- 取引先への退職の挨拶メールは、いつ送ればいい?
- 上司に伝えたばかり。仲のいい取引先の担当者にだけ、先に話してもいい?
- 後任がまだ決まっていない。挨拶はどうすればいい?
- 有給消化に入るので、退職日まで出社しない。送るのは退職日?最後に出社する日?
- 取引先がたくさんある。一斉送信でいい?BCCだと失礼にならない?
- 後任の紹介は、名前のほかに何を書けばいい?
- 同業の会社に移る。転職先を聞かれたら、どう答える?
- 退職代行を使う予定。取引先への挨拶はどうなる?
- 辞めたあと、取引先の人から個人的に連絡が来たらどうする?
上記のような悩みに答えます。
取引先への退職挨拶メールは、自分の退職を会社の外に知らせる連絡で、社内への挨拶と違って自分一人の判断では送れないところに難しさがあります。編集部が見た範囲では、上位に出る転職・求人メディアの記事は、件名から結びまでの型や例文を厚く載せていて、円満に辞めて引き継ぎも済んでいる人を前提にしたものが目立ちます。有給消化に入って最後の出社日と退職日が離れる人、退職代行を使う人や揉めて辞める人、取引先が多くて相手ごとに付き合いの深さが違う人が、何を・いつ・誰の了承で送ればいいかに触れた記事は多くありませんでした。そこで、送る順番・時期・例文という基本を押さえたうえで、後任の紹介の書き方、書かないことの線引き、自分で送りにくいときの扱い、辞めたあとの連絡まで、民法の条文と労働局の説明も確かめながら整理しました。
取引先への退職挨拶メールは、上司の了承を取り、後任が決まってから、最終出社日より前に送ります。本文の中心は後任の名前と引き継ぎの日程で、辞める理由や転職先は書かなくてかまいません。関係の深い相手には個別に、それ以外はBCCで送り分けます。
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取引先への挨拶は了承と後任が決まってから
取引先への退職挨拶メールは、上司の了承を取り、後任が決まってから送ります。上司に退職を伝えた直後や、後任がまだ決まらない段階では、取引先に先に知らせるのを避けます。上司が先に知らせると判断した場合は、後任が決まり次第また連絡すると添えて送ります(書き方は後任の紹介の節にあります)。
取引先から見ると、担当者の退職は「この会社との取引は、これからどうなるのか」という知らせです。自分では個人の挨拶のつもりでも、会社のアドレスから担当者の名前で届くメールは、会社からの連絡として受け取られることがあります。後任や引き継ぎの日程が書けないまま退職だけを知らせると、取引先は次に誰へ連絡すればよいか分からず、会社の側も問い合わせを受けてから慌てて対応することになります。取引先への知らせ方を会社として決めている職場もあるので、送ってよいか、いつ送るか、誰の名前で出すかは、上司に確かめてから動きます。
- 1上司の了承社外に知らせてよい時期と範囲を確かめる
- 2後任の決定誰に、いつから引き継ぐかを決める
- 3送る相手の一覧個別に送る先と、一斉に送る先を分ける
- 4下書きを上司に見せる書くこと・書かないことをそろえる
- 5送る最終出社日より前に
たとえば、上司に退職を伝えたその週に、長く付き合いのある取引先の担当者から「最近どうですか」と聞かれても、後任が決まるまでは退職の話はしないでおきます。先に個人的に話してしまうと、会社が後任を連れて挨拶に行く前に話が広がり、取引先が会社に問い合わせてくる形になりかねません。反対に、上司から「後任は来週決めるので、それまで待ってほしい」と言われたなら、待っている間に送る相手の一覧と下書きを作っておけば、決まった日にすぐ送れます。
上司に確かめる質問は三つに絞れます。「取引先に知らせてよいのはいつからか」「後任は誰で、いつから担当になるか」「自分の名前で送るか、会社や上司から知らせるか」。この三つの答えがそろえば、メールの中身はほぼ決まります。まだ上司に退職そのものを伝えていない人は、その伝え方から始めることになるので、退職をメールで伝えるとき の記事を先に読んでください。
送る日は最終出社日より前

取引先への挨拶メールを送るのは、最終出社日より前です。有給消化に入る人は、消化に入る前の最後の出社日までに送ります。後任と一緒に挨拶に回る、電話で直接話すといった時間を取りたいなら、そのぶん前に送ります。
