する
  2. 2ハローワークに問い合わせる住居地を管轄するハローワークへ
  3. 3確認を請求する被保険者でなくなったことの確認(文書または口頭)
  4. 4離職票の交付確認と請求がそろったときにハローワークが交付

確認の請求は、事業主が資格喪失の手続きをしないときに本人が使える道ですが、請求しただけで離職票が出ると決まっているわけではありません。窓口には、確認の請求をしたいことを先に伝えます。

編集部の読み方では、事務所が閉まったまま社長と連絡がつかない会社の人は、1番に時間をかけすぎず2番に早めに進むのが現実的で、破産管財人が決まっている会社なら1番の確認から始める意味があります。会社に連絡した日と方法は記録しておきます。

なお、2025年1月20日から、本人のマイナンバーが被保険者番号に紐付いていること・本人の連携設定・会社の電子申請の3つがそろえば、離職票はマイナポータルに直接届きます(山口労働局「マイナポータルを通じた離職票の直接交付について」)。会社への催促の文面や、届くまでの流れは 離職票が来ないときの催促 に詳しく書いています。

ハローワークに持っていくもの

ハローワークには、受給の手続きの基本の持ち物に、倒産や事業所の廃止を示す資料を加えて持っていきます。離職理由の判定は資料による事実確認で進むからです。

基本の持ち物は、離職票(-1、-2)、個人番号確認書類、身元確認書類、写真2枚(マイナンバーカードを提示すれば省略可)、本人名義の預金通帳かキャッシュカードです(ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」)。離職票がまだ無い人も、前の項のとおり問い合わせの段階から窓口に行けるので、手元にあるものから持っていきます。

倒産に関係して加えるものは、厚生労働省の離職証明書の注意書きが「持参いただく資料」として例を挙げています。

  • 倒産手続の申立てで離職した場合:裁判所において倒産手続の申立てを受理したことを証明する書類など
  • 解散の議決で事業所が廃止された場合:その議決が行われた議事録(写)など
  • 倒産に伴って解雇された場合(注意書きの解雇の欄の資料):解雇予告通知書、退職証明書、就業規則など

出典:厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」

このほか、編集部の例として、給与明細や雇用契約書、会社からの通知やメールなどがあります。

裁判所の書類や議事録を本人が持っていないのは自然なことです。管財人などの案内文があればその写しを持っていき、何もなければ会社名と、いつごろ申立てがあったと聞いたかを伝えます。

退職証明書は、退職した人が請求すれば使用者が遅滞なく交付しなければならない書類で、使用期間や退職の事由(解雇ならその理由も)を書いてもらえます(労働基準法22条)。倒産の前後で会社とまだ連絡が取れるうちに頼んでおくと、離職理由を示す資料の1つになります。

たとえば、口頭で「明日から来なくていい」と言われただけの人は、言われた日時と言った人をメモにします。給料が遅れはじめた月、申立てを知った日、最後に出勤した日を1枚に並べておけば、窓口でも同じ順に話せます。

未払賃金の立替払を受けられる人

硬貨と紙幣

払われていない給料と退職金には、国の未払賃金立替払という制度があります。賃確法7条は、事業主が破産手続開始の決定を受けたことなどにあたった場合、一定の期間内に退職した労働者の未払賃金のうち政令で定める範囲を、労働者の請求に基づいて事業主に代わって弁済する、と定めています(賃金の支払の確保等に関する法律7条)。実務を行うのは独立行政法人労働者健康安全機構です。

対象になるかどうかは、会社の側の要件と、本人の側の要件の両方で決まります。

見るところ 要件
会社 労災保険の適用事業として1年以上事業活動を行ってきたこと(加入手続や保険料納付の有無は問わない)
法律上の倒産 破産手続開始の決定、特別清算開始の命令、再生手続開始の決定、更生手続開始の決定
事実上の倒産 中小企業事業主で、事業活動が停止し、再開する見込みがなく、かつ、賃金支払能力がない状態になったことについて、労働基準監督署長の認定があったこと
退職の時期 最初の申立ての日(事実上の倒産は最初の認定申請の日)の6か月前の日から2年間に退職したこと
未払の額 未払賃金総額が2万円以上であること

出典:賃確法施行令2条・3条/同法施行規則7条・8条/労働者健康安全機構「未払賃金立替払に関するQ&A」

ここで、雇用保険の「倒産等」との違いに気をつけます。失業保険の線は「申立て」の段階で書かれていましたが、立替払の事由は破産手続開始の「決定」、再生手続開始の「決定」など、裁判所の判断が出たことです。一方で、退職の時期は「申立て」の日を起点に、その6か月前の日から2年間と数えます。同じ倒産でも、何を起点に見るかが制度ごとに違います。

