- 農協の退職金は、平均でいくらくらい出るの?
- 勤続10年・20年・30年で辞めたら、自分はいくらになる?
- 自己都合で辞めると、定年より減らされる?
- 退職金の計算式は、どこに書いてあるの?
- 給与明細に出てこない「共済会の退職給付」って何?
- 勤続何年から退職金が出るの?
- 辞めたら、いつ、どうやって振り込まれる?
- 退職金のことを、上司や人事にどう聞けばいい?
上記のような悩みに答えます。
農協(JA)の退職金は、JAが職員に払う退職金そのものに加えて、その積立先としてJAの外にある共済会の制度が使われます。押さえておきたいのは、掛金は全額JAが出す仕組みで、給与から引かれる形ではないことです。検索で出てくるのは「大卒20年でいくら」といった出典の分からない平均や個人の体験の数字が中心で、JAごとの規程と共済会の制度がどうつながっているのか、公的な統計でどこまで分かってどこから分からないのか、自分の額をどこで確かめるのかまでを一続きに並べた記事は見当たりません。そこで、退職金の決まり方・公的統計で分かる範囲・勤続と退職理由の関係という基本を押さえたうえで、自分の額を人事に確かめる手順、辞める時期と請求の流れ、出ない場合の扱いまで、JA全国共済会の公式の案内と厚生労働省の就労条件総合調査で確かめながら整理しました。
JAの退職金の額は、各JAの退職給与規程で決まります。外部積立にはJA全国共済会の制度があり、公式はJAで最も普及していると説明しています。掛金は加入したJAが全額負担します。「勤続◯年で◯万円」というJAの公的な数字は無いので、規程と支給率表を人事に出してもらい、勤続年数と退職理由で自分の額を確かめます(2026年11月時点)。
辞めたあとの失業保険は退職金とは別の制度で、いくらになるかは 失業保険の計算ツール に自分の数字を入れて出せます。
この記事の数字は2026年11月時点のものです。共済会の制度の内容は、2026年11月7日にJA全国共済会の公式サイトで確認しました。
JAの退職金は何で決まる?

JAの退職金がいくらになるかを決めているのは、自分が勤めるJAの退職給与規程です。勤続何年から出るか、どんな計算式で出すか、退職理由で率を変えるかは、すべてこの規程に書かれています。共済会の制度は、その規程で払う退職金のためにお金を積み立てておく入れ物で、額そのものを決めているわけではありません。
ここで言う共済会の制度は、一般財団法人 全国農林漁業団体共済会(JA全国共済会)が行っている「農林漁業団体職員退職給付金制度」で、公式には通称「制度」と呼ばれています。税法上は特定退職金共済(特退共)にあたる仕組みで、公式サイトは「現在JAにおいて最も普及している退職金外部積立制度」と説明しています。JAグループでは、JA全国共済会と8府県の共済会がこの事業を行っています。会社員の退職金でよく聞く中退共(中小企業退職金共済)とは別の制度なので、中退共の仕組みや額の表は当てはまりません。中退共については 中退共の退職金 で整理しています。
共済会の制度では、職員ごとに決めた掛金を毎月積み立て、退職したときに「掛金累積額とそれに付加された利息」が給付されます。積み立てた分に利息がついて戻ってくる、積立貯金のような形です。
- 1退職給与規程JAごとに額の決め方を定める
- 2掛金の積立JAが全額負担で毎月積み立てる
- 3退職退職月の掛金まで払い込む
- 4JAが請求JAが共済会に請求書を送る
- 5本人の口座へ請求書の受付から2〜3週間程度
掛金の決まりは次のとおりです。公式の案内では、掛金は全額をJA(加入団体)が負担し、個人負担はできません。1口は月額100円で、職員ごとに5口以上300口以下の範囲で口数を決めます。上限の300口で、月額30,000円です。口数は、JAが規程で払う退職金の額を超えない範囲で決めると、団体向けのよくある質問で案内されています。
