労災休業中の解雇は禁止?産休中も守られる期間と退職勧奨された時の対応

カレンダーに印をつけるペン
  • 仕事中のけがで休んでいる。このまま解雇されることはある?
  • 労災の休業が終わったら、そのあと何日まで守られる?
  • 療養が3年を超えたら解雇できると聞いて、落ち着かない
  • 産休に入る前に「戻る席はない」と言われた
  • 妊娠を伝えたら、遠回しに辞めるよう言われた
  • 育休中に上司から「もう戻らなくていい」と言われた
  • 退職勧奨に応じないといけない?応じたら自己都合にされる?
  • 休日の骨折で休んでいる場合も、同じように守られる?

上記のような悩みに答えます。

仕事のけがや病気で休んでいるときや、妊娠・出産・育児休業の前後に退職の話を持ち出されると、休んでいる自分の側に引け目を感じて、言われるままに話を進めてしまいそうになります。ところが検索の上位に並ぶのは、法律事務所や労務サイトが会社の人事に向けて「解雇制限の例外」を説く解説で、休んでいる本人が自分の休業の日付から「いつまで守られているか」を数える形の説明は見当たりません。労働基準法19条の「産前産後の休業とその後30日」と、男女雇用機会均等法9条4項の「妊娠中と出産後1年」は別の規定で期間も効き方も違い、療養が3年を超えたときの例外も、条文の上では、会社が平均賃金の1200日分の打切補償を支払う場合か、3年を経過した日に傷病補償年金を受けている場合などの話です。そこで、解雇できない期間・2つの例外・妊娠や育休を理由とする解雇の禁止という基本を押さえたうえで、自分の期間を数える順番と、退職勧奨を受けたときに確かめることまで、条文と厚生労働省・ハローワークの資料で確かめながら整理しました。

先に答え

仕事のけがや病気で療養のために休んでいる期間とその後30日、産前産後の休業期間とその後30日は、原則として解雇できません(労働基準法19条)。妊娠中と出産後1年以内の解雇は、会社が妊娠・出産を理由とする解雇でないと証明しない限り無効です(男女雇用機会均等法9条4項)。退職勧奨に応じるかどうかは自分で決められます(2026年10月時点)。

2026年10月時点の制度で確かめています

目次

解雇できない期間は2つある

労働基準法19条1項が解雇を禁じている期間は、業務上のけがや病気で療養のために休業する期間とその後30日間、そして産前産後の女性が65条の規定によって休業する期間とその後30日間の2つです。どちらも「休業する期間」と「その後30日間」がひと続きになっていて、休業が終わった時点で守りが切れるわけではありません。

条文は次のとおりです。

使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

労働基準法19条(e-Gov法令検索)

読むときに見るところは3つあります。1つ目は「業務上」という言葉で、休日のけがや私生活での病気(私傷病)による休業は、この条文の文言には入っていません。2つ目は「療養のために休業する期間」で、条文は休業の長さに上限を書いていません。そのかわり、ただし書きに2つの例外が置かれています。3つ目は「その後三十日間」で、休業が終わったあとにも30日間の守りが続きます。

産前産後のほうは、65条が中身を決めています。65条1項は、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合は就業させてはならない、と定めています。2項は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならないとし、ただし産後6週間を経過した女性が請求した場合に、医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えない、と書いています。産前は本人の請求で始まる休業、産後は請求がなくても就業させてはならない期間、という違いがあります。

出典:労働基準法65条

産前産後の休業とその後30日間は解雇できない
産前の休業請求した場合・6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産予定
産後の休業産後8週間を経過しない間
その後30日間休業が終わったあと

厚生労働省のモデル就業規則の解説も、解雇が禁止されている場合の1つとして、業務上の負傷・疾病による休業期間とその後30日間、産前産後の休業期間(産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内または産後8週間以内の女性が休業する期間)とその後30日間を挙げています。会社の就業規則の解雇の条項に何が書かれていても、この期間の扱いは19条で決まります。

出典:厚生労働省「モデル就業規則」

たとえば、工場で荷物を運んでいる最中に腰を痛めて労災で休業している人と、休日のフットサルで足を骨折して休んでいる人がいたとします。前者は業務上のけがとして療養のため休業しているなら、休業中とその後30日間は19条の期間です。後者は19条の文言の外で、解雇されるなら労働契約法16条の歯止めで見ることになります。業務外の病気やけがで休んでいる人の解雇と休職の扱いは うつや体調不良の欠勤で解雇されたら にまとめています。

