- 定年退職のあと、何を何日以内にやればいいのか分からない
- 会社がやってくれる手続きと、自分で出す手続きの区別がつかない
- 健康保険は任意継続・国保・家族の扶養のどれにして、いつまでに決めればいい?
- 60歳を過ぎたら国民年金に入り直すの?65歳になる前に受け取れる年金はある?
- 定年は自己都合?会社都合?失業保険はすぐもらえる?
- 住民税は、辞めるときにまとめて引かれるって本当?
- 退職金の税金で、自分が出す書類はある?
- 再雇用で残るか、辞めるかで手続きはどう変わる?
上記のような悩みに答えます。
定年退職の手続きは、健康保険・年金・雇用保険・税金の4つにまたがり、窓口も期限の数え方もそれぞれ違います。迷いやすいのは、会社が済ませてくれる手続きと、本人が自分で出さないと始まらない手続きが混ざっていることと、60歳以上で辞める人は60歳未満で辞める人と手続きの中身が違うことです。定年退職の手続きを紹介するページの多くは、健康保険や年金の項目を順に説明するところで終わり、誰が出すのか、どの日から数えて何日以内なのか、再雇用で残る場合とどこで分かれるのかまでは一覧になっていません。そこで、健康保険・年金・失業保険・税金という基本を押さえたうえで、会社と自分の分担、期限の早い順の一覧、再雇用か退職かの分かれ目、会社とやりとりする書類まで、健康保険法・雇用保険法・所得税法の条文と、厚生労働省・日本年金機構・総務省の案内で確かめながら整理しました。
60歳で定年退職するときに自分で期限を守る手続きは、健康保険(任意継続なら資格喪失日から20日以内、国保なら14日以内)と失業保険です。2026年10月時点の雇用保険では、定年退職には給付制限が付かず、すぐ働かないなら離職の日の翌日から2か月以内に申し出れば受給期間を最大1年延ばせます。
2026年10月時点の制度で確かめています
辞めたあとの失業保険がいくらになるかは、失業保険の計算ツール で自分の数字を入れて出せます。
会社がやる手続きと自分でやる手続き

定年退職の手続きは、会社が済ませるものと、本人が自分で出すものに分かれます。本人が出さないと始まらないのは健康保険の切り替えと失業保険の手続きで、特に期限が短いのもこの2つです。
会社が受け持つのは、雇い主として届け出たり、給与や退職金を払う立場として税金を処理したりする手続きです。健康保険の資格は、退職日(その事業所に使用されなくなった日)の翌日に失われます(健康保険法36条)。ところが、その翌日からどの健康保険に入るかは本人が選んで申請するもので、会社が代わりに決めることはありません。失業保険も、ハローワークで求職の申込みをするのは本人です。ここを「会社が全部やってくれる」と思い込んでいると、期限のある手続きだけが手つかずで残ります。
| 手続き | 会社がやること | 自分がやること |
|---|---|---|
| 健康保険 | 資格を失う手続き | 任意継続・国保・家族の扶養から選んで申請する |
| 失業保険 | 離職票の手続き | 離職票を持って求職の申込み。休むなら受給期間の延長の申出 |
| 年金 | 厚生年金の資格を失う手続き | 60歳以上なら国民年金への切り替えは無い。満額に足りない人は任意加入を考える |
| 住民税 | 1〜5月の退職なら、残りを一括で徴収 | それ以外の月は、一括で引いてもらうかを申し出る |
| 退職金の税金 | 源泉徴収をして納める | 退職所得の受給に関する申告書を、受け取る時までに会社経由で出す |
| 給与の源泉徴収票 | 退職の日以後1月以内に交付 | 受け取って保管する |
たとえば、3月31日に定年で辞めて、4月からしばらく家で過ごす人の場合、自分でやるのは健康保険の申請と、ハローワークへの受給期間の延長の申出(すぐ探すなら求職の申込み)、それに退職金の申告書の3つです。住民税は1〜5月の退職に当たるので、会社が残りを一括で引きます。60歳以上なので、国民年金への切り替えもありません。同じ人が、4月から再雇用で同じ会社に残るなら、健康保険と失業保険の手続きはこの時点では起きません(下の「再雇用か退職かで変わる手続き」の項)。
