仕事に疲れた、辞めたい時は休職と退職でいくら違う?手当の額と受け取る順番

机の上の開いた手帳
  • 毎日疲れていて、もう仕事を辞めたい
  • 休職と退職、どっちがいいのか分からない
  • 休職したら、その間のお金はどうなるの?
  • 傷病手当金って、いくら・いつまでもらえる?
  • 辞めたら失業保険はすぐ出るの?
  • 辞めたあとも傷病手当金はもらえる?
  • 休職中も社会保険料はかかる?
  • うちの会社に休職制度があるのか分からない
  • 病院に行かないと休めないの?

上記のような悩みに答えます。

疲れきって辞めたいとき、目の前には「休む」と「辞める」の2つの道がありますが、どちらを選ぶと手元のお金がどう動くのかは、意外なほど見えにくいものです。検索すると、疲れの原因の分析や「辞めるべきかのセルフチェック」、休職と退職のメリット・デメリットの比較、転職サービスの案内が上に並びます。けれど、休んだ場合に入る傷病手当金と、辞めた場合に入る失業保険を、始まる時期・続く期間・受け取る前提・保険料まで同じ物差しで並べたものはなかなか見当たりません。そこで、2つの給付の基本を押さえたうえで、体調が戻らないうちは失業保険を受けられず受給期間の延長を申し出ること、休んでから辞めると続く給付の条件、受診と通院費の制度まで、健康保険法・雇用保険の公式資料・厚生労働省の資料で確かめながら整理しました。

先に答え

休職すれば、条件を満たすと傷病手当金が待期3日のあと通算1年6か月まで、標準報酬月額の平均の3分の2を日割りした額で出ます。辞めて受ける失業保険は働ける状態が前提なので、体調が戻らないうちは受給期間の延長を申し出ることになります。在職中から傷病手当金を受けていれば、退職後も条件しだいで続けて受けられます(2026年11月時点)。

辞めた場合の失業保険の日額は、失業保険の計算ツール で自分の年齢と賃金を入れると目安が出ます。

2026年11月時点の制度で確かめています

目次

疲れて辞めたい日に決めなくていいこと

机の上の開いた手帳

疲れて辞めたいと感じた日に、休職か退職かまで決める必要はありません。その日に決めなくていいことと、その日のうちに確かめておくと後で助かることを分けておけば、頭の中の重さが少し軽くなります。

決めなくていいのは、休むか辞めるかの最終的な答えと、会社にどう伝えるかの言い回しです。疲れがたまっているときは、比べる材料がそろっていないまま「全部終わらせたい」という気持ちだけが先に立ちやすくなります。休職も退職も、手続きが動き出すとお金の流れが変わるので、材料が無いまま選ぶと、後から「先にあちらを確かめておけばよかった」となりがちです。

逆に、決める前に手元に集めておきたい材料は次のとおりです。

  • 就業規則のうち、休職と退職について書かれた項目
  • 会社の健康保険が協会けんぽか健康保険組合か(保険証やマイナポータルで分かる)
  • 今の会社で健康保険に入ってから何年たつか
  • いつ頃から、どんな疲れや不調が続いているかのメモ

たとえば、ある朝どうしても起き上がれず、その日のうちに退職を伝えた人は、辞めた後に体調が戻らなければ、失業保険の受け取りも後ろにずれていきます。同じ人が、その日は有給休暇で休んで上の4つを確かめていれば、休職して傷病手当金を受ける道と、辞めて失業保険を受ける道を、数字で比べてから選べます。

決めるのは、この記事の下の表を自分の状況で埋めてからで十分です。疲れているときほど、決めることを減らして、確かめることだけに絞ってください。

休むと辞めるで、入るお金と出るお金

休んだ場合の主な収入は健康保険の傷病手当金、辞めた場合は雇用保険の基本手当(失業保険)です。この2つは、受け取る前提がちょうど反対になっていて、傷病手当金は「療養のため働けないこと」、失業保険は「すぐに働ける状態であること」が条件になります。

2つの給付は、対象にしている状態が違います。傷病手当金は、健康保険に入っている人が業務外の病気やけがで仕事を休んだ間に出る給付で、失業保険は、雇用保険法が「失業」と呼ぶ、働く意思と能力がありながら職業に就けない状態の人に出る給付です。厚生労働省の雇用保険Q&Aは、すぐに職業に就くことができない人は基本手当を受けられないと書いています。

