- 異業種への転職って、実際どれくらい難しいの?
- 35歳を過ぎたら、もう業界は変えられない?
- 求人に年齢の条件が書いてあったら、応募しても無駄?
- みんな、本当に業界を変えて転職しているの?
- 業界を変えたら、年収は下がるもの?
- 今までの経験がゼロになる気がして怖い
- 面接で「なぜうちの業界なのか」をどう答えればいい?
- 辞めてから探すか、働きながら探すか決められない
上記のような悩みに答えます。
異業種からの転職は、今いる業界(産業)を出て、別の業界の会社に移ることです。踏み出しにくいのは、「何歳まで」「難しい」「年収が下がる」という話を断片的に聞くばかりで、自分の場合にどれが当てはまるのかを確かめる材料が手元に無いからです。人材会社の記事は成功のコツと志望動機の例文、自社サービスへの登録で話を終えることが多く、実際に業界を変えた人が公的統計でどれくらいいるか、求人の年齢制限が法律でどう扱われているか、年齢ごとに賃金がどう動いたかは、あまり並べていません。そこで、産業間の移動・年齢・賃金という基本の数字を押さえたうえで、年齢制限の例外の中身と、辞める順番とお金の段取りまで、厚生労働省の統計と法律の条文で確かめながら整理しました。
業界を変える転職は珍しくありません。令和7年の雇用動向調査では、前職と同じ産業へ移った人は43.0%で、57.0%は違う産業へ移っています。募集・採用は年齢にかかわりなく均等な機会が原則なので、年齢より「なぜその業界か」を言えるかと、辞めた後のお金の段取りが先です(2026年11月時点)。
2026年11月時点の制度で確かめています
辞めてから探すつもりの人は、先に 失業保険の計算ツール で自分の基本手当日額と最初の振込の目安を出しておくと、下の「辞めてから転職先を探すときのお金」の項がそのまま自分の段取りになります。
異業種への転職は数字で見るとどれくらいか
業界を変えて転職する人は、同じ業界にとどまる人より多いくらいです。厚生労働省の令和7年雇用動向調査で、入職前1年以内に雇われて働いていた人(4,475.9千人)を前職の産業と今の産業で突き合わせると、同じ産業へ移った人は43.0%、違う産業へ移った人は57.0%でした。
この割合は、e-Statに載っている人数(千人)から編集部が計算したものです。統計の表には率の列が無いので、今の産業と前職の産業が一致する人を数えて総数で割りました。ここで言う「産業」は日本標準産業分類の大分類で、「医療,福祉」「卸売業,小売業」「宿泊業,飲食サービス業」のような大きな括りです。同じ大分類の中で仕事の種類が変わった人は「同じ産業」に数えられるので、57.0%は「職種を変えた人の割合」ではありません。
- 43.0%
- 入職前1年以内に雇われていた人
- 57.0%
- 人数から編集部が計算
入ってくる人の顔ぶれは、産業によって大きく違います。その産業に新しく入った人のうち、前職が違う産業だった人の割合を並べると次のとおりです。
| 今の産業(入った先) | 前職が違う産業だった人 | 前職も同じ産業だった人 |
|---|---|---|
| 不動産業,物品賃貸業 | 81.3% | 18.7% |
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 80.6% | 19.4% |
| サービス業(他に分類されないもの) | 79.7% | 20.3% |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | 75.9% | 24.1% |
| 卸売業,小売業 | 69.7% | 30.3% |
| 製造業 | 39.1% | 60.9% |
| 医療,福祉 | 31.0% | 69.0% |
出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査」結果表(e-Stat)第11-1表(割合は人数から編集部が計算)
不動産や専門サービス、生活関連サービスでは、入ってくる人の7〜8割が別の産業から来ています。業界の外から人が入ってくる割合が高い産業だ、ということです。ただし、採用する側がどんな前提で面接をしているかまでは、この統計から分かりません。反対に医療,福祉は、入ってくる人も出ていく人も同じ産業の中で動く割合が高く、前職が医療,福祉だった人のうち次も同じ産業に就いた人は70.5%でした。
