- 正社員はクビにできないって聞いたけど、本当?
- 会社がクビにできる条件は何?
- 遅刻が続いて「次はクビ」と言われた
- ミスや能力不足を理由に、辞めさせられるかもしれない
- PIP(業績改善計画)を出された。これはクビの前ぶれ?
- 異動や転勤を断ったら、解雇されるの?
- 上司に言い返したら「クビにするぞ」と言われた
- 就業規則のどこを見ればいいのか分からない
上記のような悩みに答えます。
「クビにする」と言われたとき、頭に浮かぶのは「正社員は簡単にクビにできないはず」という話と、「でも本当にクビになったら」という不安の両方です。正社員でも解雇そのものはできますが、どんな理由でもよいわけではなく、法律には理由と相当性の物差しが置かれています。検索で上に出てくるのは法律事務所や経営者向けの解説で、解雇の条件や種類は並んでいても、働く側が「言われたこの理由」を就業規則や書面のどこで確かめればいいかの順番は手薄です。そこで、解雇が有効になる条件、就業規則の解雇事由、予告と書面という基本を押さえたうえで、遅刻・ミス・PIP・異動拒否・上司への反抗といった言われた理由ごとに公的な資料で言えることと言えないことの線、退職勧奨や契約社員・試用期間との違いまで、労働契約法・労働基準法の条文と厚生労働省の資料で確かめながら整理しました。
正社員でも解雇はできますが、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当と認められない解雇は無効になります(労働契約法16条)。言われた理由が就業規則のどの解雇事由に当たるかを確かめ、予告は少なくとも30日前か30日分以上の平均賃金、理由は書面で請求できることを押さえます。遅刻やミスの回数で決まる公的な基準はなく、最終的に判断するのは裁判所です(2026年11月時点)。
2026年11月時点の制度で確かめています
クビにできないは本当か、2つの物差し

「正社員はクビにできない」は言い過ぎで、正確には「理由と相当性を欠く解雇は無効になる」です。労働契約法16条は、解雇について次のように定めています。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
条文の物差しは2つあります。1つは「客観的に合理的な理由」があるか、もう1つは、その理由があったとしても解雇という重い手段が「社会通念上相当」と言えるかです。条文の言葉は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は権利の濫用として無効、というものです。会社が「クビだ」と言った時点で解雇が有効に決まるわけではなく、有効かどうかはこの理由と相当性の物差しで見られます。
では、誰がそれを判断するのか。厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、解雇が正当と認められるかどうかは最終的には裁判所が種々の事情を総合的に勘案して判断するとしたうえで、解雇に納得できないときは、まず就業規則に定められている解雇事由を確かめ、どの事由に当たるとして解雇されたのかを検討することが大切だと書いています。会社でも、働く側でも、ネットの記事でもなく、最後に決めるのは裁判所だという点は、言われた側が覚えておいてよいことです。
| 物差し | 条文の言葉 | 言われた側が見ること |
|---|---|---|
| 理由 | 客観的に合理的な理由 | 言われた理由が、就業規則のどの解雇事由に当たるとされているか |
| 相当性 | 社会通念上相当 | その理由で、解雇という手段まで取ることが釣り合っているか |
| 判断する人 | (条文には無い) | 最終的には裁判所。会社の言い分だけでは決まらない |
たとえば、上司から口頭で「明日から来なくていい、クビだ」と言われた人と、就業規則の条項を示した書面で解雇を予告された人とでは、手元にある材料がまったく違います。前者は、どの事由に当たるとされたのかがまだ分からない状態で、まず理由を言葉ではなく書面でつかむところから始まります。後者は、示された条項と自分の事実を突き合わせる段階に進めます。同じ「クビ」でも、どこまで材料がそろっているかで、次の一手が変わります。
迷ったら、「この解雇は有効か無効か」を自分で決めようとせず、「理由は何とされているか」「それは就業規則のどこか」の2つを先に埋めてください。この2つが埋まれば、相談先に持っていく話の形ができます。
就業規則の解雇事由から確かめる