退職の日が決まったら、人事や総務の担当者に「会社でやってもらえる手続きと、自分で出す手続きを分けて教えてください」と聞いておくのが早道です。会社の手続きは会社の案内を待ち、自分の手続きは期限の日付を手帳に書き出しておけば、どこから手を付けるかで迷わずに済みます。
期限の早い順に並べた一覧
期限が早いのは健康保険で、国保に入る届けは14日以内、任意継続の申請は資格喪失日から20日以内です。次が、すぐ働かない人の受給期間の延長の申出で、離職の日の翌日から2か月以内です。退職金の申告書は、退職金を受け取る前に会社へ出す手続きになります。
気をつけたいのは、期限ごとに数え始める日が違うことです。任意継続は「資格を喪失した日から」、受給期間の延長は「離職の日の翌日から起算して」、退職金の申告書は「支払を受ける時までに」と、それぞれの法令で書き方が違います。国保の14日以内について、厚生労働省の案内には、いつから数えるかまでは書かれていません。数え始めの日を取り違えないよう、自分の退職日から日付に直しておくと確かです。
| 時期 | 手続き | 期限 | 出す先 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 退職金を受け取る前 | 退職所得の受給に関する申告書 | 退職金の支払を受ける時まで | 会社を経由して税務署へ | 所得税法203条 |
| 退職日の翌日 | 健康保険の資格を失う | - | - | 健康保険法36条 |
| 退職後すぐ | 国保に入る届け | 14日以内 | 住所の市区町村 | 厚生労働省「国民健康保険の加入・脱退について」 |
| 退職後すぐ | 任意継続の申請 | 資格を喪失した日から20日以内 | 加入していた健康保険 | 健康保険法37条 |
| 離職後 | 受給期間の延長の申出(すぐ働かない人) | 離職の日の翌日から起算して2か月以内 | 管轄のハローワーク | 雇用保険法施行規則31条の3 |
| 離職票が届いたら | 求職の申込み | 受給期間は離職の日の翌日から起算して1年 | 住所の管轄のハローワーク | 雇用保険法20条 |
- 1退職金の申告書退職金を受け取る時までに会社へ
- 2健康保険を選ぶ国保は14日以内、任意継続は20日以内
- 3受給期間の延長すぐ働かないなら2か月以内に申出
給与の源泉徴収票は、会社が退職の日以後1月以内に交付する決まりで(所得税法226条)、本人が守る期限ではありません。届くのを待ち、1月を過ぎても届かなければ会社に確かめます。
たとえば、3月31日に辞めた人なら、資格を失うのは4月1日です。任意継続の申請は、その4月1日から20日以内になります。受給期間の延長の申出も、離職の日の翌日の4月1日から起算して2か月以内です。同じ人が4月から再就職先で健康保険に入るなら、任意継続も国保も要らず、残るのは退職金の申告書と源泉徴収票の受け取りだけになります。
編集部の整理では、最初の2週間に健康保険を決めることと、2か月以内に失業保険の動き方を決めることの2つが、定年退職の手続きの山場です。退職日の前に、健康保険の候補ごとの保険料と、辞めてすぐ探すか休むかを決めておけば、辞めたあとは書類を出すだけで済みます。
健康保険は3つから選んで期限内に申請
健康保険は、任意継続・国民健康保険・家族の扶養の3つから選びます。任意継続は資格を喪失した日から20日以内に加入していた健康保険へ、国保は14日以内に市区町村へ申請し、扶養は家族の勤め先を通じて手続きします。
健康保険法は、任意継続の申請を「被保険者の資格を喪失した日から二十日以内」と書いています。任意継続でいられるのは、任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過するまでです(健康保険法38条)。国保は、厚生労働省の案内で、被保険者となったときは14日以内に市区町村の窓口へ関係書類を出すとされています。どちらも退職してすぐに期限が来るので、辞めてから比べ始めると間に合わなくなるおそれがあります。