同じ表を前職の側から見ると、金融業,保険業を辞めて次の仕事に就いた人は80.3%が別の産業へ移っています。宿泊業,飲食サービス業はほぼ半々で、次も同じ産業だった人が51.9%、別の産業へ移った人が48.1%でした。どちらも、1年以内に次の仕事に就いて在籍している人だけを数えた値で、辞めた人全体の行き先ではありません。
なお、転職で入職した人が働く人全体に占める割合(転職入職率)は令和7年で9.9%です。こちらは常用労働者の数で割った別の物差しなので、上の43.0%・57.0%とは混ぜずに読んでください。
業界を変えるかどうかで迷うときは、まず移りたい産業が「外から人を受け入れている産業」か「中で人が回っている産業」かを上の表で見ておくと、応募の手応えの見当がつきます。外から入る人の多い産業なら、別の産業から入ること自体は珍しくない、というところまでは数字で言えます。選考で何が問われるかは、求人票と会社に確かめてください。
何歳までという線は法律でどう扱われているか
求人で年齢を区切ることは、法律で原則として認められていません。「35歳まで」のような線は、法律が決めた上限ではなく、会社が例外に当てはまるときだけ設けられるものです。
根拠は、労働施策総合推進法9条です。条文は、事業主は、厚生労働省令で定めるときは「労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と定めています。年齢を区切ってよい場面は、同じ法律の施行規則1条の3第1項に例外として並んでいます。
出典:労働施策総合推進法9条(e-Gov法令検索)/同法施行規則1条の3(e-Gov法令検索)
例外の主なものを、条文の言葉に沿ってまとめると次のとおりです。
- 定年の年齢を下回ることを条件にした募集(期間の定めのない労働契約に限る)
- 法令で特定の年齢の人の就業が禁止・制限されている業務
- 長期間の継続勤務で能力を育てる目的で、若い人を募集する場合(期間の定めのない契約で、職業に従事した経験を求人の条件とせず、学校などを「新たに卒業しようとする者として又は当該者と同等の処遇で」募集するときに限る)
- 特定の職種で特定の年齢の人が相当程度少なく(厚生労働大臣が定める条件に当てはまる場合)、技能と知識の継承を図るための募集(期間の定めのない労働契約に限る)
- 芸術・芸能で表現の真実性を確保するための募集、高年齢者(「六十歳以上の者に限る」)や国の施策を使って特定の年齢の人の雇用を促す募集
異業種への転職で年齢の条件が付いた求人を見たとき、まず照らしたいのは3つ目の「若い人を育てる募集」です。ただし条文は、新卒と同じ扱いで採ることを条件にしています。「経験不問なら何歳で区切ってもよい」という書き方ではないので、中途採用で年齢を区切る理由として広く使えるものではありません。逆に言えば、年齢の条件が付いている求人を見たら、どの例外に当たる募集なのかを確かめる値打ちがあります。
同じ施行規則1条の3第2項は、募集する側に、職務の内容と、必要とされる「適性、能力、経験、技能の程度」などを「できる限り明示する」よう求めています。年齢で区切れない代わりに、求める経験や技能をできる限り示すよう募集する側に求めている、という読み方をすると、求人票のその欄が応募するかどうかの判断材料になります。
年齢による違いが実際に出るのは、法律の線ではなく、転職する人の数です。令和7年の年齢別の転職入職率は男女で値が分かれていて、男女を合わせた値は公表されていません。
| 年齢 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 16.5% | 15.8% |
| 25〜29歳 | 14.1% | 17.1% |
| 30〜34歳 | 11.4% | 13.1% |
| 35〜39歳 | 7.8% | 9.3% |
| 40〜44歳 | 7.3% | 10.5% |
| 45〜49歳 | 6.0% | 10.0% |