退職日は在籍が終わる日、最終出社日は職場で働く最後の日で、有給をまとめて消化する人はこの二つが離れます。有給消化中も社員であることは変わらず、たとえば健康保険の資格を失うのも退職日の翌日です。それでも、消化に入ると会社のパソコンを返していたり、メールが使えなくなっていたりして、取引先からの返信や問い合わせに答えられないことがあります。取引先にとって大事なのは、あなたがいつまで担当しているかと、その後は誰に連絡すればよいかで、それに答えられる日に届くことです。
有給消化については、和歌山労働局が事業主向けに、年次有給休暇は労働者の権利であり、退職間際の年休の申請を拒むことはできない、引継ぎが必要なら退職日を遅らせてもらうなど話し合う、と説明しています。取引先の引き継ぎが終わりそうにないときも、編集部としては、有給を削る前に、引き継ぎの終え方と退職日を上司と話し合う、という順番で考えます。有給の残りから最終出社日を決める方法は 有給消化と退職日の決め方 の記事にまとめています。
退職日がまだ確定しない段階では、取引先への挨拶は送りません。期間の定めのない雇用について、民法627条1項は「雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と書いていて、申し入れたあとに雇用がいつまで続くかの枠はこの条文で決まります。ただ、実際の退職日を会社と話し合っている途中で取引先に知らせると、書いた日付があとで変わり、訂正の連絡が要ります。退職日と最終出社日が決まってから、送る日を決めます。
たとえば、月末を退職日にして、その前に残りの有給をまとめて消化する人なら、消化に入る前の最後の出社日が送る期限です。後任と主な取引先を回るなら、訪問より前にメールで知らせておくと、取引先も話を聞く準備ができます。一方、有給を使わずに退職日まで出社する人は、退職日と最終出社日が同じなので、その日より前に送れば足ります。
手帳に退職日と最終出社日を分けて書き、最終出社日から逆に「後任との挨拶回り」「メールを送る日」を並べてみてください。取引先への挨拶の日付は、それで決まります。
社内向けの挨拶メールとの違い
社外向けの挨拶メールは、社内向けとは送る時期も中身も違います。社内向けは最終出社日に感謝を中心に送るもの、社外向けはそれより前に、後任と今後の連絡先を中心に送るものです。
社内の人は、挨拶メールが届く前から退職を知っていることがあり、メールは区切りのお礼として読まれます。取引先は、そのメールで初めて退職を知ることがあり、読みながら考えるのは「今の案件は止まらないか」「次は誰に頼めばいいか」です。同じ「退職のご挨拶」でも、受け取る側の関心が違うので、社内向けの文面をそのまま取引先に送ると、お礼ばかりで肝心の連絡先が見つからないメールになります。
- 最終出社日に送る
- 中心はお礼
- 宛先ごとに自分で決める
- 部署へ一斉と上司へ個別
- 最終出社日より前に送る
- 中心は後任と引き継ぎの日程
- 送る時期と範囲を上司と決める
- 関係の深さで個別とBCCの一斉
たとえば、社内の同僚にも取引先にも知らせたい人は、二回に分けて送ります。取引先へは後任が決まった時点で最終出社日より前に、社内へは最終出社日に。社内向けの送る日・宛先・例文は 社内向けの退職挨拶メール の記事で整理しています。
迷ったときは、「このメールを読んだ人が、次に何をすればいいか分かるか」で見直します。社内向けなら分からなくても困る人は少ないですが、社外向けで分からないと、取引そのものが止まります。
件名から結びまでの型と例文

取引先への挨拶メールは、件名・宛名・名乗り・退職の知らせ・お礼・後任と引き継ぎ・結び・署名の順に並べれば形になります。長さは、後任の連絡先までスクロールせずに目に入る程度に収めます。
取引先の担当者は、あなたのメールをほかの仕事のメールにまぎれて開きます。件名で「担当が替わる知らせだ」と分かり、本文の前半で「いつから誰に」が分かれば、読み飛ばされても困りません。お礼に力を入れたくなりますが、編集部の読み方では、取引先が後で見返すのは後任の名前と連絡先の部分になりやすいです。
- 件名:「退職のご挨拶と後任のご紹介(会社名・氏名)」のように、退職と後任の両方を入れる
- 宛名:会社名・部署名・氏名。個別に送るなら相手の名前まで書く
- 退職の知らせ:担当を離れる日を書く。有給消化に入る人は、退職日ではなく最後に出社する日
- お礼:その取引先との仕事を一つ具体的に入れる