| 選ぶ先 | 申請先 | 期限 | 続けられる期間 | 詳しく |
|---|---|---|---|---|
| 任意継続 | 加入していた健康保険(協会けんぽ・健康保険組合) | 資格を喪失した日から20日以内 | 2年を経過するまで | 任意継続の保険料 |
| 国民健康保険 | 住所の市区町村 | 14日以内 | - | 市区町村の窓口 |
| 家族の扶養 | 家族の勤め先を通じて | 家族の勤め先に確かめる | - | 扶養に入る手続き |
国保には、会社都合などで辞めた人向けの保険料の軽減があります。前年の給与所得を100分の30として保険料を計算するもので、対象は雇用保険の特定受給資格者、または特定理由離職者であって受給資格がある人です(国民健康保険法施行令29条の7の2)。政令の対象の書き方に当てはめると、定年で辞めた人は原則としてこの軽減に当たらない、と読むことになります。自分の離職理由で当たるかどうかは、離職票を持って市区町村の窓口で確かめます。
たとえば、配偶者が会社員で、その健康保険の扶養に入れる人は、家族の勤め先を通じた手続きになり、任意継続や国保の申請は要りません。扶養に入れない人は、任意継続か国保かを比べることになり、どちらが安いかは、加入していた健康保険が示す任意継続の保険料と、市区町村で聞く国保の保険料の見込みを並べるまで分かりません。扶養に入れるかどうかの線は 扶養に入る手続き、任意継続の保険料と上限は 任意継続の保険料 で整理しています。
迷ったときは、期限の短い国保の14日に合わせて動きます。退職日の前に、加入していた健康保険に任意継続の保険料を、市区町村に国保の保険料の見込みを聞き、扶養に入れるかを家族の勤め先に確かめておく。3つの答えがそろっていれば、辞めた週のうちに申請まで済ませられます。
60歳以上の年金で要る手続きと要らない手続き
60歳以上で辞めた人は国民年金の第1号被保険者にならないので、60歳未満で辞める人のような国民年金への切り替えはありません。手続きを考えるのは、年金の加入期間が足りず任意加入したい人と、65歳になる前に受け取る老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)の対象になる人です。
国民年金の第1号被保険者は、日本国内に住所がある20歳以上60歳未満の人です(国民年金法7条)。60歳以上で会社を辞めても、第1号に入り直すことはありません。一方で、加入期間が足りない人のために、65歳になるまで自分で申し出て入る任意加入の仕組みがあります。
- 任意加入できる人:日本国内に住所がある60歳以上65歳未満の人で、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていない人や、満額(40年間保険料納付分)に届かない人
- 任意加入のしかた:申出が必要で、保険料は原則として口座振替。65歳になったときや、厚生年金に入ったときなどに資格を失う
- 特別支給の老齢厚生年金の対象:男性は昭和36年4月1日以前、女性は昭和41年4月1日以前の生まれで、老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があり、厚生年金に1年以上入っていた人(生年月日に応じた受給開始年齢から)
- 65歳になるまでの老齢年金を受けている人:ハローワークで求職の申込みをすると、実際に失業保険を受けたかどうかに関係なく、申込みをした月の翌月から一定の期間、年金が全額止まる
出典:日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」/日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」/日本年金機構「雇用保険の給付を受けると年金が止まります!」