言われた理由を確かめる起点は、就業規則の「退職」や「解雇」の章です。労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使用する会社に就業規則の作成と届出を義務づけ、書かなければならない事項の3号に「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」を挙げています。
解雇の事由が就業規則に書かれていれば、言われた理由をその条項と並べて見られます。厚生労働省の「労働契約の終了に関するルール」も、使用者は就業規則に解雇事由を記載しておかなければならないと説明しています。就業規則の効力について、労働契約法7条は、労働契約を結ぶ場合に、会社が合理的な労働条件を定めた就業規則を働く人に周知させていたときは、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件による、と定めています。ただし、就業規則と異なる内容を個別に合意していた部分には例外があります。ただし、就業規則と異なる労働条件を個別に合意していた部分は、この限りでないというただし書きがあります。ここから、周知されていたかどうかも、確かめる点の1つになります。
出典:労働契約法7条(e-Gov法令API)/厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
解雇事由がどんな形で書かれるかは、厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)を見ると見当がつきます。モデルでは普通解雇が第53条に、懲戒解雇の事由が第68条第2項に置かれています。ただし、これはあくまでモデルで法律ではなく、自分の会社の就業規則の条番号や言葉とは違うことがあります。
- 1就業規則を手に入れる「退職」「解雇」「懲戒」の章を探す
- 2言われた理由を書き出すいつ・誰に・どんな言葉で言われたか
- 3当てはめる条項を探すどの解雇事由に当たるとされているか
- 4理由を書面で求める予告されたら解雇の理由の証明書を請求する
- 就業規則の置き場所:社内の共有フォルダ、休憩室、入社時の配布資料など、会社が周知している場所を確かめる
- 解雇の章:「解雇」「退職」の章に、解雇事由の一覧があるか
- 懲戒の章:懲戒の種類と懲戒解雇の事由が、別の章にまとめられていないか
- 言われた理由のメモ:日付・相手・言葉をそのまま残す
- 自分の事実:遅刻やミスがあったなら、その日付と事情(通院・電車の遅れ・指示の行き違いなど)
たとえば、「勤務成績が著しく不良で、改善の見込みがないとき」のような事由が就業規則にあって、会社が能力不足を理由に挙げている場合、見るべきは「著しく」「改善の見込みがない」と言える事実が何なのかです。反対に、言われた理由に当てはまりそうな条項がどこにも見当たらない場合は、その点自体を相談先で伝える材料になります。条項があるかないかで、話の始め方が変わります。
就業規則を見せてもらえない、どこにあるか分からないという人は、人事や総務に「就業規則の解雇の章を確認したい」と、メールなど日付の残る形で頼んでおくと、その依頼自体が記録になります。
言われた理由ごとに見ておくこと
遅刻、ミス、能力不足、PIP、異動や転勤の拒否、上司への反抗。どの理由についても「何回なら解雇できる」「この程度なら有効」という公的な基準は、確かめた厚生労働省の資料には載っていません。ここは、ネットで「遅刻◯回でクビ」と書かれていても、そのまま信じないでください。
公的な資料で言えるのは、考慮される事情の一般論までです。厚生労働省の「労働契約の終了に関するルール」は、勤務態度の問題や業務命令・職務規律違反など労働者側に落ち度がある場合について、「1回の失敗ですぐに解雇が認められるということはなく」と書き、落ち度の程度や行為の内容、それによって会社が被った損害の重大性、悪意や故意でやったのか、やむを得ない事情があるかなど、さまざまな事情が考慮されて、最終的には裁判所において判断されると説明しています。
| 言われた理由 | 厚労省の資料で言えること | 自分で確かめるもの |
|---|---|---|
| 遅刻が多い | 遅刻を名指しした記載は無い。勤務態度の問題などの落ち度について、1回の失敗ですぐ解雇が認められることはないとされる。回数の基準は資料に無い | 遅刻の日付と理由、注意を受けた日と方法、就業規則の条項 |
