失業保険を会社都合にする方法は?辞める前の証拠と離職票に異議を出す手順

  • 失業保険を会社都合にしたい。何から手をつければいい?
  • 会社が「会社都合にはできない」と言っている
  • 離職票が自己都合になっていた。今からでも変えられる?
  • 自己都合か会社都合かは、結局だれが決めるの?
  • 証拠が大事と聞くけれど、何を残せばいいのか分からない
  • 会社と揉めずに済ませたい。頼み方はある?
  • 異議を出すのに期限はある?
  • 自分の辞め方が、そもそも基準に当たるのか自信がない

上記のような悩みに答えます。

会社都合は、失業保険の上では「特定受給資格者」などと呼ばれる扱いのことで、給付制限の有無や受け取れる日数を左右します。検索すると「会社に会社都合にしてもらう」話が多く、交渉の仕方や会社が嫌がる理由に紙幅が割かれていますが、そもそも判定するのは会社ではありません。弁護士事務所や求人メディアの解説は、条件の一覧から「証拠が大事」へ進んだところで終わりがちで、辞める前に理由ごとに何を手元に写すか、離職票が届く前の段階でどこを見るか、までは並んでいないことが多いです。そこで、判定の仕組み・自分の事情が基準に当たるか・会社への頼み方という基本を押さえたうえで、理由別に辞める前に揃える物と、離職証明書から審査請求までの時系列を、雇用保険法と厚生労働省・ハローワークの資料で確かめながら整理しました。

先に答え

会社都合に当たるかは、会社の書き方ではなく、ハローワークが会社と本人の双方の主張を資料で確かめて判定します。会社の同意は要りません。会社に頼むより先に、自分の事情が基準のどれに当たるかを確かめ、それを示す資料を辞める前に揃えておくのが近道です。

2026年10月時点の制度で確かめています

会社都合と自己都合で、自分の日額と給付日数がどれだけ変わるかは、失業保険の計算ツール で離職理由を切り替えて見比べられます。

目次

会社都合にするのに会社の同意は要らない

ノートパソコンとコーヒーのある机

失業保険で会社都合として扱われるかどうかを決めるのは、会社ではなくハローワークです。会社が「自己都合で処理する」と言っても、それで扱いが確定するわけではありません。

厚生労働省のパンフレット「離職されたみなさまへ」は、離職理由の判定について、事業主が主張する離職理由と離職者が主張する離職理由を把握し、それぞれの主張を確認できる資料で事実を確かめたうえで、最終的にハローワークが慎重に行う、と説明しています。会社の言い分も本人の言い分も、それだけでは決め手になりません。決め手になるのは、どちらの主張が資料で裏づけられるかです。

出典:厚生労働省「離職されたみなさまへ」

会社都合の中身は、雇用保険法23条2項が「特定受給資格者」として定めています。倒産や事業の縮小・廃止に伴う離職と、解雇(自分の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)その他の厚生労働省令で定める理由による離職の2つで、具体的な中身は雇用保険法施行規則35条・36条に並んでいます。どちらも「会社が同意したもの」という書き方ではなく、「どういう事実で離職したか」で書かれています。

出典:雇用保険法23条(e-Gov法令検索)

この仕組みから言えることは、「会社都合にしてもらう」という言い方自体が少しずれている、ということです。会社にお願いして書き方を変えてもらえれば手続きは早く進みますが、断られても道が閉じるわけではありません。本人がすべきなのは、基準に当たる事実を、ハローワークに見せられる形にしておくことです。

誰が 何をするか 決め手になるか
会社 離職証明書に、会社が主張する離職理由を書く 会社の主張の1つ。資料で確かめられる
本人 会社の書いた理由に異議があるかを示し、自分の主張を出す 本人の主張の1つ。資料で確かめられる
ハローワーク 双方の主張を資料で確かめ、最終的に判定する ここで決まる

たとえば、長時間の残業で体を壊しかけて自分から退職届を出した人は、形の上では自己都合です。それでも、残業の時間が基準を超えていたことを勤怠の記録で示せれば、ハローワークが特定受給資格者と判定する余地があります。逆に、会社が親切で「会社都合で書いておく」と言ってくれた場合でも、ハローワークが事実を確かめる点は変わりません。

編集部の整理では、会社都合を目指す人の最初の一手は「会社と話すこと」ではなく「自分の事情がどの基準に当たるかを確かめること」です。そこが決まれば、揃える資料も、会社に何を頼むかも、自然に決まってきます。

