- 申請しても、自分はもらえないケースに入っていないか心配
- 傷病手当金の審査は厳しいと聞いた。落とされることはある?
- うつ病や適応障害で休んでいる。心の不調でも出る?
- 入社して1年たっていない。パートでももらえる?
- 退職日に挨拶だけ出勤したら、退職後はもらえないって本当?
- 妊娠中のつわりで休んでいる。傷病手当金の対象になる?
- 不支給の通知が届いた。どこに、いつまでに言えばいい?
- もらえなかったら、辞めたあとの生活費はどうすればいい?
上記のような悩みに答えます。
傷病手当金は、仕事以外の病気やけがで働けない日について、会社の健康保険から出るお金です。ただ、休んだからといって無条件に出るわけではなく、支給の要件、退職のときの条件、ほかのお金との調整のどこかで外れると、申請しても支給されません。検索すると「もらえないケース」を並べた説明は見つかりますが、自分がどの型で外れるのかを見分ける手順や、不支給の通知が来たあとの期限と窓口まで書いたものは、編集部が探した範囲では見当たりませんでした。そこで、もらえない理由を5つの型に分けたうえで、退職前に自分で防げる不支給と、不支給になったあとの審査請求の期限まで、健康保険法・社会保険審査官及び社会保険審査会法の条文と、協会けんぽ・厚生労働省の案内で確かめながら整理しました。
傷病手当金がもらえない主な場面は、4つの支給要件のどれかが欠けるとき、退職後の継続給付の条件を外したとき、労災・出産手当金・年金と重なるとき、期間や時効を過ぎたときです。退職日の出勤や任意継続のように、辞める前に確かめれば防げるものがあり、不支給に納得できなければ処分を知った日の翌日から3か月以内に審査請求できます(2026年10月時点)。
2026年10月時点の制度で確かめています
もらえない理由は5つの型に分かれる
傷病手当金が出ない理由はばらばらに見えますが、編集部の整理では、よくある外れ方は次の5つの型です。自分がどの型に当てはまりそうかを先に見ておくと、確かめる相手と書類が決まります。
型ごとに、決まりが書かれている場所が違うので、分けておくと確かめる先が決まります。支給の要件は健康保険法99条と協会けんぽの「給付対象」に、退職後の扱いは104条に、ほかのお金との調整は55条・103条・108条に、期間は99条と時効の193条に書かれています。どの条文の話かが分かれば、どの窓口に何を聞けばよいかも分かれます。
| 型 | もらえない・減る場面 | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 1 支給の要件が欠ける | 仕事中・通勤中のけが、働ける状態と判断された、連続3日の待期が成立しない、休んだ日に給与が出ている | 協会けんぽの「給付対象」、医師、会社の給与 |
| 2 対象の加入でない | 任意継続被保険者の期間中に始まった病気やけが | 健康保険法99条1項の括弧書き |
| 3 退職後の条件を外す | 退職日まで継続して1年以上ない、退職日に出勤した、退職後に一度働ける状態になった | 健康保険法104条、協会けんぽのよくある質問 |
| 4 ほかのお金と重なる | 労災の給付を受けられる、出産手当金が出る期間、同じ病気の障害厚生年金、継続給付中の老齢の年金 | 健康保険法55条・103条・108条 |
| 5 期間・期限を過ぎる | 支給開始から通算1年6か月を過ぎた、労務不能だった日の翌日から2年を過ぎた | 健康保険法99条・193条、協会けんぽの申請書ページ(時効の起算) |
出典:協会けんぽ「傷病手当金」/健康保険法99条(e-Gov法令検索)/健康保険法104条(e-Gov法令検索)/健康保険法108条(e-Gov法令検索)
型4は「出ない」と「減る」が混ざります。出産手当金・障害厚生年金・継続給付中の老齢の年金は、その額が傷病手当金の額より少なければ差額が出る書き方になっているので、ゼロとは限りません。一方で、労災の給付を受けられる場合は健康保険から出ない、という書き方です。型1の給与も同じで、休んだ日の報酬が傷病手当金の額より少なければ差額が出ます。