- 掛金を出す人:JA(全額負担・職員の個人負担はできない)
- 掛金の単位:1口月額100円、職員ごとに5口以上300口以下
- 払い込む期間:契約した月から退職した月まで
- 給付される額:掛金累積額+付加された利息(給付還元利率は変動で、毎年度見直し)
- 手数料:公式は「企業年金制度のような手数料は一切不要」と説明
たとえば、制度に加入しているJAの職員が辞める場合、JAが払う退職金の額は規程の計算式で決まり、制度に積み立ててきた分は共済会から本人の口座に送られます。口数は規程の退職金の額を超えない範囲で決めると団体向けの案内にあるので、制度から届く額と規程で決まる退職金の額が同じになるとは、公式の案内からは言えません。両者に差がある場合にJAがいつ・どう払うかは公式の案内に書かれていないので、人事に確かめる項目です。
編集部の整理では、JAの退職金を考えるときは「規程で額が決まり、制度は入れ物」と分けて考えると、迷いが減ります。額を知りたいなら規程を見る、届く流れを知りたいなら制度を見る、という順番です。会社に退職金の定めがあるかどうかの確かめ方全般は 退職金がない会社の見分け方 でまとめています。
「農協の退職金の平均」が無い理由
「農協の退職金の平均はいくらですか」という問いに、公的な統計で答えることはできません。厚生労働省の就労条件総合調査は退職金の額を集計していますが、産業別に金額を公表しているのは調査産業計・製造業・非製造業の3つだけで、JAを含む区分の金額は表に出てこないからです。
JAは、日本標準産業分類では大分類Qの「複合サービス事業」に入ります。分類の説明には、信用事業や共済事業と併せて複数の事業を行う「郵便局、農業協同組合等」が分類される、と書かれています。就労条件総合調査で複合サービス事業が出てくるのは、退職給付制度の有無、退職理由の割合、退職金が出る最低勤続年数の表で、1人あたりの金額の表ではありません。しかも、この区分にはJAのほかに郵便局や事業協同組合も含まれるので、数字はJAだけの値ではありません。
出典:e-Stat「日本標準産業分類(令和5年7月改定)複合サービス事業」
そのうえで分かることもあります。令和5年就労条件総合調査では、退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合は、複合サービス事業で97.9%、全産業で74.9%でした。複合サービス事業は全17産業で最も高い割合です。
- 制度がある 97.9%
- 制度がある企業のうち一時金のみ 58.0%
- 制度がある企業のうち併用 40.1%
- 制度がある 74.9%
- 制度がある企業のうち一時金のみ 69.0%
- 制度がある企業のうち併用 21.4%
制度がある企業の形を見ると、複合サービス事業は退職一時金制度のみが58.0%、退職年金制度のみが1.8%、両方の併用が40.1%で、全産業(69.0%・9.6%・21.4%)より併用の割合が高くなっています。
注意したいのは、97.9%は複合サービス事業に入る企業の割合で、「農協なら退職金が必ずある」という意味ではないことです。また、この調査は常用労働者30人以上の民営企業が対象です。退職金があるかどうかは、自分のJAの就業規則と退職給与規程で確かめます。
たとえば、ネットで「JA職員は勤続◯年で◯百万円」といった数字を見かけても、それがどのJAの、どの学歴・職種の、どの退職理由の数字なのかは分かりません。合併前の旧JAの規程か、いまの規程かでも変わる可能性があります。出典の書かれていない平均は、自分の額を考える材料にはなりにくい数字です。
平均の数字を探すより、自分のJAの規程の計算式に自分の勤続年数と退職理由を当てはめるほうが、確かな額にたどり着けます。次の項では、それでも目安がほしい人のために、公的統計で読める範囲を、対象を添えて並べます。
勤続年数と退職理由で何が変わる?

