失業保険の不正受給はなぜバレる?申告漏れのとき返す額は何倍になるか

書類に記入する手元
  • 受給中にバイトをしたのに、申告書に書かなかった。あとから見つかる?
  • 「3倍返し」って本当?何の3倍で、いくら返すことになるの?
  • うっかり1日書き忘れた。それだけで不正受給になる?今から直せる?
  • ハローワークは、どこまで調べているの?
  • 給料が出ない家の手伝いや、4時間に満たない短い仕事も書かないといけないの?
  • 給付制限のあいだに働いた日も、申告が要るの?
  • 不正受給になったら、次に失業したときも失業保険はもらえない?
  • 会社が出した書類が間違っていたら、自分も責任を問われる?

上記のような悩みに答えます。

失業保険(基本手当)の不正受給は、受給中に働いたことそのものではなく、働いた事実や求職活動の中身を失業認定申告書に偽って書く(書かない)ことで起きます。ところが「3倍返し」や「バレる・バレない」といった言葉ばかりが広まっていて、何をしたら当たるのか、何倍をどう返すのかが、かえって見えにくくなっています。条文の形が「返還+2倍以下の納付」であることや、支給が止まる起点と例外、申告書のどの欄に何を書けば申告したことになるのかまで踏み込んだ解説は、編集部が確かめた範囲では多くありません。そこで、不正受給になる典型・申告が要る働き方・見つかる経路を押さえたうえで、処分と罰則の条文が誰に向いているか、申告し忘れに気づいたときの動き方まで、雇用保険法の条文と厚生労働省・ハローワークの資料で確かめながら整理しました。

先に答え

失業保険の不正受給は、働いた日(収入が無い日や4時間未満の手伝いも含む)を失業認定申告書で申告しなかったり、求職活動を偽ったりしたときに当たります。見つかると、不正があった日以後の基本手当は原則支給されず、受けた額の返還に加えてその2倍以下の額の納付を命じられることがあります(いわゆる3倍返し・2026年10月時点)。

2026年10月時点の制度で確かめています

目次

不正受給になる6つの典型

書類に記入する手元

ハローワークは、不正受給の典型例を6つ挙げています。どれも「失業認定申告書に事実を書かない、または偽って書く」という形をしていて、働いたこと・事業を始めたこと・役員になったことそのものが不正だと書かれているわけではありません。

失業保険は、原則として4週間に1度、管轄のハローワークで失業の認定を受けて支給される仕組みで、その認定には本人が出す失業認定申告書が使われます。雇用保険法施行規則22条1項は、受給資格者が失業の認定日に管轄のハローワークに出頭し、失業認定申告書を提出したうえで職業の紹介を求めなければならない、と定めています(雇用保険法施行規則22条)。編集部の読み方では、申告書が判断の土台になっているからこそ、典型例がそろって「申告書に記さず」「偽りの申告」という言い方になっています。

典型例 申告書で起きていること
行っていない求職活動を実績として書く 求職活動の欄を偽る
就職・就労(パート、アルバイト、派遣、試用期間、研修期間、日雇などを含む)したのに書かない 働いた事実を書かない
自営や請負で事業を始めているのに書かない 事業の開始を書かない
内職や手伝いをした事実と収入を書かない 手伝いと収入を書かない
会社の役員に就任している(名義だけの場合も含む)のに書かない 役員の就任を書かない
定年後、積極的に就職しようとする気持ちやいつでも就職できる能力がないのに、受給終了直後に年金を受給しようと考えて偽りの申告をする 就職の意思・能力を偽る

出典:ハローワークインターネットサービス「不正受給情報」

表の2行目のかっこ書きに、試用期間と研修期間が入っている点は見落とされがちです。「まだ本採用ではないから」「研修だから働いたうちに入らない」と考えて書かないと、典型例そのものに当たります。

たとえば、受給中に知人の会社で名前だけ役員になってほしいと頼まれた人は、報酬も仕事も無いから関係ないと考えがちです。ところが典型例には「名義だけの場合も含む」と書かれているので、就任したことは申告書に書く側に入ります。個人で仕事を請け負い始めた人については、典型例の文言は「事業を始めている」かどうかで、売上の有無には触れていません。どの時点を「始めた」とみるかで迷うときは、自分で線を引かずに、認定日の前にハローワークで聞いてください。

6つを並べると、迷ったときの軸は1つに絞れます。認定の対象期間に、働く・事業を始める・役員になる・求職活動をする、のどれかに当たることがあったら、まず申告書に書く。書いたうえでどう扱われるかを決めるのはハローワークで、書かないことを自分で選ぶ場面はありません。

