雇用保険と社会保険の違いは?辞めたら止まる保険と切替の期限・自分で払う額

書類に記入する手元
  • 給与明細の健康保険・厚生年金・雇用保険、どれが「社会保険」なの?
  • 社会保険と雇用保険はセットで入るもの?
  • 雇用保険は毎月いくら引かれている?
  • 雇用保険と失業保険は同じもの?
  • 雇用保険は入っているのに、社会保険に入っていないのはなぜ?
  • 仕事を辞めたら、どの保険がいつ止まる?
  • 辞めた月の保険料はどうなる?
  • 健康保険と年金は、何日以内に何をすればいい?
  • 雇用保険にも任意継続はある?
  • 転職先がすぐ決まっていても、手続きは要る?

上記のような悩みに答えます。

会社で入っている保険は、給与明細では並んで引かれているので、ひとまとめに「社会保険」と呼ばれがちです。けれど、健康保険・厚生年金と雇用保険は、入る人の線も、保険料の決まり方も、辞めたときの扱いも別の制度です。検索すると上に並ぶのは、人事・労務の担当者向けに、広い意味と狭い意味の社会保険の定義や、会社が加入させる条件を比べた解説が目立ちます。辞める本人の側から、退職日の翌日に何が止まり、何を自分で払い、何日以内に動くかを1枚にまとめたものはなかなか見当たりません。そこで、加入の線と保険料の見方を押さえたうえで、辞めた翌日に止まる保険と続く道、月末退職か月の途中かで変わる保険料、雇用保険が辞めたあとどうなるかまで、健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法の条文と、日本年金機構・協会けんぽ・厚生労働省の資料で確かめながら整理しました。

先に答え

会社で入っている健康保険・厚生年金と雇用保険は、加入の線も保険料の払い方も別の制度です。辞めると健康保険と厚生年金は退職日の翌日に資格を失うので、健康保険は任意継続(20日以内)か国民健康保険(14日以内)か家族の扶養へ、年金は国民年金(14日以内)へ切り替えます。雇用保険は保険料を払い続ける仕組みではなく、条件を満たせば失業保険を受け取る側に回ります。

2026年11月時点の制度で確かめています

目次

社会保険と雇用保険はどう違う?

書類に記入する手元

「社会保険」という言葉は、健康保険と厚生年金(40〜64歳はこれに介護保険料が加わる)だけを指して使われることもあれば、雇用保険まで含めて使われることもあります。この記事では前者を社会保険と書きます。雇用保険の保険料の本人負担は、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」が定めています。加入する人の線も、保険料の決まり方も、健康保険・厚生年金とは別に定められています。セットで入ることが多いだけで、セットの制度ではありません。

なぜ別々に入ることになるかは、それぞれの法律が「誰を被保険者にするか」を別々に決めているからです。雇用保険法4条1項は、被保険者を「適用事業に雇用される労働者であつて、第六条各号に掲げる者以外のもの」と定め、6条で、1週間の所定労働時間が20時間未満の人と、同じ事業主に継続して31日以上雇用される見込みがない人(31日の要件には条文上の例外があります)を外しています。ほかに、季節的に雇用される人や、一定の学生・生徒も6条で外れます。健康保険法3条1項9号と厚生年金保険法12条1項5号は、通常の労働者の所定労働時間・所定労働日数の4分の3未満の短時間労働者のうち、週20時間未満の人や学生などを被保険者にしないと定めています。

短時間労働者が健康保険・厚生年金に入る要件は、2026年10月1日から変わりました。日本年金機構によると、月額8.8万円以上という賃金の要件はこの日に撤廃され、いまは次の3つを満たすと加入の対象になります。

比べる点 健康保険・厚生年金 雇用保険
根拠の法律 健康保険法・厚生年金保険法 雇用保険法
通常の正社員 加入する 加入する
短時間で働く人の線 週20時間以上・勤め先が従業員51人以上の企業・学生でない(2026年10月1日以降) 週20時間以上・継続して31日以上の雇用見込み
保険料の決まり方 標準報酬月額×料率を会社と折半 賃金×料率(本人負担は一般の事業で5/1,000)
辞めたら 退職日の翌日に資格を失い、自分で切り替える 被保険者でなくなり、条件を満たせば基本手当を受け取る