このほか健康保険法には、故意の犯罪行為や偽りの請求、療養の指示に従わない場合などの給付の制限の定めもあります。
たとえば、同じ「休職中にもらえなかった」でも、休んだ月に会社から給与が満額出ていた人は型1、辞めてから任意継続に切り替えた後に病気になった人は型2、退職日に出社して挨拶した人は型3です。
自分の行が分からないときは、「いつ病気になったか(在職中か、任意継続の期間か)」「仕事が原因か」「休んだ日に会社から何が出たか」の3つをメモに書き出すと、表のどの行かがほぼ決まります。

働けないかは診断書だけで決まらない
労務不能(仕事に就けない状態)かどうかは、医師が書けば決まるものではありません。協会けんぽの案内では、療養担当者の意見などを基に、本人の仕事の内容を考えて保険者が判断するとされています。
協会けんぽのよくある質問は、労務不能を「今まで従事している業務ができない状態」と説明し、医師の意見と本人の業務内容、その他の諸条件を考えて判断するとしています。申請書の4ページ目は医師などが書く欄で、そこに労務不能と認めた期間が入りますが、それだけで支給が決まるという書き方はされていません。
- 業務外の病気やけがの療養であること(自費診療でも、仕事に就けないことの証明があれば対象。自宅療養の期間も対象)
- 今まで従事している業務ができない状態であること
- 美容整形など、病気と見なされないものは対象外
出典:協会けんぽ よくあるご質問「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」/協会けんぽ「傷病手当金」
うつ病や適応障害で休んでいる人が気にするのは、心の不調は認められにくいのでは、という点です。確かめられる範囲で言えるのは、業務外の療養であれば支給の対象になりうること、そして働けないかどうかは、病名ではなく、その人の業務ができない状態かで個別に判断されることです。病名ごとに出る・出ないを決めた公式の記載は見当たりませんでした。
ただし、長時間労働や職場の出来事が原因かもしれないと感じているなら、話が変わります。健康保険法55条1項は、同じ病気について労働者災害補償保険法などで相当する給付を受けることができる場合は、健康保険の給付を行わないとしています。仕事が原因と考えられる場合の確かめ先の目安は、会社の担当と労働基準監督署です。労災と休業の手当の違いは 休業手当と労災の違い に、体調不良で欠勤が続いて解雇の話が出た場合は うつや体調不良の欠勤で解雇されたら にまとめています。
たとえば、同じ適応障害でも、在宅で軽い作業ならできると医師に伝えている人と、出社も在宅の作業もできないと伝えている人では、申請書に書かれる内容が変わりえます。医師に伝えるときは、症状だけでなく、自分の仕事で何ができないのかを具体的に話しておくと、意見書と実態のずれを減らせます。
編集部の整理では、ここで外れないために本人ができるのは、受診のたびに「いまの仕事のどの作業ができないか」を医師に伝え、休んだ日と通院の記録を残しておくことです。
待期と給料の出方で外れる日
傷病手当金は、休み始めてすぐには出ません。連続して3日間休んだあと(待期)、4日目以降の働けなかった日が対象です。待期が成立しない休み方をすると、その休みでは支給が始まりません。
協会けんぽの案内では、待期には有給休暇や土日祝日などの公休日も含まれ、給与が出たかどうかは関係ありません。連続して2日間休んだあと3日目に仕事をした場合は、待期3日間は成立しません。仕事中に業務外の理由で体調を崩して働けなくなった場合は、その日が待期の初日になります。
もう1つの外れ方は、休んだ日に給与などの報酬が出ているときです。健康保険法108条1項は、報酬の全部又は一部を受けることができる期間は傷病手当金を支給しないとし、ただし報酬の額が傷病手当金の額より少ないときは「その差額を支給する」と定めています。協会けんぽのよくある質問では、出勤していない日に出た報酬として、有給休暇の賃金、出勤の有無に関わらず出る手当(通勤手当・扶養手当・住宅手当など)、食事や住居の現物支給を挙げています。
出典:協会けんぽ「傷病手当金」給付対象/協会けんぽ よくあるご質問/健康保険法108条(e-Gov法令検索)