会社都合と判定されたあとの日数と総額は、会社都合の失業保険 で年齢・勤続年数ごとに整理しています。

自分の辞め方が会社都合の基準に当たるか

基準に当たるかの目安は、「誰が辞めるきっかけを作ったか」と「その事実を示せるか」の2点です。自分から退職届を出した場合でも、基準の中には本人の申し出による離職が含まれています。

施行規則36条の基準は、解雇のように会社が一方的に雇用を終わらせた場合だけを並べているわけではありません。労働条件が約束と大きく違った、賃金が払われなかった、残業が一定の時間を超えた、といった事情で本人が辞めた場合も含まれます。編集部の読みでは、会社の側の事情で働き続けにくくなった場合が中心です。退職届の有無より、辞める前の職場の事実が問われます。

辞めるきっかけ 当たり得る基準(要旨) 根拠
倒産・事業所の廃止・通えない場所への移転 倒産等に伴う離職 施行規則35条
解雇された 解雇(重責解雇を除く) 施行規則36条1号
給料が払われない・大きく下がった 賃金の3分の1を超える額の不払い、賃金が100分の85を下回った(予期できなかった場合) 施行規則36条3号・4号
残業が多すぎた 離職前6か月のうち、時間外労働と休日労働の合計で、連続3か月以上が月45時間超、いずれかの月で100時間以上、連続2か月以上の平均で月80時間超のいずれか 施行規則36条5号
上司や同僚から嫌がらせを受けた 就業環境が著しく害されるような言動を受けた 施行規則36条8号
会社から辞めるよう勧められた 退職の勧奨を受けた(以前から恒常的にある早期退職優遇制度などへの応募は除く) 施行規則36条9号

出典:雇用保険法施行規則36条(e-Gov法令検索)/ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」

この表は入口の目安で、基準の全部ではありません。契約更新の雇い止めや、会社の責任による休業が3か月以上続いた場合など、ほかの類型も施行規則に並んでいます。全体を1つずつ確かめたい人は、会社都合退職になる条件 の一覧で自分の事情に近いものを探してください。

たとえば、残業が多くて辞めた人でも、多かった月が1か月だけで45時間を少し超えた程度なら、表の時間の基準には届きません。同じ人でも、ある月が100時間以上だったなら、基準の文言に当たる可能性が出てきます。「多かった」という感覚ではなく、時間外と休日出勤を合わせて月ごとの時間で見るのがこの基準の読み方です。

どの行にも当てはまらない人は、会社都合を目指すより、次の「自己都合のままでも給付制限が付かない場合」を先に読んだほうが早いかもしれません。体調や家族の事情などで辞めた人は、別の扱いがあります。

会社都合の証拠は辞める理由で変わる

机の上の開いた手帳

証拠になる物は、辞める理由ごとに違います。共通しているのは、退職したあとは会社に頼んでも出してもらえない物が多いので、在職中に写しを手元に置いておくことです。

ハローワークは双方の主張を、それぞれを確認できる資料で確かめます。厚生労働省の「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」には、離職理由を確認できる資料の例が理由の区分ごとに載っています。たとえば解雇なら解雇予告通知書・退職証明書・就業規則、退職勧奨や希望退職なら希望退職の募集要綱や応募の事実が分かる資料、契約期間の満了なら労働契約書・雇入通知書・契約更新の通知書・タイムカード、本人の個人的な事情なら退職願の写し、といった具合です。

出典:厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」

上の例をもとに、理由の型ごとに、在職中に揃えておくと説明しやすい物を並べると次のとおりです。公式の資料に例として載っている物と、基準の文言から編集部が考えた物を分けてあります。公式の例は主に会社が持参する資料として書かれています。本人は在職中に同じ種類の写しを手元に置いておくと説明しやすくなります。

辞める理由 公式の資料に例がある物 基準の文言から考えて手元に置きたい物(編集部の整理)
解雇 解雇予告通知書・退職証明書・就業規則 解雇を告げられた日のメモ、会社とのメール
退職勧奨・希望退職 希望退職の募集要綱、応募の事実が分かる資料 面談の日時と言われたことのメモ
契約の更新がない 労働契約書・雇入通知書・契約更新の通知書・タイムカード 更新について言われたことのメモ
長時間の残業 賃金台帳、タイムカードなど、時間外労働の時間が分かる物 月ごとの勤怠記録、給与明細の残業時間の欄
賃金の不払い・低下 低下=労働契約書・就業規則・賃金規定・賃金低下に関する通知書/遅配=労働契約書・就業規則・賃金規定・賃金台帳 給与明細、通帳の入金記録、雇用契約書
嫌がらせ 特定の人を狙った配置転換・給与体系の変更なら、配置転換の辞令の写し・労働契約書・就業規則・賃金台帳(言動そのものの例は載っていない) 言われた日時と内容のメモ、メールやチャットの画面