勤続年数と退職理由で退職金がどう変わるかは、各JAの退職給与規程が決めています。共済会の公式の案内には、勤続年数別の給付額の表も、自己都合と定年で給付がどう違うかの記載もありません。そのため「JAは自己都合だと減る」「定年なら満額」とは、仕組みとしては言えません。
それでも、公的統計で見える傾向はあります。まず、退職金が出始める勤続年数です。令和5年就労条件総合調査の原表(第405-2表)では、自己都合退職で退職一時金を受けるのに必要な最低勤続年数について、複合サービス事業の企業は次のように答えています。
| 最低勤続年数 | 複合サービス事業 | 調査産業計 |
|---|---|---|
| 1年未満 | 4.9% | 4.5% |
| 1年以上2年未満 | 47.6% | 12.7% |
| 2年以上3年未満 | 16.1% | 9.3% |
| 3年以上4年未満 | 25.7% | 57.0% |
| 1企業平均 | 23.1か月 | 35.8か月 |
出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」原表 第405-2表(e-Stat)
この表は、退職一時金を社内で準備している企業が対象で、共済会などの外部積立だけで準備している企業は含まれない場合があります。会社都合退職の表(第405-1表)では、複合サービス事業の平均は20.6か月で、自己都合の23.1か月より短くなっています。共済会の団体向けの案内でも、制度への加入は規程の支給対象になった時点からで、例として「勤続2年以上で支給対象となる場合は勤続2年経過後」と書かれていますが、これは例であって、各JAの実際の年数ではありません。
次に、退職理由の割合です。複合サービス事業で勤続20年以上かつ45歳以上の退職者を事由別に見ると、自己都合49.8%、定年34.2%、早期優遇15.7%で、全産業(自己都合31.7%・定年56.5%・早期優遇5.7%)より自己都合と早期優遇の割合が高くなっています(同調査の第21表)。
金額の目安がほしい人が見られるのは、産業計の数字です。同調査の原表(第504表)で、勤続年数別・退職事由別の1人平均退職給付額は次のとおりです。
| 勤続年数 | 定年 | 自己都合 |
|---|---|---|
| 20〜24年 | 693万円 | 553万円 |
| 25〜29年 | 1,027万円 | 806万円 |
| 30〜34年 | 1,408万円 | 1,344万円 |
| 35年以上 | 1,834万円 | 1,833万円 |
出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」原表 第504表(e-Stat)
この表は産業計・学歴計の値で、対象は勤続20年以上かつ45歳以上の退職者だけです。JAの額ではなく、勤続20年未満の人の値もありません。産業計では、勤続20〜24年の自己都合が553万円、定年が693万円と自己都合のほうが低い一方、35年以上では1,833万円と1,834万円でほぼ並んでいます。
勤続の短い人の目安として公的に出ているのは、東京都の調査です。
東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」のモデル退職金(自己都合退職・調査産業計)は、大学卒で勤続5年43.2万円、10年112.5万円、20年346.8万円、30年750.7万円です。
これは東京都内の従業員10〜299人の中小企業のうち退職金制度がある会社が、モデル条件に当てはめて答えた額で、実際に払われた額でも全国の数字でもなく、JAの額でもありません。
出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」第8表-①
たとえば、勤続の短い人と長い人では、見るべき数字が違います。勤続20年未満の人は、上の金額表の対象外なので、規程の「勤続何年から支給か」と「自己都合の支給率」を見るのが先です。勤続25年の人は、規程で定年と自己都合の率に差を付けているか、早期退職の優遇の定めがあるかを確かめると、辞める時期の判断材料になります。
編集部の整理では、統計は「自分のJAの規程にどんな項目がありそうか」を知る地図として使い、金額は規程で出す、という分け方が安全です。統計で自己都合の額が低く見えるのは産業計の傾向で、自分のJAで差があるかは規程の支給率表にしか書かれていません。
自分の退職金を確かめる方法と聞く相手
自分の退職金の額は、退職給与規程と支給率表(または計算式)を人事・総務の担当に出してもらい、勤続年数と退職理由を当てはめて確かめます。就業規則などに退職金の定めがあれば、退職金は労働基準法上の賃金として会社に請求できると考えられる、と厚生労働省の大阪労働局は説明しています。額を確かめる根拠になるのは、この規程の文言です。
規程を見るときに押さえる項目は次のとおりです。
- 支給の対象:勤続何年から出るか、退職理由ごとに条件が違うか
- 計算式:基本給に支給率を掛ける形か、ポイントを積み上げる形か、別の式か
- 支給率表:勤続年数ごと・退職理由(自己都合・定年・会社都合など)ごとの率
- 勤続の起算日:入組日から数えるか、試用期間や前のJAでの期間を含むか
- 退職理由の扱い:自己都合になる場合と、定年・早期退職の扱いの違い