出典:雇用保険法4条(e-Gov法令API)/雇用保険法6条(e-Gov法令API)/健康保険法3条(e-Gov法令API)/厚生年金保険法12条(e-Gov法令API)/日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」

企業規模の要件は、2027年10月以降、対象になる事業所の範囲が段階的に広がると日本年金機構のリーフレットにあります。従業員50人以下の事業所でも、労使の合意にもとづく申出があれば短時間労働者も加入できます。「年収106万円の壁」という言い方は、月額8.8万円の賃金要件が残っていたころのもので、2026年10月1日に撤廃されています。ただし、最低賃金の減額特例の許可を受けて所定内賃金が月額8.8万円未満の人は、原則として加入の対象外です。

たとえば、従業員が100人いる会社で週30時間働く通常の正社員は、健康保険・厚生年金・雇用保険のすべてに入ります。同じ人が週20時間以上・通常の労働者の4分の3未満の短時間で働くなら短時間労働者の要件で見ることになり、勤め先が51人以上の企業で学生でなければ、やはり3つとも加入の対象です。勤め先が51人に満たない企業だと、労使合意の申出が無い限り、雇用保険だけに入る形になります。

自分がどこまで入っているかは、給与明細で「健康保険」「厚生年金」「雇用保険」の3つの欄に金額があるかを見るのが早道です。欄が空いていれば、その保険には入っていない可能性があるので、総務か人事に確かめてください。会社が雇用保険に入れていなかった場合の確かめ方は 会社が雇用保険に未加入だったら? にまとめています。

毎月引かれている額の見方

雇用保険料は、毎月の賃金に料率をかけた額です。令和8年度(2026年4月〜2027年3月)の本人負担は、一般の事業で賃金の5/1,000、農林水産・清酒製造と建設の事業で6/1,000です。健康保険と厚生年金は、賃金そのものではなく標準報酬月額(賞与は標準賞与額)に料率をかけ、その額を会社と本人で折半します。

雇用保険料の本人負担が決まっている条文は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律31条です。一般の被保険者は、雇用保険率に応じる保険料の額から、二事業(雇用安定事業・能力開発事業)の率の分を引いた額の2分の1を負担します。二事業の分は事業主だけが負担するので、一般の事業の場合、事業主の負担は8.5/1,000で、本人より多くなっています。社会保険のように「ちょうど半分ずつ」ではありません。

雇用保険法4条4項は、「賃金」を「賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」と定めています。賃金に賞与が含まれているので、雇用保険料は毎月の給与だけでなく賞与にもかかります。

計算例

雇用保険料(本人分)=その月の賃金×5/1,000(一般の事業・令和8年度)。月の賃金が30万円なら、30万円×5/1,000=1,500円です(1円未満の端数の扱いは給与明細で確かめる)。

保険 何にかけるか 本人の負担 料率を決めるもの
雇用保険 その月の賃金・賞与 一般の事業で5/1,000(令和7年度は5.5/1,000) 国が年度ごとに決める・業種で違う
健康保険 標準報酬月額 会社と折半 協会けんぽは都道府県ごと(令和8年度は東京都9.85%など)
介護保険(40〜64歳) 標準報酬月額 会社と折半 協会けんぽは全国一律1.62%
厚生年金 標準報酬月額 会社と折半 法律で決まる率

出典:労働保険の保険料の徴収等に関する法律31条(e-Gov法令API)/厚生労働省(都道府県労働局)「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」/雇用保険法4条(e-Gov法令API)/協会けんぽ「令和8年度 都道府県単位保険料率」

協会けんぽでは、令和8年4月分から、健康保険料率とは別に子ども・子育て支援金率0.23%(全国一律)が加わっています。健康保険組合に入っている人は、率も、会社と本人の負担の分け方も、組合によって協会けんぽと違うことがあるので、組合の案内を見てください。

たとえば、建設の事業に当たる会社に勤める人の雇用保険料は賃金の6/1,000で、一般の事業の会社に勤める同じ賃金の人より少し多く引かれます。一般の事業で前の年度と比べて雇用保険の欄が少し下がった人は、令和7年度の5.5/1,000から令和8年度の5/1,000に下がった影響が考えられます。