事実上の倒産は、法的な手続がとられていない中小企業のための道で、中小企業事業主の範囲は、機構の案内では一般の業種が資本金3億円以下又は労働者300人以下、卸売業が資本金1億円以下又は労働者100人以下、サービス業が資本金5千万円以下又は労働者100人以下、小売業が資本金5千万円以下又は労働者50人以下です。細かい当てはめは、認定を受け付ける労働基準監督署で確かめます。

本人の側では、退職が自己都合か解雇かは問われず、パート・アルバイト・外国人など雇用形態や国籍も問いません(機構Q&A Q1-6・Q1-7)。役員だった人は、労働基準法上の労働者に当たる場合に限られるとされています(同Q1-8)。

たとえば、民事再生で営業を続けている会社でも、再生手続の開始の決定があれば対象になりえます(同Q1-5)。中小企業の事業主で、社長が行方不明で破産などの手続もない会社なら、退職した人が労働基準監督署長に認定を申請します。認定は1人が申請すれば効果が全退職者に及び、職権では行われないので、誰かが申請しなければ始まりません(同Q3-4・Q3-5)。

編集部の整理では、立替払で最初に確かめるのは「会社がどの種類の倒産か」です。法律上の倒産なら管財人などの窓口、事実上の倒産なら労働基準監督署、と相談先がそこで決まります。

立替払はいくら?未払総額の8割と上限

立替払の額は、未払賃金総額の80%です。ただし、未払賃金総額には退職したときの年齢ごとに限度額があり、限度額を超える分は計算に入りません(賃確法施行令4条1項)。

混ざりやすいのが「限度額」と「上限額」です。限度額は計算に入れる未払賃金総額の上限、上限額はそこに80%を掛けた立替払の額の上限です。年齢は基準退職日(最初の退職日)の時点で見ます。

退職したときの年齢 未払賃金総額の限度額 立替払の上限額(限度額の8割)
30歳未満 110万円 88万円
30歳以上45歳未満 220万円 176万円
45歳以上 370万円 296万円

出典:賃確法施行令4条1項/労働者健康安全機構「未払賃金立替払に関するQ&A」Q2-6

式にすると、立替払の額=未払賃金総額(年齢別の限度額まで)×80%、です。未払賃金総額が限度額より少なければ、その総額に80%を掛けます。限度額を超えていれば、限度額に80%を掛けた上限額で止まります。未払賃金総額は、税金や社会保険料を引く前の額で数えます(機構Q&A Q2-3)。

以下は、式に当てはめた編集部の仮定例です。実際の額は、管財人などの証明や労働基準監督署の確認で決まった未払賃金総額をもとに、機構が決めます。

計算例

仮定例1:38歳で退職し、未払賃金総額が150万円の人。30歳以上45歳未満の限度額220万円より少ないので、そのまま150万円×80%=120万円が立替払の額になります。

計算例

仮定例2:46歳で退職し、未払賃金総額が420万円の人。45歳以上の限度額370万円を超えるので、計算に入るのは370万円までです。370万円×80%=296万円で、上限額で止まります。

未払総額が限度額を超えると、立替払は上限で止まる
立替払の額=未払賃金総額(年齢別の限度額まで)×80%
46歳・未払420万円なら、370万円×80%=296万円

自分の額を見積もるときは、年齢の区分を決め、未払の給料と退職金を足した総額を出し、限度額と比べる、の順で進めます。給与明細がそろっていない人は、通帳の入金の記録で、どの月の給料が入っていないかを先に確かめておきます。

立替払をした機構は、立て替えた分の賃金請求権を取得します(機構Q&A Q5-3)。対象外の部分の扱いは、管財人などの窓口に確かめます。

対象になる賃金と請求の期限3つ

立替払の対象は「定期賃金」と「退職手当」で、賞与と解雇予告手当は対象になりません。請求には期限があり、起点の違う期限が3つあります。

対象になるのは、退職日の6か月前の日から立替払請求の日の前日までに支払期日が来ているのに払われていない、定期賃金と退職手当です(賃確法施行令4条2項/機構Q&A Q2-1)。

  • 対象になる:定期賃金(労働基準法24条2項に規定する、毎月一定の期日に決まって支払われる賃金)
  • 対象になる:退職手当(退職手当規程などに基づく退職一時金・退職年金)
  • 対象にならない:賞与・臨時の賃金
  • 対象にならない:解雇予告手当、慰労金・祝金の名目の給付、実費弁償の旅費・用品代など

出典:労働者健康安全機構「未払賃金立替払に関するQ&A」Q2-1・Q2-2

請求の流れは倒産の種類で分かれます。法律上の倒産では、管財人・清算人・再生債務者などから未払賃金総額などの証明書を受け、立替払請求書と一緒に機構に送ります。管財人が証明しない部分は、労働基準監督署長の確認を受けられる場合があります(機構Q&A Q3-2)。事実上の倒産では、労働基準監督署長の認定、労働者ごとの未払賃金総額などの確認、確認通知書を添えて機構に請求、の3段階です(同Q3-1・Q3-4)。