- 支払いの方法と時期:共済会の制度から届く分と、JAが払う分の時期
計算式が「基本給×支給率」の形なら、退職時の基本給と、自分の勤続年数・退職理由に当たる率が分かれば、おおよその額は自分で出せます。共済会の制度に積み立てられている分が知りたいときは、自分の口数も聞いておきます。
聞く相手は、まず所属JAの人事・総務の担当です。辞めると決める前に聞きにくい場合は、「将来の生活設計のために退職給与規程を確認したい」と伝える聞き方もあります。見せてもらえるかどうかはJAの対応によります。共済会のサイトには団体ご担当者向けのよくある質問もありますが、額を決めているのは規程なので、最初はJAに聞くのが近道です。
たとえば、規程に「勤続◯年未満の自己都合退職には支給しない」という線があり、自分の勤続がその線の数か月手前なら、退職日を後ろにずらすだけで支給の対象に入ります。反対に、すでに線を越えていて、支給率表の次の区切りも遠い人なら、退職日を少し動かしても額の差は小さいので、時期より次の仕事や体調を優先して決めてかまいません。
確かめた内容は、メモでもいいので文字に残しておきます。規程の該当ページの写し、自分の勤続の起算日、当てはまる支給率、聞いた日と相手の名前があれば、退職のときに額がずれていても確かめ直せます。
辞める時期で変わること
辞める時期で変わるのは、主に勤続年数の区切りと、共済会からの送金の時期です。勤続年数がどの区切りに入るかで支給率が変わる規程なら、退職日の月によって額が段差で動きます。
勤続年数の区切りは、規程の支給率表で確かめます。支給率表が勤続1年ごとに率を上げる形なら、区切りの直前で辞めるか直後で辞めるかで、1年分の率の差が出ます。勤続年数を何で数えるか(月単位の端数の扱いなど)も規程で確かめる項目なので、自分の起算日から退職日までを数えて、どの区切りに入るかを見ます。
送金の時期は、共済会の制度の分については公式の案内があります。退職者が出ると、JAが共済会に「退職給付金等請求書」を送り(またはオンラインで申請し)、その請求に基づいて本人の個人口座へ送金されます。送金は請求書の受付から2〜3週間程度で、退職月の掛金の払い込みが確認できてからになります。退職した月のうちに送金される場合は、原則として月末の金融機関の最終営業日です。
共済会に請求するのはJAで、本人が共済会に直接請求する手続きは、公式の案内には出てきません。JAの規程で、制度の分とは別にJAから払われる分がある場合、その時期は規程か人事の案内で確かめます。
- 退職日の月:勤続年数の区切りに入るかを支給率表で見る
- 退職月の掛金:制度の掛金は契約月から退職月まで払い込まれる
- JAの請求:JAが請求書を共済会に送る時期を人事に聞いておく
- 送金:請求書の受付から2〜3週間程度で本人の口座へ
たとえば、入金の予定を引っ越しや次の仕事までの生活費に組み込むなら、人事に「請求書を共済会に送るのはいつごろか」を聞いておくと、受付から2〜3週間程度という目安と合わせて見通しが立ちます。
退職金のためだけに辞める時期を延ばすかどうかは、別の判断です。区切りの手前にいると分かったら、その差額と、あと何か月勤めることの負担を並べて自分で決めます。退職を伝える時期そのものは 退職は何日前に言う? で整理しています。
退職金にかかる税金と申告書
退職金を一時金で受け取ると退職所得になり、勤続年数に応じた退職所得控除が引かれてから税金が計算されます。共済会の制度の退職給付金も、一時金で受け取れば退職所得の扱いです。
退職所得控除の額は、所得税法30条で決まっています。勤続20年以下なら40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)、勤続20年を超えると800万円+70万円×(勤続年数−20年)です。
たとえば、勤続10年なら40万円×10年=400万円、勤続30年なら800万円+70万円×(30年−20年)=1,500万円が控除されます。退職金がこの額以下なら、退職所得の税金はかかりません。
手続きで大事なのは、「退職所得の受給に関する申告書」です。共済会の制度の退職給付金を請求するときは、この申告書(様式第25号)を請求書に添付すると、団体向けのよくある質問に書かれています。ただし、死亡退職の場合は不要です。申告書を出さないと、退職金の額に20.42%の税率で源泉徴収されます(所得税法201条3項・復興特別所得税を含む率)。
国税庁の案内では、申告書を出している人は、支払者が退職所得の金額に応じて所得税などを源泉徴収するので、原則として確定申告は必要ありません。医療費控除などで確定申告をする場合は、確定申告書に退職所得の金額も書きます。
出典:国税庁 タックスアンサーNo.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
たとえば、退職の手続きの書類の束に申告書が入っていて、何の書類か分からないまま後回しにしていると、制度の請求に添付する書類がそろわなかったり、20.42%で源泉徴収されたりするもとになります。人事から申告書を渡されたら、空欄のまま返さずに書いて出し、分からない欄は人事に聞きます。