明細の額が合っているか気になるときは、雇用保険は「その月の賃金×率」で、健康保険・厚生年金は「標準報酬月額×率÷2」で見当をつけます。標準報酬月額は会社の総務か、加入先(協会けんぽ・健康保険組合)の通知で確かめられます。辞めたあとに自分で払う額を考えるときも、この標準報酬月額が出発点になります。

辞めた翌日に止まる保険と続く道

卓上カレンダーと観葉植物の置かれた机

会社を辞めると、健康保険と厚生年金は退職日の翌日に資格を失います。雇用保険も離職で被保険者でなくなりますが、こちらは自分で何かに入り直す制度ではなく、条件を満たせば失業保険(基本手当)を受け取る側に回ります。止まったあとに自分で動く必要があるのは、健康保険と年金と、会社の給与から引かれていた住民税です。

資格を失う日は、健康保険法36条2号と厚生年金保険法14条2号が、どちらも「その事業所に使用されなくなったとき」の「翌日」と定めています。3月31日に退職した人なら4月1日、月の途中の4月15日に退職した人ならその翌日が資格喪失日です。任意継続の20日や、国民年金への切替の14日は、この資格喪失日(退職日の翌日)から数えます。国民健康保険の14日以内の届出は、起算日を市区町村の案内で確かめてください。

雇用保険は、雇用保険法4条2項が「離職」を「事業主との雇用関係が終了すること」と定めています。辞めたあと、会社は雇用保険法施行規則7条により、被保険者でなくなった事実のあった日の翌日から起算して10日以内に資格喪失届(離職の場合は離職証明書つき)をハローワークに出します。これは会社の義務の期限で、本人が出す書類ではありません。

保険 在職中 辞めた翌日 自分でやること 期限
健康保険 会社の健康保険 資格を失う 任意継続・国民健康保険・家族の扶養から選ぶ 任意継続は資格喪失日から20日以内/国保は14日以内
厚生年金 厚生年金(第2号) 資格を失う 国民年金(第1号)への切替。配偶者の扶養なら第3号 第1号は退職日の翌日から14日以内。第3号は配偶者の勤務先を通して届け出る
雇用保険 給与から保険料 被保険者でなくなる 受け取るなら離職票を持ってハローワークで求職の申込み 会社の資格喪失届は10日以内(会社の義務)
住民税 給与から天引き(特別徴収) 天引きの元が無くなる 普通徴収に変わったら納付書で納める 市区町村の納付書のとおり

出典:健康保険法36条(e-Gov法令API)/厚生年金保険法14条(e-Gov法令API)/雇用保険法施行規則7条(e-Gov法令API)/日本年金機構「会社を退職した時の国民年金の手続き」

退職日の翌日から動く順番
  1. 1資格を失う健康保険・厚生年金は退職日の翌日
  2. 2健康保険を選ぶ任意継続は20日以内・国保は14日以内
  3. 3年金を切り替える国民年金へ14日以内
  4. 4雇用保険離職票が届いたらハローワークへ

たとえば、次の会社が決まらないまま3月31日に退職した人は、4月1日に健康保険と厚生年金の資格を失い、健康保険をどうするかと国民年金への切替を、それぞれの期限までに決めます。同じ人が4月1日から次の会社で働き始めるなら、資格を失った同じ日に次の会社で入り直すので、自分で切り替える手続きはありません。退職日と入社日の間が空くかどうかで、やることの量がまるごと変わります。

この表で自分が動く期限のうちいちばん短いものが14日です。辞める日が決まったら、まず退職日の翌日の日付をカレンダーに書き、そこから数える国民年金の14日目と任意継続の20日目に印を付けておきます。国民健康保険の14日以内の届出も同じ頃に動けるよう余裕を見ておくと、どれを先に動かすかが見えます。

辞めた月の保険料は退職日で変わる

健康保険と厚生年金の保険料は、前の月から引き続き被保険者だった人が資格を失ったときは、資格を失った月の分がかかりません。その月に入社して同じ月に辞めた人は、その月の分がかかります。資格喪失日は退職日の翌日なので、月末に辞めると資格喪失日は翌月1日になり、退職した月の分まで会社の保険料がかかります。月の途中で辞めると資格喪失日も同じ月の中になり、その月の会社の保険料はかかりません。

