引き継ぎなしで辞められる?何日あれば足りるかと退職代行を使う時の渡し方

卓上カレンダーと観葉植物の置かれた机
  • 引き継ぎが終わらないと、辞めさせてもらえないの?
  • 引き継ぎをしないで辞めたら、損害賠償を請求される?
  • 後任がまだ決まっていない。自分が抜けたら現場が回らない
  • 引き継ぎに何日あれば足りるのか、見当がつかない
  • 転職先の入社日が決まっていて、有給も使いたいのに引き継ぎが終わりそうにない
  • マニュアルを一から作る気力が、もう残っていない
  • 退職代行を使ったら、引き継ぎはどうなるの?
  • 担当している利用者さんや取引先を置いて辞めていいのか迷う

上記のような悩みに答えます。

引き継ぎは、辞めると決めたあとに手が止まりやすいところです。検索で上位に出るのは、転職が決まった人が入社までの期間で計画的に引き継ぎを終える段取りの解説が中心で、引き継ぎが辞める条件なのかどうか、後任が出てこないときや心身が限界のときにどこで区切ればいいか、退職代行を使うときに資料をどう渡すかまでは扱われていません。そこで、民法の2週間と厚生労働省の説明という土台を押さえたうえで、「損害賠償」と言われたときに条文で言えること、何日要るかを自分の仕事で見積もる物差し、書面に残す中身、代行を使う場合の渡し方まで、条文と厚生労働省の資料で確かめながら整理しました。

先に答え

期間の定めのない雇用なら、退職を申し入れてから2週間で契約は終わり(民法627条1項)、法令の条文に引き継ぎを辞める条件とする定めは見当たりません。ただ厚生労働省は、引き継ぎを辞めるときの社会的なルールとして説明しているので、2週間でできる分を書面1枚にまとめて渡すのが、揉めずに辞める近道です。

この記事の数字と条文は2026年10月時点のものです。辞めたあとの失業保険がいくら・いつから入るかは、失業保険の計算ツール に自分の条件を入れると出せます。

目次

引き継ぎをしないと辞められない?

期間の定めのない雇用(正社員や、契約期間の決まっていないパートなど)は、退職を申し入れた日から2週間が過ぎると終わります。民法627条1項は、その条件に引き継ぎの完了を挙げていません。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

民法627条(e-Gov法令検索)

では引き継ぎはどう位置づけられているのか。厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、労働者が任意に退職する場合、会社としては担当していた仕事の引継ぎや、その後の人員体制の検討などの対応が必要になるので、予告期間も置かずに即時に辞めると会社の業務に支障が出かねず、特別の事情がない限り一定の予告期間を見込んだ手続が求められる、と説明しています。同じページは、労働者には原則として退職の自由があり、使用者は任意退職を強行的に止めることはできない、とも書いています。厚生労働省のパンフレット「知って役立つ労働法」は、予告もせずにいきなり会社に行かなくなるのはルール違反で、退職の意思を上司に伝え、書面で届け出る、仕事の引き継ぎをするといった社会的ルールを守って辞めることが大切だ、としています。

出典:確かめよう労働条件「退職、解雇、雇止めなど」(厚生労働省)/知って役立つ労働法(厚生労働省・PDF)

条文が決めていることと、厚生労働省が求めていること
民法627条1項が決めていること

  • 申し入れの日から2週間で終わる
  • 会社の承諾は条件にしていない
  • 引き継ぎの完了は条件に入っていない
厚生労働省が説明していること

  • 予告期間を見込んだ手続が求められる
  • 引き継ぎは社会的ルールとして大切
  • いきなり来なくなるのはルール違反

つまり、引き継ぎは「終わらなければ辞められない」ものではなく、「辞めるまでの2週間に、できる範囲でやっておくべきもの」と読むのが、条文と厚生労働省の説明を合わせたときの線です。確かめた範囲の条文(民法627条、労働契約法3条4項、民法1条2項)には引き継ぎという語は出てきませんし、厚生労働省の説明も引き継ぎの完了を退職の効力の条件にはしていません。