たとえば、2026年10月に60歳になる人は昭和41年の生まれです。機構の要件に当てはめると、男性は昭和36年4月1日以前の生まれに当たらず、女性も昭和41年4月1日より後の生まれなので当たりません。この人には65歳になる前に受け取る老齢厚生年金が無いので、求職の申込みで止まる年金もなく、老齢厚生年金は65歳からの話になります。反対に、昭和41年4月1日以前に生まれた女性などは対象になり得るので、年金と失業保険の調整を先に確かめます。止まる時期と、どちらを取るかの比べ方は 定年退職の失業保険と年金停止 で詳しく整理しています。
自分が対象かどうかは、ねんきん定期便や年金事務所で確かめられます。60歳未満の配偶者がいる人の国民年金の扱いを含め、辞めたあとの年金の手続きは 退職後の年金の切り替え、企業型の確定拠出年金に入っていた人は 確定拠出年金の退職時の手続き を見てください。
失業保険は定年なら給付制限なし

定年で辞めた人の失業保険には、自己都合で辞めた人のような給付制限が付きません。離職票を出して求職の申込みをしてから、失業している日が7日(待期)過ぎれば、その後の日が支給の対象です。すぐに働かないなら、受給期間の延長を申し出ます。
厚生労働省のパンフレット「離職されたみなさまへ」は、解雇・定年・契約期間満了で辞めた人を待期7日の後から、自己都合・懲戒解雇で辞めた人を待期7日に加えて1〜3か月の給付制限の後から、と分けています。「定年は自己都合か会社都合か」と聞かれたら、答えは「給付制限が付かない側」です。日数は雇用保険に入っていた期間で決まります。定年は特定受給資格者の例(倒産・解雇など)には当たらないので、ここでは一般の離職者の日数に当てはめると、1年以上10年未満なら90日、10年以上20年未満なら120日、20年以上なら150日です(ハローワーク「基本手当の所定給付日数」)。
延長が要るのは、失業保険を受けられる期間(受給期間)が原則として離職の日の翌日から起算して1年で、この中で日数分を受け取る決まりだからです(雇用保険法20条)。
- 対象:60歳以上の定年で辞めた人。60歳以上の定年の後、再雇用などで一定の期限まで雇われることになっていて、その期限が来て辞めた人も含む
- 出すもの:受給期間延長等申請書に離職票を添えて、管轄のハローワークへ
- 期限:離職の日の翌日から起算して2か月以内(天災その他やむを得ない理由があるときは例外)
- 延ばせる長さ:求職の申込みをしないことを希望する期間を、1年を限度に加える。本来の1年と合わせると、最長2年になる計算
- 別の制度:病気・けが・育児などで引き続き30日以上働けない人の延長は別の仕組みで、加算した期間が4年を超えるときは4年まで
出典:雇用保険法施行規則31条の2・31条の3/厚生労働省「離職されたみなさまへ」
たとえば、定年のあと半年ほど休んでから仕事を探すつもりの人は、辞めてから2か月以内に延長を申し出て、休み終えてから求職の申込みをします。予定より早く探し始めた場合について、条文は、本来の期間に、離職の日の翌日から求職の申込みをした日の前日までの期間を加える、と書いています。辞めてすぐ探す人は延長は要らず、離職票が届いたら求職の申込みに進みます。65歳以上で辞める人は基本手当ではなく、基本手当日額の50日分(雇用保険に入っていた期間が1年未満なら30日分)の高年齢求職者給付金になるので、65歳以上の高年齢求職者給付金 と 64歳と65歳の分かれ目 を見てください。
失業保険の日額と総額、年金が止まる時期は、ここでは扱わず 定年退職の失業保険 にまとめています。この項で決めておくのは、辞めてすぐ探すか、休んでから探すかの1点だけです。休むなら、2か月の期限を過ぎると原則として延長の申出ができないので、迷っている段階でもハローワークに相談しておきます。
再雇用か退職かで変わる手続き
再雇用で同じ会社に残る人は、雇われている間、健康保険の切り替えや失業保険の手続きは始まりません。代わりに関わるのが、60歳以後に賃金が下がった人の高年齢雇用継続基本給付金で、申請は会社を経由します。
