退職金がない会社はどのくらい?中小企業の割合と就業規則での確かめ方

机の上の開いた手帳
  • 今の会社に退職金があるのか、正直よく分からない
  • 面接で「うちは退職金はない」と言われた気がする
  • 退職金がない会社って、普通なの?
  • 退職金がない会社は、どのくらいの割合であるの?
  • 退職金がないのは違法じゃないの?
  • 自分の会社にあるかどうかは、どこを見れば分かる?
  • 就業規則がどこにあるのか知らない
  • 退職金がないなら、早く辞めたほうがいいの?

上記のような悩みに答えます。

退職金は、給料や有給休暇と違って、法律で一律に決まっている制度ではありません。そのため、同じ正社員でも会社によって「ある」「ない」が分かれ、本人が自分の会社の扱いを知らないまま働いていることもあります。検索で上に出てくるのは「退職金なしの会社はやばいか」「メリットとデメリット」「転職するならこの会社」といった評価や転職の案内が中心で、自分の会社に退職金があるのかを、どの書類をどの順番で見て確かめるのか、統計の数字が誰を対象にした何年の調査なのかまでは、あまり並んでいません。そこで、退職金がない会社の割合と法律上の位置づけという基本を押さえたうえで、国と東京都の調査の対象の違い、自分の会社で確かめる順番、辞める判断に退職金をどう入れるかまで、労働基準法の条文と厚生労働省・東京都・労働局の資料で確かめながら整理しました。

先に答え

退職金制度は法律で必ず設けなければならないものではなく、会社が定めた場合に就業規則に書く決まりです。令和5年の国の調査では退職給付制度がある企業は74.9%、従業員30〜99人の企業では70.1%でした。自分の会社にあるかは、就業規則→入社時の労働条件の書面→中退共の加入の順に確かめます(2026年11月時点)。

2026年11月時点の制度で確かめています

目次

退職金制度がない会社は4社に1社

机の上の開いた手帳

令和5年の厚生労働省の就労条件総合調査では、退職給付(一時金・年金)制度がある企業は74.9%でした。逆から見ると、制度がない企業は24.8%で、おおよそ4社に1社は退職給付制度を持っていないことになります。退職金がない会社は、珍しい例外ではありません。

この調査は、常用労働者30人以上の民営企業を対象にしたもので、30人未満の会社は数字に入っていません。調査の時点は令和5年1月1日現在です。もっと小さな会社で働いている人は、この割合をそのまま自分の会社に当てはめられない点に気をつけてください。また、国の調査で退職給付の表が令和6年以降も同じ形で出ているかは確かめられていないため、ここでは令和5年の調査として数字を使います。

規模別に見ると、会社が小さいほど制度がある割合は下がります。

企業規模(常用労働者) 退職給付制度がある企業の割合
1,000人以上 90.1%
300〜999人 88.8%
100〜299人 84.7%
30〜99人 70.1%
全体 74.9%

出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」第16表

業種によっても差があり、同じ調査では宿泊業,飲食サービス業が42.2%、サービス業(他に分類されないもの)が54.4%、建設業が82.9%、製造業が85.6%でした。前回の平成30年調査では全体が80.5%だったので、制度がある企業の割合は令和5年のほうが低くなっています。この数字の変化の理由は、調査の概況からは読み取れないので、ここでは書きません。

制度がある会社のなかでも、形はいくつかに分かれます。制度がある企業を100とすると、退職一時金制度のみが69.0%、退職年金制度のみが9.6%、両方を併用しているのが21.4%でした。退職金には、辞めるときにまとめて受け取る形のほかに、年金の形で受け取る仕組みだけを持つ会社もあるということです。

たとえば、従業員が50人ほどの会社に勤めている人なら、30〜99人の70.1%が目安になります。業種で見ると、飲食や宿泊の業種は42.2%でした。これも30人以上の企業を対象にした数字で、規模と業種の両方に合わせた数字は統計にありません。どちらにしても、統計が教えてくれるのは「同じような会社のうち、どれくらいに制度があるか」までで、自分の会社にあるかどうかは統計からは分かりません。

割合を見て安心するのも不安になるのも、まだ早いところです。数字は「退職金がない会社が特別におかしいわけではない」と知るための材料にとどめて、自分の会社の扱いは、このあとの書類で確かめます。

退職金は法律で決まっていない

退職金を支払う制度を作るかどうかは、会社が決めることです。法律は、会社が退職手当の定めをする場合に、その中身を就業規則に書くよう求めています。退職金を必ず設けるよう求める条文は、ここで見る労働基準法89条にはありません。