残業や賃金の行は、基準が「時間」や「額」で書かれているので、それを数字で示せる物が中心になります。嫌がらせの記録の残し方は、人間関係で辞めたいとき で詳しく扱っているので、ここでは「日付が分かる形で残す」ことだけ押さえておけば足ります。

録音を残してよいかを気にする人もいますが、録音の扱いは状況によって評価が分かれる法律の問題なので、ここでは判断しません。迷う人は、メモとメールの組み合わせで足りるかを先に考え、それでも録音が要ると思ったら、勤怠記録やメモを持って弁護士に相談してください。

たとえば、給料の支払いが何か月も遅れて辞める人なら、退職を言い出す前に、遅れた月の給与明細と、実際に入金された日が分かる通帳の写しを揃えておきます。辞めたあとに会社へ「明細を送ってほしい」と頼んでも、返事が来るとは限りません。残業の人も同じで、勤怠システムを見られるのは在職中だけ、という会社は珍しくありません。

揃える時期は、退職日を会社に伝える前が目安です。伝えたあとは、社内のシステムへの接続が早めに止められることもあります。退職を切り出す時期の決め方は 退職は何日前に言うか を参考にしてください。

会社に会社都合を頼むなら順番を決める

会社に「会社都合で書いてほしい」と頼むこと自体は、悪いことではありません。会社が事実どおりに書けば、ハローワークでの説明は短く済みます。ただし、頼む前に資料を揃え、断られたときの道を決めておくのが順番です。

頼む前に資料が無いと、会社に「そんな事実はない」と言われたときに返す材料がありません。反対に、資料が手元にあれば、頼んで断られても困りません。会社が書いた理由に本人が異議を示し、ハローワークが資料で確かめる、という流れがもともと用意されているからです。

  1. 自分の事情がどの基準に当たるかを決める(上の表)
  2. その基準を示す資料を、在職中に写しておく
  3. 会社に、離職証明書の離職理由をどう書く予定かを聞く
  4. 事実と違えば、事実どおりに書いてほしいと伝え、そのやりとりをメールで残す
  5. 応じてもらえなくても、それ以上は押さない。異議の手続きに進む
頼む前に、資料と次の道を決めておく
  1. 1基準を決める自分の事情がどの基準に当たるか
  2. 2資料を写す退職日を伝える前に手元へ
  3. 3会社に聞く離職理由をどう書く予定か
  4. 4事実どおりを頼むやりとりはメールで残す
  5. 5断られたら異議へ判定するのはハローワーク

5番が大事です。会社が応じないときに強い言葉で迫っても、判定するのは会社ではないので、得るものは少なく、関係がこじれるだけです。会社が会社都合を避けたがる事情は会社ごとにあり、編集部はそれを一律に言い切れる根拠を持っていません。

たとえば、上司に聞いたら「うちは全員自己都合で処理している」と返された人は、その返事をメールで受け取っておけば十分です。そのうえで、離職証明書を見せられたときに異議を示し、資料を持ってハローワークで説明します。会社を説得し切れなかったことは、手続きの上では不利になりません。

会社から辞めるよう勧められて辞める人は、面談で返事を保留する方法や面談の記録の残し方まで含めて、退職勧奨に応じたら会社都合か にまとめています。勧奨に応じるかどうかは働く人の自由で、その場で答える必要もない、と厚生労働省の冊子(第5章)も説明しています。

出典:厚生労働省の冊子(第5章)

離職票が自己都合なら異議を出す

離職理由に異議を出す場面は2回あります。辞める前に見せられる離職証明書と、辞めたあとに届く離職票-2です。どちらかで異議を示し、求職の申込みのときに資料を出せば、ハローワークが事実を確かめて判定します。

会社は、離職する日までに、会社が書いた離職理由を本人に確認させることになっています。離職証明書には、会社が○を付けた離職理由に本人が異議があるかを「有り・無し」で示す欄(⑯欄)があり、本人が氏名を書きます。本人が主張する離職理由は、のちに届く離職票-2の離職理由欄(⑦欄)で把握されます。