健康保険法156条3項は、前月から引き続き被保険者である人が資格を失った場合、「その月分の保険料は算定しない」と定めています。厚生年金も、厚生年金保険法19条1項で被保険者期間を資格を失った月の前月までとし、81条2項で保険料をその期間の各月について徴収すると定めています。どちらも「月単位」で数える作りで、日割りはありません。

月末に辞めるか、月の途中で辞めるか
3月31日に退職

  • 資格喪失日は4月1日
  • 3月分まで会社の保険料
  • 国民年金は4月1日から第1号
4月15日に退職

  • 資格喪失日は退職日の翌日
  • 4月分の会社の保険料はかからない
  • 国民年金は退職日の翌日から第1号

ただし、月の途中で辞めて会社の保険料がかからなかった月も、その月の末日に国民年金の第1号被保険者であれば、その月の国民年金保険料はかかります。日本年金機構の例では、4月15日に退職して翌日から就職しない人は、4月末以降も第1号であれば4月分の保険料から納めます。健康保険の側も、任意継続や国民健康保険に入れば、その分の保険料を自分で払うことになります(いつの月から払うかは、加入先の案内と市区町村で確かめてください)。月の途中で辞めれば保険料がまるごと浮く、という話ではありません。

出典:健康保険法156条(e-Gov法令API)/厚生年金保険法19条(e-Gov法令API)/厚生年金保険法81条(e-Gov法令API)/日本年金機構「国民年金の加入手続き(会社を退職した場合)」

違いが出るのは、年金の記録の中身です。月末に辞めた人は、退職した月まで厚生年金の被保険者期間として数えられます。月の途中で辞めた人は、退職した月が厚生年金ではなく国民年金の期間になります。同じ月に次の会社に入って厚生年金に入り直す場合は、日本年金機構の例のとおり、その月の国民年金保険料の納付は要りません(第1号の期間の手続きは必要です)。

退職日を何日にするかは、会社との話し合いや有給休暇の残り方でも決まるので、保険料だけで選ぶものではありません。そのうえで、退職日の候補が月末と月の途中で迷っているなら、「その月の保険料を、会社の保険で払うか、国民年金・国保(または任意継続)で払うか」の違いだと考えると、比べる材料がはっきりします。

健康保険の3つの道と期限

辞めたあとの健康保険は、前の会社の健康保険を続ける任意継続、住んでいる市区町村の国民健康保険、家族の健康保険の被扶養者、の3つから選びます。期限は任意継続が資格喪失日から20日以内、国民健康保険が14日以内です。どれにも入らない空白をつくらないことが先で、どれが安いかはその次に比べます。

会社の健康保険の被保険者とその被扶養者は、国民健康保険法6条で国民健康保険の対象から外れています。辞めて会社の健康保険の被保険者でなくなると国民健康保険の対象になり、国民健康保険法施行規則3条で、世帯主が14日以内に市町村へ届け出ることになっています。家族の扶養に入るか任意継続に入れば、国民健康保険の対象からは外れます。

道 入れる条件 期限 保険料
任意継続 退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間 資格喪失日から20日以内(協会けんぽは必着) 全額本人負担。協会けんぽは標準報酬月額の上限32万円×住む都道府県の率
国民健康保険 会社の健康保険にも扶養にも入らない人 14日以内に市区町村へ 市区町村ごとに違う。非自発的失業者は軽減あり
家族の扶養 年収130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)など 家族の勤務先を通して届け出る 本人の保険料はかからない

出典:健康保険法3条(e-Gov法令API)/健康保険法37条(e-Gov法令API)/健康保険法38条(e-Gov法令API)/協会けんぽ「任意継続」/国民健康保険法6条(e-Gov法令API)/国民健康保険法施行規則3条(e-Gov法令API)/厚生労働省「国民健康保険の加入・脱退について」/厚生労働省 通知(被扶養者の認定)