控除の計算や、同じ年に別の退職金を受け取った場合の扱いは 退職金の税金 で整理しています。自分の税額が気になるときは、規程で確かめた額と勤続年数を持って税務署で聞くと確実です。
退職金は一時金か年金か
共済会の制度の退職給付金は、一時金・年金・一部年金の3通りから受け取り方を選べます。一部年金は、給付金の一部を年金にして、残りを一時金で受け取る方法です。
受け取り方で税金の扱いが変わります。一時金で受け取ると退職所得で、前の項の退職所得控除が使えます。年金で受け取ると、公的年金に係る雑所得の扱いになります。
| 受け取り方 | 中身 | 税金の扱い |
|---|---|---|
| 一時金 | 全額をまとめて受け取る | 退職所得 |
| 年金 | 全額を年金で受け取る | 公的年金に係る雑所得 |
| 一部年金 | 一部を年金、残りを一時金 | 年金分は雑所得、一時金分は退職所得 |
年金にした場合の利率は、給付還元利率という変動の利率で、毎年度見直されます。公式サイトのシミュレーションのページでは、令和8年度の制度の給付還元利率は1.15%と示されています。年度が変わると変わる数字なので、選ぶときは、その年度の利率を共済会の案内で確かめます。
たとえば、転職先が決まっていて当面の生活費に困らない人と、次の仕事が決まるまでの生活費に充てたい人では、選び方の考え方が変わります。どちらにするかの前に、年金で受け取れる条件や期間を、人事か共済会の案内で確かめておきます。
確定拠出年金や企業年金と一時金の違い全般は 退職金の種類 で整理しています。公務員の退職手当とは仕組みが違うので、比べたい人は 公務員の退職金 もあわせて見てください。
退職金が出ない場合と規程で確かめること
退職金が出ないか減る場合として、共済会の公式の案内が書いているのは懲戒解雇などのときです。懲戒解雇などの事由で、JAが制度の退職給付金を含む退職金を支給しない場合、制度の退職給付金も本人には出ず、JAにも返されずに制度全体のこれからの給付の財源に充てられます。懲戒解雇などでも退職金を全額か一部支給する場合は、その金額の範囲内で制度の退職給付金が支給されます。
この扱いは、所得税法施行令第73条の特定退職金共済の要件にもとづく共済会の運用です。懲戒解雇そのものが有効かどうか、不支給が認められるかどうかは個別の事情による法的な判断で、共済会の案内からは決まりません。不支給や減額を告げられて納得できないときは、規程の該当条文と、告げられた内容を書いたメモを持って、労働基準監督署の総合労働相談コーナーか弁護士に相談します。
公式の案内に書かれていないため、規程で確かめるしかない項目もあります。
- 合併したJAでの勤続の数え方(旧JAの期間を通算するか)
- 子会社や連合会への出向・転籍の期間の扱い
- 試用期間や臨時・嘱託の期間を勤続に含むか
- 退職給与規程の支給対象になる前(制度に加入する前)に辞めた場合の扱い
制度への加入は、JAが加入したら全職員が原則で、例外は退職金が発生していない職員と、1年以内に退職することが明らかな職員だけです。役員は加入できません(使用人兼務役員は加入できます)。
たとえば、合併前の旧JAに10年勤め、合併後に10年勤めた人は、規程が旧JAの期間を通算していれば勤続20年、通算していなければ10年として計算される可能性があり、額が大きく変わります。こうした扱いは共済会の公式には書かれていないので、人事に「合併前の勤続は通算されますか」と聞いて、規程の該当条文を見せてもらいます。
退職金の確認に人の手を借りなくていい場合
退職金の確認は、規程と支給率表が手元にあり、自分で計算でき、人事に疑問点を確かめられるなら、専門家にも退職代行にも頼まなくて足ります。共済会の制度の請求はJAが行い、本人が書くのは申告書くらいなので、手続きのために人の手を借りる場面は限られます。
人の手を借りなくていい条件は次のとおりです。
- 退職給与規程と支給率表を人事から受け取れている
- 自分の勤続の起算日と退職理由の扱いが規程で分かる
- 計算式に当てはめて、おおよその額が出せる
- 疑問点を人事に聞けば答えてもらえる
- 申告書の書き方で迷っても、人事か税務署に聞ける
反対に、人の手を借りたほうがいいのは、規程を見せてもらえない、示された額が規程の計算と合わない、懲戒を理由に不支給や減額を告げられた、といった、争いになりそうな場合です。就業規則などに退職金の定めがあれば賃金として請求できると考えられる、というのが大阪労働局の説明で、払ってもらえないときの相談先は管轄の労働基準監督署です。労働基準監督署の総合労働相談コーナーは無料で相談でき、争いが深いときは弁護士に規程と経緯のメモを持って相談します。
たとえば、規程を見せてもらい、自分で計算した額と人事の回答が一致しているなら、それ以上の確認は要りません。辞めることを言い出しにくいという悩みと、退職金を確かめたいという悩みは別のものなので、退職金の確認のために誰かを間に立てる必要もありません。
退職金のことで辞めるかどうか迷っている人は、まず額を確かめてから決めるのが順番です。額が分かれば、あと何か月勤めるかと、その間の負担を、同じ机の上で比べられます。
失業保険のもらい方は?退職後ハローワークでの手続き5段階と振込までの日程
傷病手当金はいくら・いつまで?在職中と退職後で変わる受給条件と申請の順番
よくある質問
農協の退職金の平均はいくらですか?