高年齢雇用継続給付は、60歳になった時点と比べて賃金が75%未満に下がった状態で働き続ける60歳以上65歳未満の人に出る給付です。基本手当を受けずに、雇用保険の被保険者として働き続ける人が対象です。再雇用で同じ会社に残る人のほか、基本手当を受けずに別の会社で働く人も含まれます。いま再雇用の話が出ている人は、働き続けるなら高年齢雇用継続基本給付金、辞めて基本手当を受けるなら失業保険の手続き、と分けて考えると整理しやすくなります。
- 対象:60歳以上65歳未満の一般被保険者で、被保険者であった期間が5年以上
- 条件:60歳以後の賃金が、原則として60歳時点の賃金の75%未満に下がっている
- 支給の限度:各月の賃金の10%(令和7年4月1日以降に60歳に達した人。令和7年3月31日以前に60歳に達した人は15%)
- 支給されない月:その月の賃金が397,369円以上のとき
- 申請:事業主を経由して出す。初回は、最初に支給を受けようとする月の初日から起算して4か月以内
出典:厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」/ハローワーク「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」
たとえば、60歳で定年を迎えて1年ごとの契約で再雇用され、64歳で契約の期限が来て辞める人は、その時点で退職の手続きが始まります。この辞め方も、受給期間の延長の対象に入っています(雇用保険法施行規則31条の2第2項)。65歳を過ぎてから辞めるなら、失業保険は高年齢求職者給付金に変わります。一方、定年で一度辞めて失業保険を受けたあと、60歳以後に別の会社へ再就職した人は、高年齢再就職給付金の対象になり得ます。基本手当の算定基礎期間が5年以上、再就職の前日の支給残日数が100日以上、安定した職業に就いて被保険者になったことが要件で、同じ就職で再就職手当を受けた場合は出ません。
再雇用を選ぶか迷っている人は、契約書で期限と賃金を確かめ、60歳時点の賃金と比べて75%を下回るか、会社が高年齢雇用継続給付の申請をしてくれるかを人事に聞きます。辞める側を選ぶ人は、上の失業保険の項と、健康保険の項の期限が、そのまま自分の手続きになります。
住民税と退職金の税金

住民税は、1〜5月に辞めるなら、残りが退職時の給与や退職金から一括で引かれます。それ以外の月に辞める人も、本人の申出があれば一括して徴収できます(会社の手続き)。退職金は、退職所得の受給に関する申告書を受け取る時までに会社へ出しておかないと、20.42%が源泉徴収されます。
住民税の所得割は、前年の1月1日から12月31日までの所得で計算されます(総務省「個人住民税」)。会社員のうちは、会社が給与から引いて代わりに納める特別徴収です。辞めるときの残りの扱いについて、総務省の資料は、本人から申出がある場合は退職時の給与や退職金から一括して徴収でき、1〜5月に退職する場合は申出の有無にかかわらず一括徴収を行う必要がある、と書いています(総務省「住民税の特別徴収にご協力ください!」)。
- 住民税の一括徴収:本人の申出があれば、退職時の給与や退職金から残りを一括で徴収できる。1〜5月の退職は申出の有無にかかわらず一括
- 普通徴収:市町村が納税通知書を送り、本人が直接納める仕組み。一括で引かれなかった分をどう納めるかは、市区町村の案内で確かめる
- 退職所得の受給に関する申告書:退職金の支払を受ける時までに、支払者(会社)を経由して税務署長に出す
- 申告書を出さないとき:退職金から20.42%が源泉徴収される
申告書を出すと、退職所得控除を差し引いた形で源泉徴収されます。控除額は、勤続20年以下なら40万円×勤続年数(80万円に満たないときは80万円)、勤続20年超なら800万円+70万円×(勤続年数−20年)です(所得税法30条)。
たとえば、勤続38年で定年を迎える人の退職所得控除額は、800万円+70万円×(38年−20年)=800万円+1,260万円=2,060万円です。