収入ゼロや4時間未満の手伝いも申告する

1日4時間以上の仕事は「就労」、4時間未満は「内職・手伝い」と呼ばれ、どちらも申告します。労働局の案内には、この区分に実際の収入の有無は関係ない、と書かれています。

申告の義務は条文にもあります。雇用保険法19条3項は、受給資格者が失業の認定を受けた期間中に自己の労働によって収入を得たときは、その収入の額その他の事項を公共職業安定所長に届け出なければならない、と定めています(雇用保険法19条)。さらにハローワークの典型例には、内職や手伝いをした事実とその収入を申告書に記さないことが挙がっています。

働き方 呼び方 申告書のカレンダー欄 その日の基本手当
1日4時間以上 就労 ○印 支給されない
1日4時間未満 内職・手伝い ×印 支給されるが、収入があれば減額

出典:群馬労働局・ハローワーク「教えて!?雇用保険受給の基本」

給付制限のあいだも同じです。厚生労働省のQ&Aは、給付制限期間中にアルバイト・パート等をした場合、初回の認定日と、給付制限があけた最初の認定日に出す失業認定申告書に、収入の有無にかかわらず、働いた日を正確に申告するよう求めています(厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」)。基本手当が出ない期間だから書かなくていい、とはなりません。給付制限の長さそのものは 給付制限1か月はいつから? にまとめています。

たとえば、実家の店を4時間に満たない時間だけ無給で手伝った人は、4時間未満なので内職・手伝いに当たり、申告書のカレンダー欄に×印を付けます。同じ人が別の日に4時間以上手伝えば、その日は就労なので○印です。お金を受け取ったかどうかではなく、時間で印が分かれる、という点が取り違えやすいところです。週4日以上かつ週20時間以上働くようになると、今度は就職の目安に当たるので、認定日を待たずにハローワークへ申告に行きます。減額がいくらになるかの計算は、受給中のバイトは何時間・いくらまで? で扱っています。

ここで覚えておくのは、「書くかどうか」を時間や収入で決めない、ということです。時間で決まるのは○か×かの印だけで、働いた日を書くこと自体は、どの区分でも変わりません。

失業認定申告書の欄1・欄2・欄5に書く

働いた日を申告書のどこに書くかは、ハローワークが公開している記入例で確かめられます。働いたことは欄1、内職・手伝いの収入は欄2、就職や自営を始めた(予定がある)ことは欄5に書きます。

申告書は様式第14号と呼ばれる決まった様式で、記入例の第1面には、上から欄1〜欄5が並んでいます。欄3は求職活動、欄4は紹介された仕事にすぐ応じられるかを書く欄です。編集部の読み方では、6つの典型の多くは、この欄のどこかに書くべきことを書かなかった(偽って書いた)形になっています。

欄 書くこと
欄1 認定を受けようとする期間中に、就職・就労・内職・手伝いをしたか。した日はカレンダーに印(就職・就労は○、内職・手伝いは×)
欄2 内職・手伝いで収入を得た人は、収入のあった日・収入額・何日分の収入か
欄3 求職活動をしたか(した人は方法・活動日・利用した機関・内容など)
欄4 ハローワークから仕事を紹介されたら、すぐ応じられるか
欄5 就職・自営をした人、またはその予定がある人は、就職先の名称・所在地など

出典:ハローワークインターネットサービス「記入例:失業認定申告書」

働いた日は、欄1から順に書いていく
  1. 1欄1に「した」と書く働いた日にカレンダーで○か×の印
  2. 2欄2に収入を書く内職・手伝いで収入があった人だけ。日・額・何日分か
  3. 3欄3に求職活動を書く実際に行った活動だけを書く
  4. 4欄5に就職・自営を書く決まった人、予定がある人

記入例には、申告書の末尾に「雇用保険法施行規則第22条第1項の規定により上記のとおり申告します」と書かれ、氏名と支給番号を書いて出す形になっています。つまり、この1枚が本人の申告そのものです。

たとえば、認定の対象期間に、4時間以上のバイトを2日、4時間未満の無給の手伝いを1日した人なら、欄1で「した」を選び、カレンダーのバイトの2日に○、手伝いの1日に×を付けます。手伝いは収入が無いので欄2には書くことがありません。この人が同じ期間にバイト先から長く勤めてほしいと言われて就職が決まった(その予定がある)なら、欄5にもそのことを書きます。