男性は年齢が上がるにつれて下がりますが、女性は40〜44歳で10.5%と、35〜39歳の9.3%より高くなっています。どちらにしても、これは「その年に転職で入職した人の割合」で、転職の成功率でも、異業種に移った人の割合でもありません。35歳を過ぎても、男性で7.8%、女性で9.3%の人が転職で新しい職場に入っています。
たとえば30代後半で求人を探していて、「35歳まで」と書かれた正社員の求人を見つけた人は、その求人が新卒と同じ扱いで採る募集なのか、技能の継承のための募集なのかを、求人票の記載や会社への問い合わせで確かめられます。どの例外に当たるのかが分からないときは、応募する前に会社に募集の条件の理由を尋ねてかまいません。
「何歳まで」は、法律ではなく、募集のしかたと自分の準備で決まる、というのが編集部の読み方です。年齢を気にして応募を止めるより、求人票の「求める経験・技能」の欄を読み、自分の経験のどこがそれに当たるかを書き出すほうに時間を使ってください。
異業種へ転職すると年収は上がるか下がるか

転職した人全体で見ると、賃金が上がった人のほうが下がった人より多い一方、年齢が上がるほど上がった人の割合は小さくなります。ただし異業種へ移った人だけの賃金の統計は、公表されている概況には見当たりません。
令和7年の雇用動向調査では、前職でも雇われていた転職入職者のうち、賃金が前職より増えた人は40.8%、変わらない人は25.5%、減った人は31.0%でした。1割以上増えた人は28.2%、1割以上減った人は21.9%です。賃金の増減が分からない人も含むので、3つを足しても100にはなりません。業界を変えた人も変えなかった人も混ざった、転職した人全体の値です。
年齢別に並べると、年齢が上がるほど、増えた人の割合は下がっていきます。
| 転職したときの年齢 | 増えた | 変わらない | 減った |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 55.2% | 19.9% | 17.5% |
| 25〜29歳 | 49.8% | 25.0% | 23.9% |
| 30〜34歳 | 48.6% | 20.8% | 29.0% |
| 35〜39歳 | 43.5% | 28.1% | 23.9% |
統計は、年齢によって差が出る理由までは示していません。ここから言えるのは、「異業種に移ると年収が下がる」とも「上がる」とも決めつけられないことと、30代後半でも増えた人の割合(43.5%)が減った人(23.9%)を上回っていることまでです。
自分の場合を見積もるときは、業界の平均年収を比べるより、受けたい求人の条件を今の給与と同じ物差しで並べるほうが確かです。比べる項目は次の4つです。
- 月の基本給(手当を除いた額)
- 毎月付く手当のうち、職場が変わると無くなるもの
- 賞与の有無と、求人票に書かれた前年の実績
- 試用期間中の給与が本採用と違うかどうか
たとえば、今の手取りの多くを残業代が占めている人は、残業の少ない業界へ移ると、基本給が同じでも手取りは下がります。逆に、基本給が低く手当で補われている職場から、基本給の高い職場へ移れば、残業が減っても総額が変わらないことがあります。どちらになるかは、求人票の数字と今の給与明細を項目ごとに並べるまで分かりません。
年収の見通しが立たないまま辞めるのがいちばん危ないので、内定の前に、求人票で分からない手当や賞与の条件を面接か内定の連絡の段階で聞いておきます。そのうえで、下がる場合は何か月分を貯金で埋めるかを決めてから動くと、入ってから焦らずに済みます。
業界を変えても持っていける経験はあるか
前職と違う職業の区分に就いた人は、入職者の3人に1人ほどです。職業の大分類で見ると、入職前1年以内に雇われていた人のうち、前職と同じ職業の区分に就いた人は65.6%でした。
これは、上の「違う産業へ移った人57.0%」と同じ人たち(4,475.9千人)を、今度は職業の区分で見た値です。産業は「どこで働くか」、職業は「何の仕事をするか」の物差しなので、ただし、産業を変えた人だけの職業の動きは表に無いので、業界を変えた人が同じ種類の仕事を続けているとまでは言えません。もっと粗い3つの区分で見ると、76.5%が前職と同じ区分の中で移っています。