| ミス・能力不足 | ミスや能力不足を理由別に述べた記載は無い。勤務態度の問題などの落ち度について、落ち度の程度、損害の重大性、故意かどうかなどが考慮される | ミスの内容と結果、指導や配置の経過、該当するとされる条項 |
| PIP(業績改善計画) | 会社が使う呼び名で、確かめた厚労省の資料に定義は載っていない | 計画の書面、目標と期間、達成できなかった場合の扱いの記載 |
| 異動・転勤を断った | 拒否を理由とする解雇の有効性の基準は、公的資料で確認できない | 辞令の書面、就業規則の異動の定め、断った理由と伝えた記録 |
| 上司に反抗した | 業務命令や職務規律の違反は落ち度の例として挙がるが、1回ですぐ解雇とはならない | 何を指示され、何と答えたか、その日付とそばにいた人 |
異動や転勤について補っておくと、労働契約法14条は「出向」の命令が権利の濫用に当たる場合に無効とする規定で、同じ会社の中の配置転換や転勤を名指しした条文ではありません。「転勤を断ったら14条で守られる」とも「転勤を断れば解雇できる」とも、条文からは言えない、というのが確かめられる範囲です。
たとえば、ここ数か月で遅刻が続いて「次に遅刻したらクビ」と言われた人を考えます。遅刻のたびに家族の通院の付き添いという事情があり、上司にもその都度伝えていたなら、厚労省が挙げる「やむを得ない事情」に関わる事実として、日付つきで書き出しておく意味があります。事情を誰にも伝えていなかった人なら、今から伝えて記録を残すことが先です。どちらの場合も、解雇が有効か無効かを決めるのは裁判所で、言われた側にできるのは、考慮される事情に当たる事実を手元にそろえることです。
PIPを出された人は、計画の書面そのものを手元に残してください。目標、期間、面談の日程、達成できなかったときにどうなると書かれているかが、あとで話をするときの土台になります。PIPを経れば解雇が有効になる、という決まりは、確かめた厚生労働省の資料には載っていません。
法律がクビにできないとする理由
理由の中には、法律がはっきり解雇の理由として認めていないものがあります。厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、一定の期間中の解雇の制限と、解雇の理由として認められない事由を一覧で挙げ、こうした法律の規定に反する解雇は無効とされると書いています。
同じページは、無効とされた場合には引き続き労働者としての地位にあることが認められ、解雇日以降に仕事に就けなかった期間の賃金の支払いを受ける権利を取得できる、とも説明しています。言われた理由が次の一覧に当たるかどうかは、真っ先に見ておく点です。
- 期間の制限:業務上の負傷や疾病で療養のため休業する期間とその後30日間、産前産後の休業期間とその後30日間(労働基準法19条)
- 国籍、信条などを理由とするもの
- 監督機関への申告を理由とするもの
- 性別、結婚・妊娠・出産・産前産後休業を理由とするもの
- 育児休業・介護休業などの申出や利用を理由とするもの、パワーハラスメントについて事業主に相談したことなどを理由とするもの、労働組合への加入や正当な活動を理由とするもの
期間の制限を定める労働基準法19条には、打切補償を支払う場合や、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合というただし書きがあります。どの期間がいつまで続くかの数え方と、ただし書きの扱いは 解雇制限の期間と例外 にまとめています。
たとえば、上司のパワハラを社内の窓口に相談した直後に「協調性がない」と解雇を言われた人は、言われた理由は「協調性」でも、相談した日と解雇を言われた日の前後関係を記録しておくことに意味があります。相談をしていない人や、相談と関係のない出来事が続いている人では、話の組み立てが違ってきます。理由の言葉だけでなく、その前に何があったかの日付を並べてください。
一覧に当たりそうだと思ったら、その時点で総合労働相談コーナーなど外の窓口に、日付を並べたメモを持って相談する段階です。
会社の経営を理由にした解雇

「業績が悪いので辞めてもらう」と言われた場合も、物差しは同じ労働契約法16条です。会社の経営上の理由による解雇について、厚生労働省は、裁判例で示された判断の要素を紹介しています。
厚生労働省の「労働契約の終了に関するルール」が挙げる要素は4つです。並べると次のとおりで、これらは条文ではなく、16条の当てはめの際に裁判例で使われてきた判断の目安です。