- 後任と引き継ぎ:後任の名前・部署・連絡先と、担当が替わる日
- 結び:会社との取引を引き続きお願いするひと言と、会社の署名
この型で書いた例を一つ載せます。言い回しはそのまま使わず、自分の仕事と相手に合わせて置き換えてください。
件名:退職のご挨拶と後任のご紹介(株式会社◯◯ 田中)
株式会社△△
購買部 木村様
いつもお世話になっております。株式会社◯◯の田中です。
私事で恐縮ですが、◯月◯日の出社を最後に、退職することになりました。在任中は、急な納期の変更のたびに相談に乗っていただき、本当にありがとうございました。
今後は、同じ営業部の中村が担当いたします。◯月◯日以降のご連絡は、中村までお願いいたします。近いうちに中村とご挨拶に伺いたいと考えておりますので、ご都合のよい日をお知らせいただけますと幸いです。
後任:営業部 中村◯◯(メール・電話は下記の署名をご覧ください)
本来であれば直接ご挨拶すべきところ、メールでのご連絡となり失礼いたします。木村様と貴社のますますのご発展をお祈りしております。
株式会社◯◯ 営業部 田中◯◯(会社の署名)
すでに後任と一緒に挨拶に行ったあとなら、「先日はお時間をいただきありがとうございました」と始め、訪問の約束の一文は外します。反対に、取引先とのやりとりがメールだけで、顔を合わせたことがない相手なら、「直接ご挨拶すべきところ」の一文も無理に入れなくてかまいません。
型の中で、取り違えると後で困るのは日付と後任の二か所です。下書きができたら、担当を離れる日と後任の連絡先だけは、上司か後任に見てもらってから送ります。
個別に送る先と一斉に送る先
いま進んでいる案件がある取引先と、長く付き合ってきた担当者には個別に送ります。取引はあっても連絡の少ない先には、BCCで一斉に送れば足ります。個人のお客様に送るかどうかは、会社の方針を確かめてから決めます。
一斉送信でBCCを使うのは、取引先どうしにほかの会社のアドレスを見せないためです。宛先欄やCCに並べると、受け取った全員にほかの取引先の名前とアドレスが見えてしまいます。一方で、BCCの一斉メールは「その他大勢への連絡」として受け取られることがあります。案件の途中にある相手や、長く世話になった相手にそれだけで済ませると、事務的すぎると受け取られることがあります。
| 相手 | 送り方 | 中身 |
|---|---|---|
| いま進んでいる案件がある取引先 | 個別。後任をCCに入れる | 案件ごとの引き継ぎ先と日程 |
| 長く付き合いのある担当者 | 個別 | お礼を具体的にひと言 |
| 取引はあるが連絡の少ない先 | BCCで一斉 | 退職の知らせと後任の連絡先 |
| 個人のお客様 | 会社の方針に従う | 会社からの案内に任せることもある |
一斉に送る文面は、個別のものより短くして、宛名を「お取引先各位」とし、一斉送信であることを最初に断ります。
件名:担当者変更のお知らせ(株式会社◯◯ 田中)
お取引先各位
いつもお世話になっております。株式会社◯◯の田中です。一斉送信にて失礼いたします。
◯月◯日の出社を最後に退職することとなり、以後は営業部の中村が担当いたします。これまでのお引き立てに、心よりお礼申し上げます。
今後のご連絡先:営業部 中村◯◯(メール・電話は下記の署名に記載)
引き続き、変わらぬお付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。
個人のお客様に送るときは、取引先向けよりもやわらかく、手続きの窓口が変わらないことを先に伝えます。たとえば「いつもご利用いただきありがとうございます。担当の田中です。◯月◯日をもちまして担当を離れることになりました。今後は中村がお手伝いいたします。ご契約の内容やお手続きは、これまでと変わりません」といった短い文面です。お客様の連絡先を会社の外の手段で使ってよいかは会社のルールで決まるので、送る手段も上司に確かめます。
たとえば、担当している取引先のうち、いま見積や納品が動いている先が数社で、ほかは年に何度か注文がある程度という人なら、動いている先には個別に、残りはBCCの一斉で十分です。迷ったら、「この相手は、自分が辞めたと知らずに来月連絡してきたら困るか」で考え、困る相手から順に個別にしていきます。
後任を紹介するときに書くこと