出典:厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」/ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」

離職証明書から判定までの順番
  1. 1離職証明書を見る辞める日までに、⑯欄で異議の有無を示す
  2. 2離職票-2が届く⑦欄の離職理由と自分の主張を見直す
  3. 3求職の申込み離職票と資料を出し、事情を説明する
  4. 4ハローワークが判定双方の主張を資料で確かめる
  5. 5納得できなければ雇用保険審査官に審査請求

⑦欄には、会社が離職理由を選ぶための区分が1から6まで並んでいます。ここで気をつけたいのは、この区分は会社の主張を把握するために便宜上分けたもので、特定受給資格者や特定理由離職者の判断基準とは違う、と厚生労働省の注意書きに書かれていることです。最終的な判定は⑦欄の○と異なる場合がある、ともされています。会社が「労働者の判断によるもの」に○を付けていても、それで会社都合の道が閉じるわけではありません。

出典:厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」

離職証明書の段階で異議を示せなかった人も、あきらめる必要はありません。ハローワークは、実際は会社からの退職勧奨なのに自己都合とされている場合など、離職理由に異議があるときは相談するよう案内し、事実関係を調べて判定するとしています。離職票が届いてから窓口で異議を申し出る道は残っています。

たとえば、退職届に「一身上の都合」と書いて出し、離職証明書もよく見ずに異議無しに○を付けてしまった人がいるとします。この人も、残業の記録や給与明細が手元にあれば、求職の申込みのときに「会社の書いた理由と実際の理由が違う」と説明できます。ただ、⑯欄で異議無しを選んでいるぶん、なぜそうしたのかから話すことになるので、辞める前に一度は離職証明書を見ておく価値があります。

離職票がなかなか届かない人は、離職票が届かないとき の順番で会社とハローワークに確かめてください。会社に離職証明書を請求しても出てこないときは、ハローワークに相談するよう公式にも案内されています。

会社都合の判定に不服なら審査請求

ハローワークの判定に納得できないときは、雇用保険審査官に審査請求ができます。請求は文書でも口頭でもでき、期限はおおむね「処分があったことを知った日の翌日から3か月以内」です。

厚生労働省のQ&Aによると、審査請求の相手は、処分をしたハローワークを管轄する都道府県労働局の雇用保険審査官です。直接出すほか、処分をしたハローワークや、住んでいる所を管轄するハローワークを通して出すこともできます。離職票が届いてから窓口で異議を申し出る段階には期限の定めが見当たりませんが、判定が出たあとの審査請求には期限があります。

出典:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」Q46

何に不服か 3か月を数え始める日
給付制限が付いたこと 「◯月◯日から◯月◯日まで◯日間は基本手当を支給しない」旨の処分を知った日の翌日
所定給付日数の決定(特定受給資格者に当たるか) 基本手当が支給終了となった認定日の翌日

2つの数え始めが違う点は、見落としやすいところです。給付制限への不服は、制限が付いたと知った時点から時計が動きます。一方、特定受給資格者に当たるかどうかで決まる日数への不服は、受給が終わった認定日の翌日からです。

たとえば、自己都合と判定されて給付制限が付いた人が、納得できないまま受給を始めたとします。給付制限そのものを争うなら、制限を知った日の翌日から3か月の間に請求しないと間に合いません。日数の不服だけなら受給が終わるまで時間がありますが、資料を集め直す手間を考えると、判定に納得できないと思った時点で窓口に手続きを確かめておくほうが安全です。

審査請求は本人が文書または口頭でできます。判定の通知、離職票、会社とのやりとりの記録、勤怠記録などの資料を揃え、窓口で「判定に不服があるので審査請求の手続きを知りたい」と伝えるところから始められます。法的な評価が要る争いになったときに、資料を持って専門家に相談すれば足ります。

自己都合のままでも給付制限が付かない場合

会社都合に当たらなくても、給付制限が付かない場合があります。体調や家族の事情など、正当な理由がある自己都合で辞めたとハローワークが判断した人です。会社都合を無理に目指すより、こちらに当たるかを確かめたほうが早い人もいます。

雇用保険法33条1項が給付制限をかけるのは、自分の責めに帰すべき重大な理由で解雇された場合と、「正当な理由がなく」自分の都合で退職した場合です。ハローワークの範囲の概要は、正当な理由のある自己都合で辞めた人を「特定理由離職者」とし、その判断は給付制限の「正当な理由」の認定基準と同様に行う、と書いています。つまり、正当な理由があるとハローワークが判断すれば、給付制限の対象から外れることになります。