任意継続は、健康保険法3条4項・37条・38条が定める制度で、入れるのは最長2年です。申出は資格喪失日から20日以内が原則で、保険者が正当な理由があると認めたときは、期間を過ぎた申出も受理できると37条1項のただし書にあります。在職中は会社と折半していた保険料を、辞めたあとは会社の分も含めて全額自分で払います。協会けんぽの場合、保険料は退職時の標準報酬月額(32万円を超える人は32万円)に住む都道府県の率をかけた額で、令和8年度の率は最も低い新潟県から最も高い佐賀県まで都道府県ごとに違い(東京都は9.85%)、これに子ども・子育て支援金率0.23%、40〜64歳は介護保険料率1.62%が加わります。初回の保険料は、協会けんぽでは納付書に書かれた期限までに納めないと、任意継続被保険者にならなかったものとみなされます。2回目以降の保険料は毎月10日までに納め、納付期日までに納めないと、その翌日に資格を失います。どちらも、遅れたことに正当な理由があると保険者が認めたときは別です。任意継続被保険者は、健康保険法99条で傷病手当金の対象から外れている点も覚えておいてください。

国民健康保険の保険料は市区町村ごとに違い、全国一律の額はありません。会社都合の解雇などで辞めた特定受給資格者や、有期契約の期間満了で更新されなかった人・正当な理由のある自己都合で辞めた人などで受給資格のある特定理由離職者は、国民健康保険法施行令29条の7の2により、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算する軽減の対象になります。期間は、離職の日の翌日の属する年度の翌年度の末日までで、申請先は市区町村です。

出典:国民健康保険法施行令29条の7の2(e-Gov法令API)

たとえば、標準報酬月額が32万円を超えていた人は、任意継続の保険料の計算でも32万円で頭打ちになるので、在職中の本人負担のちょうど2倍にはなりません。反対に、会社の都合で辞めて国民健康保険の軽減を受けられる人は、前年の給与所得が100分の30として扱われるので、任意継続より国民健康保険のほうが低くなることがあります。どちらが低いかは、任意継続は協会けんぽか組合の案内で、国民健康保険は市区町村の窓口で、それぞれ自分の額を出してもらってから比べます。

自分の額を出す手順は、①退職時の標準報酬月額を総務か加入先に確かめる、②任意継続なら上限の32万円と比べて低いほうに住む都道府県の率(40〜64歳は介護の率も)をかける、③国民健康保険は市区町村の窓口で前年の所得をもとに試算してもらう(離職理由で軽減を受けられるかも聞く)、の3つです。任意継続の保険料と比べ方の詳しい話は 協会けんぽ任意継続の保険料はいくら?、申し出の書類と手順は 任意継続の手続きは退職後何日以内?、入ったあとで国保や扶養に移る場合は 任意継続は途中でやめられる? にまとめています。

年金と住民税はどうなる?

厚生年金の資格を失ったあと、次の会社にすぐ入らない20歳以上60歳未満の人は、国民年金の第1号被保険者に切り替えます。届け出の期限は退職日の翌日から14日以内、保険料は令和8年度で月17,920円です。住民税は前の年の所得で計算されるので、辞めて収入が無くなっても、その年度の分は納めることになります。

国民年金法7条1項は、日本国内に住所がある20歳以上60歳未満の人を国民年金の被保険者とし、厚生年金の被保険者を第2号、その被扶養配偶者を第3号、それ以外を第1号と分けています。辞めて厚生年金の被保険者でなくなると第2号ではなくなるので、第1号か、配偶者の扶養に入るなら第3号に移ります。日本年金機構によると、第1号への切替は本人または世帯主が、住所地の市区役所・町村役場に届け出ます。配偶者の扶養に入る場合は、配偶者の勤務先を通して届け出ます。

出典:国民年金法7条(e-Gov法令API)/国民年金法施行規則6条の2(e-Gov法令API)/日本年金機構「国民年金保険料の額は、どのようにして決まるのか?」

住民税(個人住民税)の所得割は、総務省の説明では、前年の1月1日から12月31日までの所得で算定され、その年の1月1日に住所がある市町村で課税されます。会社員は原則として、会社が給与から天引きして納める特別徴収です。辞めて天引きの元になる給与が無くなると、市町村から届く納税通知書で自分で納める普通徴収に変わることがあります。普通徴収に変わったときの回数や納期は市区町村ごとなので、届いた納付書のとおりに納めます。

出典:総務省「個人住民税」

たとえば、年の途中で辞めて半年ほど休む人は、休んでいる間も、前の年に働いていた分の住民税の納付書が届くことがあります。年金も、第1号のあいだは毎月17,920円がかかります。収入が止まる月に、健康保険の保険料と国民年金と住民税が同時に出ていくので、辞める前に3つの額の見当をつけておくと、手元のお金の減り方を読み違えません。