後任の紹介では、名前だけでなく、部署・連絡先・担当が替わる日・どこまで引き継いでいるかを書きます。後任をCCに入れて送り、後任からもひと言返信してもらう形にすると、取引先は次から誰に送ればよいか迷いません。
取引先が困るのは、退職そのものより「今週の件は誰に聞けばいいのか」が分からないことだと編集部は考えます。名前だけの紹介だと、取引先が会社の代表番号に電話して後任を探すことになる場合もあります。担当が替わる日を書いておけば、その日までは今の担当に、その日からは後任に、と取引先が自分で振り分けられます。
後任が複数に分かれるときは、案件ごとに誰に聞けばよいかを分けて書きます。「見積と納期のご相談は中村、請求に関するお問い合わせは経理部の佐々木」のように、相手が実際に連絡しそうな用件で分けると伝わります。後任がまだ決まらないうちに送らざるをえないときは、部署の窓口と上司の名前を書き、「後任が決まり次第、改めてご連絡します」と添えます。
たとえば、後任が入社して間もない人の場合、紹介文で持ち上げすぎると、取引先との最初のやりとりで後任が苦しくなります。「これまでの経緯はすべて引き継いでいます」と書けるのは、本当に引き継ぎを終えたときだけです。引き継ぎが途中なら、「引き継ぎの途中のため、最終出社日までは私もCCで確認いたします」と事実を書くほうが、取引先にも後任にも親切です。引き継ぎそのものが十分にできないまま辞める事情がある人は、引き継ぎなしで辞めるとき の記事で、会社に何を残せばよいかを確かめてください。
後任の紹介で迷ったら、取引先が自分の名前を消してメールを読み返したとき、次に連絡する相手と日付が分かるかを確かめます。分かれば、紹介としては十分です。
辞める理由と転職先は書かない
取引先への挨拶メールには、辞める理由・転職先・私用の連絡先は書かないのが基本です。書くかどうかを自分で決めるのではなく、会社の規程と上司の判断に合わせます。
社外向けの挨拶メールは会社の名義の連絡として読まれ、取引先の社内で転送されることもあります。辞める理由は、取引先にとって必要な情報ではありません。自己都合で辞める人でも、「一身上の都合により」と書くか、理由に触れずに「退職することになりました」とだけ書けば十分です。転職先、とくに同業の会社に移る場合は、取引先の引き抜きや顧客情報の持ち出しを疑われる心配が出てきます。退職後の行動について、就業規則や入社時に署名した誓約書に約束ごとがある会社もあります。その約束がどこまで及ぶかはここでは判断しませんが、気になる人は、書類を読み返したうえで上司か人事に確かめてください。
- 辞める理由:書かなくてよい。書くなら「一身上の都合」まで
- 転職先:書かない。取引先に聞かれたら、答えてよいかを上司に確かめてから
- 私用のメールアドレスや電話番号:会社の名義の一斉メールには書かない
- 会社の内部の事情:人員の入れ替えや社内の評価には触れない
- 取引先への不満や会社への不満:個別のメールでも書かない
たとえば、同業の会社に移る人が、親しい取引先から「次はどちらへ」と聞かれたとします。上司に確かめる前なら、「まだお伝えできる段階ではないので、落ち着いたら改めて」と答えておけば角が立ちません。家庭の事情や体調で辞める人も、取引先には詳しい事情を話す必要はなく、「私事で恐縮ですが」と前置きするだけで足ります。
書くかどうか迷ったときは、「このメールが取引先の社内で、知らない人まで転送されても困らないか」で判断します。困る情報は外し、どうしても伝えたい相手がいるなら、退職後に会社の規程を確かめてから個人として伝えます。
退職代行や揉めて辞めるときの挨拶

退職代行を使う人や、会社と揉めて辞める人は、取引先への挨拶を自分で送らず、会社から取引先へ知らせてもらう形でもかまいません。自分で送る場合も、上司の了承を取り、最終出社日より前に送る、という順番は同じです。
取引先への挨拶は、担当が替わることを取引先に伝えるのが役目です。その連絡は、後任を決める会社の側からでも果たせます。退職代行を使う人は、使う代行の種類や契約の内容によって、会社とのやりとりをどこまで代行に任せるかが違います。そのため、取引先への連絡の時期や文面を上司とすり合わせにくくなることがあります。そうした状態で自分の判断で取引先に送ると、会社がまだ後任を決めていないうちに話が先に出て、取引先を混乱させることがあります。