たとえば、休み始めの3日を有給休暇にしても、待期は成立します。4日目以降も有給を使い続けた場合は、その日の有給の賃金が傷病手当金の額以上なら、その日は支給されません。有給の賃金のほうが少なければ、差額が出ます。
迷ったときは、休み始めた日から暦の上で連続3日を数え、4日目以降の日について「会社から何がいくら出たか」を給与明細で並べると、どの日が対象から外れるかが見えます。
入社1年未満・パートの分かれ目
入社して1年たっていない人も、在職中に会社の健康保険の被保険者であれば、傷病手当金の対象になりえます。健康保険法99条1項は、被保険者(任意継続被保険者を除く)が療養のため働けないときに支給するとしていて、在職中の支給に加入期間の長さを求める書き方はしていません。
1年未満で変わるのは、主に2つです。1つは1日あたりの額の出し方で、支給開始日以前の継続した期間が12か月に満たない場合、協会けんぽの案内では、その期間の標準報酬月額の平均と、協会けんぽが示す額(支給開始日が令和7年4月1日以降なら32万円、令和7年3月31日以前なら30万円)を比べ、低いほうを使います。もう1つは退職後で、104条の継続給付は退職日まで継続して1年以上の被保険者期間が要るので、1年未満で辞めると、退職後の分は条件に届きません。
出典:協会けんぽ よくあるご質問/健康保険法104条(e-Gov法令検索)
パートやアルバイトの人は、まず自分が勤務先の健康保険に入っているかを確かめます。給与明細から健康保険料が引かれていれば、加入しています。入っていれば、正社員と同じ支給要件で判断されます。パートの人が加入の対象になる条件は勤め方によって分かれ、ここでは数字を挙げられないので、会社の人事・総務に「健康保険の被保険者か」を聞くのが確実です。加入していない(家族の扶養や国民健康保険に入っている)場合、傷病手当金は会社の健康保険の給付なので、勤務先の健康保険からは出ません。国民健康保険で何が受けられるかは、住んでいる市区町村の窓口で確かめます。
額の目安を知りたい人は、協会けんぽの公式の計算例が参考になります。標準報酬月額の平均が17万円の人なら、17万円÷30で5,670円、その3分の2で1日あたり3,780円です。自分の標準報酬月額での計算と、いつまで出るかは 傷病手当金はいくら・いつまで? で確かめてください。
入社1年未満の人が退職を考えているなら、在職中に受けられるかと、退職後も受けられるかは別の話だと分けて考えるのが出発点です。
退職前に確かめる不支給の条件
退職後も傷病手当金を受け続けたい人にとって、もっとも防ぎやすいのに見落とされやすいのが、退職のときの条件です。条件を外すと、退職日の翌日以降の分は出ません。
健康保険法104条は、資格を喪失した日の前日まで引き続き1年以上被保険者だった人で、資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けているものは、継続して同一の保険者から給付を受けられるとしています。協会けんぽのよくある質問は、この1年に任意継続・共済組合・国民健康保険の期間を含めないこと、受けているか受ける条件を満たしていればよいこと、そして退職日に出勤したときは継続給付を受ける条件を満たさないため、退職日の翌日以降の傷病手当金は支払えないことを案内しています。
- ほかの条件を満たせば退職後も続けて受けられる
- 協会けんぽの案内では、退職日の翌日以降は支払えない
退職のあとにも外れ方があります。協会けんぽの案内では、退職後に一度仕事に就ける状態になったあと、再び働けなくなっても、継続給付は支給されません。また、退職後に任意継続被保険者になった場合、在職中から続く継続給付は条件を満たせば受けられますが、任意継続の期間中に新しく始まった病気やけがは対象外です。
出典:健康保険法104条(e-Gov法令検索)/協会けんぽ よくあるご質問/協会けんぽ「傷病手当金」