比べる点 休職して傷病手当金 辞めて失業保険
1日の額 直近12か月の標準報酬月額の平均÷30×3分の2 辞める前の賃金から出す賃金日額×給付率(60歳未満は50〜80%)
始まり 連続3日の待期のあと、4日目から 求職の申込みのあと待期7日。正当な理由のない自己都合はさらに原則1か月の給付制限
続く期間 同じ病気・けがで、支給開始から通算1年6か月 一般の離職者は加入期間で90日・120日・150日
受け取る前提 療養のため働けない・給与が出ない(出ても少なければ差額) すぐに働ける状態であること
保険料 健康保険・厚生年金に入ったまま。病気の休職を免除する条文は確認できない 会社の健康保険・厚生年金から外れる(資格喪失日は退職日の翌日)。任意継続の申請期限は資格喪失日から20日

出典:健康保険法99条(e-Gov法令API)/協会けんぽ「傷病手当金」/厚労省「雇用保険の基本手当日額の変更」/厚労省「自己都合離職者の給付制限について」/ハローワーク「基本手当の所定給付日数」/厚労省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」

この表で目を向けたいのは、2つの給付が同じ日に重ならないことです。働けない状態で受けるのが傷病手当金、働ける状態で受けるのが失業保険なので、同じ期間に両方を受けることはできません。休むか辞めるかは、どちらの給付を「いま」受けるかの選択でもあります。

たとえば、体調が悪く今は働けそうにない人が辞めると、失業保険はすぐには受けられず、在職中に傷病手当金を受けていない(受ける条件も満たしていない)と退職後の傷病手当金も受けられないため、収入の無い期間が生まれることがあります。反対に、疲れてはいるけれど働くことはできる人が辞めるなら、受給資格を満たしていれば、失業保険の手続きに進めます。同じ「疲れて辞めたい」でも、働けるかどうかで選べる給付が入れ替わるということです。

自分がどちらの列に当たるかを考えるときは、気持ちの重さではなく「いま働ける状態か」を軸にすると整理しやすくなります。働けない状態かどうかの見立ては自分ひとりで決めず、次の項の傷病手当金の条件と、後半の受診の目安をあわせて見てください。

休職中に入るお金は傷病手当金

硬貨と紙幣

休職中に会社から給与が出ない間は、条件を満たせば、健康保険の傷病手当金が収入の柱になります。1日あたりの額は、直近12か月の標準報酬月額の平均を30で割り、その3分の2で、連続3日の待期のあと4日目から、同じ病気・けがについて支給開始から通算1年6か月まで出ます。

健康保険法99条は、被保険者が「療養のため労務に服することができないとき」に、その日から3日を経過した日から傷病手当金を支給すると定めています。額の出し方も同じ条文にあり、支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12か月の標準報酬月額の平均の30分の1の、3分の2です。期間は令和4年1月1日から「通算して1年6か月」に変わり、途中で働いて支給されなかった期間があっても、その分を後ろへ繰り越せるようになりました。

傷病手当金の1日あたりは、平均の3分の2
直近12か月の標準報酬月額の平均÷30×3分の2=1日あたりの額
待期3日のあと4日目から、通算1年6か月まで

協会けんぽの案内では、受け取るための条件は次の4つです。

  • 業務外の病気やけがの療養のための休業であること(仕事中や通勤中のものは労災の対象)
  • 仕事に就くことができないこと(療養担当者の意見などをもとに、仕事の内容を考えて判断される)
  • 連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
  • 休んだ期間に給与の支払いが無いこと(傷病手当金より少ない給与なら差額が出る)

待期の3日には、有給休暇や土日祝日も含まれ、給与が出たかどうかは関係ありません。働ける状態かどうかは、本人や医師だけで決まるのではなく、療養担当者の意見などをもとに保険者が判断します。健康保険に入ってからの期間が12か月に満たない人は、その期間の平均と、標準報酬月額の平均額(支給開始日が令和7年4月1日以降は32万円)のうち低いほうで計算されます。任意継続被保険者は対象外です。

出典:健康保険法99条(e-Gov法令API)/厚労省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」/協会けんぽ「傷病手当金」/協会けんぽ よくあるご質問(傷病手当金)

給与との関係は、健康保険法108条が決めています。報酬を受けることができる期間は傷病手当金を支給せず、その報酬が傷病手当金の額より少ないときは差額を支給する、という条文です。協会けんぽは、有給休暇の賃金や、出勤の有無に関わらず出る手当もこの報酬に含めて調整すると説明しています。つまり有給休暇を使った日は、その日の賃金と傷病手当金の額を比べて、賃金が少なければ差額が出る形です。