| 要素 | 厚労省の説明 | 言われた側が聞いてよいこと |
|---|---|---|
| 人員削減の必要性 | 不況・経営不振など企業経営上の十分な必要性に基づくこと | なぜ人を減らす必要があるのか |
| 解雇回避の努力 | 配置転換、希望退職者の募集など他の手段で努力したこと | 解雇の前に何を試したのか |
| 人選の合理性 | 対象者を決める基準が客観的・合理的で、運用も公正であること | なぜ自分が対象なのか、基準は何か |
| 手続の妥当性 | 労働組合や労働者に、必要性・時期・規模・方法を説明すること | 説明の場はあったか、これからあるか |
なお、「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」という言い分けはよく使われますが、この3つを法律の条文で定義した分類があるわけではなく、実務上の呼び名です。懲戒としての解雇には、労働契約法15条が、行為の性質や態様などに照らして客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない懲戒は無効とする、と別に定めています。懲戒解雇と言われた人の確かめ方は 懲戒解雇と諭旨解雇 に分けています。
たとえば、部署の閉鎖を理由に解雇を言われた人で、同じ会社の別の部署に人を募集している求人が出ているなら、表の「解雇回避の努力」に関わる事実として書き留めておけます。会社全体で希望退職の募集がすでにあり、説明会も開かれていた人なら、確かめる点は人選の基準のほうに移ります。会社の説明を聞くときは、4つの要素を質問の順番として使うと、聞き漏らしが減ります。
30日前の予告と理由の証明書

解雇の理由が有効かどうかとは別に、解雇の手続きには決まりがあります。労働基準法20条は、会社が労働者を解雇しようとする場合は少くとも30日前に予告しなければならず、30日前に予告しない会社は30日分以上の平均賃金を支払わなければならない、と定めています。
予告の日数は、1日について平均賃金を払えば、その日数だけ短くできます(20条2項)。厚生労働省のQ&Aは、20日前に予告された場合は不足の10日分を請求できる、という例で説明しています。平均賃金は、原則として算定の事由が発生した日以前3か月間の賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額です(労働基準法12条)。手当の額を自分の数字で出す方法と、払われないときの動き方は 即日解雇の予告手当 にまとめています。
20条のただし書きには、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合と、労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合が挙がっています。厚生労働省のQ&Aによれば、このただし書きに当たるかどうかは労働基準監督署長の認定が必要で、会社が「懲戒解雇だから予告はしない」と言うだけで決まるものではありません。
理由を書面で受け取る決まりも、同じ労働基準法の22条にあります。
| 請求できる時期 | 何の証明書か | 条文 |
|---|---|---|
| 解雇の予告がされた日から退職の日まで(予告後に別の事由で退職した場合は不要) | 解雇の理由についての証明書 | 22条2項 |
| 退職の場合 | 使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由(解雇ならその理由を含む) | 22条1項 |
| どちらも | 請求していない事項は書いてはならない | 22条3項 |
厚生労働省のQ&Aは、解雇の理由は具体的に示す必要があり、就業規則の条項に当たる事実を理由とする場合は、その条項の内容と、条項に当たるに至った事実関係まで書く必要があるという通達を紹介しています。請求したのに交付されない場合は、労働基準監督署に相談するよう案内しています。
たとえば、月末に「来月末で解雇する」と予告された人は、予告の日から退職の日までの間に、22条2項の証明書を請求できます(予告のあとに解雇以外の理由で退職した場合は、その退職の日以後は交付しなくてよいというただし書きがあります)。予告もなく当日に解雇された人は、予告の日と退職の日が同じになるので、退職後に22条1項の証明書で解雇の理由を求めることになります。予告された段階の人ほど、退職の日を待たずに理由をつかめる、という違いがあります。