たとえば、休職中に退職が決まり、最終日に私物の整理と挨拶のために出社する予定の人がいるとします。挨拶だけの出社が出勤に当たるかを明記した公式の記載は、編集部が確かめた範囲では見当たりませんでした。判断するのは保険者なので、その出社が「出勤」に当たらないかは、加入している健康保険(協会けんぽの支部か健康保険組合)に確かめておきます。私物の受け取りを郵送にする、挨拶はメールで済ませる、といった組み立てなら、出勤しないまま退職日を迎えられます。挨拶のメールの送り方は 退職の挨拶メールはいつ送る? にあります。
辞める前に確かめるのは、次の3点です。
- 退職日まで、任意継続・国民健康保険などを除いて継続して1年以上、会社の健康保険の被保険者か
- 退職日に、傷病手当金を受けているか、受ける条件を満たしているか(働けない状態が続いているか)
- 退職日に出勤する予定が入っていないか
有給休暇と退職日の並べ方まで含めた順番は 休職から退職する時の順番 で組み立ててください。このうち、退職日に出勤しないことは確かめることで避けられます。1年以上か、任意継続の期間に始まった病気でないか(型2)は、条件に届くかが事前に分かるものです。退職後に一度働ける状態になった場合のように、この3点では覆えない外れ方もあります。
ほかのお金と重なるとき
労災・出産手当金・年金を受けられる人は、傷病手当金の側が出なくなるか、差額だけになります。どのお金と重なるかで扱いが違うので、1つずつ分けて見ます。
労災は、受けているかではなく受けられるかで決まります。健康保険法55条1項は「相当する給付を受けることができる場合には、行わない」という書き方です。業務上の病気やけがなら、労災保険の休業補償給付が、賃金を受けない日の第4日目から1日につき給付基礎日額の60%出ます(休業特別支給金20%と合わせて80%)。業務災害の待期の3日間は、厚生労働省のリーフレットでは事業主が労働基準法に基づく休業補償を行うとされています。
妊娠中の人は、出産手当金との関係があります。健康保険法102条1項は、出産の日(予定日より遅れたときは予定日)以前42日(多胎妊娠は98日)から出産の日後56日までの間で働かなかった期間に出産手当金を支給するとし、103条1項は、出産手当金を支給する期間は傷病手当金を支給しない、ただし出産手当金の額が少ないときは差額を支給するとしています。つわりが重い状態(妊娠悪阻)で休む場合の扱いを名指しした記載は、条文にも協会けんぽの案内にも見当たりませんでした。確かめられる範囲では、業務外の病気として支給の要件を満たすかで判断され、出産手当金の期間に入れば103条の調整がかかる、というところまでです。
年金との調整は、健康保険法108条にあります。3項は、同じ病気やけがで障害厚生年金を受けることができるときは傷病手当金を支給しないとし、年金の額が少ないときは差額を支給するとしています。5項は、退職後の継続給付を受ける人(政令で定める要件に当たる人)が老齢または退職を支給事由とする年金を受けられるときは支給しないとしています。協会けんぽのよくある質問では、老齢厚生年金などの受給者になったとき、年金額の360分の1が傷病手当金の日額より低ければ差額が出るとしています。
出典:健康保険法55条(e-Gov法令検索)/労働者災害補償保険法14条(e-Gov法令検索)/健康保険法103条(e-Gov法令検索)/協会けんぽ愛媛支部「年金との調整について」
- 労災の給付を受けられる:健康保険からは出ない(55条1項に差額を支給する書き方は無い)
- 出産手当金が出る期間:傷病手当金は出ない。出産手当金のほうが少なければ差額
- 同じ病気の障害厚生年金:出ない。年金のほうが少なければ差額
- 継続給付中の老齢・退職の年金:出ない。年金額の360分の1が日額より低ければ差額
たとえば、障害年金の請求を考えている人が、決定を待つ間に傷病手当金を受け、あとから同じ病気の年金がさかのぼって決まると、協会けんぽ愛媛支部の案内では、払いすぎになった傷病手当金を返すことになります。
自分に当てはまるかは、協会けんぽの申請書なら、1〜2ページ目にある確認欄(報酬・障害年金・老齢年金・労災の休業補償給付)を先に読み、はいと答える欄があるかで見当がつきます。

傷病手当金の審査は厳しいのか