労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成と届出を義務づけ、記載する事項を並べています。退職手当についての号は、次のとおりです。

三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項(労働基準法89条3号の2)

労働基準法89条(e-Gov法令検索)

条文の書き出しが「定めをする場合においては」になっているのがポイントです。厚生労働省の「確かめよう労働条件」も、退職に関する事項はどんな場合でも就業規則に書く「絶対的必要記載事項」、退職手当は定めをした場合に必ず書く「相対的記載事項」と分けて説明しています。退職に関する事項(解雇の事由を含む)は必ず書く事項、退職手当は定めをした場合に書く事項、という分け方です。

茨城労働局のQ&Aも、退職金制度は必ず設けなければならないものではないとしたうえで、就業規則等で具体的な金額や支払い方法を定めている場合には、その規則のとおり支払わなければならないと説明しています。大阪労働局は、就業規則等に退職金の定めがあれば、労働基準法上の賃金として会社に請求できると考えられる、と整理しています。

会社の状態 退職金の扱い(労働局の説明)
就業規則等に退職金の定めがある 規則のとおり支払う。賃金として請求できると考えられる
明文の規則は無いが、払うのが慣行になっている 支払われるべきものと思われる(争いになることもある)
定めも慣行も無い 制度を設けることは義務ではない

出典:茨城労働局「退職金はないと言われた」/大阪労働局「退職金について」/厚生労働省「確かめよう労働条件」

慣行の行は、言い切りではありません。茨城労働局の原文は「支払われるべきものと思われます」という書き方で、慣行をめぐって労使で争いになることがあり、その場合は個別労働紛争解決制度(労働局や労働基準監督署の総合労働相談コーナー)を使える、と続けています。先輩が辞めるときに退職金を受け取っていたのに、自分は「ない」と言われた、という人は、この行に当たるかもしれません。

なお、労働基準法11条は賃金を「名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定めていますが、条文に退職金の語は出てきません。退職金が賃金として請求できるという整理は、条文そのものではなく労働局の説明です。

たとえば、入社のときに「うちは退職金はない」と口頭で聞いた人でも、就業規則を開くと退職金の章があることがあります。反対に、「あるらしい」と聞いていたのに、就業規則のどこにも退職手当の定めが無いこともあります。労働局は、就業規則等に具体的な金額や支払い方法の定めがあれば、その規則のとおり支払う必要があると説明しています。口頭の話だけで決めつけず、書かれている定めを確かめると迷いにくくなります。

違法かどうかで悩むより、「定めがあるか」を確かめるほうが先です。定めがあれば受け取る側の話になり、定めも慣行も無ければ、辞める判断の材料から退職金を外して考える話になります。

東京都の中小企業調査で見る有無とモデル額

国の調査は30人未満の会社を含まないので、もう少し小さな会社の様子を知りたい人には、東京都の調査が参考になります。東京都産業労働局の令和6年の「中小企業の賃金・退職金事情」では、退職金制度がある会社が64.2%、ない会社が34.4%でした。

この調査は、都内の従業員10〜299人の中小企業に送ったもので、退職金制度の有無を集計できたのは659社です。対象の地域も規模も時点も国の調査と違うので、国の74.9%と並べて「東京は低い」と比べることはできません。別々の物差しとして読んでください。

従業員規模(東京都・令和6年) 退職金制度がある会社の割合
10〜49人 62.0%
50〜99人 63.3%
100〜299人 83.3%
調査産業計 64.2%

出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」第7表-①

東京都の調査でも業種の差は大きく、宿泊業,飲食サービス業は39.0%、製造業は87.1%でした。制度がある会社の中では、退職一時金のみが76.1%と多くを占めています。

この調査には、退職金の額の目安として「モデル退職金」も載っています。ただし、これは会社が学歴・勤続年数・年齢のモデル条件に当てはめて答えた額で、実際に誰かに支払われた額ではありません。退職金制度がある会社だけの値でもあります。自己都合で辞めた場合のモデル額は、次のとおりでした。

勤続年数(自己都合) 大学卒 高校卒
5年 43.2万円(1.7月分) 39.7万円(1.8月分)
10年 112.5万円(3.9月分) 98.5万円(3.9月分)
20年 346.8万円(9.8月分) 288.1万円(9.3月分)
30年 750.7万円(17.8月分) 575.7万円(15.9月分)