たとえば、体調を崩し、療養のため働けない状態で休職の前に有給休暇を3日続けて取り、そのまま休職に入った人は、その3日で待期が成立し、4日目以降も働けず給与が出なければ、4日目からが支給の対象になります。一方、2日休んだあと3日目に出勤した人は待期が成立しないので、次に休み始めた日から数え直しになります。休み始めの数日の並べ方で、支給が始まる日が動くということです。

自分の額を知りたいときは、標準報酬月額を会社の総務か加入先(協会けんぽや健康保険組合)に問い合わせて確かめるのが早道です。額と期間の細かい扱いは 傷病手当金はいくら・いつまで? に、申請書の書き方は 傷病手当金の申請書の書き方 に、受け取れない場面は 傷病手当金がもらえないのはどんな時? にまとめています。

辞めて受ける失業保険は働ける状態が前提

辞めた場合の失業保険は、ハローワークで求職の申込みをし、すぐに働ける状態であることが受け取る前提です。体調が悪く30日以上続けて働けないなら、受け取る代わりに受給期間の延長を申し出て、受け取れる期限を後ろへ延ばしておくことになります。

失業保険を受け取れる期間(受給期間)は、原則として離職した日の翌日から1年です。この1年を過ぎると、所定給付日数が残っていても受け取れなくなります。働けないまま1年が過ぎると、体調が戻ったときには受給期間が終わっていて受け取れない、ということが起きます。延長を申し出ると、本来の1年に働けない日数を加えられます。

厚生労働省のQ&Aによると、離職日の翌日から1年以内に、病気やけがなどで30日以上続けて職業に就くことができない場合は、延長の申請をすることで、本来の1年に働けない日数を加えられます。加えられるのは最大3年で、受給期間は合わせて4年が上限です。申請は、30日以上続けて働けなくなった日の翌日以降、早めに行います。離職前から働けない状態が続いていた場合は、離職した日の翌日から30日たった日の翌日以降です。

体調が戻らないまま辞めたときの順番
  1. 1延長を申し出る30日以上働けなくなった日の翌日以降に
  2. 2療養に専念するこの間は失業保険を受けない
  3. 3働ける状態になるハローワークで求職の申込み
  4. 4待期7日正当な理由のない自己都合はさらに給付制限

出典:厚労省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」/ハローワーク「基本手当について」/雇用保険法20条(e-Gov法令API)/雇用保険法21条(待期)

働ける状態になって受け取り始めるときは、求職の申込みから待期7日があり、正当な理由がなく自己の都合で辞めた人は、2025年4月1日以降の退職なら原則1か月の給付制限がその後にはさまります。雇用保険法33条1項は、給付制限の対象を「正当な理由がなく自己の都合によって」退職した場合としています。体力の不足や心身の障害、疾病などにより離職した人は、ハローワークの示す特定理由離職者の類型の1つに挙がっていますが、当たるかどうかは、事業主と本人の双方の主張を確認できる資料で事実を確かめたうえで、ハローワークが判断します。

特定理由離職者と判断されると、受給資格は離職の日以前1年間に被保険者期間が6か月以上あれば足ります(一般の離職者は2年間に12か月以上)。ただし、病気などの正当な理由のある自己都合の場合、所定給付日数は一般の離職者と同じ表(被保険者期間1年以上なら90日・120日・150日)で、日数が増えるわけではありません。

出典:ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」/厚労省パンフレット「離職されたみなさまへ」

たとえば、疲れはあるが通院はしておらず、働くことはできる人が、正当な理由がなく自己都合で辞めたと判断され、受給資格も満たす場合は、待期7日と給付制限1か月のあとに支給の対象になります。同じ人が、辞める時点で30日以上続けて働けない状態だった場合は、延長を申し出て、働ける状態になってから申込みに進みます。辞めた時点の体の状態で、失業保険が始まる日が大きく変わるということです。

辞めた場合の日額は、給付率が60歳未満で50〜80%、年齢ごとに上限があり、下限は2,562円です。自分の数字は失業保険の計算ツールで出し、延長の手続きはハローワークの窓口で確かめてください。