「審査は厳しいか」には、数字では答えられません。不支給の割合など、厳しさを示す公式の統計は、編集部が確かめた範囲では見つかりませんでした。答えられるのは、何を材料に判断されるかです。
判断の材料は、申請書の各ページに分かれています。協会けんぽの記入の手引きでは、本人が書く1〜2ページ目で、申請期間に報酬を受けたか、同じ病気で障害厚生年金などを受けているか、退職後の期間なら老齢の年金を受けているか、別の病気で労災の休業補償給付を受けているかを確認します。3ページ目では会社が勤務状況と賃金の支払いを証明し、4ページ目では医師などが労務不能と認めた期間などを書きます。
つまり、書類どうしが食い違っていると、その分だけ確かめが要る、というのが書類の作りから言えることです。本人が「報酬なし」と書いたのに会社の欄に手当の支払いがある、医師が認めた期間と申請した期間がずれている、といった食い違いは、申請前に自分で照らし合わせれば見つけられます。
申請の間隔も、書類の照合に関わります。協会けんぽのよくある質問は、給与の支払いの有無について会社の証明が要るので、1か月単位で給与の締切日ごとに申請することを勧めています。まとめて出すこともできますが、時効があります。健康保険法193条1項は保険給付を受ける権利を2年で時効にかかるとし、協会けんぽの案内では、傷病手当金の起算日は労務不能だった日ごとにその翌日です。
たとえば、半年分をまとめて申請しようとしている人は、医師に過去6か月分の労務不能の期間を書いてもらう必要があります。迷っている間も、受診と休んだ日の記録は続けておきます。書き方の細かい欄は 傷病手当金の申請書の書き方 にまとめています。
厳しいかどうかを気にするより、書類の3者(本人・会社・医師)の記入がそろって矛盾がないかを、出す前に自分で照らし合わせるほうが、確実に打てる手です。
不支給の通知が来たら
不支給の決定に納得できないときは、審査請求ができます。健康保険法189条1項は、保険給付に関する処分に不服がある者は社会保険審査官に審査請求をし、その決定に不服がある者は社会保険審査会に再審査請求をすることができると定めています。
期限は短めです。社会保険審査官及び社会保険審査会法4条1項は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月を経過したときは審査請求をすることができない、としています(正当な事由で期間内にできなかったことを疎明したときは例外)。協会けんぽや健康保険組合の処分なら、請求先は、その処分に関する事務を処理した事務所の所在地を管轄する地方厚生局に置かれた審査官です(同法3条1項2号)。
- 1通知の内容を確かめるどの期間が、どの型で外れたか
- 2審査官に審査請求する知った日の翌日から3か月以内・地方厚生局
- 3審査官の決定を待つ2か月以内に決定がなければ棄却とみなせる
- 4社会保険審査会に再審査請求する決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内
健康保険法189条2項は、審査請求をした日から2か月以内に決定がないときは、審査請求人は審査官が棄却したものとみなすことができるとしています。再審査請求は、社会保険審査官及び社会保険審査会法32条1項で、審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月を経過するとできなくなります。また、189条3項は、審査請求と再審査請求は、時効の完成猶予及び更新に関しては裁判上の請求とみなす、としています。
出典:健康保険法189条(e-Gov法令検索)/社会保険審査官及び社会保険審査会法4条(e-Gov法令検索)/同法3条(e-Gov法令検索)/同法32条(e-Gov法令検索)
審査請求の前にやることは、どの型で外れたかを知ることです。通知の内容を読み、分からなければ申請した保険者(協会けんぽなら支部)に、不支給になった期間と理由を問い合わせます。そのうえで、5つの型の表のどれに当たるかを照らし合わせると、書類の出し直しで足りるのか、判断そのものに不服を言うのかが分かれます。審査請求書の様式や出し方は、編集部では公式の案内を取れていないので、管轄の地方厚生局に確かめてください。