出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」第8表-①

括弧の月分は、モデルの所定時間内賃金の何か月分かを示したものです。同じ表の会社都合退職の列では、大学卒10年が144.8万円、20年が408.1万円で、この2つは自己都合のモデル額より高い値です。

たとえば、都内の従業員30人ほどの会社に大学を出て入り、10年ほど勤めた人なら、制度がある会社の自己都合のモデル額は112.5万円、3.9月分という水準です。ただし、自分の会社に制度が無ければ0円ですし、制度があっても会社ごとの規程で額は決まります。月分の数字を自分の基本給に掛けて「自分は◯万円」と出すことはできないので、ここはあくまで、制度がある会社でのおおよその水準として読みます。

モデル額は、自分の会社に制度があると分かったあとで「規程の額は相場と比べてどうか」を考えるときに使える数字です。順番としては、先に自分の会社の定めを確かめ、そのあとで眺めるくらいがちょうどよい使い方です。

自分の会社に退職金があるか確かめる順番

自分の会社に退職金があるかは、就業規則、入社時の労働条件の書面、中退共などの加入、の順に見ていくと確かめられます。上から順に見て、どこかで退職金の定めが見つかれば、それが手がかりになります。書類どうしで食い違うときは、あとの例のように規程の中身まで確かめます。

この順番は、編集部が確かめやすさで並べたものです。就業規則には、退職手当の定めをする会社ならその中身を書くことになっていて(作成・届出の義務は常時10人以上の会社)、労働者に周知する義務もあります。入社時の労働条件の明示でも、退職手当の定めがあれば、適用される労働者の範囲や決定・計算・支払の方法、支払の時期が明示する事項に入ります(労働基準法施行規則5条1項4号の2)。定めをしない会社は、この事項を明示しなくてよいとされています。

退職金の定めは、3つの書類で確かめる
  1. 1就業規則を開く退職手当・退職金の章や別規程を探す
  2. 2入社時の書面を見る労働条件通知書・雇用契約書の退職金の欄
  3. 3中退共などの加入を聞く社外の制度で積み立てていないか

出典:労働基準法施行規則5条(e-Gov法令検索)

それぞれの書類で見るところは、次のとおりです。

  • 就業規則:目次に「退職金」「退職手当」の章があるか、「退職金規程は別に定める」と書かれていないか
  • 退職金規程(別規程):適用される人の範囲(正社員だけか、勤続何年からか)と、計算の方法
  • 労働条件通知書・雇用契約書:退職金の欄に「有」「無」や制度の名前が書かれていないか
  • 中退共・特定退職金共済・企業年金:会社が社外の制度で積み立てていないか

労働条件の書面については、少し注意があります。労働基準法施行規則5条3項は、書面で明示しなければならない事項を同条1項1号から4号まで(昇給を除く)と並べていて、退職手当の4号の2はこの並びに入っていません。入社時の書面に退職金の欄が無くても、それだけで「制度が無い」とは決めつけず、就業規則の側も見ておきます。

たとえば、正社員として3年働いている人が、労働条件通知書の退職金の欄に「無」と書かれていると気づいたとします。この場合でも、就業規則に退職金規程があり、適用される人の範囲が「勤続3年以上の正社員」となっていれば、書面の記載より規程の範囲のほうを確かめる必要があります。逆に、就業規則にも書面にも何も無く、中退共などにも入っていないと分かれば、その会社には退職金の定めが無いと見る材料がそろいます。ただし、前に辞めた人が受け取っていたといった慣行の話は、定めとは別に残ります。

3つ全部を一度に調べる必要はありません。まず就業規則を開き、そこで答えが出なければ次へ、という順で十分です。見つかった書類の名前と、該当する条や欄の位置をメモしておくと、あとで会社に聞くときにも話が早くなります。

就業規則の退職金の章と、見つからないとき

封筒と万年筆

就業規則は、会社が労働者に周知しなければならない書類です。置かれている場所は会社によって違い、社内の掲示板や共有フォルダ、配られた冊子などがあります。まずはその置き場所を探します。

労働基準法106条1項と施行規則52条の2は、就業規則を労働者に周知させる方法として、次の3つを挙げています。

周知の方法 職場での例
常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付ける 休憩室の棚、総務の書棚に置かれたファイル
書面を労働者に交付する 入社時に配られた冊子・印刷物
電子データに記録し、常時確認できる機器を設置する 社内ポータル・共有フォルダとそれを見られるパソコン

出典:労働基準法106条(e-Gov法令検索)/労働基準法施行規則52条の2(e-Gov法令検索)