国民年金の切替の書類や、保険料を納めるのが難しいときの手続きは 退職後の年金手続きは何日以内? で順に説明しています。住民税は、辞める前に総務に「最後の給与で何月分まで天引きされるか」を聞いておくと、普通徴収の納付書がいつから届くかの見当がつきます。

雇用保険は失業保険を受け取る側へ

雇用保険は、辞めたら被保険者でなくなり、保険料も止まります。任意継続は健康保険法の制度で、雇用保険法は被保険者を雇用される労働者とし、離職で雇用関係が終わると定めています。その代わり、条件を満たせば、ハローワークで手続きをして基本手当(いわゆる失業保険)を受け取る側に回ります。

任意継続は、健康保険法3条4項・37条・38条が定める健康保険の制度です。雇用保険法は4条1項で被保険者を「適用事業に雇用される労働者」とし、4条2項で離職を雇用関係の終了と定め、4条3項で「失業」を、被保険者が離職し、労働の意思と能力がありながら職業に就けない状態としています。基本手当を受けるには、離職したうえで、この「失業」の状態にあることが前提になります。「雇用保険」と「失業保険」は、制度の名前と、その中の給付(基本手当)の通称の関係です。

受け取るための条件は、一般の離職者なら、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あることです(病気やけがなどで賃金を受けられなかった期間があると、さかのぼる期間が延びる例外が13条1項にあります)。会社の倒産・解雇などの特定受給資格者や、有期契約の期間満了で更新されなかった人・正当な理由のある自己都合で辞めた人などの特定理由離職者は、離職の日以前1年間に6か月以上で足ります。雇用保険法12条は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として租税その他の公課を課することができないと定めていて、基本手当は課税されません。

出典:雇用保険法4条(e-Gov法令API)/雇用保険法13条(e-Gov法令API)/雇用保険法12条(e-Gov法令API)/厚生労働省パンフレット「離職されたみなさまへ」/厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」

雇用保険の加入期間は、辞めたら消えるわけでもありません。厚生労働省のQ&Aによると、前の会社を辞めてから基本手当や再就職手当などを受けずに、1年以内に次の会社で雇用保険に入れば、前の会社の被保険者期間も通算されます。受け取った場合はこの通算の条件から外れるので、次の会社がすぐ決まりそうな人は、受け取るかどうかを含めてハローワークで確かめます。

たとえば、雇用保険に3年入っていた人が辞めて、半年後に次の会社で雇用保険に入り、その間に基本手当を受けていなければ、3年の期間は次の会社の期間と通算されます。同じ人が半年の間に基本手当を受け取っていれば、この通算の条件には当たりません。受け取る場合の手順は、求職の申込みと離職票の提出から受給資格の決定、受給説明会、第1回の失業認定日へと進みます。

基本手当を受け取るなら、辞めた後は、離職票が届いたら住所地のハローワークへ持っていき、求職の申込みをします。受け取る日額と日数の目安は、ハローワークで受給資格が決まると分かります。

バイト・パートで雇用保険だけの場合

パートやアルバイトで、雇用保険には入っているのに健康保険・厚生年金に入っていないのは、2つの制度で加入の線が違うためです。雇用保険は週20時間以上・継続して31日以上の雇用見込みがあれば入り(学生などの除外はあります)、健康保険・厚生年金は短時間労働者の場合、週20時間以上に加えて、勤め先が従業員51人以上の企業であることと学生でないことが要件になります。

辞めたときの扱いも、入っていた保険の分だけ変わります。健康保険と厚生年金に入っていなかった人は、在職中から国民健康保険・国民年金(または家族の扶養)に入っているはずなので、辞めても健康保険と年金の切替はありません。雇用保険に入っていた人は、正社員と同じく、被保険者期間の条件を満たせば基本手当を受け取れます。

働き方(例) 健康保険・厚生年金 雇用保険 辞めたときにやること
週20時間以上(4分の3未満)・従業員51人以上の企業・学生でない 加入 加入 健康保険と年金の切替、ハローワーク
週20時間以上(4分の3未満)・従業員51人未満の企業(労使合意の申出なし) 加入しない 加入 ハローワーク(国保・国民年金は在職中から)
週20時間未満 加入しない 加入しない 在職中の国保・国民年金のまま