たとえば、退職代行を使い、代行を通した連絡のあと出社しない形で進める人なら、取引先への挨拶は自分では送らず、担当していた取引先の一覧と、案件ごとの進み具合を書いたメモを会社に残すほうが、取引先のためになります。取引先への連絡を会社に任せたいことは、代行に伝えられるか、代行の契約の範囲に入るかを先に確かめておきます。代行を使ったあとの会社からの連絡や、返却物・書類の受け取りは 退職代行のその後 の記事で確かめてください。
上司と揉めて辞める人でも、取引先との関係は別のものです。了承が取れて送れるなら、担当を離れる日と後任の名前だけを書いた短い文面にし、会社や上司への不満は書きません。取引先に送ったメールは、会社の仕組みによっては会社のサーバーに残り、上司や後任が読むことがあります。体調を崩して辞める人も、無理に文面を考える必要はなく、上司に「取引先へは会社からお知らせいただけますか」と頼めば足ります。
自分で送れないことを後ろめたく感じる人もいますが、取引先が困らないかどうかは、誰が知らせるかより、後任と連絡先が伝わるかで決まります。その一点が会社から伝わるなら、あなたが送らなくても役目は果たせます。
返信と退職後の個人的な連絡
取引先からの返信には、在職中のうちに短く返します。退職したあとに取引先から個人的に連絡が来たときは、仕事の話は後任へつなぎ、個人として付き合いを続けるかは、会社の規程を確かめてから決めます。
返信をくれる取引先は、「お疲れさまでした」「新しい場所でもお元気で」と伝えたいだけのこともあり、返事を求めているとは限りません。それでも、長く付き合った担当者や、案件について質問を添えてきた相手には返します。質問への答えは後任をCCに入れて返し、「今後のご連絡は中村がお受けします」と書き添えれば、そこから先のやりとりが後任に移ります。
退職後、取引先の人から私用の携帯やSNSに連絡が来ることがあります。仕事の問い合わせなら、自分で答えずに「その件は後任の中村にお願いします」と返すのが無難です。辞めた人が答えた内容は、会社としての回答にはならないので、行き違いが起きたときに会社が確認できません。個人として食事に行く、相談に乗るといった付き合いは、それ自体が禁じられるとは限りませんが、同業に移った人は、就業規則や誓約書で取引先とのやりとりに約束ごとがないかを先に確かめておきます。
たとえば、異業種に移った人が、元の取引先の担当者から「今度ゆっくり話しましょう」と誘われたなら、個人として会うかどうかは、自分で決めてかまわない場面です。一方、同業に移った人が、元の取引先から「次の会社でもお願いしたい」と言われた場合は、その場で答えず、誓約書を読み返してから判断します。
迷ったら、「その連絡に答えると、前の会社の仕事に口を出すことにならないか」で線を引きます。仕事の話は後任へ、個人の付き合いは規程を確かめてから。この二つを分けておけば、辞めたあとの連絡で迷う場面はぐっと減ります。
取引先に挨拶メールを送らなくていい場合
取引先への挨拶メールは、全員が送るものではありません。自分がいなくなったあと、取引先が次に誰へ連絡すればよいかが会社から伝わるなら、自分で送らなくてもかまいません。
- 取引先を担当していない、社外とのやりとりが無い仕事をしていた
- 会社が担当変更の案内を一括で取引先に出す
- 後任と一緒に取引先を訪問して、その場で挨拶と紹介を済ませた
- 上司から「取引先へは会社から知らせるので、送らないでほしい」と言われた
- 退職代行を使う、体調を崩しているなどで、上司とすり合わせて送ることができない
たとえば、後任と主な取引先を回って直接挨拶を済ませた人は、同じ内容のメールを重ねて送る必要はありません。訪問できなかった先にだけ、BCCの一斉メールで知らせれば足ります。反対に、自分しか連絡先を知らない取引先があるのに、会社が一括で知らせると言っている場合は、その取引先の一覧を上司に渡して、案内から漏れないようにしておきます。
送るかどうかの軸は、礼儀より、取引が止まらないかです。送らない選択が失礼にあたるかは職場と相手によって違いますが、止まらない段取りが会社の側でできているなら、無理に送らなくてかまいません。
退職届の書き方|退職日は何日と書けば損しない?有給・月末で決める日付
退職の挨拶メールはいつ送る?有給消化に入る前の最終出社日に送る例文と宛先
再就職手当をもらえる条件は?失業保険の残り日数と就職の決め方で分かれる可否
よくある質問
社外向けの退職挨拶メールの、シンプルな例文はありますか?