たとえば、労務不能と認められなかった期間がある人なら、医師に、その期間に今の仕事のどの作業ができなかったかを改めて確かめ、そのうえで審査請求に進むかを決めることになります。失業保険の離職理由についての審査請求は雇用保険の別の手続きなので、混ぜないようにします。
通知が届いたら、まず処分があったことを知った日(通知を受け取った日が目安)を書き留めておきます。3か月はその翌日から数えます。
もらえなかった後のお金の順番
傷病手当金が出ないと分かっても、すぐに失業保険へ切り替えられるとは限りません。失業保険(雇用保険の基本手当)は、すぐに働ける人が仕事を探す間に出るもので、働けない状態の間は受けられないからです(厚生労働省のQ&A)。
働けない状態が続くなら、受給期間の延長という選択肢があります。厚生労働省のQ&Aでは、離職日の翌日から1年以内に30日以上続けて働けない場合、延長を申請すると、本来の受給期間1年に働けない日数を加えられ、加えられるのは最大3年とされています。雇用保険法20条1項は、加算後が4年を超えるときは4年としています。申請は、30日以上続けて働けなくなった日の翌日以降に、延長後の受給期間の最後の日までの間ならできるとされています(同Q&A)。具体的な時期と持ち物は、住所地のハローワークで確かめてください。
出典:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
すでに失業保険の手続きをしたあとで病気になった人は、別の制度があります。厚生労働省のQ&Aでは、受給手続後に15日以上働けなくなった人は、基本手当と同額の雇用保険の傷病手当を受けられるとされています。ただし雇用保険法37条8項は、健康保険の傷病手当金を受けることができる日は、雇用保険の傷病手当は支給しないとしています。健康保険の傷病手当金とは別の制度です。
たとえば、退職日に出勤してしまい継続給付が出ないと分かった人で、まだ働けない状態が続いているなら、失業保険はすぐには受けられず、延長を申請して働けるようになってから受ける、という順番になります。その間の生活費については、住居確保給付金や貸付を 失業保険だけでは生活できない時は? で確かめられます。
もらえなかったときは、「いま働けるか」で分けると、働けないなら延長を検討、働けるなら失業保険の手続き、と次の選択肢が見えます。
使わなくていい場合
不支給が心配だからといって、給付金の申請を代わりに進めるサポートや、社労士に頼まないといけないわけではありません。次に当てはまる人は、加入している健康保険(協会けんぽか健康保険組合)・医師・会社への確認で足ります。
傷病手当金の申請は、本人・会社・医師などがそれぞれのページを書いて出すもので、どのページに何を書くかは協会けんぽの記入の手引きに載っています。勤務先の健康保険組合に入っている人は、組合の案内と様式で確かめてください。よくある外れ方も5つの型に分けると、確かめる先が決まっています。
- 5つの型のどれにも当てはまらず、会社と医師に欄の記入を頼める人
- 退職前で、退職日まで1年以上・退職日に出勤しない・任意継続で始まった病気でない、の3点を自分で確かめられる人
- 不支給の理由が、書類の書き漏れや期間のずれのように、出し直しで直せるものだった人
一方で、労災に当たるかで会社と意見が分かれている、審査請求で何を主張するかが分からない、といった場合は、労働基準監督署や社労士などに相談する場面です。そのときも、5つの型のどれで外れたか、通知を受け取った日、申請した期間を書いたメモを持っていけば、相談は短く済みます。
編集部の整理では、頼むかどうかの分かれ目は、「確かめる先が決まっているか」です。決まっていれば自分で足ります。もらうかどうか自体を迷っている人は 傷病手当金はもらわない方がいい? も合わせて読んでください。
傷病手当金はいくら・いつまで?在職中と退職後で変わる受給条件と申請の順番
休職から退職する時の順番は?有給消化・傷病手当金・退職日の並べ方で変わる額
退職届の書き方|退職日は何日と書けば損しない?有給・月末で決める日付
よくある質問
傷病手当金の審査は厳しいですか?