編集部の読み方では、19条は「どんな理由でも休んでいれば守られる」条文ではなく、「業務上の療養による休業」と「産前産後の休業」という2つの休み方に、休業後30日間を足して守る条文です。自分の休みがどちらに当たるのかを最初に決めると、残りの話がすっきりします。

自分の期間を数える順番

カレンダーに印をつけるペン

自分がいま解雇を禁じられた期間にいるかは、業務上か → 休業しているか → 休業が終わった日 → その後30日間 → 妊娠・出産・育休の事情、の順に確かめると数えられます。会社に何か言われる前に、手帳やカレンダーに日付を書き出しておくと、話し合いの場で落ち着いて答えられます。

自分が守られている期間を数える順番
  1. 1業務上か業務外かを見る業務上のけが・病気で休んでいるか、私傷病の休みか
  2. 2休業しているかを見る条文の言葉は「療養のために休業する期間」
  3. 3休業が終わった日を確かめる職場に戻った日、産後の休業を終えた日
  4. 4その後30日間を数えるこの間も19条の期間
  5. 5妊娠・出産・育休の事情を重ねる均等法9条4項・育児・介護休業法10条

1つ目の業務上かどうかは、労災保険の手続きを業務上のけがや病気としてしているか、会社に業務中のけがとして届けているかで、自分の立ち位置を確かめます。業務上かどうかの判断の基準そのものは、ここでは扱いません。仕事のせいで体調を崩したと感じていても、まだ何の手続きもしていない人は、いつ何があったかを時系列で書き出したメモを先に作っておきます。

2つ目と3つ目は、休業の始まりと終わりの日付です。条文の言葉は「療養のために休業する期間」なので、数える起点になるのは休業していた期間と、休業が終わった日です。職場に戻ってからも通院を続けている期間がこの「休業する期間」に入るかは、条文の文言だけでは言い切れず、解釈を示した資料もここでは確かめていません。通院しながら働いている人は、休業を終えて職場に戻った日を手元に残したうえで、その扱いを労働の相談窓口で確かめてください。

4つ目のその後30日間は、休業が終わったあとに続く期間です。たとえば、労災で休業していた人が職場に戻った直後に解雇の話を持ち出されたら、その日が休業を終えてから30日間の中にあるかを、カレンダーで数えます。産休の人なら、産後の休業を終えた日から30日間です。

5つ目は、妊娠・出産・育休の事情があるかです。ここからは19条ではなく、男女雇用機会均等法9条と育児・介護休業法10条の話になります。9条3項と育児・介護休業法10条は妊娠・出産・育休を理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁じ、9条4項は妊娠中と出産後1年という期間の解雇を無効とします。下の「妊娠中と出産後1年」と「育休」の項で見ます。

たとえば、産後の休業を終えて職場に戻り、30日間が過ぎたあとに解雇を告げられた人は、19条の期間からは外れています。それでも出産後1年を経過していなければ、均等法9条4項の期間の中です。期間の物差しが1本ではないことを、手帳に2本の線で書いておくと混ざりません。

数え終わったら、休業の始まりの日・終わりの日・出産日(または出産予定日)・育休の申出日を1枚の紙にまとめておきます。会社と話すときも相談窓口に行くときも、この1枚が出発点になります。

期間中でも解雇できる2つの場合

19条の期間の中でも解雇が禁じられなくなるのは、使用者が81条の打切補償を支払う場合と、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった場合の2つです。後者は、19条2項でその事由について行政官庁の認定を受けなければなりません。

1つ目の打切補償は、81条で、75条の規定によって補償を受ける労働者が療養開始後3年を経過しても負傷または疾病がなおらない場合に、使用者が平均賃金の1200日分を支払うものとされています。75条1項は、業務上のけがや病気について、使用者がその費用で必要な療養を行うか、療養の費用を負担すると定めています。つまり打切補償は業務上のけがや病気の話で、私傷病の休みには出てきません。

ここで条件を落としやすいのが、労働者災害補償保険法19条です。条文は次のとおりです。

業務上負傷し、又は疾病にかかつた労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後三年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合又は同日後において傷病補償年金を受けることとなつた場合には、労働基準法第十九条第一項の規定の適用については、当該使用者は、それぞれ、当該三年を経過した日又は傷病補償年金を受けることとなつた日において、同法第八十一条の規定により打切補償を支払つたものとみなす。