| 今の職業(大分類) | 前職も同じ職業だった人 |
|---|---|
| 専門的・技術的職業従事者 | 82.2% |
| 管理的職業従事者 | 74.4% |
| 事務従事者 | 66.8% |
| サービス職業従事者 | 66.5% |
| 販売従事者 | 49.3% |
出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査」結果表(e-Stat)第19-1表(割合は人数から編集部が計算)
専門的・技術的な職業に入った人は82.2%が前職も同じ職業の区分で、別の職業区分から入る人は少なめです。販売の仕事に入った人は49.3%で、半分ほどは別の職業から来ています。ここでいう職業は大分類の10区分で、看護師やSEのような個別の職種の値ではありません。
この数字だけでは、異業種へ移る人の職業の動きまでは分かりません。ただ、考え方としては、異業種への転職は「業界と仕事の両方を一度に変える」ものと、業界だけを変えるものに分けられます。業界だけ変えて仕事の種類は続けるのか、仕事の種類まで変えるのかで、持っていける経験の量が大きく変わります。
| 変えるもの | 持っていけるもの | 手放すもの |
|---|---|---|
| 業界だけ(仕事の種類は同じ) | 仕事の進め方、使ってきた道具、職種の知識 | 業界の商習慣、取引先との関係、業界の資格に付く手当 |
| 仕事の種類まで | 段取り、数字の扱い、人との調整のしかた | 職種の知識と、その経験年数で決まっていた評価 |
たとえば、小売店で売場の数字を管理してきた人が、別の業界の会社で同じように数字を扱う事務の仕事に就くなら、業界の知識は一から覚えても、仕事の進め方はそのまま使えます。同じ人が、まったく別の業界で技術職に就くなら、業界と仕事の両方を覚え直すことになります。「ついていけるか」という不安は、変えるものが多いほど現実的な心配になる、ということです。
迷う人は、まず「業界と仕事のどちらを変えたいのか」を1行で書いてみてください。両方を変えたい理由がはっきりしないなら、片方だけ変える求人から見るほうが、経験を持ち出しやすく、面接でも説明が通りやすくなります。20代で両方を変えたい人は 20代の転職 を、30代・40代で未経験の仕事を考えている人は 未経験からの転職 を、看護師・保育士・SEなどの職種から移る人は 専門職からの異業種転職 を続けて読んでください。
異業種転職の志望動機は「なぜその業界か」で組む
志望動機は、「なぜ今の業界を出るのか」から書き始めるより、「なぜその業界なのか」から組み立てるほうが伝わります。これは統計ではなく、編集部の読み方です。
前職を辞める理由は、人によってさまざまです。令和7年の雇用動向調査で、転職した人が前職を辞めた理由を見ると、男女とも「その他の個人的理由」が最も多く(男性16.8%、女性23.8%)、ほかに「給料等収入が少なかった」(男性9.9%、女性8.6%)、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」(男性8.5%、女性12.9%)、「職場の人間関係が好ましくなかった」(男性8.9%、女性11.5%)などが続きます。最も多い「その他の個人的理由」は中身が表から分からず、辞めた理由の内訳から志望動機の組み方までは決められません。前の職場への不満をそのまま話すと、「うちでも同じことが起きたら辞めるのでは」と受け取られる恐れがあります。
組み立ての順番は、次の3つです。
- その業界で働きたいと思った具体的なきっかけ(仕事で接した、客として使った、調べて知った事実)
- 今までの経験のうち、その業界の仕事でそのまま使える部分
- 入ってから覚える必要があることと、そのためにもうしていること
「業種を変える正当な理由」を探す人は多いのですが、面接では理由の正しさより、その業界を選んだ筋道のほうが見られやすい、というのが編集部の読み方です。今の業界を出る理由は、聞かれたときに1〜2文で事実だけを答えれば足ります。