会社が「引き継ぎが終わるまでは退職日を認めない」と言ってくる場面もあります。厚生労働省の同じページは、就業規則で退職の予告期間を大幅に延ばす規定や、会社の許可を条件にする規定があっても、そうした規定は無効とされると説明しています。一方で労働局のQ&Aには、就業規則に退職の定めがあれば原則として就業規則が適用されるので一度確認を、と案内するものもあり、官公庁の説明は割れています。就業規則に「引き継ぎを終えてから退職」のような定めがあるなら、その文言を写しておき、退職日を書いた退職届を出したうえで、引き継ぎの予定表を添えて話すのが現実的です。引き止めが続くときの進め方は 会社が辞めさせてくれない時 にまとめています。

たとえば、正社員で、月末に辞めたいと考えている人が、上司から「後任に全部教え終わるまでは辞めさせられない」と言われたとします。この人の雇用は、申し入れの日から2週間が過ぎれば終わります。それでも、2週間のうちに渡せる分を書面にして上司に見せておけば、会社の側も「何が残るか」を把握でき、話し合いが感情論になりにくくなります。反対に、契約社員など期間の定めがある人は、途中で辞めるには、原則として民法628条の「やむを得ない事由」が要ります(期間が1年超の契約では、契約の初日から最初の年が過ぎたあとは、申し出ていつでも退職できる例外があります。労働基準法137条。一定の事業の完了に必要な期間を定めた契約や、労働基準法14条1項各号に当たる労働者は除かれます)。話の出発点が違うので、詳しくは 契約期間の途中で辞めたいとき を見てください。

最初にやることは、雇用契約書の「契約期間」の欄で、自分が期間の定めのない雇用かどうかを確かめることです。ここが決まれば、引き継ぎに使える日数の上限も、話し合いの出発点も決まります。何日前に言うかの数え方そのものは 退職は何日前に言う? で確かめてください。

「しないと損害賠償」と言われたら

引き継ぎをしないなら損害賠償を請求する、と言われても、それだけで支払いが決まるわけではありません。労働基準法16条は、労働契約の不履行について、違約金や損害賠償額をあらかじめ決めておく契約を禁じています。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

労働基準法16条(e-Gov法令検索)

ただし16条が禁じているのは「あらかじめ決めておくこと」で、実際に生じた損害の請求そのものを禁じる条文ではありません。損害賠償の基本の決まりは民法415条1項で、債務の本旨に従った履行をしないときなどに、債権者はそれによって生じた損害の賠償を請求できる、ただし債務者の責めに帰することができない事由によるときはこの限りでない、と定めています。引き継ぎについて何か書いてある条文ではなく、損害が実際に生じたか、それが何の不履行から生じたのか、本人の責めに帰すべきものか、を順に問う一般の規定です。

出典:民法415条(e-Gov法令検索)

会社が持ち出すことのある「信義誠実」も、条文を見ておくと落ち着けます。労働契約法3条4項は「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない」、民法1条2項は「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」と書いています。どちらも労使の双方にかかる一般原則で、引き継ぎをしなければ退職できない、とは書いていません。

出典:労働契約法3条(e-Gov法令検索)/民法1条(e-Gov法令検索)

引き継ぎをしなかったことを理由に損害賠償が認められるかどうかは、条文だけでは決まりません。何で変わるか、どう確かめるか、どこに持っていくかを分けておきます。

確かめること 何を見るか 持っていく先
違約金・賠償額の定めがあるか 雇用契約書・就業規則・誓約書 定めがあれば労働基準法16条の話になる
何を言われたか いつ・誰に・何と言われたか(メモ・メール) 総合労働相談コーナー
書面で請求されたか 請求書・内容証明の写し 弁護士
契約期間があるか 雇用契約書の「契約期間」の欄 有期なら民法628条の話になる