周知は会社の義務として書かれていますが、条文には「自由にコピーできる」「閲覧を断れない」とまでは書かれていません。見つけたら、その場で退職金の章と別規程の有無を確かめ、条の番号を控えておく、というくらいの使い方が現実的です。

見つからないときは、置き場所を担当者に聞くのが近道です。「就業規則はどこで見られますか」と聞くのは、退職の話をしなくてもできる質問です。退職金のことだけを聞きにくい人は、有給休暇や休職の決まりを確かめたいという形で聞いても、同じ就業規則にたどり着きます。

会社が小さい場合は、もう1つ事情があります。89条の作成・届出の義務は「常時10人以上」の労働者を使用する使用者に向けたもので、10人未満の会社は条文の範囲の外です。ただし、作る義務が無いことと、実際に就業規則が無いことは別で、10人未満でも就業規則や退職金規程を作っている会社はあります。小さな会社でも、まず「就業規則や退職金の決まりはありますか」と聞いてみるところから始めます。

たとえば、従業員8人の会社で働く人が担当者に聞き、「就業規則は無い」と言われた場合は、入社時の労働条件の書面と、中退共などへの加入の2つで確かめることになります。従業員が常時10人以上のはずなのに「見せられない」と言われた場合は、周知のしかたについて、会社の所在地を管轄する労働基準監督署の総合労働相談コーナーに相談できます。持っていくのは、入社時の書面と、いつ誰に聞いてどう答えられたかのメモです。

中退共・企業年金に入っているか

就業規則に退職金の章が見当たらなくても、会社が中退共(中小企業退職金共済)などの社外の制度で積み立てていることがあります。中退共に入っていれば、退職したときに、勤労者退職金共済機構から本人に直接退職金が支払われます。

令和5年の国の調査で、退職一時金制度がある企業が支払いの準備にどの方法を使っているかを見ると(複数回答)、全体では社内準備が56.5%、中退共が42.0%、特定退職金共済制度が9.9%でした。従業員30〜99人の企業に限ると、中退共は48.5%で、社内準備の49.6%とほぼ並びます。中退共については、小さな会社ほど使う割合が高いということです。

出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」第17表

中退共の公式サイトでは、令和7年度に加入している企業が375,555所、加入している従業員が3,571,957人と公表されています。単位は「社」ではなく「所」です。この数字を使って「中小企業の何割が加入している」と計算することはできないので、自分の会社については、直接確かめる必要があります。

出典:中退共「制度の概要」

大阪労働局は、中退共に加入している場合は退職時に勤労者退職金共済機構から本人に直接退職金が支払われ、厚生年金基金や適格退職年金などの企業年金に加入して退職一時金等の規定がある場合も、本人に直接支払われる場合がある、と説明しています。加入しているかどうかは、給与明細からは判断せず、会社に確かめます。

確かめるときに担当者へ聞くことは、次の3つにまとめられます。

  1. 中退共や特定退職金共済、企業年金に加入していますか
  2. 加入しているなら、どの制度ですか
  3. 会社の規程で払われる退職金は、それとは別にありますか

たとえば、従業員40人ほどの会社で、就業規則には「退職金は中小企業退職金共済により支給する」とだけ書かれている場合は、中退共から受け取る形と読めます。このときの額の決まり方と請求の手順は、中退共の退職金はいくら・いつ振込? で整理しています。会社の制度が企業型の確定拠出年金だった場合は、退職金とどう違い、いつ受け取れるのかを 確定拠出年金は退職金とは別? で見てください。

社外の制度に入っていると分かれば、「退職金はない」と思い込んでいた人でも、受け取る側の手続きを考える段階に進みます。加入が無く、就業規則にも書面にも定めが無ければ、そこで確かめる作業は終わりです。

勤続年数や辞め方で退職金の額が変わる

テーブルの上の硬貨

退職金の制度がある会社でも、勤めた年数と辞め方で受け取れる額は変わり、条件によっては出ないこともあります。どう変わるかは会社の規程と制度ごとに決まるので、自分の会社の規程の「計算の方法」の条を読むのが確実です。

国の調査で、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者について1人平均の退職給付額を見ると、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)は、定年で1,896万円、自己都合で1,441万円、会社都合で1,738万円でした。高校卒(管理・事務・技術職)は、定年で1,682万円、自己都合で1,280万円です。