たとえば、飲食店で店舗の運営をしてきた人が、食品を扱う卸の会社に応募するなら、「仕入れの担当者と話すうちに、店に届くまでの流れの側で働きたいと思った」というきっかけから入り、在庫と発注の数字を見てきた経験を使える部分として挙げ、取引先の業界知識はこれから覚える、と続けられます。同じ人が、まったく接点の無い業界に応募するなら、きっかけの部分が弱くなるので、その業界について自分で調べた事実と、なぜそこに引かれたかを厚めに用意する必要があります。
例文を覚えて当てはめるより、上の3つを自分の言葉で1〜2文ずつ書き、声に出して読んでみてください。言い切れない部分が、まだその業界について調べ足りない部分です。
在職中に転職するか、辞めてから探すか
収入を途切れさせたくない人は在職中に、時間を取って業界を調べ直したい人は辞めてから、が基本の分かれ方です。異業種への転職は業界を調べる時間がかかるぶん、どちらを選ぶかで準備の進み方が変わります。
在職中に動くと、収入と雇用保険の加入が続いたまま応募できますが、面接の日程を合わせにくく、業界研究に使える時間も限られます。辞めてから探すと時間は取れますが、空白の間の生活費を貯金と失業保険で埋めることになり、決まらない期間が長くなるほど焦りも増えます。
たとえば、移りたい業界がもう決まっていて、応募先もいくつか見えている人は、在職中に動いて内定が出てから退職を伝えても間に合います。逆に、どの業界に移るかをまだ絞れていない人や、今の仕事の負担で調べる余力が無い人は、お金の段取りをつけたうえで辞めてから探すほうが進むこともあります。
決めるときの比べ方と、退職を伝える時期の目安は 在職中の転職と辞めてからの転職の比べ方 にまとめてあります。どちらを選ぶにしても、次の項のお金の計算は先に済ませておいてください。
辞めてから転職先を探すときのお金

正当な理由がなく正当な理由がなく自分の都合で辞めて失業保険を受ける場合、最初の支給までには、原則として待期の7日間と、給付制限の1か月(退職日が2025年4月1日以降)がかかります。辞める前に、この期間を貯金でまかなえるかを計算しておきます。
厚生労働省のパンフレットは、自己都合や懲戒解雇で離職した人の基本手当は、待期7日に給付制限を加えた期間が過ぎてから支給されると書いています。給付制限は、退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月です(退職日からさかのぼって5年のあいだに、正当な理由のない自己都合退職で受給資格の決定を2回以上受けている人は3か月)。給付制限の根拠になる雇用保険法33条1項が対象にしているのは、自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合と、「正当な理由がなく自己の都合によって」退職した場合で、正当な理由があるかどうかはハローワークが判断します。
出典:厚生労働省「離職されたみなさまへ」/厚生労働省「自己都合離職者の給付制限について」
異業種への転職は、業界を調べ直すぶん、次が決まるまでの見通しを立てにくいことがあります。だからこそ、辞める日を決める前に、手当がいつから・1日いくら出るかを数字で出しておくことが大事です。
自分の基本手当日額と最初の振込の目安は、失業保険の計算ツール で出せます。出た金額と時期から、貯金で埋める月数を逆算し、その月数に余裕があるかで辞める日を決めてください。
学び直しが要る業界で使える給付
移りたい業界で資格や知識が必要なら、雇用保険の教育訓練給付か、ハローワークの職業訓練が使える場合があります。どちらも、講座を選ぶ前に自分が対象に入るかを確かめるのが先です。
教育訓練給付は、厚生労働大臣が指定した講座の受講費用の一部が戻る仕組みです。一般教育訓練は受講費用の20%(上限10万円)、特定一般教育訓練は40%(上限20万円)、専門実践教育訓練は50%(年間上限40万円)が基本です。雇用保険の加入期間は受講開始日の時点で3年以上が原則ですが、初めて受ける人は一般・特定一般で1年以上、専門実践で2年以上になります。辞めた人は、離職日の翌日から受講開始日まで1年以内であることが条件です(妊娠・出産・育児・病気やけがなどで引き続き30日以上受講を始められないときは、ハローワークへの申請で延ばせます)。