労働者災害補償保険法19条・労働基準法81条・労働基準法75条

この条文が打切補償を支払ったものとみなしているのは、療養開始後3年を経過した日に傷病補償年金を受けている場合と、その日より後に傷病補償年金を受けることになった場合です。休業補償給付を受けているだけの場合について、この条文は何も書いていません。「労災で3年休んだら解雇できる」という言い方は、この条件を落としています。

例外 条文 本人が確かめること
打切補償 労働基準法81条・19条1項ただし書き 療養開始の日、平均賃金の1200日分が支払われたか
打切補償とみなす場合 労働者災害補償保険法19条 3年を経過した日に受けている給付が傷病補償年金か
天災事変などで事業の継続が不可能 労働基準法19条1項ただし書き・2項 行政官庁の認定を受けたか

天災事変の例外について、厚生労働省のQ&Aは、解雇予告の除外事由(天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能になった場合など)に当たるかは労働基準監督署長の認定が必要だと説明していて、労働基準法20条3項は19条2項を準用しています。会社が「やむを得ない事情だから」と言うだけでは、この例外の形になりません。

出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A(解雇予告が不要な場合)

たとえば、業務上のけがで療養を始めてから3年が近づき、会社から「3年たったら解雇できる」と言われた人は、自分がいま受けている労災保険の給付の名前を、労災保険から届いた書類で確かめます。それが傷病補償年金でなければ、いまの時点では労働者災害補償保険法19条の「みなす」場合には当たりません(3年を経過した日より後に傷病補償年金を受けることになった場合は、その日に打切補償を支払ったものとみなされます)。傷病補償年金を受けるための条件は、ここでは確かめていないので、給付の窓口で聞いてください。

会社が例外を口にしたときは、「81条の打切補償を支払うということか」「天災事変などの事由で認定を受けたのか」のどちらなのかを書面で聞き返します。どちらでもない説明なら、19条の期間の中にいることに変わりはありません。

妊娠中と出産後1年の解雇は無効

妊娠中の女性労働者と出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、男女雇用機会均等法9条4項で無効とされています。ただし、事業主がその解雇が妊娠・出産などを理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りではありません。

9条3項は、事業主は女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法65条の休業を請求したり休業をしたりしたことその他の妊娠・出産に関する事由で厚生労働省令で定めるものを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない、と定めています。そのうえで4項が、妊娠中と出産後1年という期間を区切って、その間の解雇を原則として無効としています。

出典:男女雇用機会均等法9条

労基法19条と均等法9条4項は期間も効き方も違う
労働基準法19条

  • 産前産後の休業期間とその後30日間
  • 解雇してはならない
  • 例外はただし書きの打切補償(業務上の療養)と天災事変など(認定)
男女雇用機会均等法9条4項

  • 妊娠中と出産後1年を経過しない間
  • 解雇は無効
  • 会社が妊娠・出産などを理由とする解雇でないと証明したときは別

2つの規定の違いは、期間の長さと、例外の立て方です。19条は業務上の療養休業と産前産後の休業にそれぞれ30日間を足す規定で、ただし書きの例外は、81条の打切補償(業務上の療養の話)と、認定を受けた天災事変などです。9条4項は妊娠中から出産後1年までと長く、例外は「会社が妊娠・出産などを理由とする解雇でないと証明したとき」という形で、証明する側が会社に置かれています。

たとえば、妊娠を伝えた翌月に「業績が悪いから」と解雇を告げられた人は、19条の産前の休業にまだ入っていなくても、妊娠中なので9条4項の期間の中です。この場合、解雇が妊娠を理由とするものでないと証明するのは会社の側です。産後の休業を終えて職場に戻り、何か月か働いたあとに解雇を告げられた人も、出産後1年を経過していなければ同じです。

反対に、出産後1年を経過したあとの解雇は、9条4項の期間からは外れます。それでも、妊娠・出産に関する事由を理由とする解雇その他不利益な取扱いは、9条3項で禁じられています。厚生労働省令で定める事由の中身は、ここでは取っていません。