書き方で迷う点(時間の数え方、収入に交通費を含めるか、業務委託をどの印にするかなど)は、自分で決めて空欄にせず、認定日の窓口で記入例と照らしながら聞いてください。働いた日は、シフト表や明細を見て、認定日の前に手帳に書き出しておくと、申告書に写すときに漏れません。

不正受給はどんな経路で見つかるか

ハローワークの周知資料は、不正受給が見つかる経路として3つを挙げています。コンピューターシステムによる発見、事業所調査や家庭訪問、投書や電話などの通報です。

この資料は、東京労働局のサイトに掲載されているハローワーク新宿の周知資料で、全国共通の文書ではなく、発行日の記載もありません。それでも、どんな経路が想定されているかを、ハローワーク自身の言葉で知ることはできます。

  • コンピューターシステム(全国の雇用保険システム)による発見
  • 事業所調査(確認書類の提出等)や家庭訪問
  • 投書や電話などの通報

出典:ハローワーク新宿 雇用保険給付調査官「不正受給について」

調べる権限は条文にもあります。雇用保険法77条は、行政庁が受給資格者等に報告・文書の提出・出頭を命じることができると定め、79条1項は、受給資格者等を雇用し、または雇用していたと認められる事業主の事業所に職員を立ち入らせ、質問や帳簿書類の検査をさせることができると定めています(雇用保険法77条・79条)。同じ79条の3項は、この立入検査の権限は犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない、と書いています。求職活動の実績についても、ハローワークは利用した機関等への問い合わせ等により事実確認を行うことがある、と案内しています(ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」)。

コンピューターシステムの中身については、厚生労働省の不正受給防止対策の資料に説明があります。受給中の期間に、事業主がその人を雇ったとして雇用保険の資格取得届を出すと、システムで把握されて通報が行われる、就職先から就職日(事前のアルバイトや研修等を含む)に関する採用証明書を出してもらい申告の内容を審査する、事業所への実地調査で就職の未申告の調査も行う、という内容です(厚生労働省「雇用保険(失業給付)の不正受給防止対策」)。ただしこの資料は発行日の記載がなく、載っている実績の年度から見て古いものです。いまも同じ方法で照合しているかは、この資料からは分かりません。資格取得届の対象は雇用保険の被保険者になる雇い方なので、短時間の手伝いまでこの経路で見つかる、とも書かれていません。

たとえば「単発のバイトなら会社からハローワークに連絡は行かないから大丈夫」と考える人がいます。けれども、見つかる経路はシステムだけではなく、事業所調査も通報もあります。そしてハローワーク新宿の周知資料は、動機として「一日ぐらいだから」「試用期間中だから」「働いてもお金をもらっていないから」などが目立つと書いたうえで、どんな動機でも不正受給として扱われると述べています。

経路を知っても、取れる行動は変わりません。見つかるかどうかで書くかどうかを決めるのではなく、働いた日は申告書に書く。書いてあれば、どの経路で調べられても、申告と事実が食い違うことはありません。

見つかると支給停止と返還・納付命令

封筒と万年筆

不正受給と判断されると、不正があった日以後の基本手当が支給されなくなり、受けた額の返還に加えて、その2倍以下の額の納付を命じられることがあります。いわゆる「3倍返し」は、この返還と納付を足した形を指す呼び方で、条文の言葉ではありません。

支給の停止は雇用保険法34条1項です。偽りその他不正の行為により給付を受け、または受けようとした者には、受け、または受けようとした日以後、基本手当を支給しない、と定めています。ただし書きがあり、やむを得ない理由がある場合には、基本手当の全部又は一部を支給することができる、とされています(雇用保険法34条)。「受けようとした」とあるので、実際にお金を受け取る前でも対象になりえます。一方で同じ34条の2項は、その日以後に新たに受給資格を取得した場合は、新しい受給資格に基づく基本手当を支給すると定めています。今回の受給が止まっても、次に失業したときの受給まで一律に失われるわけではありません。

返還と納付は雇用保険法10条の4第1項です。政府は、不正の行為により給付を受けた者に、支給した失業等給付の全部又は一部の返還を命ずることができ、また、厚生労働大臣の定める基準により、不正の行為により受けた額の二倍に相当する額以下の金額の納付を命ずることができる、とあります(雇用保険法10条の4)。

上乗せは「2倍以下」。合わせて最大で3倍になる
返還(受けた額の全部又は一部)+納付(受けた額の2倍以下)=最大で受けた額の3倍
仮に10万円を不正に受けた場合:返還10万円+納付20万円以下=最大30万円
計算例