出典:ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」

ハローワークが正当な理由のある自己都合の例として挙げているのは、次のような事情です。

  • 体力の不足、心身の障害、病気やけがなどで離職した
  • 妊娠・出産・育児などで離職し、受給期間の延長を受けた
  • 親の死亡や病気などで扶養のために離職を余儀なくされた、常に看護が要る親族のために離職を余儀なくされたなど、家庭の事情が急変した
  • 配偶者や扶養すべき親族と別居を続けるのが難しくなった
  • 結婚に伴う転居、事業所の移転、配偶者の転勤などで通勤が不可能または困難になった

自己都合で辞めた場合の給付制限は、退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月です。正当な理由があると判断されれば、この1か月を待たずに済むことになります。また、特定受給資格者と特定理由離職者は、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば受給資格が付きます(一般の離職者は2年間に12か月)。

出典:厚生労働省「自己都合離職者の給付制限について」/厚生労働省「離職されたみなさまへ」

一方で、日数の扱いは会社都合と違います。正当な理由のある自己都合の人の所定給付日数は、一般の離職者と同じ表で決まります。契約期間が満了し、本人が更新を望んだのに更新されなかった人だけは、離職の日が令和9年3月31日までなら特定受給資格者と同じ日数になる特例があります。

たとえば、親の病気で実家に戻るために辞めた人は、会社都合の基準には当たりにくい一方で、家庭の事情の急変として特定理由離職者に当たる可能性があります。この場合に揃える物は、会社の資料より、親の診断書や転居が分かる書類など、本人の側の事情を示す物です。持ち物と伝え方は 自己都合でも失業保険をすぐもらう方法 で詳しく扱っています。

使わなくていい場合

基準に当たる事実を示す資料が手元に揃っていれば、弁護士や有料の給付金サポートを使わず、ハローワークの手続きだけで足ります。異議を示すのも、窓口で事情を話すのも、審査請求をするのも、本人ができる手続きだからです。

外部の手伝いを頼んでも、判定するのがハローワークで、決め手が資料であることは変わりません。頼めることの多くは、資料の整理や説明の手伝いで、本人が自分でできることと重なります。

  • 自分の事情が、上の表のどの基準に当たるかを言える
  • その基準を示す資料(勤怠記録・給与明細・通知書・メールなど)の写しが手元にある
  • 離職証明書か離職票で、会社の書いた理由に異議を示せる

反対に、解雇そのものが無効だと争いたい、未払いの賃金を取り戻したい、といった場合は、失業保険の手続きとは別の問題です。労働契約法16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効とすると定めていますが、解雇が無効かどうかと、離職票の理由がどう判定されるかは、別々に考える話です。この種の争いになったときは、資料を持って弁護士に相談してください。

出典:労働契約法16条(e-Gov法令検索)

たとえば、残業の記録が揃っていて、会社の書き方だけが違うという人は、窓口で資料を見せれば話が進みます。一方、ある日突然「明日から来なくていい」と言われ、解雇予告もその手当も無かったという人は、失業保険の手続きと並行して、解雇の扱いそのものを相談する必要が出てくるかもしれません。労働基準法20条は、解雇するには少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を払うことを会社に求めています(天災などで事業の継続が不可能になった場合や、労働者の責めに帰すべき事由による解雇には例外があります)。

出典:労働基準法20条(e-Gov法令検索)

次にやること

書類に記入する手元

在職中・辞めるとき・辞めたあと、の3つの段階で、やることを順に並べます。

  1. 在職中:自分の事情がどの基準に当たるかを決め、それを示す資料の写しを手元に置く
  2. 在職中:会社に離職理由をどう書く予定かを聞き、答えをメールで残す
  3. 辞めるとき:離職証明書を見せられたら離職理由を確かめ、実態と違えば⑯欄で異議有りに○を付ける
  4. 辞めたあと:離職票-2の離職理由欄(⑦欄)を見直し、資料を持ってハローワークで求職の申込みをする
  5. 判定が出たら:納得できなければ、期限を確かめて審査請求を考える
  6. 会社都合などで受給資格がある人は、国民健康保険の軽減を市区町村に申請する

6番は、特定受給資格者や、受給資格のある特定理由離職者が国民健康保険に入る場合、保険料の計算で前年の給与所得を100分の30とみなす軽減のことです。期間は離職の日の翌日が属する年度の翌年度末までです(国民健康保険法施行令29条の7の2(e-Gov法令検索))。詳しくは 会社都合退職になる条件 の国民健康保険の項を見てください。

会社都合と判定された場合の日数は、年齢と勤続年数で決まります。たとえば40歳・勤続7年で辞めた人が特定受給資格者と判定されれば、所定給付日数は180日です。自分の場合の日額と日数は 失業保険の計算ツール で、辞め方を決める段階のほかの記事は いつ・どう辞めるか で見られます。

よくある質問

会社が会社都合にしてくれないときは、どうすればいいですか?