厳しさを示す公式の統計は、編集部が確かめた範囲では見つかりませんでした。判断の材料は、本人・会社・医師などが書く申請書の各ページです。出す前に、報酬の有無や期間が3者の記入で食い違っていないかを照らし合わせてください。
傷病手当金がもらえないケースは?
編集部の整理では、よくある外れ方は、支給の要件が欠ける、任意継続の期間に始まった病気やけが、退職後の条件を外す、労災・出産手当金・年金と重なる、期間や時効を過ぎる、の5つの型です。報酬・出産手当金・年金は、少なければ差額が出ることがあります。
メンタル不調で休職した場合、傷病手当はもらえますか?
業務外の療養であれば対象になりえます。働けないかどうかは病名ではなく、医師の意見と本人の業務内容などを考えて保険者が判断します。仕事が原因と考えられる場合は、労災に当たるかを先に確かめます。
同じ病気で2回目はもらえますか?
同じ病気やけがについては、4つの要件を満たす日が、支給を始めた日から通算1年6か月まで対象です(令和4年1月1日から通算の扱いに変わりました)。退職後の継続給付は、一度働ける状態になったあとに再び働けなくなっても支給されない、と協会けんぽは案内しています。
不支給に納得できないときは?
処分があったことを知った日の翌日から3か月以内に、地方厚生局の社会保険審査官に審査請求できます。その決定にも不服なら、決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内に社会保険審査会へ再審査請求できます。
月収がいくらなら、いくら出ますか?
1日あたりの額は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均÷30×3分の2です。協会けんぽの計算例では、平均17万円の人は1日あたり3,780円です。自分の額は 傷病手当金はいくら・いつまで? で確かめてください。
数字だけ、もう一度
- 待期:連続して3日間休んだあと、4日目以降が対象。有給休暇や土日祝日も待期に含む
- 支給期間:同じ病気やけがについて、支給を始めた日から通算1年6か月
- 額の式:標準報酬月額の平均÷30×3分の2。公式の例では17万円から5,670円、3,780円
- 12か月に満たない人:協会けんぽが示す32万円(支給開始日が令和7年4月1日以降)と比べて低いほう
- 退職後の継続給付:退職日まで継続して1年以上。退職日に出勤すると、協会けんぽの案内では翌日以降は支払えない
- 労災:休業補償給付は第4日目から給付基礎日額の60%(休業特別支給金と合わせて80%)
- 出産手当金:出産の日以前42日(多胎妊娠は98日)から出産の日後56日まで。この期間は傷病手当金が出ず、少なければ差額
- 時効:労務不能だった日ごとに、その翌日から2年
- 審査請求:処分を知った日の翌日から3か月以内。2か月以内に決定がなければ棄却とみなせる。再審査請求は決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内
- 失業保険:働けない間は受けられない。30日以上働けないなら受給期間の延長(最大3年を加え、4年まで)
傷病手当金がもらえない理由は、聞くと数が多く見えても、編集部の整理では、よくある外れ方は5つの型にまとまります。そのうち、退職日に出勤しないことは確かめることで避けられ、退職日まで1年以上か、任意継続の期間に始まった病気かは、条件に届くかが事前に分かります。不支給の通知が来たら、処分があったことを知った日(通知を受け取った日が目安)を書き留め、どの型で外れたかを申請先に確かめてから、3か月の期限の中で審査請求に進むかを決める。順番を知っていれば、もらえなかったときも、次の一手は自分で選べます。