どちらの規定でも「必ず無効になる」とは言えませんが、妊娠中や出産後1年以内に解雇の話が出たら、まず出産日(または出産予定日)と、解雇を告げられた日を並べてください。9条4項の期間に入っていれば、理由の説明を書面で求めることが次の一手になります。

育休を理由とする解雇も禁じられる

育児休業の申出や取得を理由とする解雇その他不利益な取扱いは、育児・介護休業法10条で禁じられています。対象は「労働者」と書かれていて、母親に限った条文ではありません。

10条は、事業主は労働者が育児休業申出等(育児休業申出と出生時育児休業申出)をし、もしくは育児休業をしたこと、または9条の5第2項の申出や同条第4項の同意をしなかったことなど、厚生労働省令で定める事由を理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない、と定めています。19条や均等法9条4項のように期間を区切るのではなく、申出や取得という「理由」で禁じている点が違います。

出典:育児・介護休業法10条

  • 禁じられているのは、育休の申出・取得などを理由とする解雇その他不利益な取扱い
  • 条文は期間で区切っていない。申出や取得が理由かどうかが分かれ目
  • 出産後1年以内の母親の解雇には、均等法9条4項の規定も重なる
  • 育休明けの配置や降格が「不利益な取扱い」に当たるかは、省令・指針の話でここでは取っていない

たとえば、出産後に育休を取っている母親が、育休中に解雇を告げられたとします。出産後1年を経過していなければ、育児・介護休業法10条に加えて、均等法9条4項の期間の中でもあります。同じ会社で育休を取っている父親が同じことを言われた場合は、均等法9条4項の話ではなく、育児・介護休業法10条で、育休の申出や取得が理由かどうかが問われる場面です。

育休明けに「元の仕事はない」「別の部署へ」と言われた人は、言われた日と内容、育休の申出日と復帰日をメモしておきます。それがどこから不利益な取扱いに当たるかは、ここでは線を引けません。会社に相談しても対応されないときの窓口は、下の「相談先」の項にあります。

退職勧奨は応じなくていい

封筒と万年筆

退職勧奨は会社が「辞めてもらえないか」と勧めることで、解雇とは違います。厚生労働省の冊子は、退職勧奨に応じるかは労働者の自由で、その場ですぐ答える必要もなく、辞める意思がない場合は応じないことを明確に伝えることが大切だ、と説明しています。

出典:厚生労働省の冊子 第5章「仕事を辞めるとき、辞めさせられるとき」

19条が禁じているのは「解雇」で、条文は退職を勧めることについては書いていません。休業中や産休中に勧奨を受けたら、まずそれが解雇の通告なのか、辞めることを勧められているだけなのかを聞き返します。編集部の整理では、勧奨に応じて自分で退職届を出すと「解雇」の通告ではなくなるため、19条の期間の中にいても、19条が禁じる解雇の話から外れます。

応じる前に確かめておきたいのは、次の4つです。

  • 言われたのは解雇か、退職の勧奨か(いつ、誰に、何と言われたかをメモする)
  • 退職日をいつにする話か(19条の期間や、出産日・育休の予定との前後)
  • 離職票の離職理由がどう書かれる予定か
  • 自分で書く退職届の文面に「一身上の都合」などと書くよう求められていないか

離職理由について、ハローワークの「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」は、事業主から直接もしくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者を、特定受給資格者の範囲に入れています(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は当たりません)。省令の条文は雇用保険法施行規則36条9号です。ただし、勧奨を受けたかどうかはハローワークが事実を確かめて判定するので、勧められたというだけで決まるわけではありません。

出典:ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」・雇用保険法施行規則36条

たとえば、労災で休業している人が「この機会に区切りをつけては」と面談で言われた場合、その場で答えずに持ち帰り、面談の日時と言われた言葉を書き留めておけば足ります。応じるかを決める前に、自分が19条の期間のどこにいるかを数えておけば、断るにしても条件を話し合うにしても、根拠を持って話せます。勧奨に応じたときの離職理由と、面談で残す記録の詳しい手順は 退職勧奨に応じたら会社都合か にまとめています。

解雇の有効と離職理由は別の話

解雇が無効かどうかと、離職票の離職理由がどう判定されるかは、別の仕組みで決まります。前者は労働契約法16条や労働基準法19条などの話で、後者はハローワークが事実を確かめて判定する雇用保険の話です。