会社の同意は要りません。離職証明書の⑯欄で異議を示すか、離職票-2が届いてから、資料を持ってハローワークで求職の申込みをするときに事情を説明します。判定はハローワークが、会社と本人の双方の主張を資料で確かめて行います。

ハローワークで自己都合から会社都合に変えてもらうには?

求職の申込みのときに、会社の書いた離職理由と実際の理由が違うことを伝え、それを示す資料を出します。資料は、基準の文言に当たる事実が分かるもの(勤怠記録、給与明細、通知書、メールなど)です。

自己都合か会社都合かは、誰が決めるのですか?

最終的に判定するのはハローワークです。会社が離職証明書に書く理由も、本人の主張も、それぞれ資料で確かめられます。⑦欄の区分は会社の主張を把握するための便宜上の分類で、判定の基準とは違うとされています。

会社都合に変えたら、会社に知られますか?

ハローワークは、会社の主張と本人の主張の両方を資料で確かめて判定する仕組みです。会社の主張も確かめる以上、会社にまったく知られずに進む手続きとは言えません。とはいえ、判定は事実を確かめるためのもので、本人が異議を示すのは手続きとして用意された道です。

退職届に「一身上の都合」と書いてしまいました。もう会社都合にはなりませんか?

退職届の文面だけで離職理由が決まるわけではありません。判定は双方の主張を資料で確かめて行われるので、基準に当たる事実を示す資料があれば、窓口で事情を説明できます。

異議はいつまでに出せばいいですか?

離職票が届いてから窓口で異議を申し出る段階について、期限を定めた公式の記載は見当たりません。ハローワークの判定が出たあとの審査請求には期限があり、おおむね処分を知った日の翌日から3か月以内です。日数の決定への不服は、支給が終わった認定日の翌日から数えます。

会社都合になると、すぐに失業保険をもらえますか?

特定受給資格者と判定されれば、自己都合のような給付制限は付きません。待期の7日間は辞め方を問わずあります。最初の振込の時期は 会社都合の失業保険 で順に説明しています。

数字だけ、もう一度

  1. 判定する人:会社ではなくハローワーク。会社と本人の双方の主張を資料で確かめる(会社の同意は要らない)
  2. 基準:雇用保険法23条2項と、施行規則35条(倒産等)・36条(解雇等)。残業なら離職前6か月のうち、時間外労働と休日労働の合計で、連続3か月以上が月45時間超、いずれかの月で100時間以上、連続2か月以上の平均で月80時間超のいずれか
  3. 辞める前に揃える物:理由の型ごとに違う。退職日を伝える前に写しを手元へ
  4. 異議の場面:辞める前の離職証明書(⑯欄)と、辞めたあとの離職票-2(⑦欄)。⑦欄の区分は判定基準とは違う
  5. 審査請求:雇用保険審査官へ。おおむね処分を知った日の翌日から3か月以内(日数の不服は支給終了の認定日の翌日から)
  6. 自己都合の給付制限:退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月。正当な理由があると判断されれば対象外
  7. 受給資格:特定受給資格者・特定理由離職者は離職前1年間に6か月、一般は2年間に12か月
  8. 国民健康保険:前年の給与所得を100分の30とみなす軽減。離職の翌日が属する年度の翌年度末まで

会社都合を目指すとき、いちばん力を使いがちなのは会社とのやりとりですが、判定の仕組みから見れば、力を使うべきなのは資料のほうです。自分の事情がどの基準に当たるかを先に決め、それを示す物を在職中に手元へ写しておけば、会社が首を縦に振らなくても、離職証明書と離職票で異議を示し、窓口で事実を見せるという道が残ります。会社への頼みごとは、その準備が終わってからで間に合います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

やめ活編集部です。退職の伝え方・失業保険・退職代行について、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

目次