証明書は、前の項で見た就業規則の条項と並べるための材料です。請求はメールや書面など日付の残る形で行い、受け取ったら、書かれた条項と自分の事実を見比べてください。
「辞めてほしい」は解雇ではない
「辞めてくれないか」「自分から退職届を出したほうがいい」と言われるのは、解雇ではなく退職勧奨です。解雇は会社が一方的に労働契約を終わらせることで、退職勧奨は会社が退職を勧め、本人がそれに応じるかを決めるものです。
この違いは、ここまで見た物差しがどこに働くかに関わります。労働契約法16条は「解雇」の有効性の条文で、本人が自分で退職届を出して辞めた場合は解雇ではありません。退職勧奨を受けた段階で、その場ですぐ答える必要はなく、応じるかどうかは本人が決められます。
- 会社が一方的に労働契約を終わらせる
- 労働契約法16条の物差しで有効性が問われる
- 少くとも30日前の予告か30日分以上の平均賃金
- 会社が勧め、応じるかは本人が決める
- 退職届を出すまでは、応じるかどうかを考えられる
- その場ですぐ答える必要はない
- 言われた言葉をそのまま残す:「解雇する」なのか「辞めてほしい」なのか
- その場で退職届に署名しない:持ち帰って考えたいと伝える
- 面談の日付・相手・場所と、提示された条件をメモする
- 解雇だと言うなら、解雇の予告と理由の証明書を求める
たとえば、面談で「このままだと解雇になるから、自分から辞めたほうが経歴に傷がつかない」と言われた人は、言葉の上では退職を勧められています。ここで退職届を出せば、解雇ではなく、本人から退職を申し出る形になります。「解雇なのか、退職のお願いなのか」を聞き返し、答えをメモしておくと、どちらの物差しで考えればよいかがはっきりします。
退職勧奨に応じて辞めた場合の失業保険の扱いと、離職票の確かめ方は 退職勧奨と会社都合 に分けて書いています。
契約社員と試用期間は扱いが違う
正社員(期間の定めのない雇用)と、契約社員などの期間の定めのある雇用、試用期間中の人とでは、解雇の決まりが同じではありません。
期間の定めのある労働契約について、労働契約法17条1項は、会社はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間に労働者を解雇することができない、と定めています。厚生労働省は、期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されると説明しています。期間の途中で解雇を言われた人の確かめ方は 有期契約の途中の解雇 にまとめています。
出典:労働契約法17条(e-Gov法令API)/厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
試用期間中の人については、労働基準法21条が、30日前の予告の決まりを適用しない場合を挙げていて、その1つが試の使用期間中の者です。ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は適用除外にならず、予告の決まりが働きます。これは予告の手続きの話で、試用期間中なら自由に解雇できるという意味ではありません。本採用を見送る場合の基準は公的な資料で確かめられなかったので、ここでは書きません。試用期間中の解雇は 試用期間中の解雇 にまとめています。
| 雇い方 | 解雇の決まりで違う点 | 確かめるもの |
|---|---|---|
| 正社員(期間の定めなし) | 労働契約法16条の物差し | 就業規則の解雇事由 |
| 契約社員など(期間の定めあり) | 期間の途中はやむを得ない事由が必要(17条1項) | 契約書の期間と、途中で終わる理由 |
| 試用期間中 | 14日を超えて使用されていれば予告の決まりが働く(21条) | 入社日から何日たったか、試用の定め |
たとえば、契約期間が1年の人が半年たったところで「明日から来なくていい」と言われた場合、確かめる起点は就業規則より先に、契約書に書かれた期間です。同じ言葉を試用期間中に言われた人なら、入社日から14日を超えているかで、予告の決まりが働くかどうかがまず分かれます。自分がどの雇い方かを、契約書と労働条件通知書で確かめてから、それぞれの記事に進んでください。
解雇されたら失業保険はどうなるか
解雇された場合、重責解雇を除いて、失業保険では特定受給資格者の範囲に入ります。雇用保険法施行規則36条1号は、特定受給資格者の対象として「解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く。)」を挙げています。