労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。一方で、厚生労働省のパンフレット「離職されたみなさまへ」は、離職理由の判定について、事業主が主張する離職理由と離職者が主張する離職理由を把握し、それぞれの主張を確認できる資料による事実確認を行った上で、最終的にハローワークにて慎重に行う、としています。

出典:労働契約法16条・厚生労働省「離職されたみなさまへ」

見ること 何の話か どこで確かめるか
解雇が許されるか・無効か 労働基準法19条・労働契約法16条・均等法9条4項など 会社との話し合い、労働の相談窓口、弁護士
離職票の離職理由 雇用保険の特定受給資格者などに当たるか ハローワーク(事業主と本人の主張と資料で判定)
解雇の予告 原則は30日前の予告か、30日分以上の平均賃金(労働基準法20条。例外は 即日解雇と解雇予告手当) 解雇の通知、給与明細

この2つを混ぜると、「離職票が会社都合になったから、解雇は正しかった」「解雇を争うと失業保険がもらえない」といった取り違えが起きます。どちらかの結論が、もう一方を自動的に決めるわけではありません。

たとえば、労災の休業中に解雇を告げられ、離職票の理由が解雇になっている人は、19条の期間の中での解雇として争うかどうかと、失業保険の手続きを進めるかどうかを、別々に考えることになります。離職票に会社が書いた理由が実際と違うときは、ハローワークに相談すれば、事実関係を調べて判定する、とハローワークの手続きの案内は書いています。解雇の種類ごとの失業保険の扱いは 解雇されたら失業保険はいつから・何日か に、予告手当の計算は 即日解雇と解雇予告手当 にまとめています。

相談先と持っていくもの

妊娠・出産・育児休業などを理由とする不利益な取扱いについて、厚生労働省のハラスメント対策のページは、会社に相談しても対応してもらえなかったら、近くの都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)へ相談するよう案内しています。同じページには総合労働相談コーナーの案内もあります。

出典:厚生労働省 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策

このページは、会社に防止の措置を求める制度の案内で、解雇が有効か無効かを決める窓口として書かれているものではありません。解雇そのものを争いたい、撤回を求めたいという段階なら、労働審判や弁護士を含めた相談先を比べることになります。その選び方は 不当解雇の相談先 にまとめています。

どの窓口に行くにしても、持っていくと話が早いのは次のものです。

持っていくもの 何を示すか
休業の始まりと終わりの日付が分かるもの 19条の期間のどこにいるか
労災保険の手続きの書類 業務上のけがや病気として手続きしているか、受けている給付の名前
出産日(または出産予定日)が分かるもの 産前産後の休業、出産後1年の期間
育休の申出日と復帰予定日が分かるもの 育休の申出・取得との前後関係
解雇の通知、勧奨のメモ いつ、誰が、何と言ったか
就業規則の解雇・退職の条項の写し 会社が根拠に挙げている条項

窓口で聞くことは、「いま自分は19条の期間の中にいるか」「会社の説明は打切補償か天災事変などの認定のどちらかに当たるのか」「妊娠・出産・育休が理由だと考えられる事情をどう伝えればいいか」の3つに絞ると、限られた相談時間で答えを持ち帰りやすくなります。

相談に行く前に会社へ伝えておくなら、「解雇であれば理由を書面でください」「退職勧奨であれば、いまは応じる意思がありません」のどちらかを、メールなど記録の残る形で送っておきます。それだけで、言われた日と自分の返事が残ります。

すぐに退職を決めなくていい場合

次のどれかに当たる人は、退職をその場で決めなくていい場合です。どれも、勧奨に応じる前に、自分の期間と会社の説明を確かめる余地がある状態です。

  • 業務上のけがや病気で療養のため休業しているか、休業を終えてから30日間がまだ過ぎていない
  • 産前産後の休業中か、休業を終えてから30日間がまだ過ぎていない
  • 妊娠中か、出産後1年を経過していない
  • 育休の申出や取得のあとに、解雇や退職の話が出た
  • 会社の説明が、解雇なのか勧奨なのかはっきりしない
  • 会社が「3年たったから」と言うが、自分の受けている給付が傷病補償年金か確かめていない

この6つのどれかに当たる人が退職勧奨を受けたなら、その場で返事をせず、上の「数える順番」で自分の期間を確かめてからでも遅くありません。厚生労働省の冊子も、勧奨にはその場ですぐ答える必要はないとしています。