期間の定めがある雇用は、ここが変わります。厚生労働省は、契約期間の満了前に、やむを得ない事由もなく任意に退職して会社に不測の損害を与えたような場合には、損害賠償責任が発生するなどのリスクがあるので注意が必要だ、と説明しています。リスクがあるという説明であって、辞めれば賠償が決まるという意味ではありません。

たとえば、正社員の人が口頭で「損害賠償だぞ」と言われただけなら、言われた日時と言葉をメモに残し、引き継ぎの予定表を書面で出して淡々と進めます。書面で金額を示されたら、自分で判断せずに、その書面と雇用契約書・就業規則・やりとりの記録を持って弁護士に相談する段階です。総合労働相談コーナーは、各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内などに置かれ、無料・予約不要で、退職を含む労働問題の相談に乗っています。

出典:総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)

言われた言葉の強さより、書面かどうか、契約期間があるかどうか、の2点で次の一手が分かれます。そこだけ先に確かめれば、怖さで手が止まることは減ります。

何日あれば足りるかを決める物差し

引き継ぎに何日要るかは、人によってまったく違います。相場の日数を当てにするより、自分の仕事を3つの物差しで見積もるほうが外れません。

期間の定めのない雇用では、申し入れから退職までの法律上の期間は2週間です。この2週間に収まるかどうかを、次の物差しで見ます。

物差し 短く済む側 長くかかる側
仕事の量と種類 決まった手順の作業が中心 自分しか知らない判断・例外処理が多い
後任の有無 後任が決まっていて、隣で見せられる 後任が未定・会社の判断待ち
社外の相手 社内で完結する 取引先・利用者・顧客との関係が自分の名前で動いている

1つ目の仕事の量は、毎日・毎週・毎月・不定期、に分けて書き出すと見えてきます。毎日の作業は1回見せれば足りても、月に1回の締めの作業は、退職日までに実際の締めが来ないと見せられません。その場合は、手順を書面に残して「次の締めの時に見てください」と渡すしかありません。

2つ目の後任の有無は、自分では決められない要素です。後任が決まっていれば、横について一緒に作業すれば早く済みます。決まっていなければ、渡す相手は上司になり、書面の比重が大きくなります。

3つ目の社外の相手は、日数よりも「連絡の順番」で効いてきます。取引先や利用者に退職を伝えるのは自分か会社か、後任の紹介をいつするかを先に上司と決めないと、自分だけでは動けません。

たとえば、経理で月末の締めを担当している人が月の半ばに申し入れた場合、2週間のうちに月末の締めが1回来るなら、実際の作業を後任と一緒にこなして渡せます。同じ人が月初に申し入れた場合は、締めが2週間の外に出るので、手順書と前月分の控えを残して渡す形になります。営業で取引先を持っている人なら、物差しは3つ目が重く、日数よりも「どの取引先に、誰が、いつ挨拶するか」の一覧を上司と決めることが先です。

見積もってみて2週間に収まらないなら、そこで選ぶのは2つです。就業規則の予告期間や会社の希望に合わせて退職日を後ろにずらすか、2週間で渡せる分を渡し、残りは書面で区切るか。どちらを選ぶかは、自分が待てるかどうかで決めて構いません。待てない理由(体調・入社日など)があるなら、それを上司に伝えたうえで、下の「区切り方」に進みます。

入社日が決まっている時の逆算

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転職先の入社日が決まっているなら、引き継ぎの日数は「入社日」から逆算します。退職日、有給の消化、最終出社日、申し入れの日、の順に後ろから決めていくと、引き継ぎに使える日数が見えます。

期間の定めのない雇用なら、申し入れから退職日までは最短で2週間です。その2週間のなかに、出社して引き継ぎをする日と、有給を使う日の両方を入れることになります。有給を退職日の直前にまとめると、引き継ぎに使える出社日はその分だけ減ります。