「いつもお世話になっております」「◯月◯日の出社を最後に退職することになりました」「今後は◯◯が担当いたします」「これまでありがとうございました」の四つと、後任の連絡先を並べれば、それで社外向けの挨拶メールになります。余裕があれば、お礼の部分にその取引先との仕事を一つ足してください。
取引先の担当者から退職の連絡が来ました。どんなメッセージを返せばいいですか?
これまでのお礼を具体的にひと言書き、後任の方と引き続きやりとりすることを伝えれば十分です。後任の連絡先が書かれていれば、確認の意味で後任をCCに入れて返すと、その後の連絡がスムーズです。退職の理由や転職先は、相手から書かれていない限り聞かないでおきます。
自己都合で辞めるとき、理由はどう書けばいいですか?
取引先には、理由を書かずに「退職することになりました」とするか、「一身上の都合により」と書くだけで足ります。前向きな理由でも、転職先が分かる書き方は避けます。書くかどうか迷う内容は、上司に下書きを見せて確かめてください。
取引先にBCCで一斉送信するのは失礼ですか?
BCCは、取引先どうしにアドレスを見せないためによく使われる送り方です。ただ、受け取り方は相手や職場で違うので、冒頭で「一斉送信にて失礼いたします」と断っておくと安心です。ただし、いま案件が進んでいる先や長く付き合ってきた相手には、一斉メールとは別に個別に送ります。
退職日がまだ決まっていないうちに、取引先に知らせてもいいですか?
退職日と最終出社日が決まり、上司の了承と後任の決定がそろうまで、取引先には知らせないでおきます。日付が変わると訂正の連絡が要り、取引先も会社も混乱します。決まるまでの間に、送る相手の一覧と下書きを作っておくと、決まった日にすぐ送れます。
挨拶メールへの返信には、全部返さないといけませんか?
全員に返す必要はありません。長く付き合った担当者や、質問を添えてきた相手には在職中に短く返し、質問には後任をCCに入れて答えます。退職後に会社のアドレスに届いた返信は、読めなくても気にしなくて大丈夫です。気になる相手がいれば、最終出社日までに引き継ぎ先に確認を頼んでおきます。
数字だけ、もう一度
- 民法627条1項:期間の定めのない雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する
- 最終出社日と退職日:有給消化に入る人は別の日になる。退職日までは社員で、健康保険の資格を失うのは退職日の翌日(健康保険法36条)
- 有給消化:退職間際の年休の申請は拒めず、引継ぎが必要なら退職日を遅らせてもらうなど話し合う(和歌山労働局の説明)
- 取引先への挨拶を送る日:この記事では日数の目安は示さない。上司の了承と後任の決定が先で、最終出社日より前に送る
取引先への挨拶で迷う人は、文面より先に「もう送っていいのか」で止まりがちです。上司の了承、後任の名前、最終出社日の三つがそろうまでは送らず、そろったら型に沿って後任と日付を書くだけです。辞めたあとの暮らしのお金が気になる人は、失業保険の日額を 失業保険の計算ツール で出しておくと、有給消化中に次の段取りを考えやすくなります。取引先に「次は誰に連絡すればいいか」が伝われば、挨拶メールは十分に役目を果たしています。