休んでから辞めると続くもの

在職中に傷病手当金を受け始めてから辞めると、条件を満たせば退職後も残りの期間を続けて受けられます。これを資格喪失後の継続給付といい、休んでから辞めるか、いきなり辞めるかで違いが出るのはこの点です。

健康保険法104条は、資格喪失の日の前日まで引き続き1年以上被保険者であった人で、資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けている人は、被保険者として受けられるはずだった期間、継続して受けられると定めています。資格喪失日は退職日の翌日なので、退職日まで1年以上続けて加入していることが1つ目の条件です。協会けんぽの案内は2つ目の条件を、資格喪失時に傷病手当金を「受けているか、または受ける条件を満たしていること」と書いています。

条件 中身 落とし穴
加入期間 退職日までに継続して1年以上の被保険者期間 任意継続・共済組合・国保の期間は数えない
退職時の状態 退職時に傷病手当金を受けているか、受ける条件を満たしている 退職日に出勤すると条件を満たさない
働けない状態が続く(東京都の資料) 同じ病気・けがで働けない状態が続いている いったん働ける状態になると、その後また働けなくなっても続かない(東京都の資料)

出典:健康保険法104条(e-Gov法令API)/健康保険法36条(e-Gov法令API)/協会けんぽ よくあるご質問(傷病手当金)/東京都「資格喪失後の傷病手当金の詳細」

協会けんぽは、退職日に出勤したときは継続給付の条件を満たさないため、退職日の翌日以降の傷病手当金は支払えないと明記しています。挨拶や引き継ぎのために最終日だけ出社すると、それまでの準備が無駄になりかねません。いったん働ける状態になると続けて受けられない点は、東京都が掲載している資料に書かれています。健康保険組合に入っている人は、扱いを自分の組合に確かめてください。

退職後に傷病手当金を受けている間は働けない状態なので、失業保険は受けられません。その間に失業保険の受給期間が過ぎないよう、前の項の延長を申し出ておきます。東京都の資料も、仕事ができるようになったときに基本手当を受給できるよう、受給期間延長の手続きをしておくことをすすめています。

たとえば、健康保険に継続して2年入っている人が休職して傷病手当金を受け始め、休職中のまま、退職日にも出勤せずに退職した場合は、1年以上の加入と退職時の受給の両方を満たしているので、働けない状態が続く限り残りの期間を続けて受けられる形になります。健康保険の加入が継続して半年の人が同じ順番をとっても、加入期間が1年に足りないので、退職日の翌日からは受けられません。同じ順番でも、加入期間で結果が分かれます。

休職から退職へ移る具体的な段取り、有給休暇と退職日の並べ方は 休職から退職する時の順番 に渡します。休職中に次の仕事を探したい人は、傷病手当金が止まる場面を 休職中の転職活動はしていい? で先に見てください。

休職中の保険料と休職制度の確かめ方

休職中も会社を辞めていなければ、健康保険と厚生年金の資格は続くので、保険料の扱いが問題になります。健康保険法で保険料を徴収しないと定めている休業は、育児休業等と産前産後休業(いずれも事業主の申出が要ります)で、病気やけがの休職を同じように免除する条文は確認できませんでした。

保険料の負担は、健康保険法161条で被保険者と事業主がそれぞれ2分の1、厚生年金保険法82条でもそれぞれ半額と決まっていて、納める義務は事業主にあります。在職中は、健康保険法167条により、会社が給与から本人負担分を控除できます。休職中に給与が出ないと、控除する元の報酬がありません。その間の本人負担分をどう納めるかは、ここで見た条文からは分かりません。払い方と時期は、休職に入る前に会社の総務に確かめておきます。

出典:健康保険法159条(e-Gov法令API)/健康保険法161条(e-Gov法令API)/健康保険法167条(e-Gov法令API)/厚生年金保険法82条(e-Gov法令API)

休職できるかどうかは、労働基準法に定めがなく、会社の就業規則しだいです。厚生労働省のモデル就業規則の解説は、休職の定義・期間の制限・復職については労働基準法に定めがないと書いています。モデルの規程例でも、欠勤が何か月を超えたら休職になるか、休職が何年まで続くかは空欄になっていて、会社ごとに決める作りです。

就業規則で確かめたいのは、次の点です。

  • 休職できる条件(欠勤がどれだけ続いたら休職になるか)
  • 休職できる期間の長さ
  • 休職中の給与が出るか、出ないか
  • 休職期間が満了しても戻れないときの扱い(満了で退職とする規程例がある)
  • 診断書など、会社に出す書類