期限は次の3つで、それぞれ起点が違います。

  1. 退職の時期:最初の申立ての日(事実上の倒産は最初の認定申請の日)の6か月前の日から2年間に退職していること(賃確法施行令3条)
  2. 認定の申請(事実上の倒産だけ):退職の日の翌日から起算して6か月以内(賃確法施行規則9条4項)
  3. 機構への請求:破産手続開始の決定などの日の翌日(事実上の倒産は認定のあった日の翌日)から起算して2年以内(賃確法施行規則17条5項)
立替払の期限は、起点が3つある
退職の時期申立ての日の6か月前の日から2年間
認定の申請事実上の倒産だけ・退職の日の翌日から6か月以内
機構への請求開始の決定などの日の翌日から2年以内

混ざりやすいのは、1の「2年間」(いつ辞めた人が対象か)と3の「2年以内」(いつまでに請求書を出すか)です。2の6か月は、認定の手続が無い法律上の倒産には関係しません(規則9条1項)。

たとえば、破産の申立ての少し前(申立ての6か月前の日より後)に退職していた人は1の期間に入り、破産手続開始の決定の日の翌日から2年以内に機構へ請求すれば足ります。逆に、中小企業の事実上の倒産の場合は、退職の日の翌日から6か月以内に認定を申請しないと次に進めず、これが最も早く来る期限になりえます。機構は、記入漏れなどがなければ受付から30日以内に支払うよう努めるとしています(機構Q&A Q5-2)。

倒産と解雇予告手当

倒産で解雇されたときの解雇予告手当について、条文と公式資料から言えることは3つです。倒産だから払わなくてよい、とも、払わせられる、とも書かれていません。

原則として、使用者は、労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に予告をしなければならず、30日前に予告をしない使用者は30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法20条1項)。予告の日数は、平均賃金を支払った日数だけ短くできます(同条2項)。厚生労働省の解釈では、即時解雇の場合の30日分の平均賃金は、解雇の申渡しと同時に支払うべきものとされています。

  1. 例外の認定:同条1項のただし書は、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合などを除いています。この例外は、労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定。条文は行政官庁の認定)を受けた場合に予告なく解雇できる、という形で働きます(同条3項)
  2. 当たらない例:労働局などのリーフレットは、事業経営上の見通しの齟齬のように事業主の危険負担に属すべき事由に起因して資材の入手難・金融難に陥った場合や、税金の滞納処分を受けて事業廃止に至った場合を、「やむを得ない事由」に該当しない例として挙げています
  3. 認定と解雇の有効性:この認定は、除外事由に当たる事実の有無を確かめるもので、民事上の解雇の有効性に影響を与えるものではないとされています

出典:厚生労働省・岩手労働局・労働基準監督署「解雇予告除外認定申請について」

まず知っておきたいのは、解雇予告手当は未払賃金立替払の対象外だという点です(前の項)。払われていない予告手当は、労働基準監督署に相談します。

裁判所は、労働基準法20条に違反した使用者に対して、労働者の請求により、未払金のほかに同一額の付加金の支払を命ずることができる、とされています(労働基準法114条)。条文の言葉は「命ずることができる」で、自動的に付くものではありません。解雇そのものが有効かどうかは労働契約法16条の問題で、失業保険の離職理由の判定とは分けて考えます。

たとえば、資金繰りが行き詰まってその日のうちに全員解雇と告げられた人は、会社が除外認定を受けているかを確かめるところから始まります。受けていなければ予告手当の問題が残り、受けていても解雇が有効と決まったわけではありません。費用の面で相談をためらう人は、法テラスの無料法律相談(収入などの基準あり・同一問題につき3回まで・2026年3月現在の基準)という窓口もあります。予告手当の計算のしかたは 即日解雇と解雇予告手当 に、解雇された直後の段取りは クビ直後にやること にまとめています。

立替払を急がなくていい場合

立替払は、期限の内側なら、倒産を知ったその週に慌てて書類をそろえなくても間に合う場面があります。次に当てはまる人は、失業保険の手続きを先に進め、立替払は落ち着いてから整えて構いません。

法律上の倒産なら、機構への請求の期限は開始の決定などの日の翌日から2年以内です。ただし、事実上の倒産の認定申請(退職の日の翌日から6か月以内)だけは短いので、ここは急ぐ側に入ります。