入社日から逆に並べる
申し入れ退職日を書いて伝える
出社して引き継ぎ書面を作り、見せて渡す
有給の消化最終出社日の翌日から
退職日申し入れの日から2週間以上あと

逆算の順番は次のとおりです。

  1. 転職先の入社日を確かめる(前日までに退職日が来るように)
  2. 退職日を決める(申し入れの日から2週間以上あとで、就業規則の予告期間も見ておく)
  3. 残っている有給の日数を確かめ、退職日の前に何日入れるかを決める
  4. 残った出社日で、引き継ぎに使える日数を出す
  5. その日数で渡し切れない分を、書面で区切る前提にする

有給と退職日の組み方は 有給消化と退職日の決め方 で詳しく見られます。

入社日を後ろにずらせるかどうかは、転職先との話し合いで決まることで、法律が決めているわけではありません。引き継ぎのためにずらしてもらう相談をするなら、何をいつまでに渡せば終わるのかを先に書き出しておくと、転職先にも理由を伝えやすくなります。

たとえば、入社日まで余裕がなく、有給も残っている人は、有給をすべて使うか、一部を引き継ぎに回すかを選ぶことになります。有給を使い切りたいなら、出社日のうちに書面を仕上げることを優先し、口頭で見せる作業は、手順書を読めば分かるものから後回しにします。有給より引き継ぎを優先したいなら、その分を出社日に回して、退職日は動かさない、という組み方もできます。

迷ったら、動かせないもの(入社日と、申し入れから2週間という期間)を先に置き、動かせるもの(有給の入れ方と、口頭で教える範囲)で調整する、と考えると決めやすくなります。

後任がいない・間に合わない時の区切り方

後任がいなくても、引き継ぎが間に合わなくても、期間の定めのない雇用なら退職日は申し入れの日から2週間が過ぎた日以降に来ます。そのときにやることは、「全部を渡す」ことではなく、「どこまで渡したかを書面で区切る」ことです。

厚生労働省の説明でも、引き継ぎとあわせて「その後の人員体制の検討」が会社の対応として挙げられています。後任を誰にするか、決まるまで誰が受け持つかを決めるのは、会社の側の対応です。自分がやれるのは、残る仕事の中身を、会社が判断できる形で渡すところまでです。

区切るときは、次の順で進めます。

  • 仕事を「渡し終えたもの」「書面だけで渡すもの」「会社に判断してもらうもの」の3つに分ける
  • 「会社に判断してもらうもの」は、上司あてに一覧にしてメールで送り、送った日を残す
  • 後任が決まっていないものは、渡す相手を上司にして、書面に「後任決定までの窓口は上司」と書く
  • 最終出社日の時点で残っているものを、書面の最後に「未了」として並べる

「私がいないと回らない」と感じるのは、それだけ仕事を抱えてきた証拠です。ただ、回る体制を考えるのは会社の側の対応です(厚生労働省の説明でも、人員体制の検討は会社の対応として挙げられています)。罪悪感で退職日を延ばし続けるより、渡せるものを渡し、残りを見える形にして手を離すほうが、残る人にとっても状況が分かりやすくなります。

たとえば、一人で担当していた仕事について、上司から「後任が来るまで待ってほしい」と言われ、すでに予定より長く延ばしている人の場合、待つ期限を自分で決めて伝えないと、終わりが見えなくなります。退職日を書いた退職届を出し、その日までの引き継ぎ予定と、未了になる見込みの一覧を一緒に渡せば、待つかどうかの判断材料を会社に返したことになります。

マニュアルを一から作る気力がないときは、完成品を目指さなくて構いません。普段使っているファイルの場所、取引先の連絡先の在りか、締め切りの一覧、この3つだけでも、残る人が探す手間は大きく減ります。

引き継ぎ書面1枚に入れる中身

手帳と2本のペン

引き継ぎ書面は、きれいなマニュアルである必要はありません。「何を・どこに・いつまでに・誰に聞けばいいか」が1枚で分かれば、渡したことの記録にもなります。

厚生労働省のパンフレットは、退職の意思を上司に伝え、書面で届け出る、仕事の引き継ぎをする、を社会的ルールとして並べています。書面で残しておけば、あとで「何も引き継がれていない」と言われたときに、渡した中身と日付を示せます。口頭だけの引き継ぎは、言った側と聞いた側で記憶が食い違いやすく、辞めた後に確かめる手段がありません。