出典:厚生労働省「モデル就業規則」

たとえば、就業規則に「欠勤が一定期間を超えたら休職」と書かれている会社では、まず欠勤などで休み、その期間を過ぎてから休職に切り替わります。休職の定めが無い会社では、休職という道そのものが用意されていないこともあり、その場合は欠勤や有給休暇で休みながら、傷病手当金の条件に当たるかを確かめることになります。休職期間が満了したときの扱いや、体調を理由にした解雇との違いは うつや体調不良の欠勤で解雇されたら? を見てください。

就業規則が手元に無ければ、会社に見せてもらうよう頼んで構いません。休職の項目と保険料の払い方の2つを先に聞いておくと、休むと決めたときに慌てずに済みます。

受診の目安と通院費を抑える制度

書類に記入する手元

疲れが続いていて受診するか迷うときは、厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」の目安が参考になります。通院が続くことになった場合は、自立支援医療(精神通院医療)という、通院医療費の自己負担を軽くする制度があります。

「こころの耳」は、憂うつ感や不安感といったストレスのサインを挙げたうえで、こうした症状が2週間以上続く場合は、精神科・心療内科などの専門家に早めに相談することをすすめています。受診するかどうか、休むかどうかを決めるのは本人と主治医で、この記事が見立てることはしません。ただ、傷病手当金は療養のため働けないことが前提の給付なので、どの道を選ぶにしても、相談先を早めに持っておくと話が進みやすくなります。

出典:厚生労働省「こころの耳」ストレスへの気づき

自立支援医療(精神通院医療)は、通院による精神医療を続ける必要がある人の通院医療費の自己負担を軽くする公費負担医療制度です。

項目 中身
自己負担 公的医療保険で3割のところが1割に。世帯の所得に応じて月の上限がある
申請先 住んでいる市町村の担当窓口(障害福祉課・保健福祉課など)
有効期間 受給者証の有効期間は1年以内で、更新が要る
使える場所 都道府県・指定都市が指定した医療機関・薬局で、受給者証に書かれたもの
対象外 入院費用、医療機関以外でのカウンセリングなど

出典:厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」/厚生労働省「自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み」

対象は「通院による治療を続ける必要がある程度の状態」の人で、申請には医師の診断書などが要ります。診断書が出れば必ず使えるというものではなく、対象に当たるかは申請先の市町村で確かめることになります。月の上限額は所得の区分で変わるので、自分の区分と金額は市町村の窓口で確かめてください。

たとえば、厚生労働省の資料の例では、ひと月の医療費が7,000円で医療保険の自己負担が2,100円の人は、この制度を使うと700円になります。通院が続きそうだと主治医から言われたら、制度の名前を出して相談してみてください。

相談先としては、主治医、会社の産業医や人事、市町村の窓口があります。家族に話しにくいときは、上の比較表と制度の名前を見せながら話す方法もあります。

休まなくていい場合

休職という手段を使わずに済む人もいます。疲れはあっても働くことができ、辞めて次へ進むと決めている人は、休職を挟まずに失業保険の手続きへ進む道があります。

傷病手当金は「療養のため働けない」状態を前提にした給付なので、働ける状態なら条件に当たらず、休職しても傷病手当金は受けられません。辞めると決めたなら、退職後にハローワークで求職の申込みをして、失業保険の手続きに進みます。

休職を挟まずに辞める前に確かめておきたいことは、次の3つです。

  • いま働ける状態かどうか(迷うときは主治医や相談先に確かめる)
  • 辞めた後の日額と日数(失業保険の計算ツールで出せる)
  • 辞める理由が会社都合や正当な理由のある自己都合に当たる可能性があるか

たとえば、長時間の残業で疲れきっているが、働くことはできる人は、休職を挟まず、辞めたあとにハローワークで離職理由を確かめる道があります。反対に、働ける状態かどうかが自分でも分からない人は、辞める前に主治医や相談先に確かめ、休む道と比べてからでも遅くありません。辞めたい気持ち全般の整理は 仕事を辞めたいと思ったら にまとめています。

どちらに当たるかを決めるのは、あなたです。休むことも辞めることも、選ぶ前に比べられる材料が手元にあれば十分です。

次に読むもの

休職から退職へ移る段取りは 休職から退職する時の順番、傷病手当金の額と期間は 傷病手当金はいくら・いつまで?、申請書は 傷病手当金の申請書の書き方 へ。もらえない場面は 傷病手当金がもらえないのはどんな時?、休職中の転職活動は 休職中の転職活動はしていい?、体調を理由にした解雇は うつや体調不良の欠勤で解雇されたら? を見てください。

休職から退職する時の順番は?有給消化・傷病手当金・退職日の並べ方で変わる額

傷病手当金はいくら・いつまで?在職中と退職後で変わる受給条件と申請の順番

よくある質問

休職と退職、結局どちらがいいですか?