雇用保険の失業保険を受けられない人には、求職者支援制度の職業訓練があり、要件を満たせば訓練中に職業訓練受講手当として月10万円が出ます。
たとえば、事務職からIT業界へ移るために講座を受けたい人は、受けたい講座が教育訓練給付の対象かを先に調べ、対象外なら公共の職業訓練に同じ分野のコースがあるかを見る、という順番になります。資格の取り方と講座の選び方は 資格を取って未経験の仕事に移る方法 に、職業訓練の申し込みの流れは 職業訓練の受け方 にあります。
転職支援をいつ使うか

民間の転職支援は、移る業界を自分で絞り込めないときに使うと役に立ちます。業界も応募先も決まっている人には、ハローワークの求人と自分での応募で足ります。
使う前に知っておきたいのは、民間の職業紹介の料金のしくみです。職業安定法32条の3第2項は、有料職業紹介事業者は「求職者からは手数料を徴収してはならない」と定めています。ただし書の例外は、求職者から取ることがその人の利益のために必要と認められるときとして厚生労働省令で定める場合に限られています。登録の前に、利用規約で求職者に料金がかかるかを確かめておいてください。
使うかどうかは、自分の準備がどこで止まっているかで決まります。上から順に自分でできるところまで進め、止まったところで人に頼るのが、支援に振り回されない使い方です。
- 1お金の段取りを決める計算ツールで日額と最初の振込を出す
- 2変えるものを決める業界だけか、仕事の種類までか
- 3移る業界を絞る外から人を受け入れている産業を見る
- 4自分で求人を探すハローワークと会社のサイトで応募先を探す
- 5止まったところで頼る業界を絞れないなら民間の支援に相談する
たとえば、今の業界の外の会社をほとんど知らず、どの業界のどの仕事なら自分の経験が通じるのか一人で絞りきれない人は、4段目で止まります。こういうときは、業界を横断した求人を扱う支援に、業界の絞り込みから相談すると進めやすくなります。一方で、年齢などの対象を決めている支援もあるので、申し込む前に自分が対象に入るかを公式サイトで確かめてください。
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
移りたい業界で求人を出している会社を自分で探し、志望動機も「なぜその業界か」から書けているなら、ハローワークの求人と自分での応募で足ります。業界の外の会社をほとんど知らず、どの業界のどの仕事なら今までの経験が通じるのかを一人では絞りきれないなら、紹介する求人の業界を横断して相談できる支援のほうが早く進みます。就職カレッジは18〜35歳の人を中心に、離職中の人も対象に正社員の就職を無料で支援しているので、35歳を超える人は対象に入るかを申し込む前に公式サイトで確かめてください。
転職支援を使わなくていい場合
次に当てはまる人は、民間の転職支援を使わずに、ハローワークの求人と自分での応募で動けます。支援は早く決めるための道具ではなく、自分ひとりで埋められない部分を埋めるためのものです。
- 移りたい業界と仕事の種類が、もう決まっている
- 応募したい会社が見えていて、会社のサイトから直接応募できる
- 志望動機を「なぜその業界か」から自分の言葉で書けている
- 地元で働きたく、ハローワークの求人に探している仕事がある
- 人に求人を勧められると、自分の基準がぶれやすいと分かっている
異業種への転職では、移る業界が決まりきっていないことが多いので、紹介された求人に合わせて自分の希望のほうが動いてしまうことがあります。先に「何を変えたいのか」と「お金の段取り」を自分で決めておけば、支援を使う場合も、足りない部分だけを頼む形にできます。
たとえば、学習塾で講師をしてきた人が、同じ地域の教育関係の会社で事務の仕事に就きたいと決めている場合は、地元のハローワークの求人と、気になる会社への直接の応募で十分に動けます。業界が近く、仕事の中身も想像がつくので、求人票を自分で読み比べられるからです。
失業保険のもらい方は?退職後ハローワークでの手続き5段階と振込までの日程
傷病手当金はいくら・いつまで?在職中と退職後で変わる受給条件と申請の順番
よくある質問
異業種への転職は難しいですか?