1枚の書面を作る順番
  1. 1担当業務を書き出す毎日・毎週・毎月・不定期に分ける
  2. 2在りかを書くファイル・書類・アカウントの場所
  3. 3期限を書く次に来る締め切りと相手先
  4. 4状況を書く渡し終えた・書面だけ・未了
  5. 5宛先と日付を書く上司あて。渡した日を残す

書面に入れる項目は次のとおりです。

  • 担当業務の一覧(頻度ごと)と、それぞれの手順書やファイルの場所
  • 社外の相手(取引先・利用者など)の一覧と、連絡の状況
  • 次に来る締め切り・予定と、その準備がどこまで済んでいるか
  • 渡し終えたもの・書面だけで渡すもの・未了のものの区別
  • 宛先(上司)と作成日・渡した日

退職後に問い合わせが来るかどうかは、会社との関係次第です。書面の最後に「この書面に関する問い合わせ先は〇〇(上司)」と、会社側の窓口を書いておくと、辞めた後の連絡が個人に向かいにくくなります。どこまで応じるかは会社との関係や就業規則の定めで変わるため、一律には言えません。

たとえば、メールで送れる職場なら、書面をファイルにして上司あてのメールに添付し、本文に「引き継ぎ書面をお送りします。未了の項目は最後に記載しています」と書いて送れば、それが渡した日の記録になります。紙で渡すなら、写しを自分の手元にも残します。パスワードなど会社の情報そのものは書面に書き込まず、「管理者は〇〇」と在りかだけを書くほうが、扱いで揉めません。

1枚に収まらないほど仕事があるなら、1枚目を目次にして、2枚目以降に手順を付ければ足ります。大事なのは、上司が1枚目だけを読んで「何が残っているか」を言える状態にすることです。

担当制の仕事で確かめること

ケアマネジャーや看護・介護職、営業の担当者のように、利用者や取引先が自分の名前と結びついている仕事は、引き継ぎの中身に「相手への連絡」が入ります。ただ、資格職だから辞める人に特別な引き継ぎの義務がある、と言える公的な根拠は、今回確かめた範囲では見つかっていません。

担当制の仕事で気をつけるのは、相手先への連絡を自分の判断だけで進めないことです。誰が、いつ、どの順で利用者や取引先に伝えるか、後任をどう紹介するかは、事業所や会社の手順で決まっていることがあります。勤め先の就業規則や、事業所の運営規程に定めがあるかを確かめ、無ければ管理者に「連絡の順番を決めてほしい」と頼みます。

  • 就業規則や運営規程に、担当交代や退職時の手続きの定めがあるか
  • 利用者・取引先への連絡は、誰の名前で、いつ出すか
  • 記録・書類の保管場所と、持ち出してよいものの範囲
  • 後任が決まるまで、相手先からの連絡を誰が受けるか

たとえば、担当する利用者が多いケアマネジャーの人は、利用者ごとに「現在の状況・次の予定・連絡先の在りか」を1行ずつ並べた一覧を作り、管理者に渡して、交代の連絡を事業所から出してもらう、という分け方ができます。自分で一人ずつ連絡する場合も、管理者と順番を決めてからにすると、利用者側の混乱が少なくて済みます。

看護・介護の職場で退職届を受け取ってもらえない場面は 看護師・介護職の退職 で扱っています。担当制だからといって、期間の定めのない雇用の2週間が延びるわけではない、という点は他の仕事と同じです。

退職代行を使う時の資料の渡し方

ノートパソコンとコーヒーのある机

退職代行を使っても、引き継ぎの書面を作って会社に渡すことはできます。代行が伝えるのは退職の意思で、資料は自分で用意し、置くか送るかして、その場所と日付を会社に伝えてもらう形になります。