出典:雇用保険法6条(e-Gov法令API)/日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」

週の所定労働時間と月の所定労働日数がどちらも通常の労働者の4分の3以上ある人は、短時間労働者に当たらず、通常は企業の規模に関係なく健康保険・厚生年金に入ります。2026年10月1日に月額8.8万円の賃金要件が無くなったので、9月までは収入の線で入っていなかった人が、10月から加入の対象になっていることもあります。給与明細の欄が変わっていないか見てください。

たとえば、従業員30人の店で週20時間以上働いていて、所定労働時間が通常の労働者の4分の3に届かない人は、31日以上の雇用見込みがあり昼間学生などでなければ、雇用保険にだけ入っている形になります。この人が辞めた場合、健康保険と年金はもともと国民健康保険・国民年金なので切替は要らず、雇用保険の条件を満たしていれば、ハローワークで基本手当の手続きに進めます。同じ人が学生でなく、従業員100人の店で働いていれば、2026年10月以降は健康保険・厚生年金にも入っているはずなので、辞めたときの切替が必要です。

基本手当を受けている間にアルバイトをするときは、週20時間未満なら、働いた日と収入を申告すれば、そのほかの失業している日は基本手当を受けられる場合があります。どこから「就職」と扱われるかの目安は 失業保険をもらいながらバイトは何時間・いくらまで? で確かめてください。

手続きしなくていい場合

ノートパソコンとコーヒーのある机

退職日の翌日に次の会社で働き始め、そこで健康保険・厚生年金・雇用保険に入る人は、自分で健康保険や年金を切り替える手続きはありません。前の会社で資格を失う日と、次の会社で資格を得る日が同じになるので、国民健康保険にも国民年金にも入る期間ができないからです。

日本年金機構の例でも、3月末に辞めて4月の途中に次の会社に入ると、その間の第1号の手続きは必要になります。逆に言えば、間を1日も空けずに次の会社に入れば、第1号になる期間そのものがありません。雇用保険も、基本手当などを受けずに1年以内に次の会社で入れば、被保険者期間は通算されます。

手続きが要らない人が辞める前に確かめておくのは、次の3つです。

  • 前の会社の退職日と、次の会社の入社日が続いているか(間に土日や休みをはさまないか)
  • 次の会社で健康保険・厚生年金・雇用保険のすべてに入るか(雇用契約書や入社書類で見る)
  • 住民税の天引きを次の会社で続けるか、普通徴収に切り替えるか(前の会社の総務に聞く)

たとえば、3月31日に退職して4月1日に入社する人は、資格喪失日と資格取得日がどちらも4月1日になり、何も切り替えずに済みます。同じ人の入社日が4月の途中なら、4月1日から入社日の前日までは国民年金の第1号の手続きと、健康保険の切替(任意継続・国保・扶養のどれか)が必要になります。入社日が数日ずれるだけで、手続きが要るかどうかが入れ替わります。

迷ったら、退職日と入社日を並べて書き、1日でも間が空くかを見てください。空かなければ、自分でやることは住民税の確認くらいで、ほかは次の会社の入社手続きに任せて大丈夫です。

次に読むもの

任意継続の保険料の出し方は 協会けんぽ任意継続の保険料はいくら?、任意継続の書類と期限は 任意継続の手続きは退職後何日以内?、任意継続から国保・扶養への移り方は 任意継続は途中でやめられる? へ。国民年金への切替は 退職後の年金手続きは何日以内?、雇用保険に入っていなかったかもしれない人は 会社が雇用保険に未加入だったら?、受給中のアルバイトは 失業保険をもらいながらバイトは何時間・いくらまで? を見てください。

協会けんぽ任意継続の保険料はいくら?上限32万円と在職中の約2倍の分かれ目

退職後の年金手続きは何日以内?国民年金への切替と月いくら払うかの確認

退職後に扶養に入る手続きは?失業保険の日額いくらまでなら夫の扶養に入れるか

よくある質問

社会保険と雇用保険はセットで入るものですか?

セットで入ることが多いだけで、別の制度です。健康保険・厚生年金と雇用保険は、それぞれの法律で加入の線が決まっていて、短時間で働く人は片方だけに入ることがあります。給与明細の3つの欄で、自分がどれに入っているかを確かめてください。

雇用保険は毎月いくら引かれていますか?