業界を変える転職そのものは珍しくなく、令和7年の雇用動向調査では57.0%が前職と違う産業へ移っています。難しさは、業界と仕事の種類の両方を変えるか、片方だけかで大きく変わります。まず何を変えたいのかを決めると、応募先の選び方が絞れます。
35歳で異業種に転職するのは難しいですか?
法律は、募集・採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与えることを原則にしていて、35歳という線を決めてはいません。令和7年の35〜39歳の転職入職率は男性7.8%、女性9.3%で、この年代でも転職で新しい職場に入る人はいます。年齢より、求人票の求める経験に自分の経験のどこが当たるかを言えるかが大事です。
転職しないほうがいい業界はありますか?
公的な統計で「転職しないほうがいい業界」を決めたものはありません。統計で業界ごとに見られるのは、外から人を受け入れている割合の違いです。移りたい業界に、別の産業から入ってくる人がどれくらいいるかを上の表で見て、自分の準備と照らし合わせてください。
全く違う業種に転職するにはどうすればいいですか?
最初に、業界だけを変えるのか、仕事の種類まで変えるのかを決めます。次に、辞めた後のお金を計算し、在職中に動くか辞めてから探すかを選びます。そのうえで、移りたい業界を絞り、「なぜその業界か」から志望動機を組み立てて応募します。
異業種に移ると年収は下がりますか?
異業種へ移った人だけの賃金の統計は概況には無く、下がるとも上がるとも決めつけられません。転職した人全体では、令和7年に賃金が増えた人が40.8%、減った人が31.0%でした。自分の場合は、受けたい求人の基本給・手当・賞与を今の給与明細と項目ごとに並べて見積もってください。
求人に年齢の条件が書いてあったら応募できませんか?
年齢を区切れるのは、施行規則に並んだ例外に当たる場合だけです。期間の定めのない契約で、職業の経験を条件にせず、新卒と同じ扱いで若い人を育てる募集などがそれにあたります。理由が分からないときは、求人票の記載や会社への問い合わせで確かめてください。
数字だけ、もう一度
- 業界を変える人の割合:令和7年は前職と同じ産業へ移った人が43.0%、違う産業へ移った人が57.0%(入職前1年以内に雇われていた人の人数から編集部が計算)
- 年齢の線:労働施策総合推進法9条で、募集・採用は年齢にかかわりなく均等な機会が原則。例外は施行規則1条の3第1項に限られる
- 年齢別の転職入職率:35〜39歳で男性7.8%、女性9.3%。成功率ではない
- 賃金:転職した人全体で増えた40.8%、減った31.0%。35〜39歳でも増えた43.5%が減った23.9%を上回る
- 経験の持ち出し:前職と同じ職業の区分に就いた人は65.6%。産業を変えた人だけの職業の動きは統計に無い
- 志望動機:「なぜ今の業界を出るか」より「なぜその業界か」から組む
- 辞めてから探すお金:正当な理由のない自己都合は待期7日+給付制限が原則1か月(退職日が2025年4月1日以降)
- 学び直し:教育訓練給付は一般で20%(上限10万円)、離職日の翌日から受講開始日まで原則1年以内(妊娠・出産・病気などで延ばせる場合あり)
異業種への転職で最初に決めるのは、年齢ではなく「何を変えたいのか」です。業界だけを変えるのか、仕事の種類まで変えるのかで、持っていける経験も、面接で問われることも、入ってからの負担も変わります。それを1行で書けたら、辞めた後のお金を計算ツールで出し、移りたい業界に外から人が入っているかを確かめ、「なぜその業界か」を自分の言葉で言えるようにする。そこまで済ませてから辞める日を決めれば、年齢や年収の話に振り回されずに動けます。