編集部の仮定例:不正の行為により受けた基本手当が10万円だった場合、返還は最大で10万円、納付は10万円の2倍の20万円以下で、合わせると最大30万円です。納付は「以下」なので、20万円と決まっているわけではありません。

厚生労働省のQ&Aは、申告をせずに受給した場合は不正受給となり、以降の支給が停止するとともに「不正に受給した額の3倍の額の納付」を命じられる場合がある、と説明しています。広く使われている「3倍返し」は、この説明と同じ意味合いです。ただ条文は、返還(全部又は一部)と2倍以下の納付の2つに分かれていて、必ず3倍になるとは書いていません。

返せないまま放っておいた場合についても、条文に手がかりがあります。10条の4第3項は、返還・納付を命じられた金額の納付を怠ったときに、労働保険徴収法27条と41条2項を準用すると定めています。27条は、期限を指定した督促と、督促の期限までに納めないときは国税滞納処分の例によって処分することを定めた条文です(労働保険徴収法27条)。ハローワークの周知資料も、不正受給の処分として、支給停止・返還命令・納付命令・財産の差押え・刑罰の5つを挙げています。

たとえば、受給の途中で1日分の就労を書かずに申告書を出していたことが分かった人は、その申告で支給を受けた(受けようとした)日以後の基本手当が、やむを得ない理由がない限り支給されない扱いになりえます。書かなかったのが1日でも、止まるのは原則として「その日以後」の支給で、1日分だけではありません。申告書に書かないことの重さは、この起点の置き方にあります。

処分を受けた後にどう動くかは、命令の書面に書かれた額と期限を見て決めます。払える見通しが立たないときは、期限を過ぎる前に、命令を出したハローワークに相談してください。

刑罰の条文は誰に向いているか

不正受給をした本人の刑事罰の根拠になりうるのは、刑法246条(詐欺)です。雇用保険法にも罰則の条文がありますが、83条は事業主、85条は報告命令に従わないなどの行為が対象で、基本手当を偽りで受けたこと自体を罰する文言はありません。

ここは解説によって取り違えが多いところなので、条文の主語で分けて読みます。

条文 誰が どんな行為 刑
刑法246条 人を欺いて財物を交付させた者 詐欺 10年以下の拘禁刑
雇用保険法83条 事業主 届出をしない・偽りの届出、報告命令への違反、立入検査での偽りの陳述など 6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金
雇用保険法85条 被保険者・受給資格者等 77条の報告命令に従わない・偽りの報告、79条の質問への偽りの陳述・検査の拒否など 6月以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金

出典:刑法246条/雇用保険法83条・85条

先に触れた厚生労働省の不正受給防止対策の資料(発行日の記載がない古い資料)は、説明会や窓口で受給資格者全員に、不正受給があった場合に「詐欺罪で処罰される場合があること」を周知する、と書いています。表現は「場合がある」で、不正受給なら必ず詐欺罪になるとは書かれていません。実際に何件が処罰されたかといった数字も、公式資料からは取れていません。

85条が受給者に向いているのは、報告を命じられたのに報告しない、偽りの報告をする、職員の質問に偽って答える、といった調べに対する行為です。たとえば、ハローワークから就労の状況について報告や出頭を求められた人が、それを無視したり事実と違う説明をしたりすると、この条文の対象になりえます。また86条1項は、法人の従業者などがその業務に関して83条などの違反をしたとき、行為者に加えて法人にも罰金刑を科すと定めています。

調べを受けたときにできることは、事実をそのまま伝えることです。働いた日と時間、収入が分かるシフト表や明細を持っていき、分からないことは分からないと言う。報告命令への違反や偽りの陳述が、それ自体で罰則の対象になりうる、という点を覚えておいてください。

会社が偽りの証明をしたときの連帯責任

事業主が偽りの届出・報告・証明をしたために失業等給付が支給されたときは、その事業主も、給付を受けた人と連帯して、返還・納付を命じられることがあります。雇用保険法10条の4第2項です。

2項の対象には、事業主のほか、職業紹介事業者等、一定の募集情報等提供事業を行う者、指定教育訓練実施者が挙がっています。いずれも、偽りの届出、報告又は証明をしたためその失業等給付が支給されたときに、支給を受けた者と連帯して、返還又は納付を命じられた金額の納付を命じられうる、という形です(雇用保険法10条の4)。