出典:雇用保険法施行規則36条(e-Gov法令API)/ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
一方、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)とされた場合は、給付制限がかかります。雇用保険法33条1項の給付制限の幅は1箇月以上3箇月以内で、厚生労働省の運用では重責解雇は3か月と労働局のリーフレットが示しています。懲戒解雇と言われても、それがそのまま重責解雇と判定されるとは限らず、離職理由の判定は、会社と本人それぞれの主張を確認できる資料で事実を確かめたうえで、最終的にハローワークが行います。
出典:雇用保険法33条(e-Gov法令API)/群馬労働局リーフレット/厚生労働省「離職されたみなさまへ」
| 離職の形 | 失業保険での扱い | 確かめる書類 |
|---|---|---|
| 解雇(重責解雇を除く) | 特定受給資格者の範囲に入る | 離職票の離職理由 |
| 重責解雇とされた | 給付制限(運用で3か月) | 離職票の離職理由と、解雇の理由の証明書 |
| 退職勧奨に応じた | 判定はハローワーク | 離職証明書の⑯欄(異議の有無) |
ここで混ぜないでほしいのは、解雇が労働契約法16条で有効か無効かという話と、失業保険の離職理由がどう判定されるかという話が、別の仕組みだという点です。離職証明書には、会社が書いた離職理由に本人が異議あり・なしを示す⑯欄があり、会社は辞める日までに本人に離職理由を確認させることになっています。
出典:厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」
たとえば、能力不足を理由に普通解雇とされた人と、会社のお金に手をつけたとして懲戒解雇とされた人とでは、離職票の上での扱いが変わり得ます。前者なら特定受給資格者として給付制限なしで始まる見込みが立ち、後者で重責解雇と判定されれば給付制限がかかります。自分の年齢・雇用保険に入っていた期間・退職日で、日額と給付日数を出したい人は 失業保険の計算ツール で、離職理由を切り替えて見比べてください。解雇の呼び名ごとの失業保険の違いは 解雇の種類と失業保険 に詳しく書いています。
争わなくていい場合
解雇の話が出たからといって、全員が会社と争う必要はありません。次に当てはまる人は、相談先に持ち込まずに、書面をそろえて次に進む道を選んでも足ります。
- 言われた理由が就業規則のどの条項に当たるかが書面で示され、自分の事実と照らして納得している
- 予告が少くとも30日前にあったか、足りない日数分の平均賃金が払われている
- 理由の証明書を受け取り、離職票の離職理由も事実どおりになっている
- まだ退職勧奨の段階で、退職日や条件を話し合って決められている
- 職場に戻るより、次の仕事に早く移りたいという気持ちがはっきりしている
争うかどうかは、解雇が有効か無効かの見通しだけで決まるものではありません。戻りたいのか、お金の面を整えたいのか、早く次に進みたいのかで、取る道が変わります。どれを選んでも、就業規則の条項、言われた言葉のメモ、理由の証明書の3つは手元に残しておくと、あとで気が変わったときにも使えます。
反対に、言われた理由が前の「法律がクビにできないとする理由」の一覧に当たりそう、予告も手当もなく当日に解雇された、理由の証明書を求めても出てこない、という人は、無料の総合労働相談コーナーなど外の窓口に、そろえた書面を持って相談する段階です。相談先ごとにできることと費用は 不当解雇の相談先 に、解雇を言われた直後に受け取るものの順番は クビになったら最初にやること にまとめています。
たとえば、遅刻を理由に解雇を予告され、就業規則の条項も示されていて、本人も次の仕事を探し始めている人なら、予告と書面がそろっているかを確かめて次に進む選び方があります。同じ遅刻でも、理由の説明が口頭だけで、遅刻には通院という事情があった人なら、まず書面で理由を求めるところから始めます。
試用期間中の解雇はいつから予告が要る?入社何日目かで変わる手当と会社都合
会社都合退職になる条件は?自己都合との給付日数・給付制限の差を表で
懲戒解雇と諭旨解雇の違いは?退職金と失業保険がいくら・いつから変わるか
よくある質問
正社員は本当にクビにできないのですか?