住民税の一括は、たとえば3月31日に辞める人なら1〜5月の退職に当たるので、本人が何も言わなくても会社が残りを引きます。10月に辞める人は、申出があれば一括で徴収できる側に入るので、退職の前に、一括で引いてもらうかどうかを会社と話しておきます。退職金の額そのものや税額は会社と勤続年数で変わるので、ここでは扱いません。会社から申告書の用紙が渡されたら、記入して退職金を受け取る前に返す、とだけ覚えておけば足ります。
会社からもらう書類と返す物
ここで扱う手続きに使う書類のうち、会社から受け取るのは離職票と給与の源泉徴収票です。ほかに渡される書類は会社に確かめます。源泉徴収票は、年の途中で辞めた人には退職の日以後1月以内に交付されます。労働者の権利に属する金品は、請求すれば7日以内に返還されます。
離職票は会社が作る書類をもとにハローワークが交付するもので、会社の手続きが済んでから手元に届きます。源泉徴収票は、所得税法226条1項で、年の途中で退職した人には退職の日以後1月以内に交付することになっています。労働者の権利に属する金品については、労働基準法23条が、退職の場合に「権利者の請求があった場合においては、7日以内に」賃金を支払い、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない、と定めています(労働基準法23条)。
| 書類・物 | 受け取る/出す | 使う場面 |
|---|---|---|
| 離職票 | 受け取る | ハローワークでの求職の申込み、受給期間の延長の申出 |
| 給与の源泉徴収票 | 受け取る(退職の日以後1月以内) | 次の勤め先に出す、税金の手続きで使う |
| 退職所得の受給に関する申告書 | 自分が書いて会社に出す | 退職金の源泉徴収 |
| 再雇用の契約書 | 受け取る | 期限と賃金の確認、高年齢雇用継続給付の判断 |
| 会社から借りている物 | 返す | 会社の案内に沿って返す |
| 労働者の権利に属する金品 | 返してもらう | 請求すれば7日以内に返還 |
たとえば、離職票がなかなか届かないときは、会社がハローワークに手続きをしたかを確かめるところから始めます。催促の順番は 離職票が来ないとき で整理しています。源泉徴収票が1月を過ぎても届かないときも、まず会社の担当者に確かめます。どちらも、連絡はメールなど記録の残る方法にしておくと、あとでハローワークなどに相談するときに役立ちます。
退職日の前に、受け取る書類と返す物を会社に一覧で聞いておくと、受け取り漏れも返し忘れも防げます。届いた書類は、失業保険と健康保険の手続きが終わるまで、ひとつの封筒にまとめて保管しておきます。
自分で動かなくていい場合
定年退職の手続きは、全部を自分で抱える必要はありません。次に当てはまる部分は、会社が受け持つか、そもそも手続きが起きません。
ここで扱う手続きは、本人が窓口に出せる手続きです。分からないところは、加入していた健康保険、市区町村、ハローワーク、年金事務所の窓口で聞けます。
- 再雇用で同じ会社に残る間:期限が来るまでは離職していないので、健康保険の切り替えも失業保険の手続きも起きない
- 60歳以上で辞める人:国民年金の第1号への切り替えは無い(任意加入は希望する人だけ)
- 1〜5月に辞める人:住民税の残りは会社が一括で引く
- 高年齢雇用継続給付:申請は事業主を経由して出す
- 辞めてすぐ次の会社の健康保険に入る人:任意継続も国保の申請も要らない
たとえば、3月31日に定年で辞めて、翌日から別の会社で働き始める人なら、健康保険は次の会社で入り、住民税は今の会社が一括で引き、国民年金の切り替えもありません。自分で出すのは退職金の申告書くらいで、あとは源泉徴収票を受け取って次の会社に出すだけです。「定年退職の手続きは大変」と身構える前に、自分にはどれが当てはまらないかを先に消していくと、残る手続きは数えるほどになります。
よくある質問
定年退職は自己都合退職ですか?会社都合ですか?