JAだけの退職金の平均を示した公的な統計はありません。令和5年就労条件総合調査が産業別に金額を出しているのは調査産業計・製造業・非製造業の3区分だけで、JAを含む複合サービス事業の金額は公表されていません。自分の額は、所属JAの退職給与規程と支給率表で確かめます。
JAの定年退職金はいくらですか?
定年退職の額も、各JAの退職給与規程で決まります。参考になるのは産業計の値で、令和5年就労条件総合調査の原表では、定年退職の1人平均退職給付額は勤続35年以上で1,834万円です。これは産業計で、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者が対象なので、JAの額として読まないでください。
勤続の短いうちに自己都合退職しても、退職金は出ますか?
出るかどうかは、所属JAの規程の「勤続何年から支給か」で決まります。複合サービス事業で退職一時金を社内で準備している企業では、自己都合で一時金を受けるのに必要な最低勤続年数の平均は23.1か月でした。ただし企業の割合であって、自分のJAの年数ではありません。
共済会の退職給付金は、自分で請求するのですか?
請求するのはJAです。JAが請求書を共済会に送り、その請求に基づいて本人の個人口座に送金されます。本人が用意するのは「退職所得の受給に関する申告書」で、請求書に添付されます。
退職金と失業保険は、どう考えればいいですか?
失業保険は退職金とは別の制度で、手続きの窓口もハローワークです。辞めたあとの失業保険の額は、失業保険の計算ツール で自分の数字を入れて出せます。
共済会に積み立てたお金は、預金保険の対象ですか?
対象外です。共済会のよくある質問では、預けた資金は農水産業協同組合貯金保険機構・預金保険機構・生命保険契約者保護機構の加入対象外で、代わりに事業基盤強化準備金を積み立てていると説明されています。
合併したJAの勤続は通算されますか?
共済会の公式の案内には書かれていないので、所属JAの退職給与規程で確かめます。人事に「合併前の勤続は通算されますか」と聞き、規程の該当条文を見せてもらうのが確実です。
数字だけ、もう一度
- 決まり方:額は各JAの退職給与規程で決まる。共済会の「制度」は外部積立で、公式は「現在JAにおいて最も普及している」と説明
- 掛金:全額JA負担・個人負担はできない。1口月額100円、5口以上300口以下(上限は月額30,000円)
- 公的統計:JAの金額の平均は公表されていない。複合サービス事業で退職給付制度がある企業は97.9%(全産業74.9%・令和5年)
- 勤続と理由:複合サービス事業の自己都合の最低勤続年数は平均23.1か月(社内準備の企業)。金額は産業計・勤続20年以上かつ45歳以上の値だけ
- 送金:JAの請求に基づき本人口座へ。請求書の受付から2〜3週間程度
- 税金:一時金は退職所得。申告書を出さないと20.42%で源泉徴収
- 受け取り方:一時金・年金・一部年金の3通り。令和8年度の給付還元利率は1.15%(変動)
JAの退職金は、平均の数字を探すほど分からなくなり、自分の規程を見るほどはっきりする種類のお金です。辞めるかどうかを決める前に、規程と支給率表を手に入れ、勤続の起算日と退職理由の扱いを確かめて、自分の額を一度出してみる。その額と、残って働くことの負担を並べたうえで決めれば、あとから「知っていれば」と悔やむ材料はぐっと減ります。