ハローワーク平塚の事業主向けの周知資料も、事業主が離職証明書に虚偽の記載を行う等、偽りその他不正の行為をした場合には、不正に受給した者と連帯して不正受給金の返還、納付命令(返還金の最高2倍)を課されるほか、詐欺罪として刑罰に処せられる場合がある、と書いています。同じ資料は、試用期間や見習期間も雇入れのうちで、この期間に基本手当を受給すると不正受給になること、不正受給処分は現実に給付を受けたか否かを問わないことにも触れています(ハローワーク平塚「雇用保険の不正受給防止について」)。

2項は、偽りの証明をした事業主に、給付を受けた人と連帯して返還・納付を命じられる場合があると定めています。受給者本人が命じられるかどうかは、本人が偽りその他不正の行為で給付を受けたといえるかで決まり、1項で見られます(編集部の読み方)。たとえば、会社に頼んで書類の日付を事実と違うものにしてもらえば、条文の形では、受給者は10条の4第1項、偽りの証明をした会社は同じ条の第2項の対象になりえます。

会社が書いた書類の中身が事実と違うと気づいたときは、そのまま受給を続けずに、書類の控えと自分の記録(入社日や働き始めた日が分かるもの)を持ってハローワークの窓口で事実を伝え、どう扱われるかを確かめてください。

申告し忘れに気づいたらすること

申告し忘れに気づいたときに、自分から申し出ると処分が軽くなるのか、免除されるのかは、公式資料では扱いを確認できていません。確かめられる範囲で言えるのは、気づいた時点で管轄のハローワークに相談する、ということです。

ネットには、自分から返せば軽く済むといった説明も見かけますが、編集部が確かめた範囲では、雇用保険法の条文にも、厚生労働省やハローワークの資料にも、申し出た場合の扱いを定めた記述は見当たりませんでした。だからといって、黙っていれば済むという話にもなりません。次の認定日にまた申告書を出すときに、前回の申告と事実の食い違いを抱えたままになるからです。

相談に行く前に、手元で次の4つをそろえておくと、窓口での説明が具体的になります。

  1. 申告し忘れた日付と、その日に働いた時間(シフト表、勤怠の記録、メッセージの履歴など)
  2. その日の収入(明細、振込の記録。無給なら無給と書いておく)
  3. その日を含む認定の対象期間と、そのとき出した申告書の控え(あれば)
  4. 雇用保険受給資格者証(受給資格通知の人はその書面)

たとえば、2回前の認定期間に、4時間未満の単発の仕事を1日していたのを書き忘れていたと気づいた人は、その日付・時間・収入をメモにして、次の認定日を待たずに管轄のハローワークの雇用保険の窓口へ行き、「前の申告書にこの日の手伝いを書いていなかった」とそのまま伝えます。どう扱われるかを決めるのはハローワークです。

編集部の整理では、気づいた後にできることは「事実を書き出す」「早めに窓口に行く」の2つしかありません。扱いが軽くなるかどうかを先に知ろうとして時間を置くより、事実を持って相談するほうが、次の認定日を迷わずに迎えられます。

働いたこと自体を心配しなくていい場合

働いた日を失業認定申告書に正しく書いている人は、受給中に働いたこと自体で不正受給になるわけではありません。不正受給の典型例はどれも、事実を書かない、または偽って書くことを指しています。

厚生労働省のQ&Aも、受給中のアルバイト・パート等について、仕事をした日は支給の対象にならなかったり収入額により減額されたりする場合があるので、失業認定申告書に記載のうえ申告が必要、と案内しています。働くことを禁じているのではなく、書いて申告することを求めている、という形です。

  • 4時間以上働いた日に○、4時間未満の手伝いの日に×を付けて出している人
  • 内職・手伝いで収入があった日を、欄2に日付と額まで書いている人
  • 給付制限のあいだに働いた日を、初回の認定日などの申告書に書いている人
  • 書き方に迷う働き方を、認定日に窓口で聞いてから書いている人

この4つに当てはまる人は、働いたこと自体で処分を心配しなくて大丈夫です。申告が事実と一致していれば、システムで照合されても、事業所調査があっても、食い違いが生まれないからです。働いた日のその日の支給がどうなるか、減額がいくらかは、不正受給とは別の話で、受給中のバイトは何時間・いくらまで? で確かめられます。

たとえば、認定の対象期間に週に数日、4時間未満のバイトをした人が、その日を×で書き、収入を欄2に書いていれば、それは決められたとおりの申告で、減額は不正受給の処分とは別の扱いです。反対に、同じ働き方でも書かなければ典型例に当たります。分かれ目は働き方ではなく、申告書に書いたかどうかです。

申告のしかたに不安がある人は、受給の流れ全体を 失業保険のもらい方 で確かめたうえで、次の認定日に記入例を持って窓口で聞いてください。

失業保険の不正受給でよくある質問

失業保険の不正受給はバレますか?