退職代行は運営の型で、頼めることが変わります。弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件について代理や和解その他の法律事務を取り扱うことを業とすることを制限していますが、退職代行を名指ししてはいないため、どこまでが許されるかは条文だけでは言えません。編集部の読み方としては、民間の会社は本人の使者として退職の意思を伝えるところまで、労働組合は意思の伝達に加えて有給・退職日・未払い賃金などの団体交渉まで、弁護士は交渉に加えて損害賠償を請求されたときの対応や訴訟の代理まで、と分けて選ぶのが無難です。

出典:弁護士法72条(e-Gov法令検索)

資料の渡し方は、職場に行けるかどうかで分けます。

  • 最後に出社できる日があるなら:書面を机の上か上司の席に置き、置いた場所と日付を代行から伝えてもらう
  • 出社できないが社用のメールが使えるなら:書面を上司あてに送り、送った日時を代行から伝えてもらう
  • どちらもできないなら:退職届や貸与品と一緒に会社へ郵送し、送った控えを残す

資料と一緒に、貸与品(社員証・鍵・パソコンなど)を返す段取りも決めておきます。会社から受け取るもののほうは、労働基準法23条1項が、退職する人から請求があれば、会社は7日以内に賃金を支払い、金品を返還しなければならないと定めています。代行を使った翌日からの流れは 退職代行を使った後の流れ にまとめています。

出典:労働基準法23条(e-Gov法令検索)

たとえば、上司と顔を合わせると体調を崩してしまう人でも、夜のうちに引き継ぎ書面を作って社用メールで上司に送っておき、翌朝に代行から退職の意思と「引き継ぎ書面は昨夜メールで送った」ことを伝えてもらえば、いきなり来なくなる形とは違う辞め方になります。有給や退職日について会社と話し合うことが残っているなら、団体交渉ができる労働組合か、交渉を扱う弁護士という選び方があります。型の違いは 労働組合の退職代行、料金の見方は 退職代行の費用 で確かめてください。

退職代行Jobsは、運営会社の規約では会社に利用者の希望を伝え、回答を伝える連絡の取次をする形で、退職日や有給などの交渉が要るときは、連携する労働組合(合同労働組合ユニオンジャパン)に加入して団体交渉をしてもらう形をとっています(2026年10月7日に公式サイトで確認)。

※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。

自分で伝えるのが難しく、会社とのやりとりを任せたい場合は、料金に何が含まれるか(組合費・返金の条件)と、退職日や有給の話し合いが要るときは連携する労働組合に加入して交渉してもらう形になることを、公式サイトで確かめてから申し込んでください。損害賠償を言われているなら、弁護士に相談するのが先です。

退職代行Jobsの料金を公式サイトで見る

使わなくていい場合

上司に退職日を伝えられて、引き継ぎの書面を自分で渡せるなら、退職代行は使わなくて構いません。期間の定めのない雇用なら、申し入れの日から2週間で終わる仕組みは、代行を使っても使わなくても同じです。

  • 上司か人事に、口頭かメールで退職日を伝えられる
  • 引き継ぎの書面を、手渡しかメールで自分で渡せる
  • 有給や退職日について、会社と話し合うことが残っていない
  • 損害賠償などを書面で言われていない

たとえば、引き継ぎが終わらないことを理由に引き止められていても、上司と普通に話せる人なら、退職届に退職日を書いて出し、同じ日に引き継ぎ書面を上司にメールで送れば足ります。言い出し方に迷うなら 辞めたいと言い出せないとき、メールで伝える文面は 退職をメールで伝えるとき を見てください。反対に、上司と連絡が取れない、話すと体が動かなくなる、という人は、無理に一人で抱えず、手を借りる方を選んで構いません。

代行を使うかどうかの分かれ目は、引き継ぎの量ではなく、「伝えることと渡すことを、自分の手でできるか」です。手が動くなら自分で、動かないなら伝える部分だけを任せ、渡す部分は書面で自分が用意する、という分け方もあります。

よくある質問

引き継ぎをしないで辞めることはできますか?