正社員でも解雇はできます。ただし、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効になります(労働契約法16条)。有効かどうかを最終的に判断するのは裁判所です。
遅刻が何回あったらクビになりますか?
何回で解雇が有効になるという公的な基準は、確かめた厚生労働省の資料には載っていません。厚労省は、勤務態度の問題などの落ち度がある場合について、1回の失敗ですぐに解雇が認められることはなく、落ち度の程度ややむを得ない事情などが考慮されると説明しています。遅刻の日付と事情を書き出し、就業規則の条項と並べて確かめてください。
PIPを出されたら、もう解雇は避けられませんか?
PIP(業績改善計画)は会社が使う呼び名で、確かめた厚労省の資料に定義は載っておらず、PIPを経れば解雇が有効になるという決まりも確かめられません。計画の書面と面談の記録を手元に残し、達成できなかった場合の扱いがどう書かれているかを見ておきます。
転勤を断ったら解雇されますか?
転勤や異動の拒否を理由とする解雇の有効性について、公的な資料で確かめられる基準はありません。労働契約法14条は出向の規定で、同じ会社の中の転勤の条文ではありません。辞令の書面、就業規則の異動の定め、断った理由を伝えた記録をそろえて、外の窓口で聞いてください。
解雇の理由を書面でもらうことはできますか?
できます。解雇の予告がされた日から退職の日までの間に請求すれば、会社は遅滞なく解雇の理由の証明書を交付しなければなりません(労働基準法22条2項)。退職後は、22条1項の証明書で退職の事由として解雇の理由を求められます。
「自分から辞めたほうがいい」と言われたら、解雇ですか?
それは退職勧奨で、解雇ではありません。応じるかどうかは本人が決めることで、その場で退職届を書く必要はありません。言われた言葉と日付をメモし、解雇なのか退職のお願いなのかを聞き返しておくと、あとで話がずれにくくなります。
数字だけ、もう一度
- 解雇の物差し:客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効(労働契約法16条)。最終的に判断するのは裁判所
- 解雇事由:常時10人以上の労働者を使用する会社は、就業規則に「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」を書く(労働基準法89条3号)
- 理由ごとの基準:遅刻・ミス・能力不足・PIP・異動や転勤の拒否について、回数や程度の公的な基準は資料に無い
- 解雇が制限される期間(打切補償などのただし書きあり):業務上の負傷・疾病の休業期間とその後30日間、産前産後の休業期間とその後30日間(労働基準法19条。打切補償や天災事変などのただし書きあり)
- 予告:少くとも30日前、または30日分以上の平均賃金(労働基準法20条)。20日前の予告なら不足の10日分
- 理由の証明書:予告の日から退職の日までは22条2項、退職後は22条1項で請求できる
- 期間の定めのある雇用:契約期間の途中は、やむを得ない事由がなければ解雇できない(労働契約法17条1項)
- 試用期間:14日を超えて引き続き使用されていれば、予告の決まりが働く(労働基準法21条)
- 失業保険:解雇(重責解雇を除く)は特定受給資格者の範囲。重責解雇は給付制限(法律の幅は1箇月以上3箇月以内、運用で3か月)
「クビにする」と言われた直後は、解雇が有効か無効かを自分の頭の中で決めたくなりますが、それを最後に決めるのは裁判所で、言われた側が先にできるのは材料をそろえることです。就業規則の条項、言われた言葉と日付、理由の証明書。この3つがそろえば、争うにしても、納得して次に進むにしても、自分で選べる状態になります。正社員はクビにできないと安心しきるのでも、言われたとおりに退職届を書くのでもなく、書面で確かめてから決める。それが、言われた側に残された主導権です。