ハローワークの周知資料は、見つかる経路として、コンピューターシステム、事業所調査や家庭訪問、投書や電話などの通報の3つを挙げています。発見の割合などの数字は示されていません。見つかるかどうかではなく、働いた日を申告書に書いていれば食い違いは生まれない、と考えてください。

失業保険を不正受給したらどうなりますか?

不正の行為があった日以後の基本手当は支給されません(やむを得ない理由があれば全部又は一部を支給できる、というただし書きがあります)。受けた額の全部又は一部の返還と、受けた額の2倍以下の納付を命じられることがあり、刑法の詐欺罪で処罰される場合もあります。

3倍返しはいくらになりますか?

返還(受けた額の全部又は一部)と、受けた額の2倍以下の納付を合わせて、最大で受けた額の3倍です。仮に10万円を不正に受けたなら、返還10万円と納付20万円以下で、最大30万円です。納付は「以下」なので、必ず3倍になるとは限りません。

ハローワークはどこまで調べるのですか?

雇用保険法77条で受給資格者等に報告・出頭などを命じることができ、79条1項で事業主の事業所に立ち入って質問や帳簿書類の検査をさせることができます。求職活動の実績は、利用した機関等への問い合わせ等で事実確認を行うことがあると案内されています。

給付制限中のバイトも申告しますか?

申告します。厚生労働省のQ&Aは、初回の認定日と給付制限があけた最初の認定日に出す申告書に、収入の有無にかかわらず働いた日を正確に書くよう求めています。

個人事業や副業を始めた場合はどうですか?

自営や請負で事業を始めたのに申告書に書かないことは、不正受給の典型例に挙がっています。申告書の欄5には、就職・自営をした人と、その予定がある人が書きます。どの時点で始めたとみるかは、自分で決めずにハローワークで確かめてください。

次に失業したとき、失業保険はもらえなくなりますか?

雇用保険法34条2項は、不正のあった日以後に新たに受給資格を取得した場合は、その新しい受給資格に基づく基本手当を支給すると定めています。止まるのは今回の受給資格に基づく基本手当です。

再就職手当をもらえる条件は?失業保険の残り日数と就職の決め方で分かれる可否

就業促進定着手当はいくら・いつ申請?再就職後に賃金が下がった時の条件と計算

失業保険をもらいながらバイトは何時間・いくらまで?1日4時間と週20時間の線

数字だけ、もう一度

  1. 不正受給の典型:6つ。どれも失業認定申告書に事実を書かない・偽って書く形
  2. 申告の区分:1日4時間以上は就労(○)、4時間未満は内職・手伝い(×)。収入の有無は関係ない。給付制限中も申告する
  3. 書く欄:欄1に働いた日、欄2に内職・手伝いの収入、欄5に就職・自営(予定を含む)
  4. 見つかる経路:ハローワークの周知資料ではシステム・事業所調査や家庭訪問・通報の3つ
  5. 支給停止:不正があった日以後は支給しない(やむを得ない理由があれば全部又は一部を支給できる)。新たな受給資格の基本手当は別(34条2項)
  6. 返還・納付:返還(全部又は一部)+2倍以下の納付。合わせて最大3倍(10条の4第1項)
  7. 刑罰:本人の刑事罰の根拠になりうるのは刑法246条(詐欺・10年以下の拘禁刑)。雇用保険法83条は事業主、85条は報告命令違反など(6月以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金)
  8. 会社の偽りの証明:事業主も受給者と連帯して納付を命じられうる(10条の4第2項)

不正受給の話は「バレるかどうか」で語られがちですが、条文と公式資料を順に読むと、分かれ目はずっと手前の、申告書に書いたかどうかにあります。働いた日をその日のうちに手帳に残し、認定日に欄1と欄2へ写し、迷う働き方は窓口で聞いてから書く。書き忘れに気づいたら、事実を書き出して早めに相談に行く。そこまでを習慣にしておけば、受給中に働くことを怖がる理由はなくなり、空白の期間を自分の稼ぎでつなぐ選択も落ち着いて選べます。

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この記事を書いた人

やめ活編集部です。退職の伝え方・失業保険・退職代行について、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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