厚生労働省のパンフレットは、定年を解雇・契約期間満了と並べて、待期7日の後から支給する側に置いています。自己都合のような1〜3か月の給付制限は付きません。日数は、一般の離職者の日数に当てはめると90日・120日・150日です。
60歳で定年退職したら、どんな手続きが必要ですか?
自分でするのは、健康保険の選択と申請(国保は14日以内、任意継続は資格を喪失した日から20日以内)、失業保険の求職の申込みか受給期間の延長の申出(離職の日の翌日から起算して2か月以内)、退職金の申告書の3つです。60歳以上なら国民年金への切り替えはありません。
定年退職のとき、会社からもらう書類は何ですか?
ここで扱う手続きに使う書類のうち、会社から受け取るのは離職票と給与の源泉徴収票です。ほかに渡される書類は会社に確かめます。源泉徴収票は退職の日以後1月以内に交付されます。退職所得の受給に関する申告書は、もらうのではなく自分が書いて会社に出す書類です。
定年後に、やってはいけないことはありますか?
期限のある手続きを放っておくことです。健康保険は退職後すぐに期限が来ますし、休んでから仕事を探すつもりで受給期間の延長を申し出ないと、離職の日の翌日から1年の受給期間の中で日数を受け切れなくなるおそれがあります。
受給期間の延長の申出を、2か月を過ぎてしまったら?
施行規則は、天災その他申出をしなかったことについてやむを得ない理由があるときを例外としています。それ以外は期限内に出す決まりなので、過ぎてしまった人も、事情を含めてハローワークに相談してください。
企業年金や確定拠出年金の手続きは?
会社の制度によって違うので、会社の担当者に確かめます。企業型の確定拠出年金に入っていた人は 確定拠出年金の退職時の手続き を見てください。
数字だけ、もう一度
- 健康保険:資格を失うのは退職日の翌日。任意継続は資格を喪失した日から20日以内に申請し、2年を経過するまで。国保は14日以内に届ける
- 国保の軽減:前年の給与所得を100分の30として計算。対象は特定受給資格者か特定理由離職者で、定年は原則として当たらないと読める
- 年金:60歳以上は国民年金の第1号にならない。任意加入は65歳になるまで。特別支給の老齢厚生年金は男性 昭和36年4月1日以前、女性 昭和41年4月1日以前の生まれが対象
- 失業保険:定年は給付制限なし。待期7日の後から。日数は、一般の離職者の日数に当てはめると90日・120日・150日
- 受給期間の延長:離職の日の翌日から起算して2か月以内に申し出て、1年を限度に加える。本来の1年と合わせると最長2年になる計算
- 再雇用:高年齢雇用継続基本給付金は60歳以上65歳未満・被保険者期間5年以上・賃金が75%未満で、各月の賃金の10%が限度(賃金397,369円以上の月は支給なし)
- 住民税:1〜5月の退職は一括徴収。それ以外の月は申出で一括
- 退職金:申告書を受け取る時までに出さないと20.42%の源泉徴収
- 書類:源泉徴収票は退職の日以後1月以内。労働者の権利に属する金品は請求すれば7日以内に返還
定年退職の手続きは、項目の数だけ見ると多く見えますが、本当に期限に追われるのは、辞めた直後の健康保険と、2か月以内の失業保険の決め方の2つだけです。あとは会社が受け持つか、自分には当てはまらないかのどちらかに入ります。退職日が決まった時点で、健康保険の候補ごとの保険料と、すぐ探すか休むかを先に決めておけば、辞めたあとの数週間は書類を出していくだけの時間になります。