令和8年度の本人負担は、一般の事業で賃金の5/1,000、農林水産・清酒製造と建設の事業で6/1,000です。毎月の給与だけでなく賞与にもかかります。1円未満の端数の扱いは給与明細で確かめてください。

雇用保険と失業保険は同じものですか?

雇用保険は制度の名前で、失業保険はその中の基本手当の通称です。在職中に雇用保険の保険料を払い、辞めて条件を満たすと、基本手当を受け取ります。受給資格のうち被保険者期間の条件は、一般の離職者なら離職の日以前2年間に12か月以上で、失業の状態にあることなども要ります。

雇用保険にも任意継続はありますか?

任意継続は健康保険法が定める健康保険の制度です。雇用保険法は被保険者を雇用される労働者としていて、辞めると被保険者でなくなり、保険料を払う側から、条件を満たせば基本手当を受け取る側に回ります。前の期間は、基本手当などを受けずに1年以内に次の会社で入れば通算されます。

辞めたら健康保険と年金は何日以内に何をすればいいですか?

健康保険は、任意継続なら資格喪失日から20日以内、国民健康保険なら14日以内に届け出ます。家族の扶養に入るなら家族の勤務先を通します。年金は、退職日の翌日から14日以内に、市区役所・町村役場で国民年金の第1号への切替を届け出ます。

任意継続と国民健康保険はどちらが安いですか?

一律には言えません。国民健康保険の保険料は市区町村ごとに違い、会社都合などで辞めた人は軽減を受けられることがあるからです。任意継続の額は協会けんぽか組合で、国民健康保険の額は市区町村の窓口で出してもらい、並べて比べてください。

次の会社がすぐ決まっていても手続きは要りますか?

退職日の翌日に次の会社で健康保険・厚生年金・雇用保険に入るなら、自分で切り替える手続きはありません。1日でも間が空くと、その期間の国民年金と健康保険の手続きが必要です。住民税の天引きをどうするかは、前の会社の総務に確かめてください。

数字だけ、もう一度

  1. 加入の線:雇用保険は週20時間以上・継続して31日以上の見込み。健康保険・厚生年金の短時間労働者は週20時間以上・従業員51人以上の企業・学生でない(賃金要件は2026年10月1日に撤廃)
  2. 毎月の保険料:雇用保険の本人負担は賃金の5/1,000(建設・農林水産等は6/1,000)で賞与にもかかる。健康保険・厚生年金は標準報酬月額×率を会社と折半
  3. 辞めた翌日:健康保険と厚生年金は退職日の翌日に資格を失う。雇用保険の資格喪失届は会社が10日以内に出す
  4. 辞めた月:資格を失った月の会社の保険料はかからない。月末退職は退職月まで、月の途中は退職月の分がかからないが、国民年金・国保はその月からかかる
  5. 健康保険:任意継続は20日以内・最長2年・全額本人負担(協会けんぽは上限32万円×住む都道府県の率など)。国保は14日以内。扶養は年収130万円未満など
  6. 年金と住民税:国民年金への切替は14日以内・月17,920円。住民税は前年の所得で決まり、辞めると普通徴収に変わることがある
  7. 雇用保険:辞めたら受け取る側。受給資格は2年間に12か月(特定受給資格者・特定理由離職者は1年間に6か月)。基本手当は非課税。受けずに1年以内に再加入すれば期間を通算
  8. 手続きしなくていい場合:退職日の翌日から次の会社で3つの保険に入るとき

社会保険と雇用保険の違いを覚えるよりも、辞める前に役に立つのは、退職日の翌日という1つの日付です。健康保険と厚生年金はその日に止まり、そこから国民年金の14日と任意継続の20日の期限が数えられ(国民健康保険も14日以内に届け出ます)、雇用保険は止まった代わりに受け取る側の手続きが始まります。退職日の翌日に次の会社で入れるなら自分でやることは少なく、間が空くなら、任意継続か国保か扶養か、国民年金をどうするかを、自分の標準報酬月額と住む都道府県の率で額を出してから決めれば、無保険の期間をつくらずに済みます。

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この記事を書いた人

やめ活編集部です。退職の伝え方・失業保険・退職代行について、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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