どちらがいいかは人によって違い、決めるのはあなたです。比べる軸は「いま働ける状態か」で、働けない状態なら休職中は傷病手当金、働ける状態なら辞めて失業保険、という形で受けられる給付が入れ替わります。上の比較表を自分の状況で埋めてから選んでください。

休職してから辞めるほうが得ですか?

得かどうかは一律には言えません。在職中から傷病手当金を受けていて、加入期間が1年以上あるなど条件を満たせば、退職後も続けて受けられますが、加入期間が足りない人や、退職日に出勤した人は続きません。自分が条件に当たるかを先に確かめるのが順番です。

辞めたら失業保険はすぐ出ますか?

働ける状態であれば、求職の申込みから待期7日のあとに支給の対象になり、正当な理由のない自己都合なら原則1か月の給付制限がさらにはさまります。体調が悪く30日以上続けて働けないときは、すぐには受けられないので受給期間の延長を申し出ます。

傷病手当金と失業保険は同時にもらえますか?

同時には受けられません。傷病手当金は働けない状態、失業保険は働ける状態が前提だからです。退職後に傷病手当金を受ける間は、失業保険の受給期間の延長を申し出ておき、働ける状態になってから失業保険の手続きに進みます。

休職中の社会保険料は免除されますか?

健康保険法で保険料を徴収しないと定めている休業は育児休業等と産前産後休業で、病気の休職を免除する条文は確認できませんでした。給与が出ない間の本人負担分の払い方は条文からは分からないので、休職に入る前に総務に確かめてください。

診断書がないと休職できませんか?

休職の条件は法律ではなく就業規則で決まるので、診断書が要るかどうかも会社の定めしだいです。傷病手当金では、働けない状態かどうかは療養担当者の意見などをもとに保険者が判断します。まず就業規則の休職の項目を確かめてください。

退職は何年目が多いのですか?

何年目に辞める人が多いかという統計は、ここでは扱っていません。お金の面で年数が関わるのは、退職後に傷病手当金を続けて受けるには退職日までに継続して1年以上の加入が要ること、失業保険の日数が雇用保険に入っていた期間で90日・120日・150日に分かれることの2つです。

数字だけ、もう一度

  1. 決めなくていいこと:休むか辞めるかは、材料をそろえてから。疲れた日に決めない
  2. 2つの給付の前提:傷病手当金は療養のため働けないこと、失業保険はすぐに働ける状態であること。同時には受けられない
  3. 傷病手当金:直近12か月の標準報酬月額の平均÷30×3分の2。連続3日の待期のあと4日目から、通算1年6か月まで。給与が出れば調整され、傷病手当金の額より少ないときは差額が出る
  4. 失業保険:受給期間は離職日の翌日から1年。30日以上働けなければ延長でき、最大3年を加えて合わせて4年まで。待期7日、正当な理由のない自己都合は原則1か月の給付制限。一般の離職者は90日・120日・150日
  5. 休んでから辞める:退職日までに継続して1年以上の加入と、退職時に受けている(受ける条件を満たしている)ことで、退職後も続けて受けられる。退職日に出勤しない
  6. 保険料と休職制度:保険料を徴収しない条文があるのは育児休業等と産前産後休業。休職の有無・期間は就業規則しだい
  7. 受診と通院費:「こころの耳」は症状が2週間以上続く場合に早めの相談をすすめる。自立支援医療は3割を1割に、有効期間は1年以内

疲れて辞めたいときに必要なのは、休むか辞めるかの正解ではなく、自分がいま働ける状態かどうかと、その状態で受けられる給付の順番です。働けない状態なら、条件を満たすと傷病手当金の対象になり、辞めるとしても、30日以上働けないときは失業保険の受給期間の延長を申し出られる、という流れを知っていれば、焦って退職日を決める理由は減ります。数字を並べて比べたうえで選んだ道なら、休むことも辞めることも、自分で決めた道になります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

やめ活編集部です。退職の伝え方・失業保険・退職代行について、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

目次