退職事由(勤続20年以上かつ45歳以上) 大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 高校卒(管理・事務・技術職)
定年 1,896万円(36.0月分) 1,682万円(38.6月分)
会社都合 1,738万円(27.9月分) 1,385万円(33.8月分)
自己都合 1,441万円(30.3月分) 1,280万円(33.3月分)

出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」第22表

この表は、退職給付制度がある企業で、勤続20年以上かつ45歳以上で辞めた人の平均です。勤続が数年で辞めた人の額でも、全従業員の平均でもありません。30人未満の会社は含まれず、30〜99人に絞った額は概況に載っていないので、この表を「中小企業の退職金の平均」として読むことはできません。

勤続が短い場合は、制度によっては出ない線があります。たとえば中退共では、掛金の納付が11月以下だと退職金は支給されず(通算制度や他制度からの引継ぎを行っている場合は、11月以下でも支給される場合があります)、12月から23月までは掛金の納付総額を下回る額になると公式に案内されています。会社の規程でも、適用される労働者の範囲として「勤続◯年以上」と線を引いていることがあり、その線より手前で辞めると対象外になります。

辞め方で大きく変わるのが、懲戒解雇の場合です。厚生労働省のモデル就業規則は、懲戒解雇された者には退職金の全部又は一部を支給しないことがある、という例を示しています。これはあくまでモデルで法律ではなく、自分の会社の規程にどう書かれているかで扱いが決まります。懲戒解雇・諭旨解雇と退職金の関係は 懲戒解雇と諭旨解雇の違いは? にまとめています。

たとえば、勤続2年目で自己都合退職を考えている人なら、規程の「適用される労働者の範囲」と「計算の方法」の2つの条を読めば、自分が対象に入るかと、どの数字で額が決まるかがつかめます。対象に入らず、勤続年数の線もこれから先に無いと分かれば、退職日を動かしても退職金の面では変わらないので、ほかの事情だけで決められます。受け取ったあとの税金は 退職金の所得税・住民税はいくら?、公務員の人は 公務員が自己都合で辞めたら退職金はいくら? を見てください。

辞める判断に退職金をどう入れるか

退職金があるかどうかは、辞める判断を決める材料の1つにすぎません。「ない」と分かったから辞める、「ある」から残る、と決める必要はありません。決めるのは、退職金を含めた辞めたあとのお金の流れが見えてからで構いません。

退職金を判断に入れるときは、「いくらもらえるか」より「辞める時期で額が変わるか」を見るほうが役に立ちます。規程に勤続年数の線があって、その手前にいるなら、辞める時期を少し後ろにするだけで額が変わることがあります。線から離れている場合の変わり方は、規程の計算の方法の条で確かめます。

確かめた結果 判断への入れ方
定めが無い 退職金は0円として、辞めたあとのお金を見積もる
定めがあり、勤続年数の線の手前にいる 線を越える時期と、そこまで勤める負担を並べて比べる
定めがあり、線から離れている 額と、時期による変わり方を規程の計算の方法で確かめる
制度があるか分からないまま 就業規則と中退共などの加入を先に確かめる

退職金が無い前提で辞めたあとのお金を考える人は、受け取れる場合には、失業保険がいつからいくら入るかが、生活費の見通しの材料になります。自分の賃金と年齢で受け取れる日額の目安は 失業保険の計算ツール で出せます。退職金をあてにしない形で見積もっておけば、あとから定めが見つかったときは上乗せとして考えられます。

出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」

たとえば、退職金の定めが無い会社で、体調を崩しかけている人なら、退職金の面では今辞めても先に辞めても変わりません。考えるのは、失業保険と貯金で何か月暮らせるかと、体調のほうです。反対に、規程で「勤続3年以上」に線があり、あと数か月でそこに届く人なら、その数か月を勤める負担と、受け取れる額を並べて比べる意味があります。

どちらにしても、退職金の有無は、会社の良し悪しを決める物差しではありません。退職金が無いぶん給料がどうなっているかも、会社ごとの事情で、統計からは言えないことです。自分の会社の書類で分かったことだけを、辞めたあとのお金の表に書き込んでいく、という使い方にとどめます。

退職金を確かめなくていい場合

次に当てはまる人は、退職金を急いで確かめなくても大丈夫です。辞めるか迷っている段階で、全部の書類を調べ切る必要はありません。

  • 入社時の書面と就業規則で、退職金の定めが無いことをすでに確かめている
  • 中退共などの加入と、会社の規程の有無を、担当者からすでに聞いている
  • 体調などの理由で今すぐ職場を離れる必要があり、退職金の額で辞める時期が変わらない
  • 辞めるかどうかをまだ考え始めたばかりで、時期の話になっていない