期間の定めのない雇用なら、申し入れの日から2週間で雇用は終わり(民法627条1項)、条文は引き継ぎの完了を条件にしていません。ただ厚生労働省は引き継ぎを辞めるときの社会的ルールとして説明しているので、できる範囲を書面にして渡しておくのが無難です。

引き継ぎは義務ですか?

確かめた範囲の法令の条文に、引き継ぎの定めは見当たりません。一方で厚生労働省は、予告期間を見込んだ手続や引き継ぎを求めています。法律上の効果を断定できる話ではないので、渡したことが分かる形で残すのが確実です。

引き継ぎには、何か月も取らないといけませんか?

何日要るかは、仕事の量と種類、後任の有無、社外の相手の3つで決まります。期間の定めのない雇用なら、法律上の期間は申し入れから2週間なので、その中で渡せる分と、書面で区切る分を分けて考えます。

後任がいないまま辞めてもいいですか?

後任を決めるのは会社の側の対応で、後任がいないことを理由に、期間の定めのない雇用の2週間が延びるわけではありません。渡す相手を上司にして、未了の項目を書面に並べて渡します。

辞めた後に引き継ぎの問い合わせが来たら応じるべきですか?

どこまで応じるかは会社との関係次第で、一律には言えません。書面に会社側の問い合わせ窓口を書いておくと、連絡が個人に来にくくなります。応じる場合は、答えられる範囲を決めておくと負担が減ります。

退職代行を使っても引き継ぎ資料は渡せますか?

渡せます。書面を自分で作り、机に置く・社用メールで送る・郵送するのいずれかで渡し、その場所と日付を代行から会社に伝えてもらいます。会社と話し合うことが残っているなら、労働組合か弁護士という選び方もあります。

就業規則に「引き継ぎ完了まで退職不可」とあります。

厚生労働省は、就業規則で予告期間を大幅に延ばしたり会社の許可を条件にしたりする規定は無効とされると説明していますが、就業規則が原則適用されると案内する労働局のQ&Aもあり、説明は割れています。文言を写しておき、退職届と引き継ぎの予定表を出したうえで、進まなければ総合労働相談コーナーに相談してください。

数字だけ、もう一度

  1. 期間の定めのない雇用:申し入れの日から2週間で終わる(民法627条1項)。引き継ぎの完了は条件に入っていない
  2. 厚生労働省の説明:予告期間を見込んだ手続が求められ、引き継ぎは社会的ルール。会社は任意退職を強行的に止められない
  3. 損害賠償:違約金・賠償額の予定は禁止(労働基準法16条)。実際の損害の請求は民法415条1項の一般の規定で、条件は事案次第
  4. 信義誠実:労働契約法3条4項・民法1条2項は労使双方の一般原則。引き継ぎの義務とは書いていない
  5. 有期の雇用:原則、途中の退職はやむを得ない事由が要る(民法628条。期間が1年超の契約には例外あり=労働基準法137条)。厚生労働省は損害賠償のリスクに注意と説明
  6. 会社から受け取るもの:請求があれば7日以内に賃金の支払いと金品の返還(労働基準法23条1項)
  7. 編集部の読み方:退職代行は、民間は意思を伝えるまで、労働組合は団体交渉まで、弁護士は損害賠償の対応や訴訟の代理まで

引き継ぎで手が止まるときは、「全部渡さないと辞めてはいけない」という思い込みが足を引っ張っています。けれど条文が決めているのは2週間という期間で、引き継ぎはその中でやる仕事です。仕事を書き出し、2週間で渡せる分を見積もり、残りを書面1枚に「未了」として並べて上司に渡す。そこまでやれば、辞め方として胸を張れますし、残る人にも何が残っているかが伝わります。後任を決めることや人員体制の検討は、会社の側の対応として渡しておけば足ります。

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この記事を書いた人

やめ活編集部です。退職の伝え方・失業保険・退職代行について、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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