反対に、どれにも当たらず、自分でも次の仕事や療養の先の見通しが立っていて、勧奨の条件(退職日や離職理由の扱い)に納得できているなら、応じて区切りをつける選択もあります。そのときは、離職理由の書かれ方だけは応じる前に確かめておきます。

たとえば、産後の休業を終えて職場に戻った直後に「家庭と両立は難しいのでは」と退職を勧められた人は、30日間と出産後1年の2本の線のどちらの中にもいます。返事は持ち帰り、日付を並べた紙と面談のメモを用意してから考えれば十分です。

試用期間中の解雇はいつから予告が要る?入社何日目かで変わる手当と会社都合

会社都合退職になる条件は?自己都合との給付日数・給付制限の差を表で

会社をクビになったら最初にやること|いつまでに何を受け取るかと手当の額

よくある質問

労災中の解雇制限はどこまでですか?

業務上のけがや病気で療養のために休業する期間と、その後30日間です(労働基準法19条1項)。例外は、打切補償を支払う場合と、天災事変などで事業の継続が不可能となり行政官庁の認定を受けた場合です。

労災で休んだら解雇されますか?

業務上のけがや病気で療養のため休業している間とその後30日間は、上の例外に当たらない限り解雇できません。業務外のけがや病気での休業は19条の文言に入っていないので、うつや体調不良の欠勤で解雇されたら の扱いを見てください。

労災手続き中に退職したらどうなりますか?

自分から退職すると、19条が禁じる「解雇」の話ではなくなります。労災保険の給付が退職でどうなるかはここでは確かめていないので、退職を決める前に、給付の手続きをしている窓口で確かめてください。

骨折して仕事を休んだらクビになりますか?

仕事中や業務上の骨折で療養のため休業しているなら、休業中とその後30日間は19条の期間です。休日のけがなど業務外の骨折なら19条の文言の外で、解雇されるときは労働契約法16条の「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」かどうかが問われます。

産休明けは何日まで解雇できませんか?

産後の休業を終えてから30日間は、労働基準法19条で解雇できません。それとは別に、出産後1年を経過しない間の解雇は、会社が妊娠・出産などを理由とする解雇でないと証明しない限り無効です(均等法9条4項)。

退職勧奨に応じたら自己都合にされますか?

退職勧奨を受けたことにより離職した場合は、ハローワークの範囲で特定受給資格者に含まれています(従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度などへの応募は除く)。ただし、勧奨を受けたかどうかは事業主と本人の主張と資料でハローワークが判定するので、勧められたというだけでは決まりません。勧奨を受けた日と内容を記録に残しておきます。

数字だけ、もう一度

  1. 業務上の療養休業:療養のために休業する期間とその後30日間は解雇できない(労働基準法19条1項)
  2. 産前産後:産前は6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産予定で請求した場合の休業、産後は8週間を経過しない間(産後6週間を経過した本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務に就く場合を除く・65条)。その休業期間とその後30日間は解雇できない(19条1項)
  3. 打切補償:療養開始後3年を経過しても治らない場合に平均賃金の1200日分(81条)。3年を経過した日に傷病補償年金を受けている場合などは支払ったものとみなす(労働者災害補償保険法19条)
  4. 天災事変など:事業の継続が不可能になった場合は行政官庁の認定が必要(19条2項)
  5. 妊娠・出産:妊娠中と出産後1年を経過しない女性の解雇は、会社が理由の証明をしない限り無効(均等法9条4項)
  6. 育休:申出・取得などを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(育児・介護休業法10条)
  7. 解雇予告:原則は30日前の予告か、30日分以上の平均賃金(労働基準法20条・天災事変などで認定を受けた場合などの例外あり)

けがの療養中や、妊娠・出産・育休の前後に退職の話を持ち出されると、休んでいる側が身を引くのが筋のように感じてしまいます。けれど、条文が守っているのはまさにその時期です。まずは休業の始まりと終わり、出産日、育休の申出日を1枚に並べて、自分がどの線の内側にいるかを数えてください。そのうえで、会社の話が解雇なのか勧奨なのかを聞き返し、勧奨なら返事は持ち帰る。決めるのは、日付と書面がそろってからで間に合います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

やめ活編集部です。退職の伝え方・失業保険・退職代行について、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

目次