最後の人は、確かめるのは辞める時期を考え始めてからで間に合います。就業規則は会社が周知する義務を負う書類なので、在職中の、退職日を決める前に一度開けば足ります。辞めることが決まってからでは聞きにくいと感じる人は、有給休暇の残りを確かめるついでに見ておくと、改まって聞く必要がありません。

会社に聞くこと自体に気が引ける人もいるはずです。ただ、退職金の定めがあるかどうかは、労働条件の一部で、就業規則は周知する義務がある書類です。「就業規則はどこで見られますか」という聞き方なら、辞めるつもりがあるかどうかを話さずに済みます。

中退共の退職金はいくら・いつ振込?自分でする請求手続きと掛金を下回る年数

確定拠出年金は退職したらどうする?移換の期限・手続きと放置した時にかかる手数料

公務員が自己都合で辞めたら退職金はいくら?勤続10年・20年の目安と計算式

よくある質問

外資系の会社は退職金がないって本当ですか?

外資系かどうかで退職金の有無を比べた公的な統計は見当たらないので、外資系だからない、少ないとは言えません。日本で雇われている人なら、ほかの会社と同じく就業規則と入社時の書面、社外の制度への加入で確かめます。

退職金は福利厚生の一つですか?

退職金を福利厚生として数えた公的な定義や統計は見当たりません。法律の上では、会社が退職手当の定めをした場合に就業規則に書く事項として扱われていて、定めがあれば労働局は賃金として請求できると考えられる、と説明しています。

基本給から、自分の退職金の額は出せますか?

退職金の額は会社ごとの規程で決まるので、基本給だけでは出せません。東京都の調査のモデル退職金は月分でも示されていますが、会社が答えたモデル額なので、自分の基本給に掛けて額を出す使い方はできません。規程の「計算の方法」の条を読むのが確実です。

退職金がない会社は、なぜないのでしょうか?

退職金制度を設けることは法律で義務になっていないので、作るかどうかを会社が決めています。個々の会社がなぜ設けていないかの理由は、調査の数字からは分かりません。

「退職金はない」と言われましたが、前に辞めた人は受け取っていました。

茨城労働局は、規則として明文化していなくても慣行となっている場合には支払われるべきものと思われる、と説明しています。ただし争いになることもあり、その場合は労働局や労働基準監督署の総合労働相談コーナーで個別労働紛争解決制度を使えます。前の人が受け取っていた時期や、誰から聞いたかをメモにして持っていきます。

入社時の書面に退職金のことが書かれていません。違法ですか?

退職手当は、会社が定めをしない場合は明示する事項から外れます。施行規則が書面の対象として並べる事項に退職手当は入っていませんが、厚生労働省の解釈までは確かめていないので、書面が要るかどうかは言い切れません。違法かどうかより先に、就業規則に定めがあるかを確かめます。

数字だけ、もう一度

  1. 割合(国):令和5年就労条件総合調査で退職給付制度がある企業は74.9%、ない企業は24.8%。30〜99人の企業は70.1%(30人未満は対象外)
  2. 法律:退職手当は定めをする場合に就業規則に書く(労働基準法89条3号の2)。作成・届出の義務は常時10人以上
  3. 割合(東京都):令和6年の都内中小企業調査で制度あり64.2%・なし34.4%。国の数字とは並べて比べない
  4. モデル額(東京都・自己都合):大学卒10年112.5万円(3.9月分)。会社が答えたモデルで、実際の支払額ではない
  5. 確かめる順番:就業規則 → 入社時の労働条件の書面 → 中退共などの加入
  6. 社外の制度:30〜99人の企業の退職一時金の支払準備は中退共48.5%(令和5年・複数回答)
  7. 辞め方:勤続20年以上かつ45歳以上の大学・大学院卒の管理・事務・技術職で、定年1,896万円・自己都合1,441万円(制度がある企業の退職者の平均)

退職金がない会社は珍しくなく、ないこと自体は違法でもありません。気にするべきなのは、自分の会社に定めがあるのに知らないまま辞めてしまうことのほうです。就業規則を一度開き、無ければ入社時の書面と社外の制度を確かめる。分かったことを辞めたあとのお金の見積もりに書き込めば、退職金があってもなくても、辞める時期は自分の数字で決められます。

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この記事を書いた人

やめ活編集部です。退職の伝え方・失業保険・退職代行について、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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