  • 未払賃金総額が2万円未満の人:立替払の対象にならないので、請求書の準備は要りません
  • 払われていないのが賞与や解雇予告手当だけの人:立替払の対象外なので、立替払の手続きではなく、管財人などの窓口か労働基準監督署に相談します
  • 法律上の倒産で、管財人などがすでに決まっている人:認定の申請は要らず、請求の期限は2年以内なので、管財人の案内を待ってから証明書の手続きに進めば足ります

待期の7日は求職の申込みをした日以後で数えます。立替払の書類集めを先にして求職の申込みが遅れると、その分だけ基本手当の対象になる日も後ろにずれます。

たとえば、破産管財人から従業員あての案内文が届いた人は、案内の手順に沿って証明の手続きを待ち、そのあいだに求職の申込みを済ませておけば足ります。逆に、法的な手続が始まっていない中小企業の会社の人は、認定申請の6か月が走りはじめているので、労働基準監督署への相談を後回しにしないほうが安全です。

試用期間中の解雇はいつから予告が要る?入社何日目かで変わる手当と会社都合

会社都合退職になる条件は?自己都合との給付日数・給付制限の差を表で

失業保険のもらい方は?退職後ハローワークでの手続き5段階と振込までの日程

よくある質問

会社が閉店して失業したら、失業保険はもらえますか?

事業所の廃止(事業活動が停止し、再開する見込みがない場合を含む)に伴う離職は、裁判所の倒産手続が無くても特定受給資格者の範囲に入りえます。受給資格の条件を満たしていれば対象になり、判定はハローワークが行います。

働いている会社が倒産したら、まず何をすればいいですか?

離職したらハローワークで求職の申込みをし、離職票が出ないときは住居地のハローワークに問い合わせます。未払の給料や退職金があれば、法律上の倒産か事実上の倒産かを確かめ、管財人などの窓口か労働基準監督署に相談します。

失業保険がもらえないのはどんなときですか?

被保険者期間が足りないときは受給資格がありません。特定受給資格者なら、離職の日以前1年間に通算6か月以上です。給付制限は正当な理由のない自己都合退職などにかかるもので、倒産に伴う離職にはかかりません。細かい条件は 会社都合になる条件 にまとめています。

倒産の少し前に自分から辞めました。会社都合になりますか?

離職が倒産に伴うものだったかは、事業主と本人の主張と資料からハローワークが判定するので、ここでどちらとは言えません。なお、未払賃金の立替払の退職の時期の要件は、申立ての日の6か月前の日から2年間の退職なら、自己都合か解雇かを問わず満たします(ほかの要件は立替払の表のとおり)。

ボーナスが払われていません。立替払の対象になりますか?

賞与は立替払の対象になりません。対象は定期賃金と退職手当です。払われていない賞与は、倒産の手続の中で管財人などの窓口に確かめます。

役員でしたが、立替払の対象になりますか?

労働基準法上の労働者に当たる場合に限られるとされています。肩書だけでは決まらないので、実際の働き方を示す資料を持って、管財人などの窓口か労働基準監督署に相談します。

数字だけ、もう一度

  1. 倒産等の線:破産・再生・更生・特別清算の申立てまたは手形取引の停止、大量の雇用変動、事業所の廃止(事業活動停止で再開見込みなしを含む)、事業所の移転。判定はハローワーク
  2. いつから・何日:給付制限なし、待期7日の後から。受給資格は離職の日以前1年間に被保険者期間6か月以上。所定給付日数は年齢と加入期間で90日〜330日
  3. 離職票:会社の届け出期限は事実のあった日の翌日から10日以内。出ないときは住居地のハローワークへ。確認の請求は文書または口頭で
  4. 持ち物:離職票などの基本の持ち物に、倒産の申立てや解散の議決を示す資料を加える
  5. 立替払の要件:事業1年以上、法律上の倒産か中小企業の事実上の倒産、申立ての6か月前の日から2年間の退職、未払総額2万円以上
  6. 立替払の額:未払賃金総額(限度額110万円・220万円・370万円)×80%=上限額88万円・176万円・296万円
  7. 対象と期限:定期賃金と退職手当が対象で、賞与と解雇予告手当は対象外。認定申請は退職の翌日から6か月以内、機構への請求は開始の決定などの翌日から2年以内
  8. 解雇予告手当:原則は30日前の予告か30日分以上の平均賃金。除外認定は解雇の有効性を決めない

倒産のあとに困るのは、知らない手続きが一度に押し寄せて、どれから手をつければいいか分からなくなることです。順番は、求職の申込みで失業保険の起点を作る、離職票が出なければ住居地のハローワークに問い合わせる、倒産の種類を確かめて立替払の窓口を決める、の3つです。期限の短い事実上の倒産の認定申請だけを先に押さえれば、残りは窓口の案内に沿って進めても間に合います。

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この記事を書いた人

やめ活編集部です。退職の伝え方・失業保険・退職代行について、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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